著者
山口 二郎 杉田 敦 遠藤 乾 空井 護 吉田 徹 渡辺 将人 木宮 正史 川島 真 遠藤 誠治 高安 健将 村上 信一郎 宮本 太郎 小川 有美 中北 浩爾 水野 和夫
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

20世紀後半に民主主義国で確立された二大政党制、二極的政党システムにおける政権交代というモデルは、1980年代の新保守主義的政治、1990年代後半の中道左派の復活までは、順調に作動し、民意の吸収と政策転換という効果をもたらした。しかし、2000年代に入って、経済のグローバル化の一層の進展と、雇用の不安定化や格差の拡大は政治的安定の基盤をなした経済的安定を侵食した。その結果、政権交代に対する国民の期待が低下し、ポピュリズムが現れた。こうした危機を打開するためには、従来の左右を超えた政党再編が必要とされている。
著者
山口 二郎 宮本 太郎 遠藤 乾 空井 護 高橋 伸彰 村上 信一郎 齋藤 純一 杉田 敦 中北 浩爾 小川 有美 小原 隆治 遠藤 誠治 野田 昌吾 宇野 重規 田村 哲樹 宇野 重規 田村 哲樹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2007

本研究はグローバル化した金融資本主義の矛盾が明らかになる一方、民主政治による政策決定が円滑に進まないという困難な状況において、民主政治をどう再生させるかという問いに取り組んだ。基礎的な再分配政策に加えて、雇用、生活支援などのサービスを市民社会の自発性を引き出す形で展開することで、新たな福祉国家モデルを追求するというのが21世紀的な危機に対する処方箋となることを明らかにした。
著者
杉田 典正 海老原 淳 細矢 剛 神保 宇嗣 中江 雅典 遊川 知久
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2038, (Released:2021-08-31)
参考文献数
62

環境省レッドリストに掲載された多くの分類群は、個体数が少ない、生息地がアクセス困難であるなどの理由から保全管理計画の策定に必要な情報が不足している。博物館は過去に採集されたレッドリスト掲載の分類群の標本を所蔵している。ラベル情報に加え形態・遺伝情報を有する標本は、保全に関する様々な情報を供給可能である。しかし、標本の所在情報は各博物館の標本目録や台帳に散在しており標本の利用性は低かった。これらの情報は公開データベース等で共有化されつつあるが、情報の電子化・共有化は不完全であり、依然として利用性が低い状況にある。本研究は、環境省レッドリスト 2019ならびに海洋生物レッドリスト 2017に掲載の絶滅危惧種(絶滅と野生絶滅、絶滅危惧 I類のみ対象)の標本所在情報を集約するために、国立科学博物館の標本データベースおよびサイエンスミュージアムネット( S-Net)の集計と聞き取り等による標本所在調査をおこなった。国内の博物館は、約 95.9%の絶滅危惧種につき標本を 1点以上保有し、少なくとも 58,415点の標本を所蔵していた。海外の博物館も含めると約 97.0%の絶滅危惧種の標本所在が確認された。約 26.5%の絶滅危惧種が個体群内の遺伝的多様性の推定に適する 20個体以上の標本数を有した。本研究により絶滅危惧種標本へのアクセスが改善された。これらの標本の活用により、実体の不明な分類群の検証、生物の分布予測、集団構造、生物地理、遺伝的多様性の変遷といった保全のための研究の進展が期待される。一方でデータベースの標本情報には偏りが認められ、例えば脊椎動物はほとんどの高次分類群で 50%以上の絶滅危惧種の所蔵があったが、無脊椎動物では全く所蔵のない高次分類群があった。採集年代と採集地にも偏りがあり、 1960 -1990年代に標本数が多く、生息地間で標本数が異なる傾向があった。データベースの生物名表記の揺れや登録の遅延は、検索性を低下させていた。利用者が標本情報を使用する際は情報の精査が必要である。保全への標本利用を促進するために、データベースの網羅性と正確性を向上させる必要がある。博物館は、絶滅危惧種に関する標本の体系的な収集、最新の分類体系に基づいた高品質データの共有化、標本と標本情報の管理上の問題の継続的な解決により、絶滅危惧種の保全に標本が活用される仕組みを整えることが求められる。
著者
永吉 雅人 杉田 収 橋本 明浩 小林 恵子 平澤 則子 飯吉 令枝 曽田 耕一
出版者
室内環境学会
雑誌
室内環境
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.97-103, 2013-12-01

