著者
島 雅人 奥田 邦晴 岩田 秀治 菊池 昌代 木村 淳一 長谷川 珠華 太田 啓介 森 優花 西野 伸一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ed1467, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 我々は、2010年より大阪府下に在住する重度知的障がい者及び知的と身体機能の重複障がい者(以下重複障がい者)を対象として、理学療法士及び作業療法士が心身機能や活動の評価を行い、対象者個々のニーズに応じてスポーツ活動に結び付く心身機能の向上を目的としたトレーニングを計画し実践している。今回は、これまでの取り組みを報告するとともに、理学療法士が知的障がい者の社会参加支援に関与する意義について述べる。【方法】 本活動は、大阪府下在住の重度知的障がい者及び重複障がい者(児)を対象に実施している。参加者の募集は大阪府下の特別支援学校教員やスペシャルオリンピックス日本(以下SON)大阪の協力を得て行っている。チームの構成は理学療法士4名、作業療法士3名、支援学校教員1名、理学療法士および作業療法士を目指す学生ボランティアで構成し、シフトを組んで実施している。また、医療的ケアの必要な参加者が来られた時など、必要に応じて看護師の協力を得ている。対象者の評価に関しては、Special Olympics Motor Activities Training Program(以下MATP) Coaches Guide2005を参考とし、社会適応能力、原始反射、バランス反応、姿勢保持能力、環境適応能力、日常生活活動能力、認識能力、コミュニケーション能力、行動の問題に関連する内容を評価している。また、スポーツに関連する運動能力の評価として、移動能力、投げる、打つ、蹴る の4項目を実施している。これらの評価結果にもとづき、一人ひとりのニーズに応じたトレーニング内容を計画し実施している。トレーニングは、参加者1名に対して1名の学生を配置するとともに、理学療法士および作業療法士がトレーニングの内容を指示し監督のもと行っている。トレーニング内容は、評価結果をもとに参加者の能力に応じて、野球、バスケットボール、サッカー、ボウリング等のスポーツに関連した内容を、環境や使用する道具によって難易度を調整し実施している。トレーニングの実施期間と頻度は、2010年度は8月から11月に隔週で合計8回実施し、2011年度は9月から12月に合計10回を計画し実施している。1回の実施時間は90分とし、参加者の状態に合わせて適宜休憩を取っている。実施場所は、SON大阪の協力を得て大阪府下の特別支援学校にて実施している。【倫理的配慮、説明と同意】 本活動の目的や方法に関して、対象者及び保護者へ説明を行い同意を得ている。また、本活動で収集した情報に関しては、個人情報保護法に基づき厳密に管理し、本活動及び学術活動以外には使用しないことに同意を得ている。評価及びトレーニングに際してはヘルシンキ宣言を遵守し、参加者及びボランティアの安全面へも配慮を行った。【結果】 本活動への参加者は、2010年度12名(男性10名女性2名)、平均年齢19±5歳(13-32歳)、重度知的障がい者3名、重複障がい者9名であった。2011年度は10名(男性9名、女性1名)、平均年齢17.5±4.2歳(11-27歳)重度知的障がい者3名、重複障がい者7名で実施している。本活動は2010年度にSON夏季ナショナルゲームの一部として、大阪市長居障害者スポーツセンターにおいて日本で初めてのデモンストレーションを行った。【考察】 知的障がい者に対するスポーツ活動支援は各種スポーツ団体によって行われているが、対象のほとんどが軽度知的障がい者で運動能力の高い方である。スペシャルオリンピックスでは、知的障がいの程度に関わらず参加する機会を設けており、通常のスポーツ活動プログラムに参加できない重度知的障がい者や重複障がい者に対する取り組みとしてMATPを設定しているが、日本ではほとんど行われていない。本活動の実施には、対象者個々の心身機能や活動能力の評価を行い、能力に応じた運動プログラムを実施する必要があるため、その分野の知識や技術を持った理学療法士の関与が必要不可欠であると考える。このような機会を設定することは、重度知的障がい者および重複障がい者が在宅から地域へ出向く機会が増えるとともに、家族にとっても、他者との交流や家族同士の情報交換を促すことができると考える。これらのことより、本活動は理学療法士がリーダーシップを取って実施できる社会参加支援の1つであると考える。【理学療法学研究としての意義】 先行研究より知的障がい者は知的機能のみでなく、身体機能の低下が示されている。ひとり一人の心身機能や活動に応じた運動プラグラムを提供する事に関して、理学療法士は専門的知識と技術を有しているため、本活動のような取り組みに積極的に関与することで、知的障害者に対する安全で質の高い社会参加支援につながると考える。今後は、本活動の参加者及び家族に対する効果を検証して行くことで、理学療法士の関与の必要性がより具体化されると考えている。
