著者
井上 真琴 小川 千代子
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.77, pp.1-11, 2006

<p>図書館でのアーカイブ資料の取扱いは大きな課題である。通常の図書資料とは性格が異なるため,アーカイブ資料の特性を活かすためには,独自の整理方法と利用方法が必要になる。しかし,アーキビストのスキルを持った図書館員の養成は容易ではなく,未整理のまま置かれている資料も多い。同志社大学ではその打開策として,図書館員がアーカイブ資料の性格や取扱いを認識したうえで,アーカイブ資料の整理にアウトソーシングを利用する試みを行った。この企画から整理公開へいたるプロセスを,発注側担当者と業務指導コンサルタントそれぞれの立場から詳述し,課題解決の実践例として報告する。</p>
著者
佐藤 功
出版者
上智大學法學會
雑誌
上智法学論集 (ISSN:04477588)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.p185-209, 1977-03

有泉 亨教授退職気年号
著者
松下 拓樹 権頭 芳浩
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.355-365, 2000-07-15 (Released:2009-09-04)
参考文献数
38
被引用文献数
2

雨氷発生の気候学的な地域特性を調べるため, 長野県を解析対象地域として, 雨氷発生日の特定を行い, その年平均日数の地域分布を求めた.雨氷は, 過冷却の雨滴が地物などにあたり氷になる着氷現象の一種で, 上空暖気層 (気温0℃以上) で雪片が融解して雨滴となり, それが地表付近の寒気層で冷されて過冷却の雨滴 (気温0℃以下の降水) となり発生する (melting ice process).その他, 大気全層の気温が0℃以下の場合 (supercooled warm rain process) でも発生することがあるが, ここではmelting ice processのみを対象とした.高層資料から上空暖気層の有無を, AMeDAS資料から地表付近の寒気層と降水の有無を調べ, 二つの気象条件を満たす日を雨氷発生日と定義した.過去20冬季 (1979年11月~1999年4月) について調べた結果, 雨氷の発生は3月に最も多く, 次いで12月に多いことがわかった.また, 最近6年間は雨氷発生日数が少ない傾向にある.次に, 地形因子値を用いた重回帰分析から, 年平均雨氷発生日数のメッシュマップを得た.その結果, 年平均雨氷発生日数は長野県中部と東部で多いことがわかった.特に標高との関係が強く, 山岳地域や高原地域で多くなる傾向が得られた.一方, 北部と南部の低標高地域では少ない傾向にある.
著者
鳥田 宏行 武田 一夫
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.39-44, 2007 (Released:2008-07-10)
参考文献数
27
被引用文献数
2 2

森林の雨氷害を軽減する知見を得るため,2004年2月に北海道日高町で発生した雨氷害の調査データを解析したところ,直径階ごとの本数被害率の分布形状は,大きく五つのタイプ((1)中庸木に被害が多い,(2)劣勢木に被害が多い,(3)優勢木に被害が多い,(4)立木のサイズに関係なく被害率の変動が激しい,(5)直径階の大小に関わりなく被害率が一定)に分類された。分布形状に差異がみられるのは,風や着氷量などの気象因子が少なからず影響したためだと推察される。また,密度管理図上で軽害林分と激害林分間の判別分析を行った結果,的中率は75%であった。判別分析で得られた判別式と収量比数0.9線を用いて安全域と危険域の境界線を描き,被害軽減が期待できる範囲を密度管理図上に示した。次に,林分平均樹高との限界形状比の関係をロジスチック式で近似して限界形状比曲線を求めたところ,生育段階で限界形状比は異なることが示された。これらの結果は,森林の雨氷害を軽減するためには,植栽密度に沿った適切な間伐が重要であることを示唆している。
著者
香山 不二雄
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.77-82, 1989-03-01

今回本学の産業医学卒後教育に資する目的で, 米国の産業医学生涯教育の実状を視察し, また一受講生として, 体験学習する機会を与えられた. 昭和63年2月から2カ月間にわたり米国各地において米国人を対象にした産業医学生涯教育セミナーに参加してきた. 受講生の大部分がindustrial hygienist (0H)である点や, 教育方法の違いはあったが, 教育内容は本学の産業医学基本講座に非常に類似していた. NIOSHの生涯教育プログラムの中でのMDの受けるコースはミニ・レジデンシーなど少数のコースに限られていた. 参考のために, そのカリキュラムを紹介する. また産業医学の専門医のトレーニングとして, 3年間のレジデンシー・プログラムの状況も簡略に述べた. 米国では, 専門的にトレーニングを受けた有能なIHが, かなり決定権を与えられており, 職場の衛生管理, 環境管理を行っている. IHは現在の米国の産業衛生に大きな貢献をしているという印象を得た. 専門医制度の発達している米国では, 私の知り得た限りでは, 産業医学専門医は, 臨床専門医のイメージの強い産業医であった.(1988年11月15日 受付,1988年12月16日 受理)
著者
大国 寿士 紺野 洋 清水 紘明 木村 義民 馬杉 洋三
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR BACTERIOLOGY
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.59-65, 1972

