著者
大島 寛斗 小松 孝徳 山田 誠二
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回全国大会(2020)
巻号頁・発行日
pp.3J5OS9b02, 2020 (Released:2020-06-19)

年々コンピュータの処理速度が向上しているものの、ユーザはコンピュータの処理を待つという状況からは逃れられない。そこで、待ち状態にあるユーザの負担を軽減する様々な方法が提案されているが、本研究では短い周期のアニメーションが繰り返し提示される「スロバー」に着目し、その構成要素とユーザの主観的待ち時間との関係を分析することを目的とした。具体的には、スロバーの「回転速度」「大きさ」という二つの要因が、ユーザの待ち時間に与える影響について調査を行った。その結果、スロバーの提示時間が5秒の場合,回転速度が遅く、表示サイズが大きいと、その待ち時間が有意に短く感じられることが明らかとなったが、提示時間が長くなるにつれてその効果が薄れることが明らかとなった。この結果より、スロバーの構成要素を微調整することで、ユーザの主観的待ち時間を暗黙的に操作できる可能性が示されたといえよう。
著者
伏信 進矢 山田 千早 荒川 孝俊 北岡 本光
出版者
一般社団法人 日本応用糖質科学会
雑誌
応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌 (ISSN:21856427)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.103-108, 2020-05-20 (Released:2021-06-01)
参考文献数
30

レボグルコサン(LG)はグルカンの熱分解で生じるグルコースの1,6-アンヒドロ糖であり,LG資化性の真核微生物から得られたLGキナーゼとそれを利用した研究は近年大きな進展がみられた.我々は先行研究をもとに細菌Pseudarthrobacter phenanthrenivoransからLG脱水素酵素(LGDH)を取得しその生化学的性質及び構造と機構を明らかにした.LGDHはLGとNAD+に特異的な活性を示し,3-ケトレボグルコサンを生成する酸化反応を触媒することがわかった.さらに,LGDHの結晶構造をNADH及びLGとの複合体を含めて決定することに成功し,その構造的特徴や基質認識,反応機構などを明らかにした.LGを含むアンヒドロ糖はバイオマス燃焼や農産物熱処理などで大量に生じていることから,それらを資化できる微生物とその酵素の研究は近年ますます盛んになっている.今後は,真核微生物由来のLGキナーゼだけでなく,細菌由来のLGDHの利用研究も発展すると期待される.
著者
西尾 正輝 田中 康博 新美 成二
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.6-13, 2009 (Released:2010-03-17)
参考文献数
49
被引用文献数
5 7

健常成人発話者262例(青年群200例,老年群62例)を対象として,青年期以降の加齢に伴う音声の変化について音響学的に解析し,主に以下の結果を得た.男性では,基本周波数に関する計測ではT0が短くなりF0が上昇し,周期のゆらぎに関する計測ではJitt,RAP,PPQで上昇し,振幅のゆらぎに関する計測では,ShimとAPQを含めて全体的に上昇し,雑音に関する計測ではSPIで上昇し,震えに関する計測ではATRIで上昇する傾向を呈した.女性では,基本周波数に関する計測ではT0が延長しF0が低下し,周期と振幅のゆらぎに関する計測ではほぼ変動が乏しく,雑音に関する計測ではNHRで上昇しVTIで低下し,震えに関する計測ではATRIで上昇する傾向を呈した.今回得られた知見ならびに正常範囲に関するデータは,加齢による生理的変化の範囲内の音声と病的音声との識別上臨床的に意義のあるものと思われる.
著者
酒井 隆
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.292-307, 2002-07-30 (Released:2008-12-25)
参考文献数
67
著者
多和田 裕司
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:24240508)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-19, 1991-06-30 (Released:2018-03-27)

本論文,マレーシア・クランタン州におけるマレー系村落での実地調査に基づき,村落におけるリーダーシップの検討を通して,何がマレー・リーダーシップの基盤に存在しているのかを分析する。そのさい,ひとりのプンフル(村落レベルでのリーダー)の姿を具体的に描き出すことによって,従来の社会構造論的,機能論的研究においては見逃されてきた文化的な「力」がリーダーシップを構成する力として存在することを指摘する。
著者
小山 達弥 網干 光雄
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集C編 (ISSN:18848354)
巻号頁・発行日
vol.78, no.789, pp.1617-1631, 2012 (Released:2012-05-25)
参考文献数
8

When there is an undulating wear on overhead rigid conductor line, arc due to contact loss is generated between the conductor line and a pantograph. The arcs cause extreme wear of contact lines and contact strips of the pantograph. However the mechanism of the undulating wear formation has not been clarified. This paper to make clear the mechanism of the formation of the undulating wear through on-site investigation of overhead rigid conductor lines and excitation tests of the pantograph. It was been clarified that the dynamic characteristics of pantograph and the distance between pantograph heads play a causal role in the undulating wear formation. Firstly, a periodic unevenness is generated by mechanical wear that is caused due to the dynamic characteristics of pantograph, especially anti-resonance phenomenon of pantograph. When the wear amplitude of unevenness grows to the extent with which pantographs cannot comply, arc due to contact loss occurs between overhead rigid conduct line and the pantograph. By this arc, electric wear is generated in a hollow of unevenness, then the undulating wear of which wavelength is related to the interval of pantograph head grows.

