著者
秋元 浩
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.377-386, 2011 (Released:2011-10-01)
参考文献数
8

京都大学・山中伸弥教授の新型万能細胞(iPS細胞)の研究に見られるように,日本の大学・研究機関の研究レベルは世界でもトップクラスであり,今後もこのような発明・研究を生み出す素地は十分に整っているといえる。しかし,日本はライフサイエンス分野(医薬,医療分野等)を含めた先端分野の研究では善戦しつつも,知財の活用による産業化という面ではいまだ欧米の後塵を拝しているのが現状である。このような状況を打破して日本の企業が国際競争に打ち勝つためには,わが国の英知を結集した効率的な産学官連携により,大学等から生み出された研究情報に基づく知財を積極的に活用してグローバルな事業展開を図っていくことが重要であり,そのために新しいチャレンジングな試みとして知的財産戦略ネットワーク(IPSN)/ライフサイエンス知財ファンド(LSIP)が設立された。
著者
瀬尾 眞浩
出版者
公益社団法人 腐食防食学会
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.341-348, 2012-09-15 (Released:2013-03-01)
参考文献数
44
被引用文献数
3 5

アンダーポテンシャル析出(UPD)とは,水溶液中の金属イオンMz+が金属Mとして析出する平衡電位よりも貴な電位領域で異種金属M'上に析出する現象である.UPDの一般的特徴について述べ,UPDが起きる電位領域の幅はM'とMの仕事関数の差に比例することを強調した.また,酸素還元反応,水素発生反応および金属腐食反応に及ぼすUPDの影響について述べ,反応機構に及ぼすUPD金属の役割を説明した.特にNi 基合金の微量Pbによる応力腐食割れに関連して,PbのUPDがNiの腐食に及ぼす影響について詳しく紹介した.さらに,UPD層の吸着構造から表面合金構造への変化やUPD金属と電解質アニオンの共吸着構造についても触れ,反応機構に及ぼすUPD金属の役割を明らかにするには電極界面のその場解析の重要性を指摘した.

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巻号頁・発行日
vol.[1], 1000
著者
風間 眞理 加藤 浩治 板山 稔 川内 健三 藤谷 哲
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.43046, (Released:2020-01-16)
参考文献数
35

本研究の目的は,スマートフォンの使い方を大学生が自ら評価できるスマートフォン行動嗜癖自己評価尺度を開発することである.首都圏の大学に在籍し,スマートフォンを使用している大学生を対象に,研究者で作成したスマートフォン行動嗜癖自己評価尺度の調査を実施した.探索的因子分析と共分散構造分析,使用時間等との相関を求めた.その結果,有効回答数は587.男子学生243名,女子学生344名であった.探索的因子分析後,5因子20項目となり,各因子名を「自己支配性」,「生活への侵食性」,「離脱症状」,「再燃性」,「非制御な通話」とした.共分散構造分析では,GFI=0.931,AGFI=0.909,CFI=0.932,RMSEA=0.052であった.また,スマートフォン行動嗜癖自己評価尺度総得点と利用時間で有意な相関がみられた.以上より,信頼性と妥当性が示された.
著者
松尾 慎
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.3-17, 2006-03-30 (Released:2017-04-29)

インドネシア総人口の3%前後を占める華人の出自言語である中国地方語とマンダリンは,スハルト政権(1966年〜1998年)の間,教育が禁止され,公の場での使用も禁止されていた.本稿の目的は,インドネシア華人の言語シフトがどのくらい進んだのか,また,ある言語使用領域で華人が何語を選択しているのかを明らかにすることである.さらに,言語シフトと言語選択に影響を与える人口構成,教育環境等の要因に関する考察を行う.調査法として,留置き式のアンケート調査をジャカルタ,メダン,ジョグジャカルタで行い,回収した341部のデータに対し量的分析を行った.分析結果から,ジャカルタでは,中国地方語からインドネシア語への言語シフトが進行中であること,ジョグジャカルタでは言語シフトが最終段階にあること,メダンでは中国地方語が華人の共通語として広く使用されており言語シフトがあまり進行していないことが明らかになった.
著者
大橋 正司 五十嵐 佳奈
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.213-216, 2019-03-15 (Released:2019-06-01)
参考文献数
9

デジタルアーカイブを市民へと開いていく中では、研究者などの「すでにそこにいる」利用者ではない人々の眼差しを共感的に理解し、新たな利用者が使い続けたいと感じるサービスの提供や、多様な使い方を保証するのに必要な機能やインタフェースの有効性を検証するデザイン手法の成熟が鍵を握る。そこで本発表では、デジタルアーカイブの設計における課題とデザイン手法の必要性を整理し、現場の必要に応じて導入できるデジタルアーカイブのデザインプロセスの標準化について検討する。デジタルアーカイブアセスメントツール[1]を機械的に達成すべき「チェックリスト」ではなく、適切なデザインプロセスの結果、必然的に達成される「アウトプット」として、具体的に分かりやすく導き出せることを示し、デジタルアーカイブの設計者が、サービスの多様性と利活用の可能性を大きく広げられる素地をつくることを目指す。
著者
鉄道省運輸局 編
出版者
大日本教化図書
巻号頁・発行日
vol.昭和17年5月31日現在, 1942
著者
松尾 真一郎
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.159-164, 2020-01-15

2008年のSatoshi NakamotoのBitcoin論文によって導入されたブロックチェーン技術は,そのセキュリティの仕組みから,暗号通貨のみならず幅広い応用が模索さている.一方で,そのセキュリティ目標について,曖昧な議論がされており,学術的な整理も始まったばかりでである.本稿では,この視点に基づきブロックチェーン技術がもたらす安全性の範囲(セキュリティ目標),ブロックチェーンのセキュリティに関する理論的な議論の現状,現在指摘されている脅威と脆弱性,そしてセキュリティ向上に向けた研究開発の方向性について述べる.
著者
植野 貴志子
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.64-79, 2018-09-30 (Released:2018-12-26)
参考文献数
25

本研究では,日本語とアメリカ英語の初対面の教師・学生ペアの会話をデータとして,会話マネージントに関わる発話行動を分析し,そこに反映する教師と学生の関係を文化・社会的観点から考察した.同一のテーマを与えられた日英語会話において,教師と学生が(1)会話開始時,どのように第一話題提供者を決めるか,(2)自身による話題提供後,どのように相手を次の話題提供へと仕向けるか,(3)話題が尽きたとき,どのように次の話題を探索するかを分析した.その結果,英語会話では,教師,学生ともに,相手の話題選択の自由を確保しながら話題提供を促す等,対等な働きかけを介して,二者のステイタスの違いを平均化する傾向が認められた.一方,日本語会話では,教師が一方的に話題を提案しながら学生に話題提供を促す等,非対称の発話行動が見られ,そこには疑似親子的な一体感が醸されていることが指摘された.日本人に特徴的な発話行動の仕組みは,理性と感性の二領域のはたらきを含めた「自己の二領域性」のモデル(清水,2003)を導入することにより,より適切に説明されることを論じた.