上越市立の全小学校(新潟県)児童を対象に、化学物質過敏症(multiple chemical sensitivity:MCS)様症状に関するアンケート調査が2005年7月に実施されている。今回、その調査から5年経過した2010年7月、実態の時間的推移を把握するため、対象を市立の全小中学校の児童・生徒に拡げてアンケートの再調査を実施した。また今回新たに就寝時刻についても合わせて調査した。アンケートの有効回答数は14,024名(有効回答率84.0%)であった。/調査の結果、14,024名の回答児童・生徒中MCS様症状を示す児童・生徒は1,734名(12.4%)であった。今回の調査で主に、次の3つのことが明らかとなった。/1.小学1年生から中学3年生へ学年が進むに伴い、MCS様症状を示す児童・生徒の割合が増加傾向にあった。2.小学生全体のMCS様症状を示す児童の割合は、今回調査した小学生の方が5年前に比べて大きくなっていた。3.小学3年生から中学3年生までのMCS様症状を示す児童・生徒はMCS様症状を示していない児童・生徒より就寝時刻が遅かったことが明らかになった。

46 0 0 0 OA 幼童手引草

著者
杉田玄端 訳
出版者
致高館
巻号頁・発行日
vol.初編 巻之上, 1873
著者
柏原 翔一 木崎 通 杉田 直彦
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2019年度精密工学会春季大会
巻号頁・発行日
pp.213-214, 2019-03-01 (Released:2019-09-04)

近年の工作機械は加工精度と加工能率を更に高めるために,従来よりも高剛性・高減衰性・低熱膨張性である工作機械構造体を開発することが求められている.そこで,本研究ではミネラルキャストを適用した高剛性・高減衰性・低熱膨張性である構造体を開発することを目的とする.ミネラルキャストの外殻を鉄で覆った構造体を提案し,解析や実験により静的変形・減衰性が従来の鋳鉄の構造体よりも高く熱膨張が小さくなったことを確認した.
著者
杉田 昭栄
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.143-149, 2007 (Released:2008-08-31)
参考文献数
24
被引用文献数
4 1

鳥類は,視覚が発達した動物である.彼らは,すみやかに遠くに焦点を合わせることも,近くのものに焦点を合わせることも自由に行なえる.また,色の弁別能力も高い.このように視覚に優れる仕掛けは眼球のつくりにある.その優れた視力は,水晶体および角膜の形を変え,高度にレンズ機能を調節することにより行なう.このために,哺乳類とは異なるレンズ系を調節する毛様体の特殊な発達や哺乳類には無い網膜櫛もみられる.また,網膜の視細胞には光波長を精度高く選別する油球を備えているばかりでなく,各波長に反応する視物質の種類がヒトのそれより多い.したがって,ヒトが見ることのできない紫外線域の光波長を感受することもできる.さらには,この視細胞から情報を受けて脳に送る神経節細胞もヒトの数倍の数を有する鳥類が多い.このような仕組が鳥類の高次の視覚を形成している.
著者
杉田 精司 巽 瑛理 長谷川 直 鈴木 雄大 上吉原 弘明 本田 理恵 亀田 真吾 諸田 智克 本田 親寿 神山 徹 山田 学 早川 雅彦 横田 康弘 坂谷 尚哉 鈴木 秀彦 小川 和律 澤田 弘崇
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