A群レンサ球菌5型菌(T5B株)より細胞壁分画を得,これをマウス腹腔に投与し,経時的にと殺して細胞壁成分の局在持続性につき螢光抗体法を用いて検討し,合わせて心臓における病理組織学的検討を行なつた。<br>その結果C-多糖体,ペプチドグリカンが共に45日以上にわたり肝・脾などの網内系ならびに心臓に局在し,とくにプロナーゼ処理細胞壁投与マウスにおいては10日目で,また未処置細胞壁投与マウスでは1ヵ月後に心筋に強い肉芽腫を形成しえた。そしてこれらの病変は,投与後2日目頃よりファイブロブラスト様の細胞が出現したこと,病変部位に抗体の証明ができなかつたこと,毛細管沈降反応の感度では血清抗体をチェックしえなかつたこと,などから恐らくは細胞壁,とくにC-多糖体・ペプチドグリカン複合体のもつ生物活性に基づく直接的な作用により惹起されたものと推定した。
著者
浅井 智子 奥野 哲郎 松浦 一穂
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.843-849, 1986-12-25
被引用文献数
1 3

いもち病菌胞子からのプロトプラストはザイモリアーゼと β-グルクロニダーゼを, また, 菌糸からのプロトプラストはドリセラーゼとセルラーゼを用いることにより効率よく分離できた。胞子及び菌糸プロトプラストは細胞壁を再生後, 直接菌糸復帰する場合とイースト様に出芽する場合が認められた。培養時の pHが高い (pH 7.0) 場合は液体中で大半のプロトプラストは直接菌糸復帰したが, pH が低い (pH 5.0) 場合は大半が出芽様発芽をした。pHが低い場合でも寒天中 (1%以上)で培養すると直接菌糸復帰する細胞が増大した。カルコフロールホワイトで染色すると, 細胞壁再生細胞と出芽様細胞の螢光強度は培養液の pH が高くなるに従って増大したが, 復帰菌糸のそれは pH に影響されなかった。このことは細胞壁再生過程が pH により影響を受けること, また, その結果, 発芽形態の差となって表れる可能性を示唆している。
著者
林 洋子
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究
巻号頁・発行日
vol.32, pp.13-37, 2006-03-31

両大戦間の日本とフランスの間を移動しながら活躍した画家・藤田嗣治(一八八六―一九六八)は、一九二〇年代のパリで描いた裸婦や猫をモティーフとするタブローや太平洋戦争中に描いた「戦争画」で広く知られる。しかしながら、一九二〇年代末から一九三〇年代に壁画の大作をパリと日本で複数手がけている。なかでも一九二九年にパリの日本館のために描いた《欧人日本へ到来の図》は、画家がはじめて本格的に取り組んだ壁画であり、彼にとって最大級のサイズだっただけでなく、注文画ながら異国で初めて取り組んだ「日本表象」であった。近年、この作品は日本とフランスの共同プロジェクトにより修復されたが、その前後の調査により、当時の藤田としては例外的にも作品の完成までに約二年を要しており、相当数のドローイングと複数のヴァリエーション作品が存在することが確認できた。本稿では、この対策の製作プロセスをたどることにより、一九二〇年代の静謐な裸婦表現から一九三〇年代以降の群像表現に移行していくこの画家の転換点を考える。
出版者
帝国学士院
巻号頁・発行日
vol.第1巻, 1945
著者
田中 義一閣下
出版者
コロムビア(戦前)
巻号頁・発行日
1928-01
著者
荻野 千鶴子 古川 智恵子 加藤 恵子 後藤 喜恵
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.27-39, 1971-03-15

