著者
竹ノ上 ケイ子 佐藤 珠美 辻 恵子
出版者
日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.8-21, 2006-10-02
参考文献数
35
被引用文献数
1 1

目 的 自然流産後夫婦の関係変化とその要因を明らかにし,夫婦を対象としたケアの方向性,援助方法を考案する基礎資料とする。方 法 自然流産後3か月から2年経過し,掲示やホームページによる公募に応じた夫婦を対象とし,後方視による関係変化についての記述内容をデータとして,質的,帰納的に内容分析を行った。結 果 166名(男性14名,女性152名)が,流産後の夫婦関係の変化内容を記述し,その内容177件をデータとした。夫婦関係の変化内容として【個の成長・成熟と夫婦関係のよい循環過程】,【親密な良い関係のさらなる向上】,【関係の深化と発展】という3つのポジティブな変化と【希薄な悪い関係のさらなる悪化】,【関係の断絶と破綻】という2つのネガティブな変化が得られた。 ネガティブ変化にかかわる要因として【事実誤認と相互理解の困難】,【配偶者を負の方向で評価】,【悲哀のプロセスの共有困難】,【普段の夫婦関係が希薄】,【子どもを持つことについての感情や思考のすれ違い】,【性生活の困難】,【夫婦としての存在意味喪失】の7つが得られた。 ポジティブ変化にかかわる要因として【適切な事実認識】,【配偶者の肯定的評価】,【自己開示と自己確認】,【悲哀のプロセス共有】,【関係向上への努力】,【親としての自覚と努力】の6つが得られた。結 論 流産は衝撃的な対象(胎児)喪失体験であり,危機的状況を引き起こす重大なストレス因子であること,夫婦関係創成期,家族創成期に困難を連続して体験すること,親になる意思確認や夫婦,あるいは家族であることの確認の機会であること,正しい事実認識や悲哀のプロセス共有が危機的状況を乗り越える鍵となり,個と夫婦の発達を促す契機にもなり得るが,反対に感情や思考のすれ違いが生じやすく,関係の断絶と破綻も生じやすいことが示唆された。PurposeThe aim of this study was to explore the ways miscarriage can alter a couple's marital relationship and its related factors.MethodA qualitative, contextual analysis was conducted of 166 subjects--women who had miscarried from three months to two years earlier and their spouses. They were recruited by notices on bulletin board at women's centers, through an Internet Web Site, and through acquaintances. An open-ended question, "How did the miscarriage alter/ affect your relationship?" was asked on questionnaires. 14 males and 152 females responded, describing changes in their relationship after miscarriage. The descriptions were coded into 177 data, which were grouped and analyzed using inductive and contextual methods.ResultsThe contents were compiled into five categories: two negative changes-a worsening of a shallow relation and the aggravation and breakdown of the relation; and three positive changes-better cycle of the development and maturing of each person as an individual and as a couple; a deepening and evolving of each couple's relation; and aimprovement of intimate relations. Eight factors were involved in the negative changes: a) mutual misunderstanding of the difficulties encountered; b) a negative judgment of one's spouse; c) an inability to share the mourning process; d) a continued shallow marital relationship; e) a decrease in communication; f) a lack of agreement on the desirability of having a child; g) sexual difficulties; and h) a general doubting of the value of remaining as a couple. Seven factors were involved in the positive changes: a) strengthening of the couple's bond by sharing the difficulty;b) a recognition of the miscarriage and his/her spouse's reaction; c) a positive evaluation of his/her spouse; d) an open-mindedness to the partner and reconfirmation of his/her own feelings toward the partner; e) a sharing of the mourning process; f) an affirmation of and commitment to improve the marital relationship; and g) a selfawareness and striving for being a parent.ConclusionThese results reconfirmed that a miscarriage is a major stress factor which can cause a crisis in a marital relationship. They also suggest that the ways that women and men face the miscarriage and faced themselves and whether they share the mourning process relates to the development of the relationship. The data also suggeststhat a miscarriage lets the couple confirm whether they want to have a child or not. Finally, the data suggests that a miscarriage, if encountered positively, can help the couple grow from growth into an existential humanistic relationship.
著者
樋口 博行
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.1119-1128, 1971

