著者
新里 瑠美子 セラフィム レオン・A
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.83-98, 2011-10-01

本稿は、沖縄語と上代日本語との比較分析を通し構築した筆者らの係り結び仮説(日本祖語形再建、類型、成立、変遷など)の妥当性を琉球弧の方言群において検証することを目的とする。本稿で焦点を当てた|ga|の係り結び仮説では、その類型として、Type I(文中|ga|といわゆる未然形の呼応)、Type II(文中|ga|と通常連体形の呼応)、係助詞の終助詞用法を考え、各々、自問、他問、他問と特徴づけた。検証の結果、国頭久志(くにがみくし)方言でTypeIとTypeIIの類型と機能が仮説と合致、疑似終助詞用法がTypeIIの文法化と解釈できると述べた。徳之島井之川(とくのしまいのかわ)、国頭辺野喜(くにがみべのき)・漢那(かんな)、八重山鳩間(やえやまはとま)方言においては、終助詞用法の|ga|の清濁の異音に関し、見解を提示した。鳥島(とりしま)方言では、構文はType II、機能はType Iという用法について新たな音変化を提案し、反証とならないと論じた。宮古西里(みやこにしざと)方言の構文と機能のずれについても、仮説擁護を試みた。最後に、今帰仁(なきじん)方言の|kuse:|=コソの通説に異を唱え、その成立に|ga|が関わったとの仮説を述べた。
著者
Heinrich Patrick
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.112-118, 2011-10

日本語研究の一環ではない、独自の分野としての琉球言語学は、最近になって生まれたばかりだ。そのため、琉球社会言語学のスタートも遅れたことは否めない。これまでの研究対象は、主に言語危機度の測定、言語シフト、および琉球諸島の言語編制の変化に限られる。よって、未だに研究されていない重要な分野が多数あると言える。琉球諸語の維持と復興のためには、琉球社会言語学のさらなる展開が急務であり、そのためには記述言語学と言語維持運動が、より密接な協力体制を築いていくことが不可欠である。
著者
田窪 行則
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.119-134, 2011-10

本稿は、沖縄県宮古島市西原地区の言語・文化を記述し、それを電子博物館として研究者および地区の住民たちが自由に見られる形で記録・展示し、この言語・文化の継承に資する試みを紹介する。宮古島西原地区は、池間島から明治7年に移住してきた住民が暮らしている。他地区から移住して自分たちの文化と言語を維持する努力をつづけてきたため、他地区より自己アイデンティティの確認作業を行わなければならず、母語と文化を維持してきた。この地区の住人たちは積極的に次世代に言語・文化を伝える努力を続けており、彼らの活動は他の地区の人々のモデルとなりえるものである。電子博物館というウェブ上の記録・展示装置がこのような地域住民の活動や、他の研究者との連携を助けるシステムとして機能し、琉球の言語と文化、ひいては消滅の危機にある言語・文化の記録と継承に貢献しうることを示す。
著者
鳴海 邦匡
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.223, 2007

