著者
樋口 富彦 PONNAPPA B.C KRAAYENHOF R DEVENISH R.J NAGLEY Phill 寺田 弘 PONNAPPA Biddanda C
出版者
徳島大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

本プロジェクトでは,主として下記の2つの方向の研究成果を得た.1.異方性阻害剤のリピド平面二重膜における電気生理学的解析研究代表者らが発見した異方性阻害剤のリピド平面二重膜における電気生理学的解析を行い,以下の重要な事実を明らかにした.1)TPP^+よりも阻害活性の高い(4〜5倍)triphenyltetrazolium(TPT^+)ではほとんど膜電流を発生しなかった。また、TPP^+により発生した膜電流は、TTC^+の添加により逆に減少した.これらの結果は,異方性阻害剤によるリピド平面二重膜における膜電流産生と異方性阻害剤のエネルギー変換阻害能との間には相関性がないことを示している.2)TPT^+の膜透過性がTPP^+に比べて低いということは、current-clamp法を用いた膜電位変化によっても明らかにされた。TPP^+存在下にTPT^+を加えることによる膜電位の変化からGoldman-Hodgkin-Katz式に基づき計算したそれらの透過比(P_<TTC>/P_<TPP>)は、約0.3であった。これらのことは、異方性阻害剤の阻害活性がその膜透過性とは相関しないことを示している。3)TPP^+による膜透過電流の産生には、数秒のlag timeが存在した。TPP^+による阻害反応にlag timeが存在しないので、TPP^+の膜透過はその阻害作用とは無関係と考えられる。これらの発見は,エネルギー変換の分子コンデンサー仮説を強く支持している.2.ラットH^+-ATP合成酵素の活性制御システムの解明高等動物におけるミトコンドリアH^+-ATP合成酵素活性が,Ca^<2+>-依存性の細胞内情報伝達システムによって,″低レベル″から″高レベル″に可逆的にスイッチされ細胞内のエネルギー要求量に応じて制御されていることがラットで明らかにされているが,その分子機作は解明されていなかった.研究代表者らは,1991年ラット肝ミトコンドリアの内膜にATP感受性K^+-チャネルが存在することを発見した[Nature352,244-247(1991)].このチャネルは,ATP濃度が低下すると開き,逆に増大するとCa^<2+>の存在に依存して閉じる.研究代表者らは,このチャネルの特異的阻害剤であるグリベンクラミド等により,ミトコンドリアにおけるATP合成反応が阻害されATPの分解活性が増大することを見出した.これらの結果は,ミトコンドリアに存在するATP感受性K^+-チャネルがCa^<2+>-ポンプと共同して,H^+-ATP合成酵素の活性の制御に関わっていることを強く示唆している.他方,研究代表者らは,ラット肝ミトコンドリアからH^+-ATP合成酵素を精製する方法を開発し,各サブユニットを単離しそれらの一次構造を解明してきた[Biochemistry30,6854(1991);J.Biol.Chem.(1992)267,22658など].驚いたことに,それらのサブユニットの一つであるsubunit eの34〜65残基のアミノ酸配列が,トロポニンTのCa^<2+>依存性トロポミオシン結合部位の共通配列と高いホモロジーがあることが当研究室で明らかになった.従ってこのタンパク質がCa^<2+>情報伝達システムに依存したH^+-ATP合成酵素活性の制御に関わる本体である可能性が示唆されていた.本プロジェクトでは,トロポニンTのCa^<2+>依存性トロポミオシン結合部位の共通配列と高いホモロジーがあるsubunit eの34〜65残基のペプチドを合成し,このペプチドに対する抗体をウサギを用いて作製し,以下の新事実を明らかにした.a)今回作製した抗subunit e抗体を,H^+-ATP合成酵素から単離精製したsubunit e,H^+-ATP合成酵素精製品,SMP(亜ミトコンドリア粒子)をそれぞれ電気泳動して,ウエスタンブロットしたものと反応させたところ,分子量8,000付近に単一のバンドを示した.従ってこの抗体が,subunit eを特異的に認識する抗体であること,また,subunit eがH^+-ATP合成酵素を構成するサブユニットであることが明かとなった.b)今回作製した抗subunit e抗体を用いて,H^+-ATP合成酵素精製標品及びSMPのATPase活性に対する抗体の添加効果を調べたところ,H^+-ATP合成酵素精製標品に大しては何の変化も見られなかったが,驚いたことに,ミトコンドリア内膜が存在するSMPに対して,抗subunit e抗体を添加したとき活性が上昇することが明かとなった.従って,subunit eがH^+-ATP合成酵素活性の制御に関わる本体である可能性が強く示唆されてきた.
著者
大橋 苑子 荒井 利恵 政次 朝子 太田 深雪 堀口 裕治
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.164-167, 2009 (Released:2010-08-22)
参考文献数
12