著者
藤井 香菜子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0914, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】小児に関わる理学療法士の職域は拡大しており,当施設も職員配置基準に理学療法士(以下,PT)が含まれていないにも関わらず,昭和58年の開設間もなくからPTが携わっている施設である。当施設は,平成24年4月の児童福祉法の改正以前は肢体不自由児療護施設であり,主な入所者は常時医療を必要としない肢体不自由児であった。職員体制は,保育士などの直接処遇職員が23名,看護師が約2名/日,PTは1名である。嘱託医として整形外科医が1回/月来園している。旧肢体不自由児療護施設は,全国に6施設のみであり,その内PTの常勤配属は当施設のみである。診療報酬を算定していないこともあり,PTの業務内容は多岐にわたる。今回,当施設入所者の状況と,PTの業務内容を提示し,福祉型障害児入所施設におけるPTの役割や課題を明らかにすることを目的とした。【方法】平成28年9月における当施設入所者の内訳を,1)年代,2)就園・就学の状況,3)主たる疾患・障害,4)日常生活動作(Barthel Index)において分類した。PTの業務は,業務管理・評価シート(以下,Do-CAPシート)を用い,平成28年4月から9月までの主要業務とそのウエイトを出した。【結果】入所児童の年代は,幼児が9名,小学生が17名,中学生が11名,高校生が11名,18歳以上の方が2名であった。就園・就学の状況として,幼稚園に2名,地域の小学校特別支援学級に9名,地域の中学校特別支援学級に3名,一般高等学校に2名,県立養護学校に25名であった。主たる疾患・障害の状況として,50人定員中,脳室周囲白質軟化症を含めた脳性麻痺が12名,知的障害が7名,自閉症スペクトラム障害が5名,硬膜下血腫後遺症が4名,頭部外傷後遺症1名,SBS症候群1名などであった。日常生活動作としては,項目[歩行]では,15点が28名,10点が6名,5点が7名,0点が9名であった。PT業務として,①理学療法評価や機能訓練,②補装具関連業務,③入所児童の通院付添,④カンファレンスを含む現場職員との連携業務,⑤施設内デイケア,⑥食事や摂食関連,⑦嘱託医健診の対応,⑧学校教員との連携,⑨身体測定,⑩新入所児の対応が,順に25%,20%,20%,15%,7%,7%,3%,1%,1%,1%であった。【結論】入所児童の年代も疾患も多岐にわたり,就園・就学している数も多い。生活施設のPTの役割は,理学療法評価や機能訓練と殆ど同じ割合で,他の業務の割合が大きかった。これは,①や②の入所児童と個別に関わる業務だけではなく,生活の中で機能維持や向上を目指すために,他職種との連携に時間を費やしていたことを意味している。また,③のPTが通院に付添う割合が20%と多く,施設全体として医療知識の向上が課題だと示唆された。
著者
穴吹 泰典
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0915, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】理学療法士(以下PT)は主に肢体不自由児の療育に関わる事が多いが,発達遅滞などの知的障害を持つ子どもたちも対象となることが少なくない。今回,PTにどのような支援ができるのかを検討するため,知的障害児の療育状況について調査したので報告する。【方法】対象は香川県立中部養護学校幼稚部・小学部・中学部・高等部に在籍する児童・生徒の保護者である。調査は療育状況についてのアンケート調査票を作成し,質問紙法にて実施した。調査内容は①基本的情報②障害について③就学前の療育状況④現在の療育状況⑤求めている支援⑥PTや療育に対する希望,とした。回答は選択方式とし複数回答も可とした。⑥については自由記載も設定した。【結果】回収率は52.5%(189名)であった。身体的な問題では姿勢の問題49件,歩行の問題42件,体力の問題33件,道具使用の問題77件,全身運動の問題72件であった。就学前より療育を受けていたのは174名,受けた施設は医療機関が最も多く163件,次いで民間療育施設65件であり,頻度は週1回と月1回が最も多く共に49名であった。PTは70名に関わっていたが,身体的な問題があると答えた児童の中で理学療法士に療育を受けていた者は47.3%であった。ダウン症・てんかんなど原因疾患が明らかな子供では56.0%が0~1歳代で療育を開始していた。広汎性発達障害など原因が明らかでない発達遅滞児は2歳から開始が29.4%,3歳から開始が42.0%と遅れる傾向にあった。