著者
古市 朝美 白木 善尚
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2013-MUS-99, no.59, pp.1-6, 2013-05-04

今日,楽曲製作に用いられる音源の多くは,楽器音の波形をサンプリングしたPCM音源が使われている.一方,偏微分方程式を用いて楽器の音響特性を表現し,その偏微分方程式の解に基づく物理モデル音源も実用化されている.物理モデル音源は音高,音色,音程などの操作が容易であり,音の立ちあがりや連続した音の生成等,PCM音源と比べて自然な楽器音作りが可能である.本報告では,代表的な撥弦楽器であるギター音の生成法,特にグリッサンド音の物理モデル音源の生成法を提案する.更に生成した音源の聴取実験を通して,提案した方法の妥当性の検証を行う.
著者
中村 好則
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = The journal of Clinical Research Center for Child Development and Educational Practices (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.79-88, 2016-03-31

近年,知識基盤社会や少子高齢化,高度情報化,国際化の進展など,変化の激しい時代を迎え,日本も多くの課題を抱えている。そのような変化の激しい時代に主体的に生きる子供たちを育てる教育の実現が喫緊の課題とされている。そうしたなか,平成26年12月に中央教育審議会が「子供の発達や学習者の意欲・能力等に応じた柔軟かつ効果的な教育システムの構築について(答申)」を公表した。答申では「そうした教育の実現に資するよう,学校制度を子供の発達や学習者の意欲・能力等に応じた柔軟かつ効果的なものとすることで,制度の選択肢を広げること(p.1)」を提言している。具体的には,小中一貫教育の制度化である。さらにその答申では,小中一貫教育の取組は全国的に広がり,今後さらなる増加が見込まれること(p.7)が述べられている。しかし,小中一貫教育を推進するに当たり,算数数学の指導ではどうあればいいのかは具体的には述べられていない。算数数学は,学習内容の系統性が強い教科であるとともに,小学校算数から中学校数学への変化が大きく「中1ギャップ」を起こしやすい教科とも言われ(川上2010),小中一貫教育においては最も検討が必要な教科と考えられる。小中一貫教育等についての実態調査(文部科学省2015)では,小中連携教育を「小・中学校が互いに情報交換や交流を行うことを通じて,小学校教育から中学校教育への円滑な接続を目指す様々な教育」,小中一貫教育を「小中連携教育のうち,小・中学校が子供像を共有し,9年間を通じた教育課程を編成し,系統的な教育を目指す教育」と定義している。つまり,小中一貫教育は,小中連携教育に含まれると考えられる。そこで,本論では,小中連携教育という大きな枠組みの中で,算数数学の指導はどうあればよいかを検討することとする。特に,小中連携における学習系統を捉えた算数数学指導とその留意点について考察することを目的とする。そのために,まず,全国学力・状況調査の結果から学習系統を捉えた指導について考える際に考慮すべき点を考察する第2章)。次に,先行研究をもとに学習系統を捉えた指導とはどのような指導であるかを明らかにする(第3章)。さらに,前節までの考察結果と教科書や学習指導要領の記述内容から,学習系統を捉えた指導において概念や意味などが拡張される場面等を具体的に検討する(第4章)。最後に,小中連携における学習系統を捉えた指導とその留意点をまとめ,今後の課題を述べる(第5章)。
著者
大槻知史 齋藤 直樹 中井 満 下平 博 嵯峨山 茂樹
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.245-255, 2002-02-15

本稿では,隠れマルコフモデル(HMM)を用いて,人間が鍵盤入力した演奏情報(標準MIDIファイル)の発音時刻の間隔から,意図された音価列を復元推定する手法を提案し,実験によりその効果を実証する.人間が音楽演奏する際の物理的音長は,音価に対応する正規の長さから意識的・無意識的に揺らぐため,楽譜入力や自動採譜などでは,楽譜として意図された各音符の音価を正しく推定するのは容易ではない.そこで,連続音声認識の定式化にならって,音楽的な演奏を学習・認識する原理をHMMの手法を用いてモデル化する.さらに,同様の原理により小節線・拍子推定,テンポ変化推定も可能となることを示す.
著者
黒野 伸子 大友 達也 岡崎女子短期大学 安田女子大学
雑誌
岡崎女子大学・岡崎女子短期大学 研究紀要 (ISSN:21882770)
巻号頁・発行日
no.52, pp.57-66, 2019-03-15