62歳,男性。5年来の掌蹠の汗疱状皮膚炎が強いそう痒を伴って全身に拡大した。初診時,躯幹に紅斑と丘疹,掻破によるびらんと小さな潰瘍がみられ,四肢の中枢側には苔癬化した局面と痒疹様の皮疹がみられた。大きな水疱はなかった。掌蹠には汗疱様の小水疱や血疱,および小型の水疱やびらん面が分布していた。組織学的には陳旧性の水疱蓋下面にghost basal cell(核の抜けた好酸性に染色される基底細胞)が配列し,再生表皮には表皮内のように見えるが複雑な経路で真皮に連絡する新しい水疱がみられた。真皮上層には好酸球の強い浸潤がみられた。直接蛍光抗体法により表皮基底膜部にはIgGとC3の線状の沈着がみられた。またELISA法では患者血清中に抗BP180抗体が確認された(インデックス値320)。異汗性類天疱瘡が全身に拡大したものと診断し,プレドニゾロン(初期量30mg/日),ミノサイクリン(150mg/日)およびニコチン酸アミド(900mg/日)の併用療法を開始したところ,皮疹は数日の経過で消退した。本症例は異汗性類天疱瘡が何らかの機序で増悪し,全身に拡大したものと考えた。
著者
中浜 信子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.467-472, 1961-12-25 (Released:2010-03-09)
参考文献数
10
著者
加藤 勲 岩 亨 鈴木 靖司 大野 真 坂中 清彦 辻 晶 伊藤 隆之
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.39, no.Supplement3, pp.59-64, 2007-08-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
14

当院内で意識消失に対して汎用型自動体外式除細動器(automated external defibrillator;AED)が使用された27例を検討し問題点を検証した.症例は,心停止を認めない意識消失が3例.心静止/無脈性電気活動が14例.心室頻拍(VT)/心室細動(VF)が10例であった.AEDがショックを放出したのはVF6例中5例.多形性VT1例中1例.単形性VT3例中0例で,単形性VTは全例心拍数250回/分未満であったためショックは放出されなかった(PHILIPS社の単形性VTでの作動条件は心拍数250/分以上).当院で使用経験のあるAEDモード付き除細動器は,通常のAEDよりも遅い単形性VTでも作動する(PHILIPS社の作動条件は心拍数150/分以上)ので,除細動器のAEDモードを使用した方が救命率は上がる可能性がある.またAEDの作動条件を満たさないVTでも手動モードであれば医師によりショックの放出は可能である.院外と院内の心停止では状況は若干異なるため,AEDの院内設置は理想的な機種選択が考慮されるべきと考える.
著者
鬼塚 尚子
雑誌
帝京社会学
巻号頁・発行日
no.15, 2002-03

1 0 0 0 OA 1 歴史

著者
野田 真永 村田 和俊 中野 隆史
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.367-369, 2015-06-15 (Released:2015-06-27)
参考文献数
6
被引用文献数
1

X線の発見から本年で120年経つが,その間,物理工学面の技術革新により放射線治療は格段の進歩を遂げた。粒子線治療は,速中性子線治療から始まり,現在では陽子線・重粒子線治療が世界で計57施設にて実施されるようになった。この粒子線治療の発展には1940年代以降の粒子線加速器開発技術の進歩が大きく関与している。
著者
「核燃料挙動」研究専門委員会
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.303-323, 1977-05-30 (Released:2009-03-31)
参考文献数
87

Irradiation behavior of oxide fuels for LWR and FBR was reviewed with emphasis on its chemical process and state. The following are described: progress and problems in research of irradiated oxide fuels for LWR and FBR; densification of fuel pellet; interaction between Zircaloy and fission products; corrosion of stainless steel; and effects of O/M ratio on properties of irradiated oxide fuel.
著者
荻野 弘之
出版者
理想社
雑誌
理想 (ISSN:03873250)
巻号頁・発行日
no.695, pp.187-194, 2015
著者
木村 清志
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.1551-1558, 1981-12-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
25

