著者
佐々木 武仁
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科放射線学会
雑誌
歯科放射線 (ISSN:03899705)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.126-129, 2006-09-30 (Released:2007-08-17)
参考文献数
10

The current epidemiological data on radiation carcinogenesis in humans and the biological mechanisms are discussed in this review. It was concluded that a threshold dose for radiation carcinogenesis above order of 1 mSv is an unlikely possibility. The prudent approach in procedures required for justification and optimization should be considered in practice of radiography.
著者
小草 牧子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2001

本年度の研究は、前年度の基礎研究の総括とその研究分析結果をもとにした構法開発が主であった。基礎研究の総括としては、まず個々に行われている研究を収集しそれらを体系化することがベースとなる。また、遊牧型住居に限らず、自然材料を使用している在来構法についても同様であるが、これらの住居形態は、「原始的住居形態」として位置付けられた上で取り上げられていることが多いため、本研究では、さらにそれを発展させ、住居環境や構法システムなどの評価を行い、現代への技術移転や構法開発に関する研究に展開させた。その際、構築される評価システムは1960年代半ばに生まれたPOEの概念を参考にし、これまでに細分化され試みられた評価方法から、評価項目の検討と評価指数の設定に関して分析し、独自の評価分野と項目、指数設定を行い評価を試み、その結果を構法開発にフィードバックするものであった。発展途上国において、在来構法を応用した経済的、合理的な構法開発を行うためには、構法システムについて考察する必要があり、そのシステム開発においては、これまでの建築生産の変遷を調査、分析することが不可欠であった。建築産業の分野としては、特に大量生産の時代におけるユニット方式、プレファブリケーションによる部品の大型化やBE(Building Element)論について、また、建築家による仮設住宅やアフリカでの住宅提案、軍事用仮設建築について、さらには、UNDROやUNHCRなどの活動報告による、近年の災害時や難民キャンプなどで必要とされる仮設住宅の提案、実験について、それぞれの分野でのデータ収集と分析研究を行った。また、これまでの基礎調査とパイロットプロジェクトを踏まえて、技術移転を利用した学校施設計画と実際の建設活動を行っているが、この構法計画において日乾し煉瓦の開発を行い、環境に適した建築資材の提案を行ったという意味で、途上国の抱える施設不足の解決糸口として評価できるものであり、同時にサスティナブルな開発援助手法を示唆するものとなった。
著者
三好 美織
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

科学的素養の内実は、科学そのものの知識のみならず、現実社会で必要とされる問題解決や科学的手続きに関わる能力と態度をも含むものであり、それらを総合的に運用することのできるコンピテンスとして捉えられる。学校教育において科学的素養を育成するために、小学校から高等学校まで方向性を一にした一貫性あるカリキュラムの作成、評価規準の具体化、実際的で多様な文脈を基盤とした児童・生徒を主体とする探究的な学習活動の導入、及び教員に対する情報提供と支援が必要である。また、学際的な学びを実現するため、既存の教科の枠組みをこえた新たなカリキュラムを検討する必要がある
著者
半田 美織 日下 和代 叶谷 由佳 佐藤 千史
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.20-30, 2004-01-13
被引用文献数
5 1

本研究はデイケアに通所中の精神障害者59名を対象とし, アンケートと面接調査, 参与観察により主観的QOLや影響要因を分析することによって, 障害者の抱える問題を明確化し, デイケアにおける援助について検討することを目的とした.<BR>その結果, 以下のことが明らかになった. (1) 入院経験のある人はない人に比べて生活満足度が低かった. (2) 疾患によって心理的機能の満足度が異なる. (3) 同居者や相談相手がいる人, 相談相手に家族やクリニック以外の友人が含まれている人の生活満足度が高かった. (4) 食事を週1回以上は自分で作る人は心理的機能領域で, 家族が食事を作ってくれる人は身体的機能領域で満足度が高かった. (5) 障害受容の満足度は全体的に低く, その満足度が高い人は生活満足度が高かった. これらから, 対人関係や自尊心, 自己認知概念などの要因は生活満足度への影響が大きく, これらの要素に対する援助の重要性が示唆された.
著者
阿部 智和
出版者
長崎大学
雑誌
經營と經濟 : 長崎工業經營専門學校大東亞經濟研究所年報 (ISSN:02869101)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.27-50, 2008-06

