著者
広瀬 慎一
出版者
富山県立大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

富山県高岡市の玄手川(延長3km)は農業用排水路で、効率的な排水処理と、小魚のトミヨや水草のナガエミクリを中心とした生態系の保全の両立を目的として、水路底の80%をコンクリートとする近自然工法で改修された。また、中流部100mには水路底を砂利舗装とした生態系保護区が設けられた。施工前後約10 年間にわたるモニタリングの結果、近自然工法については、湧水は元に戻り、堆砂は適度で、トミヨやナガエミクリなどの生態系は回復した。排水処理のための水草刈りは、やり易くなったとの農家の評価であった。生態系保護区(ワンド)については、植生は近自然工法の本川よりす早く回復し、トミヨは施工前より倍以上の密度となった。また、水路断面の詳細流速分布調査から、水草内領域における流速は、水草外領域の流速の約3割であり、トミヨが長時間遊泳できる流速(巡航速度)が水草内領域で実現されていることがわかった。以上から、近自然工法と生態系保護区(ワンド)を組み合わせたミチゲーション(影響緩和)手法」が排水処理と生態系保全の双方に効果的であることがわかった。
著者
関口 豊三 丸野内 様 吉田 廸弘 山岸 秀夫 岡本 尚 岩倉 洋一郎
出版者
(財)河野臨床医学研究所
雑誌
がん特別研究
巻号頁・発行日
1988

1)、発癌遺伝子の可能性が疑われているヒト成人性T細胞白血病ウイルスHTL-1 tax-1遺伝子を正常骨髄細胞に移入して、これを放射線照射を受けたマウスに注入してキメラマウスを作成し、或いはこのtax-1遺伝子をマウス受精卵に移入を行ってトランスジェニックマウスを作成し、個体レベルにおけるtax-1遺伝子の作用を分析した。サーザン解析によってtax-1遺伝子が検出されたキメラマウスの胸腺、脾では未熟なリンパ球がビマン性に浸潤し、髄質の構造が失われ、T細胞の分化、成熟の抑制が認められた。又、トランスジェニックマウスでは胸腺の萎縮が著明で、発育低下、早死にするものが多く、生長したものでは「悪性リンパ腫の他「肺ガン」,皮膚の「線維肉腫」,末梢神経の「シュワノーム」等の種々のがん発生がみられ、且つこれ等がん組織でtax-1の遺伝子の発現が認められたので、tax-1そのものが発癌遺伝子であることが示された。又、ヒト免疫不全病ウイルス(AIDS,HIV)tatIII遺伝子がTNFの共存下で、HIV遺伝子発現を著明に増強することが見出され、TNFはHIV-LTRの「エンハンサー」を介して作用すること明らかとなった。2)、胸腺の染色体外環状DNAの分析から、これらがT細胞受容体α鎖及ζ鎖遺伝子の再配列の結果、切り出されたものである事が初めて明らかにされた。又、ヒト胃癌由来の発癌遺伝子HST1をヒト第11染色体の長腕(q13-3)に位置付けした。又、これら胃癌で別の発癌遺伝子INT2が同時に増幅していることが見出された。3)、ヒト白血病細胞U937に発癌遺伝子v-mosを移入するとマクロファージに分化することが見出された。又、ヒト小細胞肺癌細胞をビタミンA欠乏状態で培養することによって悪性度の低い腺癌様細胞に分化することが見出された。今后はHIV-tatIII遺伝子移入トランスジェニックマウスの作出を行いAIDSの分析を行う予定である。
著者
本田 光子
出版者
東京芸術大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

昨年度にひきつづき、十七世紀初頭に活躍した絵師、俵屋宗達の主要作品を分析対象とした。本年度の成果の一部は「宗達筆「源氏物語関屋・澪標図屏風」の造形手法」として『東京藝術大学美術学部論叢』7号(2011年刊行予定)に掲載される。「源氏物語関屋・澪図屏風」(静嘉堂文庫美術館蔵)は古典物語を主題とする金地大画面作品として重要な作例であり、もと伝来した醍醐寺に関わる資料が発見されたことで制作年や注文主がほぼ特定され、近年注目を集めている。本研究では、源氏絵および物語の舞台となった住吉を描く関連作例が相次いで紹介されていることをうけ、主に造形面から作品に考察を加えた。論点はモチーフの配置方法、背景の設定、両隻で相似形となる構図であり、相似形の構図が左右隻の入れ替えを可能としていることを指摘した。すなわち物語の順では「関屋図」が右に位置するが、これまで図版掲載や展覧会では左に置かれることが多かったのである。その理由と、どちらの配置をも想定させる造形要素について論じ、宗達の機知的な表現手法を浮き彫りにした。本年度はさらに、昨年調査を行った宗達筆「雲龍図屏風」(フリーア美術館蔵)を中心に、宗達と他の琳派の絵師による水墨画について、「たらしこみ」技法を軸とする分析をすすめた。主に用語が近代以降に定着する様相、技法成立に関する諸説の分析、宗達活躍期とそれ以後の用法の違いについて、現在論考をまとめている。
著者
津止 正敏 斎藤 真緒
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は近隣コミュニティとその動力を焦点化している。従来の堅固で安定的なコミュニティ開発の中核的動力は、階層化を伴いつつ不安定で流動化という変容過程にある。コミュニティ開発を担うボランタリーアソシエーションもNPO等新たな主体も影響力を強めている。開発主体の変容は、「エリア・テーマ・クラス」の三位一体型コミュニティ・タイプから、「エリア」「テーマ」「クラス」それぞれに分離独立あるいはクロスオーバーする複雑なコミュニティ・タイプを不可避としている。
著者
Toshiharu Mitsuhashi Etsuji Suzuki Soshi Takao Hiroyuki Doi
出版者
Japan Society for Occupational Health
雑誌
Journal of Occupational Health (ISSN:13419145)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.25-33, 2012 (Released:2012-03-05)
参考文献数
43
被引用文献数
13

