著者
江守 一郎
出版者
成蹊大学
雑誌
特定研究
巻号頁・発行日
1985

人身傷害を伴う交通事故は、一般の犯罪と同様、業務上過失傷害または致死事件として捜査が開始され、あるものはその刑事責任を問われて送検され、あるものは正式裁判に持ち込まれる。刑事事件と併行して多くは民事訴訟が起こされ、刑事、民事とも高等裁判所に控訴され、上告されて最高裁判所まで持ち込まれるものもあるから、それにかかる国家的経費は言うに及ばず、関係者の時間的損失は莫大なものである。本年度は米国を中心とした事故調査を行い、交通事故の抑止と後処理がどのように行われているかがある程度明らかになった。米国では自動車事故は人身事故であっても、関係者は刑事責任を問われない。事例研究により明らかになったことは、事故直後現場に急行する警官の主たる任務は、負傷者の搬送と、事故車を移動することにより、できるだけ早く交通渋滞を解消することにある。これは国民の時間的損失を総合的に考えれば当然のことであろうが、その反面、その事故がどのようにして生じたかを明らかにするための証拠保全に対する努力は全く払われていない。したがって、我国に比べると事故再現ははるかに困難で、防止対策を事故再現によって求めることは不可能に近い。その点、我国は人身事故が刑事事件の対象となるため、証拠保全はある程度十分になされ、具体的安全対策を見出すにはむしろ有利な体制にあると言えよう。以上のように米国では、事故から得られる資料が少ない反面、予防に関する研究は盛んである。交通事故を刑事事件のひとつとして取り扱う法体系は、まだモータリゼーションが定着していない時代に確立されたものであって、本研究により、その体系を基本的に考え直さなければならない時期にきていることが浮きぼりにされた。どのようなシステムに改正すべきかは、今後の研究に俟たなければならない。
著者
一杉 裕志 高橋 直人
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.28, 2014

ベイジアンネットは深い生成モデルを素直に表現できる上、 文脈情報も自然に扱えるという特徴がある。 我々は条件付確率表に制限を加えることでベイジアンネットの認識時の計算量を大幅に抑え、 それを用いた深層学習アルゴリズムを実装した。 このアルゴリズムは大脳皮質の解剖学的構造と多くの共通点を持ち、 脳と同じ機能を持つ強い人工知能の実現に向けた重要な進展であると考えている。
著者
豊田 雄
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

扁桃体は側頭葉内側部に位置する脳部位で、とりわけ扁桃体基底外側核(BLA)は恐怖条件づけの形成と恐怖の消失に関与する主要な部位である。近年、恐怖記憶の発現と恐怖の消失がBLA内の一部の神経細胞集団の活動によって担われることが明らかになりつつある。しかし、この神経細胞集団を構成する個々の細胞およびそのシナプス伝達の変化については明らかになっていない。そこで私は、恐怖の発現と消失に対応したシナプス伝達とその構造的基盤である形態について明らかにすることを研究の目的とした。活動した神経細胞を生きたまま可視化できるArc-dVenusトランスジェニックマウスに恐怖条件づけを行い、恐怖記憶の想起時に活動した神経細胞からパッチクランプ記録を行ったところ、恐怖記憶に対応した神経細胞の微小興奮性シナプス後電流(mEPSC)の頻度が増加し、ペアパルス比(PPR)が低下することが見出された。シナプスを多く含むと考えられる樹状突起上のスパイン形態については有意な差は認められなかった。この結果は、恐怖記憶に対応した神経細胞に入力するシナプス選択的に伝達物質の放出確率が増大した可能性を示す。また、同様にして消失記憶に対応した神経細胞についても解析を行ったところ、mEPSCの頻度が増加したが、PPRに有意な差は認められなかった。樹状突起上のスパイン形態において、サイズの小さなスパインにおいて密度が増加していることを見出した。この結果は、消失記憶に対応した神経細胞に入力するシナプス選択的に、シナプスの数自体が増加した可能性を示す。以上の結果は、個体動物の記憶・学習に対応した神経細胞のシナプス入力選択的に伝達効率が増強し、恐怖記憶と消失記憶は異なるメカニズムで貯蔵されることを示唆している。本研究は、学習とシナプス伝達効率の変化を結ぶ新たな知見であると考えられる。
著者
室田 誠逸
出版者
日本脂質栄養学会
雑誌
脂質栄養学 (ISSN:13434594)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.135-135, 1995-08-11 (Released:2009-04-10)
著者
佐藤 正泰 諌山 明彦 稲垣 滋 長山 好夫 稲垣 滋 長山 好夫
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

