著者
Yang Manuel 黒野 利佐子
出版者
神戸常盤大学・神戸常盤大学短期大学部
雑誌
神戸常盤大学紀要 (ISSN:18845487)
巻号頁・発行日
no.1, pp.61-70, 2009

アメリカのフォーレン・アフェアズ(Foreign Affairs)誌2007年一月/二月号は、世界保健を専門とするジャーナリストであるローリー・ギャレットの記事「グローバルな公衆衛生の課題」("The Challenge of Global Health")を掲載した。この記事に対して、ハーバード大学社会医療学部所属の医師/人類学者ポール・ファーマーはコメント("Intelligent Design")を書き、それにまたギャレットは返答をした("The Song Remains the Same")。下記に訳出されているのは、フォーレン・アフェアズ誌2007年三月/四月号に掲載された、この討議であり、それを独立した形で発表すのには幾つかの重要な意義がある。第一に、フォーレン・アフェアズ誌がアメリカ政府と密着した超党派的組織「外交問題評議会」(Council of Foreign Relations)の出版物であり、「外交問題評議会」の一員であるギャレットとファーマーの討議に耳を傾けるのは、世界保健政策の動向に多大な影響を与えている政策立案者たちの議論を知る大きな手がかりになるからである。第二に、貧困国において最も大きな成果を収めている草の根医療団体の一つであるPartners in Health(PIH)の創始者の一人であり、ハイチを基点として世界の貧民保健の戦線で精力的に働き続け、社会医療の指導的な存在であるポール・ファーマーの議論は、現場にいる当事者特有の現実的で建設的な視点から展開されているだけではなく、発展途上国における保健医療と資金や国家も含む組織性に関する示唆に満ちている(ピューリッツァー賞作家トレイシー・キダーの手による、アメリカでベストセラーにもなったファーマーの伝記は『国境を超えた医師』として邦訳されているので、ファーマーの仕事に興味がある方には一読を勧める)。第三に、ファーマーが下記で「ハイチモデル」と呼んでいる「家族を基盤とした」治療方法は、医師や看護師といった職業枠を超えた地域共同体と有機的に繋がっている保健労働者を母体にしているもので、「保健」を医療的な問題だけではなく、「保健」に必要不可欠な生活の糧、清浄な環境、公正な労働条件を含む社会問題として捉える実践的模範を示している。日本の保健医療システムで働く我々が、世界といかに関わるべきなのかについてファーマーは大切なヒントを与えてくれるかもしれない。ギャレットは感染症を中心とした医療問題に関わる著名なアメリカのジャーナリストで、邦訳された著作は『カミング・プレイグ―迫りくる病原体の恐怖』と『崩壊の予兆―迫りくる大規模感染の恐怖』の二冊がある。ギャレットが「グローバルな公衆衛生の課題」(日本語版フォーレン・アフェアズ誌で入手可能)で展開している主旨はアフリカやハイチを含む困窮した地域に投入されている保健関係の資金は近年膨らんでいるが、それは貧民の保健を援助するどころか様々な問題を引き起こし、世界保健の危機の要因にまでなっている。その理由は資金の使用法が「垂直的に」限定されているからである(ギャレットは「ストーブの煙突」という比喩を用いている)。例えば、エイズに指定されている資金は他の疾患に割り当てることが出来ないため、バランスの取れた保健対策が出来ない現状を生んでいる。そして、これを改善するには地域からの頭脳流出を止め、援助の対象を貧民の保健全般に変えねばならないというものである。これに対してファーマーは、エイズ資金がこれだけ集結しているのは過去の資金不足の時期に比べれば世界保健の趨勢が健全な方向に向かっている印であり、ギャレットの指摘する問題は誤った管理を解消すれば改善されると主張する。その根拠として彼はハイチで特に大きな成果を実現したPHPの経験を引き合いに出し、ハイチに関する限り健康指標の低下はクーデターのような政治状況の悪化によるものだと反論するのだ。「保健」を人権全般の改善と切っても切れない本質的問題として捉えることをファーマーは特に強調し、エイズ資金の拡大に見られる「素晴らしい情勢」を全世界の保健を可能にするきっかけとして活用すべきだと提唱している。ギャレットはファーマーの功績に尊敬を示しつつも、記事で打ち出した自分の立場を保持する。つまり、保健資金が建設的なプログラムを作成できることを問題にしているのではなく、数十億ドルにも及ぶ資金を「夥しい数の世界保健プログラムにおける混沌、競争、頭脳流出、そして腐敗の現状」が無駄にしている現実を問題にしているのだと。|The following is a Japanese translation of an exchange between the American physician and anthropologist Paul Farmer and journalist Laurie Garrett over Garrett's "The Challenge of Global Health", an article that appeared in the January/February issues of Foreign Affair. In it Farmer points out that although many of the criticisms Garrett lays at the feet of recent resurgence in what she describes "stovepipe" funds - funds earmarked for specific disease, particularly AIDS - in failing to promote general healthcare in the world's poorest countries are justified, his own experience with Partners in Health( of which he is a co-founder) in practicing social medicine at the grassroots in Haiti, Rwanda, and other places demonstrate the possibility of utilizing these very "stovepipe", vertical funds for "horizontal", more comprehensive healthcare. In order to actualize such a universal healthcare, which views health as an inalienable human right, he offers a successfully field-tested alternative model of effective social medicine, in which trained healthcare workers distribute medication and work with doctors and nurses to integrate treatment with fulfillment of everyday social needs, such as subsistence and clean environment. Garrett's reply, while acknowledging Farmer as one of the "heroes" in the current struggle for global healthcare, notes that she never questioned the constructive use of funds butthe recent resurgence of funds in the billions of dollars "ought to buy better" services.