療育についての負担では負担無し44件,時間の負担99件,人的負担33件,金銭的負担26名,期待した効果が得られなかった18件であった。就学後に療育を受けているのは92名,受けている施設は民間療育施設が76件で最も多く,PTに療育を受けているのは9名にであった。保護者が望む支援は発達に対する支援86件,障害に対する支援68件,専門スタッフの充実67件,行政サービスの充実79件,教育プログラムの充実25件,家族の負担軽減60件であった。またPTによる支援を118名が望んでいた。療育に対する希望では「就学しても療育が受けられるようにしてほしい」「頻度・回数を多くしてほしかった」などの意見がみられた。【結論】知的障害児においても身体的問題を抱えている児童が多く存在することが分かった。就学前にはPTを始めとする専門職による療育が行われているが,問題がある児童全てが受けられたわけではなく,開始時期・頻度についても不足しており,保護者も機会の増加や継続的に行えることを望んでいた。就学後は専門職による支援が減少しているが,身体的な問題は残存していた。香川県ではPTによる支援はほとんどが医療機関で行われており,保護者や民間療育施設職員へのアドバイスなど,何らかの対策を行い,療育環境を整える必要性がある。
著者
大地 純平
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.126, 2015

ニホンジカの捕獲法は様々な方法が考案されており、それぞれに一長一短がある。本研究では、①誰でも容易に設置・運用が可能な事、②資材の確保が容易な事、③効率的な捕獲が可能な事の三点に注目し、「市販資材を用いた簡易囲い罠によるニホンジカ誘引捕獲」について研究を行った。囲い罠資材はホームセンターや建築資材店等で購入可能な単管パイプ、落下防止ネットなどを用いて、10万円以下の資金で構築できるように設計した。また、オプションとして150m程度離れた場所から監視、ゲート閉鎖を行うことのできる遠隔監視装置を用意した。<br> 囲い罠を用いた誘引・捕獲試験は山梨県南アルプス市高尾の牧場採草地を利用して実施した。ニホンジカ誘引試験では、毎日~週二回(火曜日、金曜日)囲い罠内外にアルファルファを給餌し、採食の様子を自動撮影カメラで記録した。捕獲については、誘引個体数、馴致の様子を確認して適宜実施した。試験結果から、市販資材を用いた簡易囲い罠であっても、ニホンジカ捕獲に耐える十分な性能を確保できること、週二回程度の給餌であっても十分な誘引効果がある事を確認することが出来た。
著者
井戸田 博史
出版者
日本法政学会
雑誌
日本法政学会法政論叢 (ISSN:03865266)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.33-43, 1989-05-20

Ensuring personal privacy is one of the most controversial problems in Japan today. Infringement of an individual's rights to privacy have often occured in relation to the system of public access to family registers;that is, the public perusal, or obtaining of certified copies or abstracts of family registers by another person. That being the case, restrictions to access are growing more necessary. Incidentally, the principle of public access to family registers was enacted in the Family Registration of 1898-Meiji 31. This paper aims at clarifing, with the help of the documentary records, the legislative process as it relates to public access to family registers before the Family Registration Law in 1898. This bibliographical report is a preliminary step in the study preparing a thesis on the privacy problems through the family register system.