This paper focuses that some the relationship between communication patterns and the distance. The paper shows that an inverse relationship between the distance separating employees and the amount of face to face communication occurring between them. And the paper also shows that the distance positively correlates with the amount of telephone calls, and does not with the amount of e-mail. The research reported here indicates that telephone calls are convenient alternative to face to face communication when geographically dispersed employees want to communicate. And it also indicates that the common belief that e-mail are convenient alternative to face to face communication when geographically dispersed may be false, and that the use of e-mail is irrelevant to the distance.
著者
稲見 華恵
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究では、宇宙の星形成を支配する高光度赤外線銀河について多角的・統計的・定量的に調査した。特に、日本の「あかり赤外線天文衛星」および米国の「スピッツアー赤外線宇宙望遠鏡」を駆使したことにより、新しいエネルギー源診断法の確立とスターバースト銀河における物理化学状態を明らかにした。特に、本研究のサンプルは、近傍宇宙のLIRGsを網羅したものであり、初めて均質かつ統計的なデータを用いることによりLIRGsの全体像を捉えた。本研究員が筆頭研究者として取得した、あかり衛星の2.5-5μm帯の近赤外線分光データを利用し、新たなエネルギー源診断の手法を確立した(図1)。この波長帯では、スターバーストを示唆するダスト粒子・多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon,PAH)の輝線が3.3μmに、星形成率の指標となる水素原子の再結合線が4.05μmにあり、さらに、AGNに起因する高温の塵からの熱放射(連続光)を観測することができる。スピッツアー宇宙望遠鏡には、この波長帯を分光観測する装置がないために、この情報を得ることは一切できない。特に3.3μmのPAH輝線は、将来ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が打ち上げられた際に、非常に重要な役割を持つ。次に短い波長にあるPAH輝線は6.2μmであり、赤方偏移が4以上の遠方銀河では、望遠鏡の観測可能波長帯の外側(長波長側)にシフトしてしまい、観測が不可能になるためである。この成果により、遠方銀河にも応用することができる新しいエネルギー源診断法を初めて確立することができた。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の時代には、この業績は非常に重要になることが期待されている。これに加え、4.05μmの水素再結合線の等価幅を調べることにより、銀河を構成する星の年齢を明らかにした。この輝線と3.3μmのPAHダスト放射の放射強度比からは、近傍宇宙にあるLIRGsの電離度も調べることができた。近傍LIRGsの性質をこのように網羅的に調査した研究は初めてであり、これらの成果は高赤方偏移の銀河を調査するための基準点となる。
著者
菊地 和也
出版者
一橋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

私の研究は政治経済学(political economics)と呼ばれる政治学と経済学の学際的分野に属する。主な研究目標は、政党と投票者の間に、政治的情報の非対称性が存在する場合に、政党がどのような公約を掲げるかを明らかにすることであった。現実の選挙では、政党は政策決定において重要な情報を私的調査機関や官僚を通じて得るため、投票者よりも豊富な知識を持つ傾向がある。こうした状況を記述するために不完備情報ゲームを構築し、そのベイジアン均衡を分析をした。論文Kazuya Kikuchi (2010), "Downsian political competition with asymmetric information : possibility of policy divergence"(ジャーナルに投稿済み)では、政党が完備情報を持つ一方、投票者は不完備情報を持つ状況を分析した。別の論文Kazuya Kikuchi (2011), "Privately informed parties and policy divergence," Global COE Hi-Stat Discussion Paper Series 160では、Kikuchi(2010)のモデルを、政党は完備情報を持たず、状態変数に関する私的シグナルを受け取る状況に拡張した。いずれのモデルにおいても、政策乖離を伴う均衡、すなわち二政党が異なる政策を公約として選択するベイジアン均衡が存在することが示された。さらに、前者の論文のモデルでは政策乖離を伴う均衡がHarsanyiとSeltenの意味で一様完全であり、後者の論文のモデルではベイジアン均衡自体の個数がある意味で少ないことが示された。これらは、情報非対称性の下での政策乖離を伴う均衡に注目することに、一定の正当性を与えるものと解釈される。
著者
井上 尚 岡田 龍太郎 北川 高嗣
雑誌
研究報告データベースシステム(DBS)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.17, pp.1-7, 2011-10-27

