著者
北條 慎太郎
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

申請者は、亜鉛トランスポーターが輸送する亜鉛イオンがシグナル因子として機能し(亜鉛シグナル)、骨軟骨代謝や免疫応答に深く関わることを明らかにしてきた。亜鉛の欠乏症は重篤な免疫機能の低下を引き起こすことが知られているが、亜鉛や亜鉛トランスポーターがどのように免疫系を制御しているのか、その分子機序は明らかにされていない。本申請研究は、免疫系の一つの柱である抗体産生に関わるB細胞において高い発現を示す亜鉛トランスポーター ZIP10に注目し、B細胞特異的にZIP10を欠損したマウスを構築することによってその機能を解析した。ZIP10欠損マウスでは末梢の成熟B細胞の減少が認められ、それが関与する抗原特異的な抗体産生能が減弱していた。また、ZIP10を欠損したB細胞の寿命は野生型と比較して短く、この表現型はB細胞内因性の異常に起因していることが判明した。成熟B細胞の生存や抗体産生能はB細胞受容体(BCR)シグナルによって制御されていることが知られている。ZIP10欠損B細胞では、BCR刺激依存的な細胞増殖能の低下が認められ、BCRシグナル伝達の異常が確認された。興味深いことに、予想に反して、ZIP10欠損B細胞ではBCRシグナル伝達の中心的な役割を果たすSrcファミリーキナーゼ LYNの活性化がBCR刺激後に亢進しており、この原因の一つとしてLYNの制御因子であるCD45の脱リン酸化活性が減弱していることがわかった。すなわち、今回得られた結果は、ZIP10がBCRシグナル伝達における新規のレギュレーターであり、CD45の活性を介してシグナル強度を調節することによって、B細胞の機能を制御していることを明示するものである (論文投稿準備中)。本研究は、第八回 トランスポーター研究会年会 優秀発表賞 および 第86回日本生化学会大会 鈴木紘一メモリアル賞 の表彰を受けた。
著者
Yasuchika Takeishi
出版者
一般社団法人 インターナショナル・ハート・ジャーナル刊行会
雑誌
International Heart Journal (ISSN:13492365)
巻号頁・発行日
pp.14-267, (Released:2014-10-24)
被引用文献数
11 26

Appropriate use of biomarkers is clinically important for identifying heart failure in its early stage, optimizing risk stratification, and managing patients. This article describes established and traditional biomarkers as well as novel biomarkers reflective of myocardial stress, myocardial damage, extracellular matrix, oxidative stress, inflammation, renal function, micro RNAs, and heart failure with preserved left ventricular ejection fraction. This review focuses on the recent advances in cardiac and non-cardiac biomarkers of heart failure and their appropriate use in clinical practice.
著者
松井 利一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.889-898, 1996-05-25
被引用文献数
24 5

視覚系の基本現象(ボケと視野の相互依存作用)に着目して定式化した視覚モデルは, 提示画像の性質や提示条件に依存して変化する視覚系の視知覚応答特性を正確かつ定量的に再現する能力をもっている. しかし, 今の視覚モデルそのままでは画面サイズに依存してコントラスト感度特性が変形する視覚現象の理論的再現は困難であり, 視覚系の他の基本的特性を導入し, より汎用的なモデルに拡張する必要がある. 本論文では, 視覚系の一つの基本的特性として, 空間周波数弁別能力の限界(空間周波数弁別不可能領域の存在)という画面サイズ依存特性とは一見何の関係もなさそうに見える特性に着目し, この特性を視覚モデルに導入すれば画面サイズ依存特性に関しても理論的に再現可能な視覚モデルに拡張でき, 実測結果ともよく一致するようになることを示す. また, シミュレーションから得られた空間周波数弁別不可能領域の理論幅と実測で得られている値とが同程度であることからも, 画面サイズ依存特性が空間周波数弁別能力の限界により生じている可能性が強いと判断できる.
著者
柿沼 陽平
出版者
帝京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