The present report deals with the feeding habit of Parapristipoma trilineatum, Pomadasyidae, based on 1208 individuals taken from coastal areas of Kumano-nada (Kii peninsula, central Japan) from March 1978 to September 1980. Empty stomachs occurred more frequently in the samples collected by hook and line than in the samples collected by set net. Feeding activity was intense during the period from May to September, and declined after October. The main food of the immatures and adults, larger than 100mm in fork length, was clupeoid fishes, but crustaceans were fed on abundantly in March, June, November and December. Clupeoid fishes appeared as prey amimal in almost all seasons. Copepods chiefly appeared in spring and autumn, while amphipods in summer. The main food of juveniles, smaller than 50mm, were copepodid larvae and bivalve larvae. Those of young, 50-100mm, were Iucalanus spp., copepodid larvae, mysis larvae, zoea larvae and clupeoid larve. Maximum value of amax(=PLmax|L;L, length of predator; PLmax, mzximum size of prey) was 58% in the fish 50-100mm in fork length. The value of amax declined with growth for the fish larger than 100mm.
著者
梅野 和也 河野 慶三
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.43-50, 2015-09-01 (Released:2015-09-15)
参考文献数
13

近年,運動イメージの研究は多数報告されている.しかし,運動イメージ能力と運動学習効果との関係を検討している研究は少ない.本研究では質問紙を用いた運動イメージの評価法であるMovement Imagery Questionnaire-Revised Japanese Version (JMIQ-R) を用いて運動イメージ能力を測定し,ダーツ課題による運動学習効果との関係を検討した.被験者は専門学校生30名であり,ダーツの経験なし,または一度のみ経験したことのある者を対象とした.ダーツ課題は,pre試行,自主練習,練習直後のpost試行①,翌日のpost試行②の順序で実施した.post試行とpre試行の差を変化量とし,全被験者のJMIQ-Rの得点の中央値で上位群と下位群にわけ,変化量の差を比較した.両群間には有意な差がみられ (p<0.05),上位群の方が運動学習効果が高かった.このことから,JMIQ-Rを用いて運動イメージ能力を評価することによって,運動学習効果を予測できる可能性があると考えた.
著者
坂井 登志高 永井 将太 藤川 諒也 土山 裕之
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>運動学習では運動イメージが学習効果に有効と報告されている。一方,運動イメージの鮮明性によって学習効果に個人差があると報告されている。また,運動イメージを補助するために運動観察が利用されているが,観察条件の差異によって運動イメージを想起する難易度が異なり,学習効果に影響をもたらす可能性が考えられる。本研究の目的では運動イメージ能力を評価し,その能力が学習効果に及ぼす影響を検討することと,運動観察の条件の差異が学習効果に及ぼす影響を検証することである。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>成人健常者45名(年齢21.0±0.7歳)を対象とした。運動イメージ能力としてメンタルローテーション(MR)課題を評価した。MR課題では左右の手背,手掌が各々時計回りに0°,90°,180°,270°回転してある写真を16枚使用した。ランダムに提示後,正確に素早く左右どちらかを回答してもらい,各対象者の平均反応時間を算出した。</p><p></p><p>学習課題として不安定板(DIJOCボード,酒井医療)上での立位課題とした。対象者に不安定板の両端が床につかないように提示した。学習効果判定のため,不安定板に内蔵された加速度計により安定指数を算出した。課題試行前(試行前),課題試行10分後(10分後),課題試行1日後(1日後)に評価した。各期間の学習変化率として10分後・1日後を試行前の値で除した値を算出した(10分後変化率・1日後変化率)。</p><p></p><p>課題は身体練習と運動イメージを行う群(運動イメージ群),身体練習と腹側の運動観察を行う群(腹側観察群),身体練習と背側の運動観察を行う群(背側観察群)の3群に分け,各群15名ずつとした。運動イメージは身体練習後に筋感覚的イメージを提示した。運動観察は身体練習時の腹側・背側から撮影し,身体練習後に運動観察を行った。身体練習を20秒間,運動イメージおよび運動観察は2分間行い,各5回施行した。</p><p></p><p>統計学的解析はMR課題平均反応時間と各期間の学習変化率の関係をみるため,Spearmanの順位相関分析を用いた。各群の学習効果を検討するため,二元配置分散分析・多重比較(Tukey法)を用いた。全ての検定における有意水準は5%未満とした。解析はSPSS(IBM社)を使用した。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>運動イメージ能力の指標であるMR課題平均反応時間と各期間の学習変化率の関係では,平均反応時間と1日後変化率にて正の相関を認め(r=0.38,p<0.05),運動イメージ能力が高いほど,有意に学習効果は高くなった。運動観察条件の差異が学習効果に及ぼす影響の検討では,3群ともに施行前と10分後・1日後のみに有意に立位バランスが改善したが(p<0.01),各群間の交互作用はなく,運動観察の差異による学習効果の影響はなかった。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>成人健常者では運動イメージ能力が高いほど学習効果が高くなると推察できる。一方,運動観察条件の差異では学習効果に影響を与えることはなかった。今後は高齢者や脳卒中患者などの運動イメージ能力が低下している患者で検証していく。</p>