著者
笠置 遊 大坊 郁夫
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.1605, (Released:2018-09-01)
参考文献数
32

本研究の目的は,複数観衆問題に直面したとき,どの観衆に対しても呈示することのできる共通特性について自己呈示を行うことが,呈示者の個人内適応と対人適応に与える影響を検討することであった。参加者76名を対象に,複数観衆問題の生起と共通特性の自己呈示の有無を操作したスピーチ実験を行い,参加者の状態自尊感情の変化(個人内適応)を検討した。さらに,5名の評定者に参加者のスピーチ映像を呈示し,参加者の印象(対人適応)を評定させた。その結果,複数観衆状況で共通特性の自己呈示を行わなかった参加者は,実験前と比較し実験後における状態自尊感情が他の条件の参加者よりも低下し,印象評価もネガティブであった。一方,複数観衆状況で共通特性の自己呈示を行った参加者と統制条件の参加者の状態自尊感情の変化量及び印象評価に有意差は見られなかった。最後に,複数観衆問題の解決法として共通特性の自己呈示がいかなる有効性をもつのかについて議論した。
著者
武井 弘一 Takei Koichi
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
地理歴史人類学論集 (ISSN:21858535)
巻号頁・発行日
no.1, pp.33-42, 2010

近世の百姓といえば、田畠を耕しても領主に重い年頁を取り立てられ、自給自足で生きるためで精一杯だったと考えられている。しかし、近年、そのような百姓の暮らしの見直しが進んでいる。そこで、煙草に注目し、百姓の暮らしのなかで、どれくらい喫煙の風習が広まっていたのかを明らかにすることを課題とした。事例としたのは近世中期の金沢平野で、絵農書『農業図絵』を解読することで分析した。その結果、農村での喫煙は基本的に成人男性のみに許された特権で、煙草は噂好品として消費され、農作業の合間や仕事休みに心身のリラックスを求めて飲用されていた。近世中期の段階での成人男性の喫煙率は、最低に見積もって3割であったと考えられる。未公開:論文中の史料1~4は著作者の意向により削除
著者
池 俊介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.359-366, 2018 (Released:2018-06-12)
参考文献数
4
著者
松本 光広
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.82, no.834, pp.15-00127, 2016 (Released:2016-02-25)
参考文献数
16

A bicycle wheel consists of a hub, spokes, nipples and a rim. The rim deforms from true circle to irregular circle when a worker assembles the wheel. People can ride a bicycle in safety when the rim is the true circle. The worker needs to correct the deformed rim. The worker can correct the deformed rim through the use of a relation between a nipple position to rotate a nipple rotation angle and rim displacements. I developed a task support equipment to correct the deformed rim through the use of the relation. The worker does not need to know the relation through the use of the developed task support equipment. The worker can correct the deformed rim through the use of the developed task support equipment. The developed task support equipment shows the worker the nipple position to rotate the nipple rotation angle. The worker rotates the nipple as shown by the developed task support equipment. I measured the relation between the nipple rotation angle and the rim displacements. I suggested a method to calculate the corrected rim displacements through the use of the relation. I made up a hardware and a software in the task support equipment. I implemented the method in the software. I checked performance of the developed task support equipment. I corrected the deformed rim through the use of the developed task support equipment. The results have shown the usefulness in the developed task support equipment for correcting the deformed rim.
著者
片山 剛 Takeshi Katayama 千里金蘭大学 教養教育センター
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-12,

平安時代中期に強大な権力を掌握した藤原道長(966~1027)は、一方では篤い宗教心を持っていたことが諸史料から知られる。その宗教心はどのようにして育まれ、またそれはどのような形に具象化されたのであろうか。彼が政権を不動のものにした三十代後半から当時初老とされた四十代初めにかけて、元号でいうなら寛弘(1004~1012)の前半に当たる時期は、彼の周辺に公私共にさまざまな出来事があった。そんな日々の中で、先祖への崇敬、現世における願望の成就、そして未来の極楽往生に向けて彼がおこなった宗教活動について考察する。
著者
橋本 伸也 野村 真理 小森 宏美 吉岡 潤 福田 宏 姉川 雄大 梶 さやか
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