相対論的効果、放射の伝搬方向、プラズマ閉じ込め装置の磁場構造・トーラス形状・真空容器内壁での反射を考慮し、炉心級プラズマにおけるシンクロトロン放射損失の評価を行った。高速電子の影響、内壁での反射及びモードスクランブルの効果、放射損失のプラズマパラメーター依存性を評価した。放射損失の磁場依存性はトロイダル磁場の2.5乗を示し、放射損失を低減するには磁場を下げる事が有効であり、これは現在の核融合炉の設計が低磁場化している傾向と整合している。
著者
小澤 啓爾 中須 英輔 浦野 丈治 坂中 靖志 日高 恒義
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会技術報告 (ISSN:03864227)
巻号頁・発行日
vol.20, no.35, pp.7-12, 1996-06-20
被引用文献数
2

MPEG-2 Verification Tests were carried out for 5 different combinations of Profiles and Levels by several organizations in the world from January 1994 to December 1995. These verification tests were organized according to ITU-R Rec. BT.500 and BT.710 and DSCQS method was used. The assessment tests were carried out by each organization and the data were submitted to the MPEG Test Chairman. The outline of the results were reported at MPEG meetings. This paper describes the test procedure, test materials and the details of the tests results of MPEG-2 Verification Tests for SNRP@ML, SSP@H-14 and MP@HL(H-14).
著者
伊藤 久美子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.31-38, 2008-11-30
被引用文献数
3 2

色彩好悪と色彩象徴などに関する調査を女子学生対象に'04'05に実施し、筆者の約10年前、同様に実施した結果と比較し、経年変化を検討した。即ち、色彩好悪色、自分に最も似合う(似合わない)と思う服色、色名からの連想語、14個の象徴語(怒り、嫉妬、罪、永遠、幸福、孤独、平静、郷愁、家庭、愛、純潔、夢、不安、恐怖)から連想した色名について調べた。その結果、色彩好悪については、ピンク、青、橙、水色、黄色が最も好かれる色上位5色であり、一方、最も嫌いな色上位5色は、灰色、黄土色、紫、ピンク、赤の順となった。本研究の結果は、色彩好悪はゆるやかに経年変化するが、色彩イメージと色彩象徴はあまり変化しないことを示唆している。
著者
鬼塚 俊明
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

脳磁図研究では、自己の名前、他人の名前、無意味な文字列を視覚呈示し、反応を記録した。健常対照者は、自己の名前>他人の名前>無意味な文字列というパターンだったが、統合失調症者では自己の名前という自己関連刺激に対する特異的な反応が失われていた。さらに、統合失調症、双極性障害、正常対照者の脳磁図反応を記録し、成果の一部を論文発表した(Schizophr Res, Bipolar Disord, PLoS ONE誌など)。脳構造研究では、平成25年度までに合計で、正常対照者131名、双極性障害者23名、統合失調症90名のMRIを撮像した。上側頭回の構造異常は、統合失調症に比較的特異的であった。
著者
杉崎 哲子
出版者
静岡大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究では、日常に生きる書写指導の確立をめざし、まず字形が乱れる場面や要因を明確にし、次に姿勢と持ち方による字形の変化を検証した。続いて「なぞり書き」と「空書」、それらを融合したタッチパネル上への指やペンでのなぞり書き(「空なぞり」)の効果を検証した。さらに、字形の乱れが著しい横書き速書きの平仮名について、文字と文字とのつながり部分に注目したトレーニングを考案し、中学校において実践を試みた。
著者
柏尾 南壮
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.1123, pp.19-22, 2013-12-09

柏尾 南壮 フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ ディレクター米Apple社のタブレット型端末「iPad Air」が2013年11月1日に発売された。前の世代のiPadと比べて大幅に軽くなり、狭額縁になったのが特徴だ。同機器をいち早く入手し、分解したフォーマルハウ…
著者
渡邉 功
出版者
京都府立医科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