<BR>1.はじめに<BR> 近年,里山のような身近な自然環境が注目され,保全への関心も高まっている.こうした自然環境の多くは,ここ100年程の里山の植生景観の変遷にみられるように,大きく変動するものであった。そのことは,保全をすすめていくうえで,いかにして変化する景観を評価するかが重要となることを示している。<BR> こうした観点から,報告者は神社林の森林景観の変動について先に検討した(鳴海・小林,2006).西日本の鎮守の森の多くは,現在,常緑広葉樹林として構成されている.それは多くの人々にとって昔から変わらないと認識される植生景観であった.しかし,先の検討を通じて,こうした森林景観のある部分は,近代以降に形成された比較的新しいものであることが明らかとなった.かつては矮小なマツ,恐らくアカマツの卓越する景観であったと考えられる.<BR> この議論をすすめていく過程で,近代における地域環境史資料としての正式2万分1地形図を基礎にしながら,近世の地図の有効性に注目した.そこで利用した近世の地図は,幕府の検地に際して作られたものであり,地目を表すうえで植生を描き分ける必要があった.近代以前の自然環境をみていくうえで,近世の地図は重要な資料であるが,十分な資料批判が求められる.<BR> 今回の報告では陵墓の景観変化に注目した.それは,陵墓の植生景観も,神社林と同様,現在にかけて大きく変動していたからである.その際,山陵図と呼ばれる資料に注目し議論を進めている.<BR><BR>2.山陵図について<BR> 山陵図は,近世から近代にかけて,陵墓の探索や修繕事業にともない作製された図を指している.また,陵墓地の比定は社会的にも当時の大きな関心事であったことから,山陵図に類した資料も存在する。ここで山陵図に注目したのは,この図が現地調査に基づく陵墓の現況の把握や,修繕結果の報告を目的に作られたものであり,地域環境史資料としての活用に堪えうると判断されるからである.また,関連する文献資料が多いのも理由である.<BR> こうした事業は,主として幕府(近代以降は明治政府)によって元禄以降,享保,文化,安政,文久,慶応,明治と度々実施されることとなった.そして,その度毎に山陵図が作製されている.この時期以降,陵墓は保護される対象へと次第に変化していく.実際,当時の陵墓の多くは年貢地や小物成地として登録されていたように,周辺の農民らが林産資源の採集地や耕作地として利用する場であった.そうした利用状況を反映して,山陵図に描かれた当時の墳墓の景観,特に植生景観は現在のものと比べて著しく異なっていた.以下ではその一例を挙げてみたい.<BR><BR>3.山陵図に描かれた植生景観とその変化<BR> 元禄期(1690年代),奈良奉行が京都所司代の指揮のもと,大和国内の陵墓調査を実施した.当時の状況を描く字王墓山古墳(景行天皇陵,山邊道上陵)の山陵図をみてみると,この時に村々から提出された記録(耕作地として樹木のない年貢畑であったと記す)の内容と一致する.他の陵墓の多くも,こうした植生被覆の乏しい景観となっていた.<BR> こうした陵墓の多くは近世を通じて次第に森林化していくこととなる.文久期(1860年代)の修陵事業に際して描かれた景行帝の山陵図をみると,灌木や竹の生い茂るなかマツ形の樹木が卓越しつつある状況が描かれており,元禄期と異なる景観を示し注目される.<BR><BR>4.まとめと今後の課題<BR> これまでみてきたように,山陵図は近世から近代にかけての植生景観の変遷を知る有効な資料であるといえる.ここまでみてきた近世の陵墓の景観は,明治に入るとさらに大きく変化していくこととなる.先にみた景行帝陵について正式2万分1地形図(1908(明治41)年測図)をみると,針葉樹の植生記号のみで示されているのが確認される.この後,帝室林野局により作製された陵墓地形図(1926(大正15)年測量)では,主に「松」樹の記号で覆われていることが確認され,この針葉樹がマツであることを示している.<BR> こうした近代以降の景観変化は,計画的な植樹や伐採を経た結果であった.先にみた神社林のように,現在,常緑広葉樹の卓越する陵墓の植生景観は,比較的新しいものであるといえ,身近な自然環境の変動をしる良い事例であると考えられる.
著者
陳 海涛
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2017, no.27, pp.629-637, 2017-01-01 (Released:2020-04-02)
参考文献数
9

近年,日本語のフィラーについての研究は盛んになっている.しかし,中国語のフィラーについての研究は,断片的なもので,十分重視されていない.本稿では,コーパスを使用し,中国語指示詞系フィラー「这个」を研究対象をとし,その使用法を分類する.
著者
田端 節子 井部 明広 小沢 秀樹 上村 尚 安田 和男
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.444-447_1, 1998-12-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
4
被引用文献数
10 14

1991年から1996年に東京都内で市販されていた食品及び食品原料, 2,047検体についてアフラトキシン汚染の調査を行った. ピーナッツ, ピスタチオナッツ, ハトムギ, 黒糖, 唐辛子, パプリカ, ナツメグなどから, アフラトキシンが, 痕跡量から128ppb検出された. 日本での規制値である10ppb以上のアフラトキシンB1が検出された検体は, ピーナッツ, ピスタチオナッツ, 唐辛子で, 合計5検体であった. 過去の調査結果と比較すると, そば, ナチュラルチーズのように過去の調査では検出されたが, 今回は検出されなくなったもの, ナツメグのように継続的に検出されるものがあった.
著者
尾関 伸哉 立松 典篤 三石 知佳 石田 亮 吉田 真理 杉浦 英志
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.271-279, 2021 (Released:2021-09-16)
参考文献数
31