1 0 0 0 OA 芝居番附集

出版者
巻号頁・発行日
vol.[36],
著者
小野 辰雄
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.874, pp.84-87, 1997-01-20

造船工から身をおこし,年商450億円の仮設機材メーカーを育てた。自ら経験した転落死の恐怖が事業の原点。学問不要論に象徴される職人軽視に,ストレートな怒りをぶつける。職人による職人のための大学創設が長年の夢。30年来の志を説いて賛同者を増やし,地位向上運動の先頭に立つ。
著者
永田 久雄
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文報告集 = Transactions of AIJ. Journal of architecture, planning and environmental engineering (ISSN:09108017)
巻号頁・発行日
vol.431, pp.39-46, 1992-01-30
参考文献数
25
被引用文献数
1

In order to obtain fundamental data to set up safety countermeasures against stair accidents, fatal falls on stairs during a 40 years period from 1950 to 1989 were analyzed from mortality statistics. Raw coding data of 1278 deaths originating from death certificates over a 2 years period from 1979 to 1980 in Japan were also analyzed. From obtained results in this study, most victims received injuries on their heads. Ageing was considered to be one of the major factors causing fatal falls, and especially for males drinking habits also were influencing factors to cause fatal falls. Exponential relations between fatality rates and ages could be found in female trends.

1 0 0 0 OA 川筋定浚

巻号頁・発行日
vol.[1], 1000
出版者
日経BP社
雑誌
日経アーキテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.768, pp.54-57, 2004-04-19

「バリアフリー用の手すりで、これ以上、子どもを死なせないためにバリアフリー手すりの安全性について早急な検討を要望します」。 現在、4歳の子どもを育てる神奈川県在住の主婦、齋藤珠見さん(43)は、自らのホームページでこう呼びかけ続けている。
著者
早川 治子
出版者
文教大学
雑誌
文学部紀要 (ISSN:09145729)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.25-38, 2006-10-01

戦時下のラジオドラマの台本を電子化資料 とし、内容分析をするために「戦争キーワード」 という語彙群を設定した。それらの相互関係を分析することにより、強化しあいながらプロパガンダ効果を及ぼすやわらかい「戦争キーワード」の有り様を明らかにする。

1 0 0 0 OA 逍遥漫録

著者
小原, ・山
出版者
巻号頁・発行日
1811
著者
神山 智美
出版者
富山大学経済学部
雑誌
富大経済論集 (ISSN:02863642)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.57-73, 2015-07

本件は,亡Aが富山市内の側溝に転落して死亡した事故について,亡Aの相続人である原告ら(妻X1,子X2,X3)が,同側溝の水路部分を管理する被告市に対し,水路の設置又は管理に瑕疵があり,あるいは水路の安全を確保すべき義務に違反したとして,選択的に,国家賠償法2条1項又は同法1条1項に基づき,また,上記水路に隣接する土地を占有し,上記側溝の一方の側壁を構成する同土地の土盛部分を設置又は保存する被告コンビニエンスストアに対し,主位的に民法717条1項に基づき,予備的に同法709条に基づき,原告X1,Ⅹ2及びX3につき損害金及びこれに対する不法行為の日である平成24年3月31日から支払済みまで民法予定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払いを求めた事案である。
著者
渋谷 晃太郎 小野寺 智也
出版者
岩手県立大学総合政策学会
雑誌
総合政策 = Journal of policy studies (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.29-38, 2016-11

岩手県内の市町村環境担当部局にアンケート調査を実施し、県内に侵入した特定外来生物の分布状況、駆除及び広報の実施状況を把握した。ウシガエル、オオクチバス、ブルーギル、アレチウリ、オオキンケイギク、オオハンゴンソウの6種について分布を確認した。また7種については駆除の実績があり、6種について市民への広報が行われていたことが明らかとなった。