著者
小野 百合 三沢 和史 工藤 守 岡崎 裕子 天日 和子 中川 昌一 近藤 光
出版者
The Japanese Society on Thrombosis and Hemostasis
雑誌
血液と脈管 (ISSN:03869717)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.343-346, 1987

The prevention of diabetic microangiopathy, especially retinopathy, is the last goal of treatment of diabetic patients. Retinopathy is found to progress following rapid control of blood glucose or surgical treatment. To investigate the deterioration of retinopathy, the changes of platelet aggregation induced by ADP, collagen, PAF and epinephrine, of the arachidonate cascade (TXB<sub>2</sub> and 6-keto PGF<sub>1α</sub>), and of blood viscosity were measured during and after surgical treatment or after rapid control of blood glucose. Blood was obtained from 22 diabetics with rapid control of blood glucose and from 11 diabetics undergoing surgical treatment.<br>Platelet aggregation induced by all aggregators was increased after rapid control of blood glucose and after surgical treatment, but decreased during operation. When platelet aggregation before surgical treatment was exaggerated, retinopathy tended to be worsened after surgical treatment. Concerning the arachidonate cascade, both TXB<sub>2</sub> and 6-keto PGF<sub>1α</sub> were increased and the TX/6-keto PGF<sub>1α</sub> ratio was decreased during operation.
著者
稲場 道明
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.160-173, 2013-04-25 (Released:2016-12-22)
参考文献数
55
著者
都甲 由紀子 朝比奈 はるか 王 立松 王 東 張 穎君
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

目的:中国雲南省山岳地域において少数民族の彝族が纏う民族衣装の装飾方法に関する伝統知識や技術、その伝承について調査する。<br>方法:2011~2013年にわたり雲南省各地で3回のフィールド調査を行った。 街中で手刺繍をしたり手刺繍の民族衣装を身につけていたりした人々や、手刺繍商品販売会社の社長、山間部の村人らに手作りの衣装に関してインタビューを行い、現状を把握し記録をとった。村人の踊りや衣装の様子、そして演者が現地で刺繍職人から技術指導を受けている様子などの動画や画像を撮影し、技術につき分析した。<br>結果:中国雲南省の少数民族の中で最も人口が多いのが彝族である。雲南省の中だけでも彝族はいくつものグループに分かれ、それぞれが形、色などにおいて特徴をもった民族衣装を身に着けていた。彝族の民族衣装には多くの刺繍が施されているのが特徴であり、彝族の宗教観がはっきりした色使いと輪郭をもった刺繍、すなわち題材のモチーフ化という形に表れており、自然写実を好む漢民族との大きな違いであることが今回の調査の結果確認された。また刺繍の技術は母から娘に伝承されてきたが、現在は市場において手刺繍が施されたパーツが販売され、ミシン刺繍が施された民族衣装もあり、技術の伝承も行われなくなりつつある。しかし道端や公園で刺繍をする少数民族女性の姿はよく見かけ、刺繍などの針仕事が今なお日常の中に存在していることが確認された。