リュウグウの近接観測の本番が目前に迫っている。これに備えて、我々は3つの重要な準備を進めている。1) 低アルベド小惑星の可視スペクトルの見直し。2)リュウグウの地上観測スペクトルの解析とメインベル小惑星との比較。3)可視分光カメラONC-Tのスペクトル校正観測。本講演では、これらについて簡潔に紹介する。 まず、メインベルトの低アルベド小惑星のスペクトル解析である。先駆的な小惑星のスペクトルのサーベイ観測であるECAS(Tedesco et al.,1982)の後、地上望遠鏡による多バンド分光のSDSS(Ivezic et al. 2001)、地上望遠鏡のよる連続スペクトルのデータベースであるSMASS2の整備(Bus and Binzel, 2002)、天文衛星WISE/NEOWISEによる多バンド分光のデータベース(Masiero et al. 2011)など多数の強力な小惑星のスペクトルのデータベースが整備されてきた。特に、SDSS やWISE/NEOWISEによって膨大な数がある小さな小惑星のスペクトルアルベドの分布が定量的に計測されたおかげで、RyuguやBennuが由来するメインベルト内帯の低アルベド族の分布については最近に大きな理解の進展があった。まず、以前にNysa族と言われていた族は、E型スペクトルのNysa族の中にF型(or Cb~B型)のPolana族とEulalia族が隠れていることが明らかになった。さらにPolana族とEulalia族は形成時期が古くて広範囲に破片を分布させており、ν6共鳴帯にも多くの1kmクラスの破片を供給していることが分かった。その一方で、より若いErigone, Klio, Clarrisaなどのぞくはずっと若いため、ν6共鳴帯への大きな破片の供給は限定的であることが分かってきた。この事実に基づいて、Bottke et al. (2015)はRyuguもBennuもPolana族由来であると推論している。 このようにSDSS やWISE/NEOWISEのデータは極めて強力であるが、0.7μmのバンドを持たないため、広義のC型小惑星のサブタイプの分類には適さない。その点、ECASは、小惑星スペクトル観測に特化しているだけあって0.7μmのバンドの捕捉は適切になされている。しかし、ECASではあまり多くのC型小惑星が観測されなかったという欠点がある。そのため、現時点ではSMASS2のデータが広義C型のスペクトル解析に適している。そこで、我々はSMASS2の中の広義のC型の主成分解析を行った。紙面の関係で詳細は割愛するが、その結果はCg, C, Cb, Bなど0.7μm吸収を持たないサブタイプからなる大クラスターと、Ch, Cghなど0.7μm吸収を持つサブタイプからなる大クラスターに2分され、両者の間にPC空間上の大きな分離が見られること、またこの分離域はPC空間上で一直線をなすことが分かった。この2大クラスターに分離する事実は、Vernazza et al. (2017)などが主張するBCGタイプがCgh, Chと本質的に異なる起源を持っていて水質変成すら受けていない極めて始源的な物質からなるとの仮説と調和的であり、大変興味深い。 これに引き続き、世界中の大望遠鏡が蓄積してきた23本のRyuguの可視スペクトルをコンパイルして、SMASS2と同じ土俵で主成分解析に掛けた。その結果は、Ryuguの全てのスペクトルがBCGクラスターに中に位置しており、その分布は2大クラスターの分離線に平行であった。これはRyuguが極めて始源的な物質であることの現れかもしれず、BCGクラスター仮説の検証に役立つ可能性を示唆する。 しかし、現実は単純ではない。Murchison隕石の加熱実験で得られたスペクトルもPC空間ではRyuguのスペクトルの分布と極めて近い直線的分布を示すのである。これは、Ryuguのスペクトル多様性がMurchison隕石様の物質の加熱脱水で説明できるとの指摘(Sugita et al. 2013)とも調和的である。この2つの結果は、Ryuguの化学進化履歴について真逆の解釈を与えるものであり、はやぶさ2の試料採取地の選択について大きな影響を与えることとなる。 この2つの解釈のどちらが正しいのか、あるいは別の解釈が正しいのかの見極めは、0.7μm吸収帯の発見とその産状記載に大きく依存する。もし、Murchison隕石様の含水鉱物に富む物質がRyuguの初期物質であって加熱脱水で吸収帯が消えただけの場合には、Ryugu全球が表面下(e.g., 天体衝突などで掘削された露頭)まで含んで完全に吸収帯を失ってしまうことは考えにくい。したがって、0.7μm吸収帯が全く観測されない場合には、VernazzaらのBCG仮説やFやB型の水質変成によってCh, Cghが生まれたと考えるBarucciらのグループの仮説(e.g., Fornasier et al. 2014)が有力となるかも知れない。しかし、0.7μm吸収が見つかって、熱変成を受けやすい地域ではその吸収が弱いことが判明すれば、スペクトル多様性は加熱脱水過程でできたとの考えが有力となろう。 最後に、はやぶさ2ONCチームは打ち上げ後も月、地球、火星、木星、土星、恒星など様々な天体の観測を通じて上記の観測目標を達成できるための校正観測を実施している。それらの解析からは、0.7μm帯および全般的なスペクトル形状の捕捉に十分な精度を達成できることを示唆する結果を得ており(Suzuki et al., 2018)、本観測での大きな成果を期待できる状況である。引用文献:Bottke et al. (2015) Icarus, 247 (2015) 191.Bus and Binzel (2002) Icarus, 158, 146.Fornasier et al. (2014) 233, 163.Ivezic et al. (2001) Astron. J.、 122, 2749.Masiero et al. (2011) Astrophys. J. 741, 68.Sugita et al. (2013) LPSC, XXXXIII, #2591.Suzuki et al. (2018) Icarus, 300, 341Tedesco et al. (1982) Astrophys. J. 87, 1585.Vernazza et al. (2017) Astron. J., 153,72
著者
安村 誠司 中山 健夫 佐藤 理 杉田 稔 中山 千尋
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