2 0 0 0 OA 原料処理

著者
丸山 新次
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.184-190, 1998-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
25

新人の方々のために, これから6回にわたって, 清酒の基本技術について解説いただく。今回は, 原料処理について非常に詳しい筆者に解説いただいた。一通り酒造技術を学ばれた中堅の方々にとっても, 十分参考になるものと思われる。
著者
小倉 由紀子 北川 眞理子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.333-344, 2010 (Released:2011-04-07)
参考文献数
27
被引用文献数
2

目 的 本研究の目的は,家庭での性教育における親の果たすべき役割を親子双方の視点から明らかにすることである。研究参加者と方法 研究参加者は,A県下M市内中学校1年生から3年生の親子の中から,10組21名を抽出し文書で通知,その後電話で研究の説明をおこない内諾が得られたものとした。親が10名、子どもが11名で、親子別々に家庭での性教育実施における親の果たすべき役割について非構成化面接を行い,データ収集を行った。得られたデータを質的に記述し分析を行った。結 果 家庭での性教育実施における親の果たすべき役割について11カテゴリーが抽出された。その中で、親が考える家庭での性教育における親の果たすべき役割は、【学校教育での性教育の内容を知る】【学校教育との連携をはかる】【性の相談に対応し知恵を伝授する】【子どもの成長発達を受け止める】【正しい性知識を伝える】【親子の関係性を調整する】【性情報の氾濫に対応する】【夫婦の関係を円満にする】の8カテゴリーが抽出された。また子どもが考える家庭での性教育における親の果たすべき役割は、【子どもが望む性教育実現への支援】【子どもの求める性問題へ介入する】【家庭環境を調整する】の3カテゴリーが明確となった。結 論 本研究より,家庭での性教育における親の果たすべき役割は,知識だけではなく経験の中での知恵や細かい実践部分での対応に関連していた。子どもと親との関係において,どれくらい親が子どもに向き合い子どもにとって話しやすい相手であることかが重要であった。
著者
佐久間 正美
出版者
日本医科大学医学会
雑誌
日本医科大学雑誌 (ISSN:00480444)
巻号頁・発行日
vol.18, no.8, pp.780-797, 1951-08-15 (Released:2010-10-14)
参考文献数
11
著者
前山 文子
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.306-314, 1990-09-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10

現行慣用の経穴の名称及び位置に関する根本出典である皇甫謐:『鍼灸甲乙経』には, 鍼の刺入深度が記載されている。これを資料として原典の経穴観を立体的に探る試みを行なった。鍼刺深度を現代尺度に換算し, 深度別, 部位別, 経穴別にそれぞれ比較検討した。深度別では0.5%を占め, 1.5~2.5寸の深い経穴は3%であった。部位別では深い経穴は下腹部と仙骨部に見られ, 上肢・顔面が最も浅かった。経絡別では平均値が任脈が最も深く, 腎経・胃経に深い経穴が見られた。四肢では陰経が浅く, 陽経が深い。刺入深度が何を意味するか, その一端を探るために皮厚を測定したが, 刺入深度と皮厚と相似したパターンを示した。
著者
沼田 真
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.7, pp.412-418, 1977-07-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
25
被引用文献数
6 4
著者
今村 洋一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.247-252, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
15

終戦時、軍港であった横須賀市には、非常に多くの旧軍用財産が残された。それらは、1950年に作成された横須賀市転換事業計画に沿って、様々な用途へと転用されたことが知られている。しかし、終戦直後に、横須賀市と国(大蔵省)が、それぞれ、具体的な旧軍用財産の転用計画を作成していたことは、あまり知られていない。そこで本研究では、横須賀市と国が作成した3つの転用計画の内容を明らかにするとともに、個別の旧軍用財産の転用案を比較することによって、転用計画にどの程度の齟齬が見られるのかを明らかにする。
著者
家 研也
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.101-104, 2021-06-20 (Released:2021-06-23)
参考文献数
9

本邦の総合診療領域でも,研究に興味を持ち大学に所属したり,研究の勉強会に参加する若手が増えてきている印象がある.しかし,日本の総合診療業界自体が若く,総合診療が発展した諸外国と比較すると,まだまだ研究の質,量,そして実践のノウハウも発展途上である.臨床に重きをおく総合診療領域で,そもそもどのように研究テーマを選んで行けば良いのか,そして研究が実践できるようになるために何から始めれば良いのか,といった悩みを若手から聞く機会も多い.本稿では,もともと開業志向であった一人の若手総合診療医が,診療所,市中病院,大学病院を含む様々な環境を経験するなかで,少しずつ研究への興味を深めながら実践を続け,ライフワークの一つとするに至った過程を実際の研究の取り組みも併せて紹介する.