著者
井代 彬雄
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. II, 社会科学・生活科学 (ISSN:03893456)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.85-94, 1978-03

本稿は前稿「ヴァイマル共和制期におけるナチ党の労働者政策」〔I〕(本紀要第25巻,昭和51年度,第2号)の続篇である。本稿では,ドイツ労働者階級の体制内編入の法的基盤であったヴァイマール憲法が,いかに具体的に社会政策を実施してゆくために法制化されたかをまず検討する。つぎにそれらの諸法令が,共和制崩壊期にその実質的効力を削減・喪失してゆく過程を考察し,その効力喪失過程において,共和制利益分配機構から排除されてゆく労働者階級が,ナチ党,就中ナチス左派の働きかけによって,いかにナチスに掌握されたか否かを,1930年国会選挙までの歴史過程に限定して論考することにする。I have already published the study of "the Labour Policy of Nazi-Party in Weimar Republic (I)" in 1976. This paper is the second continued study of it. In the history of Nazi-movement in the era of Weimar Republic, the Reichstag election in 1930 was very important. Because Nazi-Party could pave the way to the political power since the success of this election. In this paper I discuss the social and political background of this success and the birth of NSBO.
著者
井代 彬雄
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. II, 社会科学・生活科学 (ISSN:03893456)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.7-17, 1979-12

本稿は,以前の第I,第II篇を受け,かつ最終篇として著るされたものである。以下,本論で示すごとく,1930年以降,ナチスによる政権獲得までの,ヴァイマール共和制最後の時期は,世界大恐慌により生みだされた「第5階級」とも称しうる厖大を失業者群の出現,そのための政治状況の緊張度の極限的高まり,それに対応し,この政治エネルギーを自己勢力に吸収すべく,ナチ党の労働者階級への積極的働きかけ,そしてその一定の成功,このような史的展開を示した時期であった。しかし,第I篇抄録との関係で述べれば,大衆民主主義状況という,国民の多元的利害の対立に最も適応する政党形態,そのもとでの政党活動様式として規定されるナチ党の本質である「結集政党」から打出されるドイツ労働者階級への働きかけは,労働者階級を対象としたものでありながら,今日歴史的に判断して,結局のところ,労働者階級のためのものではなかったのである。以上のごとく,規定しうると考えられる,ナチス革命の本質=擬似革命の実態を多少なりとも明らかにしたい。The present paper is the third and final report continued from the previous works which have already been published in this Memoirs with the title "The Labour Policy of Nazi Party in Weimar Republic (I) and (II)". The author in this paper dealt with the analysis concerning the development, practice and role of NSBO (Nationalsozialistische Betriebszellenorganisation) in Nazi movement to the seizure of power in 1933. If we would aim at comprehesive understanding the substance of Nazism to perfection, we should have to observe at least in particular the relation between the German working classes and Nazi-strategy to political power. Without involving the working classes into Nazi movement, Nazi-Party could not seize the political power so successfully. As the conclusion of this study, the author would like to insist on the indispensable functional role of NSBO in the relation of the success of Nazi's quasi-revolution in 1933.
著者
井代 彬雄
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. II, 社会科学・生活科学 (ISSN:03893456)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.65-73, 1976

ヴァイマール共和制憲法は,その第2篇第5章「経済生活」の諸条項において,ドイツ国民一般,したがって,その大きな構成要素である労働者階級の生活権を明確に保障した。それ故,労働者階級は,ヴァイマール共和制を支持する中心勢力となった。ヴァイマール共和制は,その崩壊過程において,左右両翼の分解・激突をともなう猛攻撃に遭遇することになるが,右翼からの攻撃,すなわち,ナチ党の政権掌握にとり不可欠な一つの要因は,共和制保持の中心勢力たる労働者階級をいかに浸触し,自己への支持勢力に編入してゆけるかであった。今日のファシズム研究において,ファシズムの運動論,その目標としてのファシズム革命,その擬似革命的性格(革命を装った反革命)は,いまだファシズムの比較研究の成果を踏えた十全な解明の段階に到達していない。本稿では,1928年国会選挙で,ナチ党が敗北した後にナチ党左派が労働者階級に積極的に働きかけを開始するまでの段階を,考察の対象とする。The labour unions have been organized in a great degree under the leadership of leftist parties in Weimer Republic. The labour campaign by NSDAP, therefore in which they had to organize more workers, fased the difficult problems at least before the World economic crisis. In the history of NSDAP's labour class campaign, I restrict my analysis within the problems from the refounding of NSDAP in 1925 to the birth of left-wing Nazis and the result of the Reichstag election in 1928 in this paper. In this period German labour class supported NSDAP only less than 3 percent. Then left-wing Nazis had to proceed to more radical campaign.
著者
中江 康之
出版者
名古屋大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