著者
半渓散史 著
出版者
五味鐶
巻号頁・発行日
1918
著者
辰野 隆 鈴木 健太郎 蒲池 史郎 町田 麗子 田村 文誉
出版者
一般社団法人 日本障害者歯科学会
雑誌
日本障害者歯科学会雑誌 (ISSN:09131663)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.54-60, 2016 (Released:2016-06-30)
参考文献数
11

公益社団法人東京都武蔵野市歯科医師会で行っている摂食支援事業に関して,施設利用者の食事に関する問題点と今後の歯科医師会による支援の指針を明らかにする目的で本研究を行った.平成23年4月から平成26年3月までの期間に巡回歯科相談による摂食支援を行った障害者施設:15歳以上の生活介護事業所3カ所(以下,生活介護事業所),未就学児を対象とした児童発達支援施設2カ所(以下,児童発達支援施設)に協力を求め,そこに勤務する職員31名(男性10名,女性21名)を対象とし,摂食支援に関するアンケートを実施した.その結果,利用者の食事に関する心配な症状で最も多かったのは「かまない」17名(54.8%)であり,次いで「時間がかかる」と「むせる」がそれぞれ16名(51.6%),「誤嚥」と「偏食」がそれぞれ14名(45.2%)であった.これらの症状について生活介護事業所と児童発達支援施設とを比較したところ,「むせる」と「誤嚥」については,生活介護事業所のほうが児童発達支援施設に比べて多く存在し,両者に有意な差が認められた(むせる:p<0.01,誤嚥:p<0.01).歯科医師会に期待することについては,「職員向け勉強会」が20名(64.5%)と最も多く,「摂食支援事業の継続」が18名(58.1%)であった.本調査の結果より,障害者施設の利用者には食べることの問題を抱えている者が多く,施設職員は専門的な支援を必要としていることが示された.摂食支援事業に対する地域の障害者施設からのニーズに応えるため,歯科医師会はさらなる事業を展開していく必要性があると考えられた.
著者
佐藤 史子 吉尾 雅春
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.528-528, 2003

【目的】身長は様々な指標において基礎となる変量である。一般に身長の計測には身長計が用いられる。しかし、拘縮を伴う者や直立不能な者の身長の計測方法についての報告は、海外では様々な研究が行われているものの日本では少ない。今回、拘縮を伴う成人の身長の計測方法について検討したので報告する。【方法】対象は、20歳代の健常男性40名、女性40名の計80名、内訳は立位身長が150cm代、160cm代の女性が各20名、立位身長が160cm代、170cm代の男性が各20名であった。計測項目は、立位身長、水平身長、指極、頭頂大転子間距離、頭頂外果間距離、大腿長、下腿長、上腕長、前腕長、外果足底間距離とし、メジャーを用いて行った。身長の日内変動による誤差を最小限にするため、計測時間は10:00から14:00とし、被験者一人につき所用時間は10分程度とした。これらの計測値を用いて、立位身長との関係について回帰式を導き出した。統計学的検討は、有意水準5%として、一標本t検定、2変量の関係について回帰分析、ピアソンの相関係数を使用した。 【結果および考察】指極と立位身長との間に有意な相関を認め、上肢に拘縮のない場合には有効な方法であると確認できた。各計測値から求めた回帰式と立位身長との関係では、Haboubi N.Y.による計算式でも使用されている上肢長(上腕長+前腕長)と膝足底間距離(下腿長+外果足底間距離)で他計測部位に比べ、相関係数0.736、0.777とやや高い関係を示した。Haboubi N.Y.による計算式を利用して算出した身長と計測した身長との間には有意な誤差が認められたため、修正を加え、上肢長を用いた式1)身長=1.56×上肢長+sex、(sex:男性83.07、女性78.52)、膝足底間距離を用いた式2)身長=2.08×膝足底間距離+sex、(sex:男性75.18、女性71.70)を導き出した。各計算値と立位身長との相関は、式1)0.8342、式2)0.8364であった。特に上肢長から求める式1)は、上肢長が関与する指極と立位身長との間に有意な相関が認められたこと、立位・臥位の両者で身長に対する上肢長の割合に変化がなかったこと、日本人の100年前と現在との体格差の比較において下肢の割合は1.2%増加しているのに対し、上肢は0.2%であることから、年齢を問わず比較的正確に身長の算出が可能であり、拘縮を伴う場合の身長計測の一手段として有効であることが示唆された。