我が国において脳血管疾患は死亡原因の第4位であり、寝たきりの最大要因となっている。脳血管疾患は高血圧や糖尿病等の関連とともに無症候性脳出血との関連も報告されている。本研究において、無症候性脳出血発現とコラーゲン結合能をコードする遺伝子を有するStreptococcus mutansの関連を認めたが、認知機能との関連は明らかではなかった。口腔内常在菌と脳血管疾患の関連が示唆された。
著者
三村 真弓 吉富 巧修 北野 幸子 水崎 誠 藤原 志帆 伊藤 真 小長野 隆太
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、主として、幼稚園児・小学校児童・中学校生徒の音楽的リテラシーの実態調査、現在及び過去に行われた音楽的能力育成を目指した音楽教育指導法の分析と音楽的能力調査方法の分析を行った。その結果、音楽的リテラシーの発達の諸相、音楽的リテラシー育成のための必要条件等が明らかとなった。それらをもとに、音楽的リテラシーの育成を目指した小中連携の音楽科カリキュラムの試案作成を行った。
著者
Shoma MIKAWA Yuichi MIYAGAWA Noriko TODA Yoshinori TOMINAGA Naoyuki TAKEMURA
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.14-0050, (Released:2014-10-16)
被引用文献数
1 5

Pulmonary hypertension (PH) often occurs due to a left heart disease such as myxomatous mitral valve disease (MMVD) in dogs and is diagnosed using Doppler echocardiography and estimated pulmonary arterial pressure. Diagnosis of PH in dogs requires expertise in echocardiography: however, the examination for PH is difficult to perform in a clinical setting. Thus, simple and reliable methods are required for the diagnosis of PH in dogs. The purpose of this study was to develop models using multiple logistic regression analysis to detect PH due to left heart disease in dogs with MMVD without echocardiography. The medical records of dogs with MMVD were retrospectively reviewed, and 81 dogs were included in this study and classified into PH and non-PH groups. Bivariate analysis was performed to compare all parameters between the groups, and variables with P values of <0.25 in bivariate analysis were included in multiple logistic regression analysis to develop models for the detection of PH. In multiple logistic regression analysis, the model included a vertebral heart scale short axis of >5.2 v, and a length of sternal contact of >3.3 v was considered suitable for the detection of PH. The predictive accuracy of this model (85.9%) was judged statistically adequate, and therefore, this model may be useful to screen for PH due to left heart disease in dogs with MMVD without echocardiography.
著者
Reiko USUI Yuki OKADA Emiko FUKUI Atsuhiko HASEGAWA
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.14-0072, (Released:2014-10-16)
被引用文献数
1 5

Otitis media of the left ear was diagnosed by video otoscopic examination in a 7-year-old, intact male Shih-tzu dog (weight, 5.1 kg), that also had three complex ceruminous adenomas and a Pseudomonas aeruginosa infection in the left ear canal. In such cases, total ear canal ablation is usually required. However, a complete cure was achieved in the present case without total ear canal ablation. The complex ceruminous adenomas were excised using a diode laser, and repeated cleansing of the tympanic cavity and ear canal was implemented using a video otoscope. As a result, the ear canal was closed in a U-form, and the otitis media was cured.

1 0 0 0 OA 吉野名所誌

出版者
吉野山小学校同窓会
巻号頁・発行日
1929
著者
大里 齊 籠宮 功 角岡 勉 安藤 汀
出版者
公益財団法人名古屋産業科学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

コーディエライト組成のガラスから、結晶化ガラスミリ波誘電体を作製した。コーディエライトの多形であるインディアライトを主とするセラミックスが得られ、ロスの少ない高Qf>200,000GHz、低誘電率ε_r=4.7、共振周波数の温度係数TCf=-27ppm/℃の特性の優れた次世代ミリ波誘電体を作製した。しかし、このガラスセラミックスは、表面からの結晶化で極めて異方性が強いものであった。コーディエライトは、低熱膨張で知られ、c-軸方向にマイナス、a-軸方向ヘプラスの熱膨張をもつ。表面失透でc-軸方向に伸長した結晶が垂直にぶつかる点でクラックを発生、割れが生じた。冷却速度を調整して大きなクラックは避けることができて、ミリ波誘電特性は測定可能であった。しかし、細かいクラックは避けることができず、品質係数に大きなバラツキを与えていた。さらに、この細かいクラックをも無くす目的で、ルチルを核形成剤として用い、ボリュウム結晶化を目指した。ルチルを10、20wt%添加したガラスを作製し、結晶化ガラスを得た。SEM観察で微細なクラックを抑えることができ、ミリ波誘電体特性も優れたものが得られた。品質係数Qf=120,000GHz、温特TCf=Oppm/℃、誘電率7。