原発事故以後、福島県民が抱く放射線健康不安には、報道や情報が関連していると考え、県民2000人に対し、健康不安の程度、信用する情報源、利用するメディアについて質問紙調査を行った。健康不安の程度を目的変数、信用する情報源と利用するメディアを説明変数とした重回帰分析の結果、NGO等を信用する群、ネット・サイトを利用する群の不安が有意に高く、政府省庁、自治体を信用する群、地元民放テレビを利用する群は、不安が有意に低かった。情報源やメディアの違いによる、不安の程度の差が明らかになった。また、ヘルスリテラシー得点上位群の不安が有意に低く、放射線不安を減らす上での、ヘルスリテラシーの有効性が示唆された。
著者
杉田 篤子 杉田 和成
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.37-44, 2015 (Released:2015-03-10)
参考文献数
40
被引用文献数
4

ビタミンB3として知られているナイアシンは,生体内で補酵素として働く,nicotinamide adenine dinucleotide(NAD)とnicotinamide adenine dinucleotide phosphate(NADP)の合成に必須である.ナイアシンは皮膚ランゲルハンス細胞のG protein-coupled receptor(GPR)109Aと結合し,ナイアシン摂取過多時は,頭頸部に血管拡張によるフラッシングを誘発する.他方,ナイアシンの欠乏は,アルコール依存症,薬剤,栄養不良などに起因し,ペラグラに代表される光線過敏症を起こす.したがって,ナイアシンの作用を明らかにすることは,光線過敏症のメカニズムの解明や新規治療ターゲットの探索の上で非常に重要である.最近,ペラグラ患者およびナイアシン欠乏ペラグラマウスモデルでプロスタグランディンE合成酵素(prostaglandin E synthase: PTGES)の発現が亢進していることが明らかになった.さらに,ペラグラによる光線過敏症は,prostaglandin E2-EP4(PGE2-EP4)受容体シグナルが関与し,ケラチノサイトからのreactive oxygen species(ROS)を介して発症することが示唆された.本稿では,ナイアシンの免疫における役割および,ナイアシン欠乏による光線過敏症のメカニズムについて述べる.
著者
稲葉 洋平 大久保 忠利 杉田 和俊 内山 茂久 緒方 裕光 欅田 尚樹
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.31-38, 2014 (Released:2014-01-29)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