著者
石川 裕子 米澤 大輔 葭原 明弘 齊藤 一誠 早崎 治明
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.338-343, 2016 (Released:2016-06-10)
参考文献数
13

本研究の目的は,知的障害者施設における利用者に対して,在所期間から知的障害者の口腔および支援の状態について検討することである.歯科診療室が併設されている「N知的障害者総合援護施設」利用者77名を対象とし,利用者の口腔内状態および口腔管理の支援状態を調査した. その結果,利用者の平均年齢は47.0 ± 12.7歳(無回答2名),在所期間は0~9年が24名,10~19年が41名,20年以上が12名であった.在所期間10~19年では,0 ~9年より障害支援区分の重い人が多く統計的に有意な差があった.口腔内状態は,未処置歯所有率が在所期間20年以上で8.3%と低く有意な差がみられた.施設には歯科の設備があるにも関わらず,在所期間0~9年および10~19年で未処置歯所有率が高く,今後,フッ化物塗布などのう蝕予防の実施が必要と考えられた.食事形態,食事時間については在所期間別で有意な差はみられなかった.嚥下および歯磨き支援については,支援必要者と不要者では在所期間別で有意な差があり,在所期間が長くなると支援の必要者の割合が多く,支援の必要性が高いと考えられた.また,現在,特に嚥下検査を行っていないことから,今後,専門医による検査を在所期間に関係なく全員に実施するとともに,食事介助の見直しが必要と考えられた.
著者
柳澤 佳恵 澤江 幸則 齊藤 まゆみ
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第67回(2016) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.335_1, 2016 (Released:2017-02-24)

在宅の知的障害者の多くは、日中活動の場として通所施設を利用している。約7割の事業所は、健康増進活動として何らかの運動やスポーツを実施していたが、その活動目的は、体力増進や健康保持が中心であった。一方で、休日の余暇の実態を見ると、テレビやビデオを見て過ごす時間が多く、事業所内で経験した活動が日常生活で生かされているとはいえない。事業所での健康増進活動が、普段の生活の中で継続していけるよう予め利用できる社会資源を活用していないこと、体力増進や健康保持が中心で、楽しみや今後の生活の広がりにまで目を向けて実施されていない可能性がある。事業所で実施する運動やスポーツは、リハビリテーションや運動量を確保することだけを目的とするのではなく、利用者が楽しみながら意欲的にかつ継続して活動できるように支援することが大切だといわれている。そこで本研究は、通所施設での健康増進活動の在り方を考察することを目的に、どのような活動、支援体制及び社会システム等が必要なのかを、実際に活動に携わっている施設職員、家族、当事者及びその関係者から、インタビュー調査を実施したので報告することにした。
著者
上杉 雅之 小枝 英輝 成瀬 進 井上 由里 南場 芳文 後藤 誠 村上 雅仁 武政 誠一 安川 達哉
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Bb1184, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 理学療法士(以下PT)は肢体不自由児のみならず知的障害を伴う障害児を治療することが多い。その為に、知的障害に対する知見を深める必要があり、さらに、PTに知的障害への合併を踏まえたアプローチが求められている。また、小児リハビリテーションにおいて様々な障害を有する対象児に対する多職種連携アプローチが求められているが、対象児の問題行動に対して共通した認識がなされているか疑問である。