Objectives: There has been a growing concern that maternal employment could have adverse or beneficial effects on children’s health. Although recent studies demonstrated that maternal employment was associated with a higher risk of childhood overweight, the evidence remains sparse in Asian countries. We sought to examine the relationship between maternal working hours and early childhood overweight in a rural town in Okayama Prefecture. Methods: In February 2008, questionnaires were sent to parents of all preschool children aged ≥3 yr in the town to assess maternal working status (working hours and form of employment), children’s body mass index, and potential confounders. Childhood overweight was defined following the age and sex-specific criteria of the International Obesity Task Force. Odds ratios (ORs) and 95% confidence intervals (CIs) for childhood overweight were estimated in a logistic regression. We used generalized estimating equations with an exchangeable correlation matrix, considering the correlation between siblings. Results: We analyzed 364 preschool children. Adjusting for each child’s characteristics (age, sex), mother’s characteristics (age, obesity, educational attainment, smoking status, and social participation), and family’s characteristics (number of siblings), children whose mothers work Conclusion: Short maternal working hours are associated with a lower odds of early childhood overweight.

1 0 0 0 OA 定本虚子全集

著者
高浜虚子 著
出版者
創元社
巻号頁・発行日
vol.第1巻, 1949
著者
小田 亮
出版者
桃山学院大学
雑誌
桃山学院大学人間科学 (ISSN:09170227)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.143-157, 1992-03-31
著者
五十殿 利治
出版者
美術史學會
雑誌
美術史 (ISSN:0021907X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.p258-268, 1994-03
著者
山崎 真矢 本多 弘樹 弓場 敏嗣
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.93, pp.79-84, 1998-10-09
被引用文献数
5

本稿では,マルチスレッドプロセッサのキャッシュ構成として,各スレッドで使用できるキャッシュラインをスレッド処理数に応じて制限する動的スレッドアソシアティブ(Dynamically Thread-Associative)方式を提案する。提案する方式は,従来のセットアソシアティブ方式の置き換え動作を変更することによってキャッシュ内にスレッド専用領域を確保することで,複数のスレッド間での干渉によって起こるキャッシュミスを低減することが期待できる。シミュレータを用いて提案する方式の予備的評価を行った結果,提案する方式により複数スレッド間での干渉を低減できることがわかった。We present a new replacement algorithm in set-associative cache adapted to multithread architecture. By restricting the replacement candidate blocks to the sub-set in a set that exclusively assigned to each thread, the cache miss rate caused by the interference among threads can be kept low. The paper also shows the result of the preliminary measurements on the cache simulator.
著者
中村 由美子 宗村 弥生 内城 絵美 伊藤 耕嗣 杉本 晃子 鳴井 ひろみ 吹田 夕起子 澁谷 泰秀 浜端 賢次 杉本 晃子 権 美子
出版者
青森県立保健大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,病気の家族メンバーがいる家族へのケアを支援するために,項目反応理論を用いた家族機能尺度の有用性について検討することを目的とした。病気の家族メンバーには、がん患者や介護の必要な高齢者を含んでいた。有効回答を得られたのは195名(男性52名,女性142名)であった。構造方程式モデリング手法(共分散構造分析)を用いてモデルを構築した結果,"家族機能"と"QOL"という2つの構成概念が直接影響を及ぼすことが示された。また,項目を洗練化するために,合計19項目からなる尺度を項目反応理論(IRT)によって分析した。項目反応理論を用いた分析は,項目の洗練化だけではなく家族機能モデルの開発にも有用であった。
著者
鳥居 大哉 柴田 義孝
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.13, pp.157-162, 1997-01-30
被引用文献数
4

医学はこれまで治療医学から予防医学へと移り変わってきた。これからは予測医学へ向かうといわれている。予測医学では医療画像の持つ解像度やノイズなどの問題や、医学における高度な専門知識のために、素人による予測は非常に困難である。そこで本研究では、実際に臨床より得られた、病気を有する人の毛細血管に関する医療画像からその特徴を取り出して知識ベース化する一方、病名判断するために被験者の毛細血管画像を顕微鏡によりリアルタイムに取り出し、これを知識ベースのパターンとマッチングさせることにより、遠隔地より被験者の病気を短時間で正確に、また専門家でなくてもある程度の病気を判別できるシステムの実現を目的とする。Medical science has changed from treatment medicine to preventive medicine, and will change to estimate medicine in the future. So far, nonprofessional people can't easily estimate desease from various medical images of the objective person, because medical images have serious problems, namely, noise and resolution problems and complicity of medical knowledge. Our research object is to accurately recognize person's desease from capillary vessel images without complicity of medical knowledge. We realize a desease recognition system based on a number of statistical data and knowledge from real clinical data by extracting features in capillary vessel image and establishing knowledge-base concerned with the related human deseases.
著者
沖津 進 百原 新 守田 益宗 苅谷 愛彦 植木 岳雪 三宅 尚
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,本州中部日本海側山地において,高山・亜高山域での最終氷期以降の植物群と環境の変遷史を,湿潤多雪環境の推移および植物地理的な分布要素に基づき整理した植物群の挙動を中心として,固有性の高い植物群落の形成過程に焦点を当てて明らかにし,「乾燥気候が卓越した最終氷期時にも,より湿潤な気候下に分布するベーリング要素植物群が,地形的なすみわけを通じて共存分布していた」との,全く新しい植物群・環境変遷史を提示した.

1 0 0 0 OA 古代研究

著者
折口信夫 著
出版者
大岡山書店
巻号頁・発行日
vol.第1部 第1 民俗學篇, 1930