Objective: To determine constituents of fillers and mainstream smoke from Neo Cedar. Methods: Neo Cedar is a second-class over-the-counter (OTC) drug and similar to cigarettes in a number of ways. In particular, the design and usage are very similar to those of cigarettes. For the fillers of the drug, the levels of nicotine, tobacco-specific nitrosamines (TSNA), and heavy metals, and mutagenicity were determined using the methods for cigarette products. For the mainstream smoke, the levels of tar, nicotine, carbon monoxide (CO), TSNA, polycyclic aromatic hydrocarbons (PAH), and carbonyl compounds were also determined using the methods for cigarettes. The mainstream smoke from the drug were collected with a smoking machine using two smoking protocols (ISO and Health Canada Intense methods). Results: The nicotine and total TSNA levels in the fillers of the drug averaged 2.86 mg/g and 185 ng/g, respectively. The nine species of heavy metals were also detected in the fillers of the drug. The levels of nicotine, tar, CO, TSNA, PAH, and carbonyl compounds of mainstream smoke from the drug were higher when determined using the HCI regime than when using the ISO regime. The mutagenicity of the mainstream smoke determined using the HCI regime was also higher than that determined using the ISO regime. Conclusion: In this study, all constituents of Neo Cedar were determined by methods for cigarette products. The drug had a ventilation hole on its filter. Thus, its constituents are different from those determined by the smoking protocols. Neo Cedar users should be careful of higher exposure to the hazardous gases owing to smoking patterns.
著者
鈴木 恵輔 加藤 晶人 光本 (貝崎) 明日香 沼澤 聡 杉田 栄樹 中村 元保 香月 姿乃 井上 元 柿 佑樹 中島 靖浩 前田 敦雄 森川 健太郎 土肥 謙二
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.35-38, 2021-03-31 (Released:2021-03-31)
参考文献数
10

ジフェンヒドラミンは抗ヒスタミン薬であり過量内服により多彩な中毒症状を呈するが, 重症例では最悪死に至ることがある。近年インターネットなどで取り上げられ, 自殺目的での中毒症例の増加が懸念されている。今回, 市販の抗ヒスタミン薬の大量服薬により心肺停止に至った症例を経験したので報告する。17歳女性。公園内で倒れているところを通行人が発見し救急要請。ジフェンヒドラミン12,000mg内服したと推定され, 救急隊現着時には心肺停止状態であった。当院救命救急センター来院時も心肺停止状態であり蘇生することはできず永眠となった。後日ジフェンヒドラミンの血中濃度を測定したところ, 来院時の血中濃度は26.73µg/mLと過去に報告されている心肺停止症例と比較しても高値であった。OTC医薬品として簡単に手に入る薬剤での死亡症例のため治療側も販売側も十分に注意していく必要があると考えられる。
著者
永吉 雅人 杉田 収 橋本 明浩 小林 恵子 平澤 則子 飯吉 令枝 曽田 耕一 室岡 耕次 坂本 ちか子
出版者
一般社団法人 室内環境学会
雑誌
室内環境 (ISSN:18820395)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.97-103, 2013 (Released:2013-11-25)
参考文献数
7

上越市立の全小学校(新潟県)児童を対象に,化学物質過敏症(multiple chemical sensitivity: MCS)様症状に関するアンケート調査が2005年7月に実施されている。今回,その調査から5年経過した2010年7月,実態の時間的推移を把握するため,対象を市立の全小中学校の児童・生徒に拡げてアンケートの再調査を実施した。また今回新たに就寝時刻についても合わせて調査した。アンケートの有効回答数は14,024名分(有効回答率84.0%)であった。調査の結果,14,024名の回答児童・生徒中MCS様症状を示す児童・生徒は1,734名(12.4%)であった。今回の調査で主に,次の3つのことが明らかとなった。1. 小学1年生から中学3年生へ学年が進むに伴い,MCS様症状を示す児童・生徒の割合が増加傾向にあった。2. 小学生全体のMCS様症状を示す児童の割合は,今回調査した小学生の方が5年前に比べて大きくなっていた。3. 小学3年生から中学3年生までのMCS様症状を示す児童・生徒はMCS様症状を示していない児童・生徒より就寝時刻が遅かったことが明らかとなった。
著者
藤本 修平 小向 佳奈子 杉田 翔 小林 資英
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.669-674, 2018 (Released:2018-08-21)
参考文献数
26
被引用文献数
3