(目的) ウサギの外眼筋の自己受容器に由来するインパルスを中脳被蓋部から誘導し, 視運動眼振解発機序解明の一端に資するため本実験を行った.<BR>(実験方法) 有色のウサギを用いて, 左側上丘経由で中脳被蓋部に色素充填微小電極を定位的に刺入, 単一神経活動を誘導した.<BR>ウサギの同側6外眼筋を剥離し, 刺激として20g~30gの張力を滑車を介してそれぞれの筋に与えた. 誘導部位は実験後誘導電極を通じて生体染色を行い組織学的に同定した.<BR>(結果) 562ユニットの外眼筋伸展に対する中脳被蓋部から誘導した単一神経活動中419ユニット (74%) は無反応で, 反応を認めたのは39ユニット (7%) に過ぎず, 104ユニット (19%) ではいずれとも断定できなかった. 反応を示した39ユニットのほとんどは, 傍水道中心灰白質外側縁から誘導された. 反応を示したユニットの各外眼筋伸展刺激に対する反応様式を個々に分類し, (i) 放電数増加型, (ii) 放電数減少型, (iii) 長潜時放電数増加型の3型とした. 反応を示した39ユニット中, 23ユニットは総ての外眼筋の伸展刺激に反応を示し, しかもそれぞれのユニットはいずれの外眼筋伸展刺激に対する反応も同一の反応型を示した. 10ユニットでは全眼筋の伸展刺激を行い, そのうち少くとも一筋に対する反応が確認されているが, 他の筋に対してはそれと異なる型の反応が認められているか, あるいはそれが疑われるものであった. 6ユニットでは6外眼筋中の一部の筋に対する試行しか観察できなかったが, 試みた刺激に対しては確実に反応していた.<BR>以上の結果から, 本実験で観察した外眼筋伸展刺激に反応を示すユニットは, いずれも外眼筋の自己受容器の刺激に対して反応したものと考えられたが, 自己受容器の求心性一次ネウロンから誘導されたものではないと考えられた.
著者
木村 研一 矢野 忠 山田 伸之 今井 賢治 廣 正基 渡辺 一平
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.279-291, 1998-09-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
46

皮膚交感神経機能に及ぼす鍼刺激の効果を検討するためにSSR (sympathetic skin response) 、SFR (sympathetic flow response) 及び手掌部の精神性発汗量を指標に検討すると同時に各指標間の関連性についても併せて検討した。被験者は健康成人男性10名、平均年齢24.7±3.1歳 (mean±SD) とした。実験は無刺激対照群 (以降、対照群) と鍼刺激群を設定し、同一被験者を対象とした。SSRは記録電極を左手掌部中央に、基準電極を同側中指爪上部に貼付し、SFRはレーザードップラー血流計のプローブを左示指指腹に装着した。精神性発汗波はハイドログラフを用い、右手掌部に1cm2のカプセルを装着した。各指標は同時測定し、電気刺激は前額部正中線上に刺激間隔および刺激強度をランダムに変更して行い、各反応を誘発し。記録した。尚、対照群は安静負荷前後、鍼刺激群は鍼刺激前後で測定を行った。鍼刺激は右側の合谷穴にステンレス鍼 (セイリン化成) を刺入し、鍼響を得た後1Hzの雀啄刺激を1分間行った後に、10分置鍼した。結果は以下の通りであった。 (1) SSR、SFR及び手掌部の精神性発汗波はHabituationを起こすことなく記録できたが、各々の相関関係は小さかった。 (2) SSR及び精神性発汗量は鍼刺激後有意に抑制されたが、SFRは無刺激及び鍼刺激の両方で抑制された。以上のことから鍼刺激は皮膚交感神経機能を抑制する作用があることが示唆された。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1448, pp.36-38, 2008-07-07

今年5月、積水化学工業の環境土木システム事業部に籍を置く豊田雄大・海外ビジネスユニット長は香港に飛んだ。案件はドイツの下水管再生会社の買収。香港にいるオーナーとの1年がかりの交渉が実を結んだ。「これで、一気に欧州に足場を広げられる」。 豊田氏は海外の下水管再生事業の責任者だ。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1712, pp.66-69, 2013-10-21

豊田氏が関わった、若年層を対象にしたアンケートによれば、「定年まで働き続けたい」と答えた文系女性が16%だったのに対し、理系女性は21%だった。学んだことを生かして長く勤めたい気持ちが強い傾向が見て取れる。従って、出産などのライフイベントを挟…
著者
水野 雅之 住井 英二郎
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.2_114-2_119, 2017-04-26 (Released:2017-05-11)

コンパイラの形式的検証は盛んに研究されているが,入出力等の副作用がある高階関数型プログラミング言語のコンパイラの検証はあまり行われていない.これは無限に入出力を行うプログラムの意味論の形式化が自明でないためである.我々は,入出力等の副作用を持つ外部関数の呼び出しや再帰関数,高階関数,組を持つ値呼びの関数型プログラミング言語に対するK正規化を定理証明支援系Coqを用いて形式的に検証した.K正規化とはlet式を用いて全ての中間式に対し陽に名前を与えるプログラム変換であり,束縛の操作を伴う点で形式化が自明でない.本研究では,余帰納的大ステップ操作的意味論によりプログラムの意味を外部関数呼び出しの無限列として与えた.また,束縛の表現としては,他の手法と比較検討した上でde Bruijnインデックスを採用した.
著者
鈴木 猛康 田村 重四郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.525, pp.275-285, 1995-10-21
参考文献数
9
被引用文献数
3 4

