著者
野中 健一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.34-47, 2013 (Released:2013-04-19)
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究は,長期・多人数の滞在型現地調査に対する地理学的な学術成果を,いかにして村・村民に還元するのか,ラオスでの村落調査で実践した写真集制作と展示施設の制作事例について報告する.そして,それらの提示する村の暮らしを研究者や外来者との対話のプラットフォームとして活用することにより,住民の知識の価値を共感でもって見出し,村人自身の再認識に役立てることに地理学知を活用することを提案する.
著者
松本 博之 森本 泉
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.3-14, 2013 (Released:2013-04-19)
参考文献数
30
被引用文献数
1

今日われわれのフィールドワークという営みには調査による地域貢献の課題がつきまとっている.フィールドが海外になると,地域貢献は容易に達成できるものではない.われわれ地理学者が地域的差異の究明を研究目的に掲げているように,海外でのフィールドワークの成果を還元しようとすれば,地域社会の特性に応じて社会文化的な差異を越えなければならないからである.そこには,科学者の形づくる知の性質,還元を計る空間的な内実とスケール,還元を意識する研究者の立ち位置など,克服しなければならない数多の問題点がある.本稿は,それらの問題点の基本的な側面に検討をくわえ,望ましい知の還元への方途を模索する試みである.
著者
酒井潔 著
出版者
文芸市場社
巻号頁・発行日
1929
著者
荒川 吉孝
出版者
舞鶴工業高等専門学校
雑誌
舞鶴工業高等専門学校紀要 (ISSN:02863839)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.74-84, 2008-03

以下は、スコットランド王ジェイムズ六世(1603年以降、イングランド王ジェイムズ一世)の『悪魔学』(1597年エディンバラ刊)を翻訳し註釈を施したものである。この本は三巻から成り、ここでは第二巻第四章から第二巻最終章(第七章)までを取り上げる。第四章では、魔女たちが集会に行くための移動手段を検討し、彼らが経験する幻覚に論及する。第五章では、妖術の具体例と妖術による病気の治療法を示す。第六章では、妖術の害をうけやすい人々、魔女たちの持つ力、悪魔が様々な姿で魔女たちに現れる理由について論じる。第七章では、この世での悪魔の二様の働き、すなわち、あからさまな出現と隠微な不法の術とについて考察する。
著者
志田 未来
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

近年、日本においてひとり親家庭の割合は年々増加しており、ひとり親家庭で育つ子どもたちは低学力・低学歴に陥っていることが様々な研究によって指摘されている。本研究はそのようなひとり親家庭の子どもたちが、どのような経路をたどってそういった困難に直面しているのか、また、その困難を乗り越えられるとしたら何が影響を与えているのかということを明らかにすることを試みる。2011年から2012年にかけて行ったひとり親家庭の子どもに対するインタビューをまとめ、学会誌『教育社会学研究』へ投稿,掲載された。また、2011年より行っている公立中学校でのフィールドワークを継続し、ひとり親家庭で育った子どもが、どのような学校経験を経ているのかを現在も調査中である。また,国内での調査と並行して海外における調査も実施した。2013年度,2014年度と同様にアメリカ・カリフォルニア州の公立高校における調査を、約6週間に渡って行った。同校はひとり親家庭を筆頭に、不安定な家族で暮らす子どもたちが多く通っており、エスニック的にもブラック、ラティノなどのマイノリティが多く在籍している。このような不安定な家庭が多い校区にある調査対象校は、社会的困難を「克服」している学校であることで注目されている。そのため、フィールドワークによって、不安定な家族で暮らしている子どもたちに対して、学校はどのような支援が可能なのか、ということを調査した。同校での調査が3年目であったこと、6週間の長期調査であったことも影響して、質・量ともに昨年度よりも望ましいデータを取得することができるとともに,経年的なデータを入手できた。アメリカにおけるフィールドワークより入手したデータは,教育社会学会大会にて発表するとともに,複数の学会誌への投稿を試みている。
著者
橘田 誠
巻号頁・発行日
pp.1-233, 2014-03-20

本稿は戦前期からの大都市自治拡充運動の成果として、1947(昭和22)年に地方自治法によって制度化された特別市制度が施行されることなく廃止された過程や背景について、横浜市の神奈川県からの分離独立の歴史的経過に焦点を当て、考察することによって、制度が実現しなかった要因の一端を明らかにしようとするものである。まず、大都市制度の見直しが地方分権改革の俎上に上がっていた2011(平成24)年33月に、都道府県を対象とした大都市制度など地方自治制度に対するアンケート調査を実施し、都道府県の姿勢を明らかにした。この結果をふまえ、従来の特別市制運動論については、五大都市と五大府県との対立点という枠組みで論述されることが多かったが、本稿では、これまで必ずしも詳細に整理されてこなかった個別府県と個別市の関係性を、具体的には神奈川県と横浜市の論争に焦点をあてて、特別市制問題の基層を分析することを試みた。1947(昭和22)年に地方自治法で規定されながらも、憲法95 条の地方自治特別法に基づく住民投票範囲の変更により、直接的に特別市の実施を阻んだと指摘される要因には、GHQの存在があるが、その中でGHQの政策決定に影響を与えた有力人物の一人が、地方自治制度に必ずしも精通していなかった外交官出身の神奈川県知事であった内山岩太郎である。内山の主張は、GHQの意向を踏まえた、府県知事公選や地方分権といった地方自治改革の基本的な考え方を論拠としたものであり、その主張が功を奏したと思われがちであるが、一方で横浜市の位相がこれに影響を与えた可能性も高い。具体的には、神奈川県と横浜市の対立のみならず、横浜市と川崎市という自治体間関係が輻輳し、特別市が実現しなかった遠因となったことも史料により明らかにする。我が国の地方自治制度改革議論は、広域自治体と基礎自治体が併存する地方自治二層制が議論の前提となっている。戦前からの特別市の制度化を求める動きは、官治・集権へのアンチテーゼである大都市自治の拡充運動であり、市民に最も近接した自治体が求める究極の地方分権の姿でもあった。しかし、一層制地方自治制度を志向した大都市を初めとした基礎自治体と二層制地方自治制度の堅持を志向した府県である広域自治体の軋轢で制度が成立しなかった歴史的動向を整理することで、今日的な意義を明らかにしようとするものである。
著者
太田 憲 羅 志偉
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