本稿では色から人間が受ける印象を定量化したデータベースを活用し,ユーザの画像作成時に印象という側面から情報を提示し、支援するシステムを提案する.我々はこれまでに言葉と言葉の意味的相関を計量する事のできるモデルである意味の数学モデルと,各種メディアデータの専門家の知識データベースを用いメディアデータから言葉とその重みのメタデータを抽出する Media-lexicon Transformation Operator を組み合わせる事により,各種メディアデータを統合的に取り扱う枠組みを提唱している.本稿ではカラーイメージスケールと呼ばれる色彩とそれから受ける印象の関係について述べた心理学の研究成果を専門家の知識データベースとして利用し,上記の手法を用いることで,ユーザの画像作成時にそれから受ける印象を動的に計算し,提示するシステムを作成する.本システムはブラウザ上で動作する Web アプリケーションで,線画の閉領域に対し色を対応させていくぬり絵のような形式をとる.まず最初にユーザが表現したい画像のイメージを任意の英単語の組み合わせとして入力させ,それらの単語群の持つ印象に対応する色をいくつか提示する.さらに画像作成時の支援として,ユーザが画像に色を付けると,画像から動的に計算し,それから受ける印象のリストをフィードバックする.これらのシステムにより,色による印象という専門家の知識を一般のユーザが意識することなく活用することが可能となる.This paper presents an implementation of drawing support application utilizing database for defining the relation between color and impression. We have realized Mathematical model of meaning that be able to compute semantic correlations between words and Media-lexicon Transformation Operator that be able to extract weighted words from media data using knowledge database for various media. Using both methods, we have realized a connecting method among heterogeneous media data. In this paper, we implement a drawing support application that suggest impression words computed by using method previously described with "Color Image Scale" (the database written about the relation between color and impression ). This application operates with browsing software. Users draw in monochrome line art. First,users input a combination of words as impression which users want to express, then suggested some colors corresoonding to this combination. And while users draw art,this application suggests a list of impression words which understand current art. This application implemente layman leverage specialist knowledge about color without regard for it.
著者
今野 裕昭
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

震災後の生活再建過程に関する真野地区の被災者への面接聞き取り、アンケート調査の再分析、避難所避難者の属性分析、および、まちづくり推進会(復興まちづくり事務所)による地区復興の推移を総合した結果、次のような知見を得た。(1)震災そのものの被害に、高齢者、障害者、母子家庭、低所得者、貸貸家屋居住者など社会的弱者への集中という階層性と、彼らが多く滞留するインナーシティヘの集中という地域差別性とが確かめられたが、その後の生活再建の過程はこの階層間の格差をさらに増大するものであった。(2)[住の再建]避難所→仮設住宅→災害復興住宅という、行政が用意した復興プランにのり比較的自立的に再建できたものおよびぎりぎりのところで再建できたものと、最初から貸家に留まりこのルートにのれなかったものとの間の格差が拡大してきている。政策的な配慮から漏れた中高年層も、社会的弱者の立場に立たされてきた。(3)[職の再建]仮設工場、災害復興工場のメニューを行政は用意しているが、こうしたルートにのれるのは大きい企業者のみであり、中小零細自営業主は、家族・親戚、得意先の助力で再建しても、その後の不況もあって、運転資金にすら困る状態が続いている。(4)[社会的環境]被災者を被災した場所にという方針が最初からとられなかったために、従前のコミュニティは消失し、災害復興住宅でもコミュニテイが形成されていない。(5)行政が用意した生活再建のルートにのれない人にとって、行政と住民の間を仲介する中間集団の支援が必要であることが明らかになった。