1985年ミチョアカン地震の際, メキシコ市でシールドトンネル軸方向の引張およびねじり変形に起因する被害が発生した. このような軸方向変形に対しては, シールドトンネルの覆工体とその外周の地盤の間に免震層を形成し免震構造とした場合, 地震時に覆工体に生じるひずみを大きく軽減させることができる. 本論文では, シールドトンネルの免震構造の免震効果を評価する方法として, 軸対称有限要素を用いた簡易モデルによる数値解析法を提案するとともに, パラメトリック・スタディーによりひずみの低下率によって免震効果を定量的に示している. また静的安定解析により, 0.5に近いボアソン比を有する免震層とすることが, 地表面沈下を抑制する意味から重要であることを示している.
著者
高橋 雄 有永 真司 石井 哲郎
出版者
公益社団法人日本船舶海洋工学会
雑誌
西部造船会会報 (ISSN:0389911X)
巻号頁・発行日
no.72, pp.213-226, 1986-08-25

As a high-speed passenger ship, a new concept "Hi-Stable Cabin Craft" is introduced and its technical feasibility was investigated. The "Hi-Stable Cabin" implies highly motion-stabilized cabin, which is mechanically supported by the main ship hull by means of a hydraulic supporting system, with which ship's vertical motion is automatically controlled so as to be suppressed into zero. Therefore, acceleration in the cabin is well minimized so that the passengers will enjoy a trip even in a rough seaway. Computer simulation was carried out regarding the motion control of the Hi-Stable Cabin Craft in waves, and it was confirmed that high degree of stabilization was possible. Model experiment was carried out by use of 3.8 meter-long ship model of the Hi-Stable Cabin Craft equiped with a electroservo mechasism supporting system. Measured pitching motion of the cabin was less than 1/8 of that of the main hull, and remarkable reduction of motion of the cabin was attained. Technical feasibility in practical design of the Hi-Stable Cabin Craft was studied from various aspect such as, general arrangement, hydraulic system, cabin structure, stability, economy of operation, etc. compared with a conventional high-speed craft. As a result, it was considered that the Hi-Stable Cabin Craft appeared to be one of the promissing concept of the advanced marine vehicle for the future.
著者
阿久津 喜作
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.56-62, 1971-06-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
18
被引用文献数
2 3

1) 顆粒病ウイルスを散布したキャベツに産みつけられたモンシロチョウは,ふ化してから6日&8日後に2令または3令で最も多く死亡した。葉の表面に散布した場合よりも,表・裏両面に散布した場合に死亡する令が早かった。2) キャベツ畑に顆粒病ウイルスを散布してから6日後と12日後に調査したところ,モンシロチョウの虫数はり病虫発生のため激減し,被害度も無散布と比較して明らかな差が認められた。3) 顆粒病ウイルスとディプテレックス50%乳剤,エンドリン50%乳剤の混合散布では,殺虫剤の効力が失なわれた後でも,顆粒病ウイルスの感染力が保持されていて,虫の密度を低くおさえる効果があった。

1 0 0 0 知覧郷土史

著者
知覧村教育會 [編]
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
1926
著者
徳田秋声 著
出版者
吾妻書房
巻号頁・発行日
1907
著者
登張 真稲
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.143-155, 2005
被引用文献数
4

本研究の目的は,女子大学生,大学院生を対象に共感喚起過程と感情的結果,特性共感の次元の関係と,状態共感に対する相手との性の類似度と心理的重なりの効果を検討することである.2種類のビデオ刺激に対する反応をもとに自動的共感,役割取得,並行的感情反応,他者指向的反応,不快反応の尺度が作成された.共感喚起過程と感情的結果の変数間の関係を検討したところ,並行的感情反応は自動的共感によって,他者指向的反応は自動的共感と役割取得によって有意に説明された.特性共感の次元と状態共感の変数との関係では,共感的関心は自動的共感,役割取得,並行的感情反応,他者指向反応を予測するなど,特性共感の下位尺度は感情的結果の変数だけでなく共感喚起過程の変数を予測した.状況要因と共感喚起過程,感情的結果との関係では,自動的共感,役割取得,並行的感情反応,他者指向的反応は心理的重なりがある場合のほうがない場合より高かったが,性の類似度は共感喚起過程と感情的結果の変数に効果をもたなかった.
著者
平石 界
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

実験経済学で用いられる経済ゲームでの行動の個人差を双生児データを収集し、遺伝と環境の影響を検討した。統計分析に必要となる多量の双生児データを収集するためにWebサイトを用いて、戦略型の公共財ゲーム実験を実施した。282名の双生児を対象とした実験からは、他者の協力度が低いときの行動には遺伝、家族で共有する環境の影響とも小さいこと、他者の協力度が高いときの行動には、家族の共有環境の影響が大きいことが示唆された。また遺伝的個人差の進化にかんして、パーソナリティが内的環境として働き行動に影響するとした内的環境仮説を提唱し、他者一般への信頼感が、パーソナリティによって影響されることを明らかにした。
著者
浅野 紀子
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学大学院紀要 (ISSN:13450530)
巻号頁・発行日
no.19, pp.1-8, 2017-03

「越中」という鄙に赴任した家持にとって、越中の景を表現しようとした場合、都の歌の景えお捉え直すことが必要となっていく。その時、同じ都の文化圏を共有する池主との贈答によって実景を超えた「景」という新たな表現を作り出していくことが可能になったと思われる。その表現世界は、都でも越中でもない歌世界の仮定された「鄙」となるのであった。