東中欧諸国・ロシアで深刻の度を増している第二次世界大戦と社会主義時代の歴史と記憶をめぐる政治化と紛争化について、現地調査や国際研究集会の開催などを通じて、実相解明を進めた。6回の国内研究会の開催、個別研究論文の執筆に加えて、2014年度にはエストニアのタリン大学で夏季ワークショップを開催して成果をproceedingsとして公開するとともに、2015年には関西学院大学で国際会議を開催して、東アジアの歴史認識紛争との対比により問題構造の多元的把握に努めた。研究代表者の単著(既刊)や雑誌特集号に加えて、2017年中に国際的な論集と研究分担者らの執筆した共著書2点の刊行が決まっている。
著者
堀田 典裕
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、1960年代初頭に建設された「伊勢湾台風復興住宅」の全容を解明し、その建築デザインについて史的考察を加えたものである。最初に、伊勢湾台風後の復興都市計画と公営住宅に関する資料の悉皆調査を行い、次に、現存住宅の実測調査を行った。前者では、自治体による都市計画のみならず黒川紀章や浅田孝による農村都市計画を、干拓地の復興計画という観点から再評価し、後者では、勝田千里(鍋田干拓・川口干拓・平坂干拓)や小菅百寿(城南干拓・水茎干拓)によるCB造住宅と、農林省(多芸輪中)によるRC造集合住宅について、同時代の都市住宅における建築計画と構法が応用された実験農村住宅として評価した。
著者
林 寿和
出版者
日本経営倫理学会
雑誌
日本経営倫理学会誌 (ISSN:13436627)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.111-127, 2018-02-28 (Released:2018-04-13)

This paper analyzes how the volume of disclosed information and/or impression management in corporate reporting affect companies’ ESG scores, and thus positive screening based on ESG scores by using simulation models. The key findings of this paper are as follows. Firstly, the accuracy rate of positive screening would be significantly affected by the information volume and/or impression management. Secondly, an increase in the number of evaluation items or date points to calculate ESG score seem to provide more multi-dimensional ESG evaluation. However, under the circumstances where the effect of the volume of disclosed information and/or impression management on ESG evaluation exists, the accuracy rate would not be necessarily improved. Thirdly, introduction and tightening of disclosure regulations would improve the accuracy rate, but its marginal effect is incremental. When practitioners employ ESG scoring based on corporate reporting, they need to consider appropriate measures to eliminate or reduce the negative effects.
著者
川津 貴司
出版者
教育思想史学会
雑誌
近代教育フォーラム (ISSN:09196560)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.191-204, 2008-09-12 (Released:2017-08-10)

「日本青年教師団」は、現職教員によって1939年8月に結成され、言論活動や講習会の開催などを通じて、「東亜協同体」建設という国家目標を実現するための教育革新運動を展開した。青年教師団は、1941年12月末に解散させられたが、その中核組織は、終戦後に最初の教員組合結成に加わっている。従来の教育史研究では、青年教師団の「時局便乗」的な性格が注目されてきた。それに対して本稿では、青年教師団運動の理論的指導者であった海後勝雄の存在に注目することで、戦時下の権力と同運動との関連を考察することを課題とした。精神主義や官僚主義への対抗的言説を展開していた海後は、国家的な政治革新にむけて教員を主体化する運動理論を展開し、青年教師団を革新派の国策ブレーンと結びつけることになった。それをうけた青年教師団は、結成当初の精神主義的な性格を脱して、教員の生活状況の改善を要求し、教員支配の階層的秩序を批判する運動を繰り広げた。
著者
山元 貴継 坪井 宏晃
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2017年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100237, 2017 (Released:2017-05-03)