申請者はこれまで、中国古代において貨幣(経済的流通手段)とそれを中心とする貨幣経済が具体的にいつどのように展開し、それが当時の社会にいかなる影響を与えたのか、また当時の人びとがそれにどう対処したのかについて検討してきた。本課題はその一環をなすもので、とくに前漢武帝~王莽期の貨幣経済史について検討した。検討の結果、前漢後半期~王莽期の貨幣経済の動態は、従来一般に想定されているほどに激変を伴ったものではなく、むしろ継続的側面が濃厚であると考えるに至った。またその反面、前漢貨幣経済は武帝期に大きく変化したようである。
著者
山崎 健一
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

地震波の伝搬と同時に電磁場の変動が観測されることがある。この研究では、震源からある程度離れた場所での現象に焦点を絞って、既知の物性理論から予測される地震時電磁場変動を計算し、それを観測事実と比べることにより、仮定した既知の理論だけで観測事実を説明しうるのかを明らかにすることを試みた。その結果、既知の理論だけでは説明できない変動が含まれていることが確認された。このことは、地震動を電磁場変動に変換する未知のメカニズムがまだ存在することを示唆している。
著者
高橋 淑子
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

平成14年度は主に、ヤマトヒメミミズの再生過程でなにがおこっているのかという基本的な知見を得ることに集中した。得られた結果を以下に示す。1.再生過程におけるからだの前後極性を知るために、5種類のHox遺伝子のcDNA断片を得た。2.より効率よくシグナルを得るためのin situ hybridization法を探索した。3.人工的にミミズを切断した直後、どの細胞種が再生過程の中心的な役割を担うかについて、増殖細胞のマーカーであるPCNAを用いて、切断後経時的にその発現を観察した。結果、ネオブラスト周辺の数細胞が最初に増殖を開始することがわかった。これに引き続き、表皮が増殖能を獲得することも観察された。4.再生過程に特異的に発現する遺伝子群を探ることを目的に、ESTプロジェクトを開始した。平成15年度は、前年度の観察から得た再生過程でみられるイベントの知見をもとに、分節と再生に関与する遺伝子を同定することに注目した。今年度の活動と得られた結果を以下にまとめる。1.前年度から進行しているESTプロジェクトの結果に加えて、「再生中ミミズ」と「再生を完了しているミミズ」のサブトラクトラクションを行うことで、再生芽に特異的に発現する遺伝子の候補を34クローン得た。2.これら全ての遺伝子についてin situ hybridization法を用いて、発現パターンによるスクリーニングを行った結果、再生中期の再生芽に発現する21遺伝子を特定した。また、このうち11遺伝子は既に再生初期で発現が認められた。3.上記の結果を発現パターンでカテゴリー別に分類したところ、再生初期から表皮に強い発現をみせる遺伝子、表皮を除く再生芽に発現する遺伝子をはじめとして、さまざまな発現パターンを示す遺伝子が得られた。これらの活動から、ヤマトヒメミミズの再生過程の分子機構に関し、全く新しい知見を多く得ることができた。
著者
服部 良久
出版者
京都大學大學院文學研究科・文學部
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.1-149, 2002-03-30

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
林 雅清
出版者
関西大学
雑誌
關西大學中國文學會紀要 (ISSN:09105328)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.89-105, 2006-03-20
著者
山岸 賢治 老田 茂 木村 俊之 岩下 恵子 新本 洋士
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.456-458, 2007-10-15 (Released:2007-11-30)
参考文献数
9