スキルに関係する物理情報を運動中に感覚情報としてバイオフィードバックするトレーニングシステムを開発し,感覚的・潜在的な学習を可能とするシステム構築した.そのため,超小型センサなどの計測制御機器を用いたウェアラブルで実用的なデバイスを開発し,それらのデバイスを用いた新しいトレーニング方法を開発した.
著者
太田 正穂
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

一塩基多型(SNP)は法医DNA鑑定で利用価値が高い。本研究は識別能の高い3対立遺伝子性(Tri-allelic) SNPsを25種類選出し、ダイレクトシーケンスにより各アリルの遺伝子頻度を求めた。多型情報はPDが0.99999999999997、PEは0.99885を示し、高度な鑑定能力を示した。SNaPShot法によるmultiplex を用いた検出では、判定の条件設定、エレクトロフェログラムの判読の煩雑さから、法医実務での実用性が得られなかった。また次世代シーケンサーを用いた混合試料のTri SNPs解析は、定性・定量性において精度の高い結果を示し、混合試料解析における有効性を示唆した。
著者
安田 彰
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,従来の3相モータの各コイルを複数に分割し,この分割したコイルを我々が提案しているデジタル調節駆動技術を用いて駆動することにより,低電圧電源で高出力・高効率なモータを実現した.また,分割した各相のコイルをノイズシェーピング・ダイナミック・エレメント・マッチング法(NSDEM)を適用することで,コイル間の素子値や位置ばらつきの影響の低減を実現した.さらに,回転磁界を発生させる際に,各相全てのコイルすべてを選択対象とする新しいNSDEMを提案し,各相間のばらつきの影響も低減することを実現した.これらにより,低トルク変動のモータを実現することが可能となった.
著者
見市 文香
出版者
佐賀大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-04-01

寄生虫疾患は、発展途上国を中心に、地球規模で甚大な被害をもたらしている脅威の感染症である。未だに有効な治療法が確立していない疾患が多く存在しているのが現状である。寄生虫疾患の病原体、つまり寄生虫の多くで、ミトコンドリアが退化していることが知られている。退化したミトコンドリアは、ミトコンドリア関連オルガネラ(MRO)と総称され、その特殊性・重要性が徐々に解明されてきている。近年、申請者らは、寄生原虫の一種、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)の“MRO”と“寄生適応”との密接な関係を明示した。具体的には、寄生性赤痢アメーバについて、1) 赤痢アメーバが持つMROである“マイトソーム”の主たる機能の1つが硫酸活性化であり、赤痢アメーバの生存に必須であること。2)その最終代謝産物の1つがコレステロール硫酸(CS)であること。3) CSがEntamoebaの形態変化である感染嚢子(シスト)形成の制御分子であること。4) CS合成阻害はシスト形成阻害を引き起こすこと。を見出した。さらにマイトソーム内にある硫酸活性化経路と細胞質にある硫酸基転移酵素(コレステロール硫酸合成酵素を含む)とを結ぶ輸送体としてマイトソーム内膜上に存在するmitochondrial carrier family (MCF)を同定した。以上のことから、赤痢アメーバのMROが真核生物のMROの例外では無く、必須オルガネラであること、さらにシスト形成という重要な生命現象に関わることを明らかにした。本研究成果は、2015年6月2日発行の科学雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA」および2015年9月発行の科学雑誌「Eukaryotic Cell」に掲載された(Mi-ichi et al, PNAS 2015, Eukaryotic Cell 2015)。
著者
石澤 公明 菊田 淳 高橋 知美 岡 唯理 内山 晃司 佐藤 愛湖 鈴木 亮介
出版者
宮城教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

小学校から大学までの共通植物教材として,ファストプランツ(FP)を使用した学習プログラムを開発した。それには、FPの自家不和合性を利用した他家受粉と自家受粉の種子形成率の違い及びアニリンブルーやコットンブルーで染色された花粉管が花柱から胚珠に達する様子の顕微鏡観察等から受粉と受精の違いを学習すること,また,主根成長に対する塩ストレスや重金属イオンの効果,紫外線による子葉成長の阻害効果,植物栄養と成長の関係等の解析が含まれる。小・中学校でのFPを使った授業実践では,生徒が自分の手で短い期間で栽培できることから,植物の成長や生殖に理解を深めることが出来る優れた教材であることが示された。