報告の背景と目的 「字(小字)」および「字名」は,多くの地域で地区区分および小地名として用いられてきた.そして,その多くは1899(明治22)年前後の「明治の大合併」以前の村の領域や村名を引き継いでいる,といったイメージがもたれやすい.しかしながらこれまで,「字名」自体の残存状況については各地で多くの言及がみられる一方で,それらの「字」が示す領域までもがどのように継承されているのかについての検討は,管見の限り多くはない. そこで今回の報告では,一見すると「字」がよく残されているように映る愛知県西春日井郡を対象に,とくに同郡において比較的よく残されている「土地宝典」などに記された昭和初期の「字」の名称およびその領域が,対応する現行地区名およびその領域とどのような対応関係を見せているのかについて,例えば両者の重複面積などを算出することによる検討を紹介する.愛知県西春日井郡と「土地宝典」 分析対象地域とした旧師勝町(現北名古屋市)および豊山町が属する西春日井郡は,名古屋大都市圏の中心都市である名古屋市の北側にあり,現在でこそ同市郊外のベットタウンとして大きく発展している.しかしながら一帯は,第二次世界大戦以前には,庄内川北岸に広がる低地に集落が点在し,その周囲には主に水田が展開するといった農耕地帯であった.その後1944(昭和19)年には,このうち豊山町の東部に陸軍小牧飛行場(現名古屋飛行場)が開設されている。 そして同郡内の各町村については,昭和初期(昭和9(1934)年前後)に,地籍図の一種である「土地宝典」が多く作製された.これら「土地宝典」は,当時の地籍図に各地筆の地目や面積の情報を加筆して作製されたものである.その図面を画像ファイル化し,幾何補正して現行1:10,000地形図にレイヤーとして重ねることによって,現在では失われてしまった「字」も含めて,かつての「字」の領域が現在のどこに相当するのかが詳細に明らかになる.西春日井郡における旧「字名」の残存状況 まず,「土地宝典」記載の昭和初期の各「字」名自体は現在,豊山町側では依然として一定数がそのまま地区名として用いられているのに対し,旧師勝町側では,旧「字名」に旧「大字名」を冠し,連称化した地区名と,旧「字名」の一部を改変した地区名が多く採用されている. こうした旧自治体による対応の違いに加えて,豊山町側では,小牧飛行場の敷地となり,現在では「字」の存在自体が不明となった範囲がみられる.西春日井郡における旧「字」域と現行地区域との関係  一方で,「土地宝典」図面の幾何補正により判明した旧「字」域と,その「字名」を何らかの形で引き継いでいる形となる現行地区(「字」を含む)の領域とを,その位置に加えて面積的にも比較した結果,かつて集落であった範囲において,旧「字」域と対応する現行地区域とが面積的にも高い割合で重複することが明らかとなった(図).また意外にも,集落の中心から遠く離れ,かつて水田などが展開していた範囲においても,旧「字」域と対応する現行地区域とが面積的にも比較的一致した. 対して注目されたのは,かつての集落のすぐ外周となる範囲であった.同範囲では,一見すると旧「字」に対応する現行地区(「字」を含む)がみられるものの,両者の領域の面積的な重複は少なく,いわば,かつての旧「字」域からいくぶん外れた範囲となった現行地区が旧「字名」を引き継ぐ地名を名乗っている形となっているところがみられやすかった.旧「字(小字)域」変化のプロセス 「字名」だけでなくその領域にも着目した今回の分析からは,とくにかつての集落のすぐ外周に相当する範囲において,「字名」自体は現在まで残されていても,その領域は変化してしまっているところが少なくないことが指摘された.そうした「字」は,都市化に伴い宅地の範囲を拡大させたもともとの集落の属する「字」にその領域の一部を譲る代わりに,さらに外側の「字」域の一部を編入するといった「玉突き」状の字域整理を行った結果,旧字域とその字域を引き継いでいるはずの現行地区(「字」を含む)域とのずれが大きくなってしまったことが想定された. 今回試みたような分析手法をもとに,今後各地で,「字(小字)」の残存状況についての再検討が進むことを期待したい.
著者
山崎 眞
出版者
海人社
雑誌
世界の艦船
巻号頁・発行日
no.730, pp.98-105, 2010-10