生キクラゲ水抽出液の50~70%硫安沈殿物は,マウス前駆脂肪細胞3T3-L1のトリグリセライド蓄積を阻害した.さらに陰イオン交換カラムクロマトグラフィーで部分精製した画分は,3T3-L1の分化を抑制した.この活性画分には,分子量10000以上のタンパク質が複数認められた.
著者
高橋 雅延
出版者
聖心女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1.実験1強烈な感情が対人記憶に及ぼす制御効果について検討するために、ある人物の一日の行動を写した写真18枚を材料とし、情動的な刺激(死体)を提示した場合(情動群16名)の前後の記憶について、情動的な刺激を提示しない場合(中立群16名)の再認記憶と比較検討した。その結果、ネガティブな感情が対人記憶に対して順向抑制効果を与えることが明らかとなった。これは、そのような状況において、精緻な処理が行えず、記憶が悪くなったのではないかと考えられた。2.実験2ある男子大学生の一日について述べられた文章を材料とした。そして、この男子学生に抱く対人感情(ポジティブ感情、ネガティブ感情)を操作するために、その人物の友好的描写を読ませるネガティブ感情群27名を設け、1時間後に、文章の偶発自由再生を求めた。その結果、対人記憶課題では、ポジティブ感情をもった群の方が、行動の種類によっては、そのような感情の源となった行動とは一致しない敵意性行動の再生成績が高い傾向が見受けらた。このように、行動によって結果のパタンが異なることから、矛盾情報というように一つのカテゴリで行動をまとめてしまうのではなく、矛盾情報の中でも、細かく行動別に調べていくことが必要であると思われる。
著者
小柳 智一
出版者
東京学芸大学
雑誌
学芸国語国文学 (ISSN:03879135)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.47-55, 2001-03
著者
小池 誠
出版者
桃山学院大学
雑誌
桃山学院大学総合研究所紀要 (ISSN:1346048X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.43-56, 2001-07-10

The aim of this paper is to explore the relationship between globalization and culture by focusing on the international distribution of the Indian cinema. Nowadays globalization is discussed in various ways. I take it as a basic premise of my argument that globalization has complex impacts on nations and local societies in the world and these operate in a contradictory fashion. While it leads to the process of homogenization and the formation of a 'global village,' the opposing tendencies towards differentiation and segmentation are proceeding now. This paper deals with three points: globalization which is conceived in the Indian movies, the global distribution of Indian cinema, and the way of discussing Indian cinema and globalization. The international market of cinema is not dominated solely by American cinema, but Indian movies have a certain share in the world. I conclude that globalization has brought us more diversified cultural products we can consume and enjoy, among which the Indian movies play a significant role in the cinema world.
著者
錦織 淳美
出版者
岡山大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

○研究目的 :病院-薬局薬剤師の真の連携を実現するために、病院薬剤師による入院患者の服薬アドヒアランス評価および患者指導データを薬局薬剤師と共有し、患者の外来診療での服薬アドヒアランス総合評価を各種病態・検査値の変化と共に経時的に観察する。さらに、如何なる患者の特性が服薬アドヒアランスの維持に影響を与えるかを薬局薬剤師からの情報をもとに明らかにする。○研究方法 :対象は岡山大学病院循環器内科病棟に入院歴のある冠動脈疾患、心不全の慢性疾患患者とし、以下の調査を行った。1, 入院患者のこれまでの服薬(服薬アドヒアランスを含む)に関する自己評価、2, 病院薬剤師による服薬評価、3, 薬局薬剤師による服薬評価、4, 外来での病識・薬識の経時的変化調査、である。薬剤師は、患者の入院・外来通院中における病識・薬識・内服コンプライアンスを各5段階で評価を行った。また薬局薬剤師は、処方薬の残数チェックにより、服薬アドヒアランスの厳守度を経時的に評価した。また、心血管リスク因子として脂質検査値(LDL、HDL、TG)、血糖検査値(HbA1C(NSGP)、IRI)や腎機能検査値(Cr、UA、K)を経時的に調査した。さらに、患者の疾病再発率と患者の特性との相関を検討した。○研究成果 :計10例の患者情報を収集・解析した。病院および薬局薬剤師間で病識・薬識・内服コンプライアンス評価が一致する場合がほとんどであったが、一部、評価が異なる場合もみられた。アドヒアランスに問題のある患者が抽出され、より効果的な指導や処方提案につなげていくことが可能であることが明らかとなった。また病院との患者情報共有により、適切に患者服薬指導を実施することができたと薬局薬剤師からの高い評価を受けた。今後、研究を継続し、外来患者の薬物治療管理・検査値変化・予後改善について調査を重ねていく。
著者
礒部幸一 著
出版者
大学書林
巻号頁・発行日
1932