高校履習課程別による,被服構成および実習における履習教材や本学における知識技能差の調査結果をまとめると,1.中学における履習教材では1年活動着では,ブラウス,3年外出着として,ワンピースは90%以上の高率をしめし,2年休養着はパジャマよりゆかたを履習した学校が多かった.高等学校においては,普通課程ではブラウス,スカートの履習教材が多く,家政課程における洋裁はブラウス,スカート,スーツ,ワンピース,ベストが多く和裁においては羽織,帯,ゆかた等が多くみられた.本学短期大学の履習教材においでは3グループともブラウス,スカート,ワンピース,ゆかたを実習細目に取り入れている.また全国短大の集計も第一報に報告したように,ブラウス,スカートは100%を越え,ワンピースは62%の履習となっている.以上の点からみてブラウス,スカート或はやや下廻るがワンピースは中学校,高等学校,短大といずれの学校においても同じ教材を取扱っているが,果してたての関連はどうなっているだろうか,生徒学生の興味の上からもこれら重複教材の取扱い方について今後研究する必要があると思われる.また一方高等学校の履習課程の違いによる入学当初の能力の差をそのままにして,普通課程,家政課程の出身者を同一クラスにおいて授業を進める場合の指導法の問題点などが今後の取り組むべき課題と考えられる.2.学生の関心度では,3グループを通じAグループが最も意識層が高く,次いでBグループで,Cグループは各段階のばらつきがみられて,意識として低くそれぞれの目的とするグループの意識の傾向がすなおに出ていると考えられた.3.技能テストを統計的にみると,入学当初は家政課程出身者が3グループとも平均値が上位であるが,穴かがりの上達度においては普通課程の入学後の技能の伸びが,各グループとも顕著にみとめられたが,家政課程出身者は入学後の伸びがそれほどみられなかった.このことは45年度の巾広い技能テスト調査をまたなければ正確な傾向は把握できない.4.知識テスト結果でも入学時はA・B・Cグループとも,家政課程出身者の方が上位であることがみとめられたが,一年後のテスト結果では3グループとも統計的にみると普通課程と家政課程の間に差はなくなり,平均値ではむしろ普通課程が高く出現した.44年度の以上の結果から入学当初は,明らかに高校の課程別による能力差が認められたが引続き45年度も更に一層能力差とその移行状態を明確にするための調査を続行中であるが,現在本学では,普通課程,家政課程出身者を区別することなく,むしろクラスの殆んどを占める普通課程に規準を置いているために,家政出身者には当初足踏状態のものもあるのではないかとも考えられる.これを解決するための指導方法へ今後は研究を深めていきたいと思うのである.本研究にあたり,実験に御協力下さった本学家政科学生に厚く感謝する.
著者
趙 景達
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.889-909, 2011

植民地朝鮮において、天道教(新派)は大きな役割を果たした。文化運動や啓蒙運動を積極的に行い、民族運動の主役も占めたといえる。しかし、その運動は終始協力的であった。そして、朝鮮の植民地化は他者=日本の問題ではなく、朝鮮人の民族性に問題があるとして、民族改造を唱えた。天道教の民族主義は端的にいって文化的民族主義と評価することができる。こうした天道教は文化と啓蒙に執着するがゆえに、勢い民衆の主体化をおろそかにした。そこで、一九二〇年代の終わり頃に民衆向けの通俗的な教理書である『天道教理読本』の刊行が意図された。しかし、総督府から大幅な検閲削除を受け、その刊行はならなかった。以降、天道教はますます穏健化し、戦争協力の道を進んでいくことになる。
著者
牛尾 収輝 若林 裕之 西尾 文彦
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.299-305, 2006-07-15 (Released:2010-02-05)
参考文献数
19
被引用文献数
2 4

1990年代後半から2005年までの間,南極リュツォ・ホルム湾では沿岸定着氷の崩壊・流出が頻繁に観測されている.南極沿岸海氷の変動特性を把握するために,同湾で生じる海氷流出の履歴に着目して衛星画像を解析した.その結果,流出発生の有無,つまり海氷の安定/不安定は数年間ずつ続いていること,それらの発現時期は海氷上積雪深や地上気温・風系の年々変化の傾向と符合していることが見出された.また,同湾南端に流れ込む白瀬氷河の浮氷舌の動態を加えて,過去50年間の沿岸定着氷の変動を推定したところ,1980年代初期以降の約25年間は不安定で,それ以前に長期間続いた安定な氷状と顕著に異なることがわかった.南極リュツォ・ホルム湾の沿岸定着氷の変動を解析した結果,以下のことがわかった.