筆者らは、これまでに王朝文学に現れる「病」の扱いについて、「他者からの要求を回避する口実、自己の希望を叶えるための理由づけ、体験の特殊さを強調する効果など、対象者の願いをかなえる便利ツール」のような扱いがなされていることを明らかにした。しかし、筆者らは古代の人々が持つ疾病観、医療観を論じるには、多方面からのアプローチも重要だと感じていた。そこで本稿では、古代医療史に関する先行研究レビューを基礎として、山上憶良と大伴家持の作品にみる表現とメトニミー両面からのアプローチを試みた。その結果、少なくとも、奈良時代の知識人が持つ疾病観、医療観には重層性があることが示唆された。
著者
春名 苗
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要
巻号頁・発行日
vol.23, pp.19-30, 2015-03

本論文では、旧約聖書や新約聖書で障害者がどのようにとらえられているのかを明らかにしている。旧約聖書には、障害者への配慮を書かれた箇所はあるが、他方で神の戒めに従わない時には障害を持つという罰があると書かれ、障害者への差別とみられる表現も書かれている。そのため、文献研究によって、罪の結果の罰としての障害は、個人に語られたものというより、他宗教が混在する中で一神教を貫くために手段として語られた側面があったこと、障害者への差別的表現も時代背景を踏まえた解釈によって直接の差別的表現ではないことを明らかにした。その上で、イエスの登場によって、だれもが罪びとであり、障害が罰であるという側面が完全に否定されたことを論じている。
著者
吉川 茂
雑誌
阪南論集.人文自然科学編
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.35-40, 2017-10
著者
松田 真希子 タン ・ティ・キム・テュエン ゴ ・ミン・トゥイ 金村 久美 中平 勝子 三上 喜貴 Makiko MATSUDA Thi Kim Tuyen THAN Minh Thuy NGO Kumi KANAMURA Katsuko NAKAHIRA Yoshiki MIKAMI
雑誌
世界の日本語教育. 日本語教育論集 = Japanese language education around the globe ; Japanese language education around the globe (ISSN:09172920)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.21-33, 2008-06-30

本研究は、ベトナム人日本語学習者のための日本語の漢語とベトナム語の漢越語の対照分析である。現代ベトナム語は漢字を使用しないが、語彙には漢語からの借用語(漢越語)が多いため、韓国語・日本語と同様に漢字文化圏に属する。そのため、ベトナム語母語話者は、日本語を学ぶ際に学習ストラテジーとして漢越語知識を活性化させていることが明らかになっている(Tuyen 2003)。しかし、実際に漢越語知識がどの程度日本語学習に効果があるかはまだ明らかにされていない。そこで本研究では、ベトナム人学習者が日本語を学ぶ際、漢越語の知識がどの程度日本語学習に役立つかを明らかにすることを目的に、日本語能力試験出題語彙全約8,000語に占める二字漢字語約4,000語における漢越語との意味の一致状況を調査した。その結果、 (1)二字漢字語においては全体の5割が一致語や類似語である。 (2)1級と2級の二字漢字語については日越漢語の一致や類似が6割近くに達し、更に語彙全体に占める二字漢字語の比率も1級56%、2級46%と高くなっている。 (3)4級語彙については日越の漢字語彙の一致度は多くとも2割以下である。3級も同様に一致度は低い。 (4)和製漢語と漢越語の一致率は6割以上であり、学術専門用語であれば更に一致する可能性がある。ということを明らかにした。これにより、漢越語知識は日本語の習得に役に立つが、特に効果が発揮されるのは中級以降であること、また学術専門用語の学習には漢越語知識が役に立つ可能性が高いことが明らかになった。ただし日本語学習における漢越語の効果については個々の意味の対応の調査だけでなく、書字や音との関係性も踏まえて漢字語彙の認知処理の状況を調べる必要がある。今後の課題である。
著者
米地 文夫
出版者
岩手県立大学総合政策学会
雑誌
総合政策 = Journal of policy studies (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.177-196, 2016-03