〔目的〕リハビリ分野のRCT論文において,研究結果を印象付けるために本来目的とした結果以外を強調するSPINについて検証することとした.〔対象と方法〕対象文献の検索は MEDLINEなどを用いた.本文中に主要アウトカムが明記されておらず,かつ主要アウトカムの結果が統計的に有意差を認めるものは除外した.SPINは,抄録と本文の内容を比較し,主要アウトカムが有意でないものの介入の利益を強調するように記載しているか評価した.〔結果〕SPINであった抄録は32/42件(76.2%)で,本文の結果では20/42件(47.6%)であった.〔結語〕リハビリ分野のRCT論文の内容は,抄録の内容や本文の結果,考察からのみから判断することの危険性が示唆された.
著者
河村 葉子 辻 郁子 杉田 たき子 山田 隆
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.170-177_1, 1997-06-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
11
被引用文献数
2 4

ステンレス製器具及び食器からの鉄, クロム, ニッケル, 鉛及びカドミウムの溶出について検討を行った. 溶出した鉄, クロム, ニッケルにおいては, 溶出溶媒では水<4%酢酸<0.5%クエン酸, 溶出条件では室温24時間<60℃30分間<95℃30分間<沸騰2時間の順に, 溶出量が多くなった. 市販及び使用中の器具及び食器について, 4%酢酸で60℃又は95℃30分間の溶出試験を行ったところ, 新品では鉄50~1,110ppb, クロム5~28ppbの溶出が認められたが, 使用中の製品では検出頻度, 検出値ともに低く, 繰り返しの使用により溶出量が低下するものと考えられた. また, 鉛は使用中の製品1検体から検出されたが, 25ppbと微量であった. 一方, カドミウム及びニッケルはいずれの製品からも検出されなかった.
著者
杉田 水脈
出版者
新潮社
雑誌
新潮45
巻号頁・発行日
vol.35, no.11, pp.58-61, 2016-11
著者
西岡 千文 杉田 茂樹 山中 節子
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.109, pp.2007, 2018-08-31 (Released:2018-09-07)

本稿では2018年2月にカリフォルニア大学サンディエゴ校,同ロサンゼルス校,カリフォルニア工科大学,南カリフォルニア大学の大学図書館で実施したインタビュー調査に基づき,米国の大学図書館でのオープンアクセスならびに研究データ管理の支援について報告する。
著者
犬飼 岳史 合井 久美子 根本 篤 高橋 和也 赤羽 弘資 廣瀬 衣子 杉田 完爾 中澤 眞平
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.548-553, 2004-10-31 (Released:2011-03-09)
参考文献数
16

帯状疱疹から無菌性髄膜炎に進展した同種骨髄移植後の骨髄異形成症候群児と, 帯状疱疹の発症から隔離までに3日間を要した化学療法中のWilms腫瘍児から, 既感染やワクチン接種例2名を含む免疫抑制状態にある4名に水痘の院内感染を経験した.院内感染予防として40mg/kg/dayのアシクロビル (ACV) 予防内服を, 免疫抑制状態にない未罹患の6名に接触7日目から7日間行ったが, 1名が水痘を発症した.一方, 免疫抑制状態にある21名 (うち未罹患7名) と免疫抑制状態にない未罹患9名ののべ30名に接触直後から21日間のACV予防内服を行ったところ, 水痘の発症は認められず, ACVによる副作用も認められなかったことから, ACV長期投与は安全で有効な院内感染予防法であることが示唆される.帯状疱疹に対する曝露では, 患者隔離のみならず, 免疫抑制状態にあるワクチン接種・既感染症例に対してもACV内服による積極的な予防対策を行う必要がある.