今回、我々は日本語版Aberrant Behavior Checklist(以下ABC-J)を用いてPTと作業療法士(以下OT)間で障害児の問題行動に対して採点が異なるか調査したので報告する。【方法】 対象児はT病院を利用し理学療法を受けている知的障害を有する障害児11名(男7名・女4名、年齢5歳6ヶ月~18歳1ヶ月、平均年齢11歳2ヶ月±4歳5ヶ月)であった。対象児の診断名は脳性麻痺4名、頭部外傷後遺症1名、精神運動発達遅滞2名、急性脳症後遺症4名であった。検査者は同病院に所属し、対象児をよく知っているPT8名・OT7名・計15名であった。PTの経験年数は2~14年目で平均3.7年目、OTの経験年数は2~24年目で平均8.3年目であった。検査者は個別にABC-Jを用いて対象児を採点した。統計学的解析は、検査者をPT群とOT群のABC-Jの「興奮性」、「無気力」、「常同行動」、「多動」、「不適切な言語」の項目の採点結果をウィルコクソンの符号順位検定を用いて比較した。危険率5%未満を有意水準とした。統計ソフトはR2.8.1を使用した。 ABC-Jの項目は「興奮性」に関する15項目、「無気力」に関する16項目、「常同行動」に関する7項目、「多動」に関する16項目、「不適切な言語」4項目に関する計58項目からなる。使用方法は、対象児をよく知る検者が、質問紙の項目に対して、問題なし(0点)、少し問題(1点)、問題(2点)、大きな問題(3点)の4段階で採点する。そして、その点をスコアーシートに記入することで5つの問題行動を調査することができる。【倫理的配慮、説明と同意】 対象児の保護者全てに対し、本研究について文書にて事前説明を行い、調査に参加することに同意を得た。本研究は神戸国際大学倫理審査会の承諾を得て実施した(承諾番号G2011-015)。【結果】 PT群とOT群を比較した結果「無気力」が有意差p=0.0091と効果量(Effect Size:ES)ES=0.8037で有意差を認め、「興奮性」がp=0.4372とES=0.2500、「常同行動」がp=0.3428とES=0.3161、「多動」がp=0.1953とES=0.4021、「不適切な言語」がp=0.3991とES=0.2845であった。【考察】 障害児は複雑な問題を抱え個々のアプローチでは限界があり、多職種などによる包括的なアプローチが求められている。そして、そのアプローチにはPTの最も近隣職種であるOTとの協働は不可欠であると考える。今回の結果からABC-Jの4つの項目において両群において効果量は低いものの同じように採点しており大きな違いは見られなかった。しかしABC-Jの項目は5つの問題行動にどれが含まれるか検査者にはわからないようにランダムに並べられているが、両群において「無気力」に関する項目に著しく異なる採点をつけており、その有意差と効果量はp=0.0091とES=0.8037であった。そして、採点の違いは、OTが平均値3.8点(±4.8)と採点しているのに対して、PTは平均値8.1点(±7.8)であり、「無気力」に関わる項目に、より多くの問題があると採点していた。確認のために、筆者らが報告した「The reliability of Japanese manuals of Aberrant Behavior Checklist in the Daycare Center for handicapped children 」の検査者がPTとOTのデータを抽出し再調査したところ、「無気力」に関する項目にOTは平均値0.3点(±0.5)と採点しているのに対して、PTは平均値3.2点(±8.9)と採点しており今回の結果と同じような傾向を示していたことが判明した。PTが「無気力」に関する項目に高い採点をつけた理由の一つに、座位などの静的な姿勢を観察することが多いOTと比べ、活動的な面を観察することが多いPTは「無気力」をより問題がある行動として捕らえようとした結果であると考えた。このことからABC―Jの検査者は対象児を良く知るものであれば検査が可能であるとしているが、検査者の職種によりバイアスがある可能性が示唆され、多職種間での対象児についての問題行動についての捕らえ方には若干の違いがあることを念頭に置く必要があることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】 PTとOTは同じ患児を担当することが多い、しかし、両者の患児に対する問題行動の検査の相違の有無についての報告は見られない。本研究は多職種連携アプローチにおける配慮すべき点を指摘する一つの報告として有意義であり、且つ新規性があり理学療法研究の意義があると言える。