宮沢賢治の短編「シグナルとシグナレス」は、従来、幻想的童話とみられていたが、実は地域の話題を寓話化した大人向けの物語であった。その話題の一つは、私鉄の岩手軽便鉄道(ほぼ現JR 釜石線)を国有化させ、国鉄(現JR)東北本線に繋ぎたいという運動をモデルにし、愛しているが離れて立つシグナレス(岩手軽便鉄道)と本線シグナルとの恋を描いた。第二の寓意は有島武郎と河野信子との恋愛で、有島武郎は新渡戸稲造の姪の信子を愛するが、鉄道の国有化に大きな影響力を持つ父有島武は、産婆の娘信子を身分違いとして結婚に反対し、新渡戸家の郷里花巻の人々の憤激を買ったことを物語化している。第三の寓意はピタゴラス派の諧音の示す天空の妙なる調和である。地上の葛藤や矛盾の多い世界と異なり、天上には美しい和の調べがあり、それが天球の音楽として、恋人たちを感動させるのである。すなわち、天:天球の音楽が示す美しい調和、地:地域社会の軽便鉄道国有化運動、人:有島武郎と河野信子の実らぬ恋、の三つの寓意がこめられた作品である。
著者
勝浦 令子
雑誌
史論
巻号頁・発行日
vol.34, pp.25-42, 1981
著者
田中 高史
出版者
国立極地研究所
巻号頁・発行日
2020-12-01
著者
田中 里奈 若林 たけ子 東中須 恵子
出版者
奈良学園大学
雑誌
奈良学園大学紀要 = Bulletin of Naragakuen University (ISSN:2188918X)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.113-121, 2016-09-30

本研究では、入院中の患者が衣服を選択する理由について明らかにし、その衣服が闘病意欲に与える影響について考察することを目的とした。 対象は衣服の自由選択を前提に病衣貸与体制を導入しているY総合病院に入院中で、研究協力に承諾が得られた患者62名。方法は患者のベッドサイドで質問紙に基づいた聞き取り調査を行った。対象となった入院患者62名中、妊婦を除く男性24名、女性30名の計54名を分析対象とした。分析は Microsoft Excel を用いた統計処理とt検定、χ2検定、及び記述的に分析した。 対象の特性は、病衣選択者74.1%で、t検定5%水準で女性の方が病衣の着用が有意に高い集団であった。これは入院対象者が家族と同居している割合が88.9%と高く、そのうち85.2%が家族に洗濯を依頼していたことが影響しているものと考える。私服を選択する理由は、病衣に対する抵抗感と、デザインやカラー、サイズが選べて動きやすい、着心地が良いために落ち着くなどの私服としての得点に二分されていた。病衣に対して不満を持っている割合は50%であったが、性別では女性のほうが男性よりも20%以上高かった。これは、一般的に合理性を重視するといわれている男性特有の性格的なことが影響しているのではないかと考える。病衣に対する不満理由は恥辱感、個の尊厳の喪失感、不合理性、不快感の4つの因子とその他で構成されていた。これは不満理由として女性から多く挙げられていたことと、清潔、耐久性、利益などの病衣としての特徴を備えていることではないかと考える。衣服と闘病意欲と性別との関係では、男性よりも女性のほうが闘病意欲は高く、病衣と私服と闘病意欲の関係では病衣のほうがχ2検定1%水準で有意に低かった。これは女性のほうが、退院後にも家庭での役割を持つためと考えられる。また、私服は社会性を維持していくために影響しているものと考えられた。 以上から入院中でも、個の尊厳を維持できる衣生活を心がける事が重要である。
著者
吉田 智美 河村 美穂
出版者
埼玉大学教育学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教育学部 = Journal of Saitama University. Faculty of Education (ISSN:18815146)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.123-134, 2009

The aim of this study is to explain the historical change of indoor shoes and their role in school life.Three points were used in researching about indoor shoes, because there have been no previous studies.(1) Explaining how the use of indoor shoes was influenced by the architecture of the school buildings from the Meiji era to the present, paying special attention to the school entrance.(2) Researching the use of indoor shoes using pictures of Saitama womens’ teacher’s school.(3) Taking a questionnaire for people above 50 about indoor shoes in their schooldays and explaining the role of the shoes.Japanese students have been removing their shoes at the school entrance for 130 years, from when the educational system started to the present.The custom of removing shoes at the school entrance, putting them into boxes, and changing into indoor shoes first appeared during the Taisho era. This custom originates from everyday life in Japan and was used as a teaching tool.
著者
金森 祥子 野島 良 岩井 淳 川口 嘉奈子 佐藤 広英 諏訪 博彦 太幡 直也
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.2, 2017-10-16

サービス提供者が, ユーザのパーソナルデータを収集・利用する場合, 事前にサービス提供者とユーザの間で合意形成が必要とされている. その方法の一つとして, 現在, プライバシーポリシーを提示する方法が広く普及している. しかし, 一般にプライバシーポリシーは長くて難解であるため, 読んでいないユーザが多いとされている.本研究では, 利用するサービスによって,ユーザがプライバシーポリシーを読む度合いが異なることを調査したので報告する.さらに, プライバシーポリシーを読んだ際に, ユーザにとって,具体的にどのキーワードが理解が難しかいのかについても調査したため合わせて報告する.