【目的】在宅緩和ケアを受けるがん患者の訪問リハビリテーション(以下,訪問リハビリ)開始から4週後までの身体的Quality of Life(QOL)およびActivities of Daily Living(ADL)の変化とその特徴を明らかにすること.【方法】対象は在宅がん患者35例とした.身体的QOL評価はQLQ-C15のPhysical Functioning(PF),ADL評価はBarthel Index(BI)およびFIM運動項目(Motor FIM)を用いた.リハビリテーション(以下,リハビリ)開始時から4週後までのPFおよびADLスコアの経時的変化,PFスコア維持・改善群と悪化群でのADLスコアの変化と特徴について検討した.【結果】PFスコアは4週後で有意な改善を認め,PFスコア維持・改善群において4週後でMotor FIMスコアの有意な改善を認めた.【結論】在宅がん患者の身体的QOLは,リハビリ開始時に比べ4週後で維持・改善がみられ,在宅で実際に行っているADL(しているADL)能力を維持することは,身体的QOLの維持・改善につながる可能性が示唆された.
著者
原田 正範 別府 護郎 東 昭
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.44, no.513, pp.582-587, 1996-10-05 (Released:2010-12-16)
参考文献数
9

By using of the optimal control theory, the optimal controls of the lift coefficient and the related flight paths of gliders are obtained to find the maximum flight range for given initial and final conditions. The results show that without ground effect the steady gliding flight at the maximum lift-to-drag ratio occupies a greater part of the flight path, but with the ground effect, the unsteady horizontal flight at the minimum allowable height takes the place of the steady gliding flight.

5 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1927年03月31日, 1927-03-31

5 0 0 0 科学画報

出版者
誠文堂新光社
巻号頁・発行日
vol.22(6);6月號, 1934-06-01
著者
藤沼 康樹 長谷川 尚哉
出版者
一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
雑誌
日本東洋医学系物理療法学会誌 (ISSN:21875316)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.1-12, 2020 (Released:2021-06-28)
参考文献数
15

COVID-19 パンデミックにより非常事態宣言が発表され、地域の医療需給体制は変化をきたした と考えられるが、診療所の領域においても受療行動の変化を体験することとなった。Face to Face で受診するという役割から、感染症への対応にシフトし、その結果、軽症救急、健康問題に関連 したよろず相談のアクセシビリティも低下することとなった。鍼灸院においても同じような傾向 をとったと聞き及ぶが、この度は日本人の受療行動とケアのエコロジーから考えてみることにす る。病の意味へのアプローチとして FIFE、ライフ・ヒストリー、サルトジェネシスについての解 説を行い、家庭医の診察室に陪席する体験をしていただければと思う。その上で、これからの鍼 灸院を鍼灸学における診断治療技術以外に必要な事を想像する作業をディスカッションしてみた。
著者
柴山 雅俊
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.1293-1300, 2006-12-15

抄録 夢と現実の区別困難について解離性障害の患者53名と対照群57名を対象に調査した。解離性障害にみられる夢と現実の区別困難を,①現実が夢のようである,②夢が現実のようである,③過去の記憶が事実なのか夢なのか判断しがたい,の3つに分類し,それぞれについて精神病理学的観点から論じた。解離性障害では今・ココを起点とするパースペクティヴperspectiveの成立不全が示唆される。それはまたパースペクティヴの起点・要になる私の成立不全をも意味している。同一性の拡散した私は,並立化し等質化した世界の知覚対象や記憶表象,空想表象,夢の表象との1対1の無媒介的・直接的関係を通して深く没入し,没入した世界によってあらためて私が構成されることになる。このような,知覚-表象や現実-夢などの並列化に加え,パースペクティヴの両極構造とそこにおける循環的関係は,解離性症候の基底に存在する病態構造の一つと考えられる。

5 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1934年08月02日, 1934-08-02