【目的】前年度の研究において、急性膵炎や膵石症における血中α2-macroglobulin-trypsin複合体様物質(MTLS)測定の病態解析に対する有用性を示した。本年度は引き続きMTLS高値例におけるトリプシン残存活性と血中MTLS濃度の関係について検討した。【方法】(1)血中MTLS濃度およびトリプシン活性の測定:血中MTLS濃度力塙値を示した急性膵炎18例および膵石症26例の血中残存トリプシン活性を、Boc-Gln-Ala-Arg-MCAを基質として測定した。(2)膵石症における血中MTLS存在様式の検討:血中MTLS高値膵石症患者血漿をSDS-PAGEで泳動し、膵分泌型トリプシンインヒビター(PSTI)に対するWestern blot法による解析を行った。(3)PSTIによるMm.Sトリプシン活性阻害の検討:ヒト純粋膵液より精製したトリプシンとα2-macroglobulinを混和しα2-macroglobulin-trypsin複合体(α2M-T)を作成後、PSTIによるMTLS活性阻害を検討した。【結果】(1)血中MTLSの酵素活性は、急性膵炎17.0±30.lng/ml、膵石症2.5±3.8ng/ml、健常人1.2±1.3ng/mlであり、急性膵炎では活性の上昇を認めたが、膵石症では認められなかった。(2)膵石症血漿のWcstcmbIot法による解析ではpsn単体あるいはPSTI-トリプシン複合体よりも高分子側に抗PSTI抗体陽性のバンドを認めた。(3)PSTIによりα2M-TのMTLS活性は約50%阻害された。【結論】残存トリプシン活性は血中MTLS濃度と同様に急性膵炎では重症度を反映していたが、膵石症ではMTLS濃度が高値にも関わらずトリプシン活性を認めなかった。この活性阻害は膵液中のPSTIによると考えられたが、他の阻害物質の関与も示唆された。
著者
石井 仁 荒木 弘安 東郷 敬一郎
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

超音波断続負荷型疲労試験機を製作して様々な強度レベル材料についてのギガ(10^9)サイクル域までのS-N曲線を取得し,その結果を回転曲げ,引張-圧縮といった一般的な試験機で得られた疲労特性との差異を検討することで,この試験法が疲労強度の迅速決定に威力を発揮することを確認した.超音波を連続ではなく断続的に負荷させる理由は,超音波域といった高周波数で変形を繰返した際の内部摩擦による材料の発熱を防止するためであり,試験片の温度上昇を生じさせない負荷-休止時間の組み合わせであれば10^7回以上の高サイクル域の疲労特性には影響が無いことを確認し,負荷と停止時間をそれぞれ30ms,70msとすることで以下の様々な試験を実施した.焼入れ後に高温焼戻しを施したS35CおよびSNCM439につきギガサイクルまでのP-S-N線図を求めた.応力レベルを10種類とし,1応力あたり15本,計150本の試験片を用いて得られた結果は,日本材料学会あるいは金属材料技術研究所から出版されている10^7サイクルまでの疲労強度データ集の結果と極めて良い一致が得られた.また,耐久限が存在せず10^7サイクル以上でも疲労強度が低下する高強度材の一例として,マルエージング鋼についての10^9サイクルまでのS-N曲線を求めた.10^7サイクルまでは表面を破壊の起点としたが,それ以上の繰返し数では内部の介在物を起点とするものに移行する.材料製造工程の改善を通して介在物の寸法を微細化すると長寿命域の疲労強度改善が得られるなど,通常の試験機では数年が必要である実験結果が短時間に求まり,材料開発へ応用すると極めて有効な手法になることが確認された.また,軸受け鋼SUJ2や浸炭処理を施した肌焼き鋼SCr220,SNCM420についても,また,切欠き試験片でも適用可能であることを確認し,超音波断続負荷法が超高サイクル域の疲労強度迅決定法として極めて有用であることを明らかにした.
著者
佐々木 成人 岡 美恵子
出版者
(財)東京都医学研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

ネコをパネルに向かって立たせ、パネル中央に投射した光点を注視させた状態から、光点を視野周辺に向かってステップ状、ramp-hold状に移動させ追跡させた。移動刺激に対して、ネコはまず頭を60-150msの潜時でゆっくり動かす。この時眼球はVORで逆方向に動き、視線は空間内で固定される。次にサッケードとそれに続く速い頭の運動が起こり、視線はターゲットを捕らえる。移動刺激からステップ刺激に変えると指向運動の潜時の著明な延長と頭の運動速度の低下が起こることから、両者により誘発される指向運動は異なり、前者を位置誘導型指向運動、後者を速度誘導型指向運動と呼ぶことにした。各々は更に2つのサブタイプに分かれた。速度誘導型指向運動は光点の移動速度からその到達位置を予測して、光点が移動中に動き始め、視線と光点がほぼ同時にターゲットに到達する予測指向運動と、光点の速度と位置情報の両者を手がかりにして光点がターゲットに到達してから指向する速度・位置誘導型指向運動に分かれた。ネコの姿勢を強制的に変えることにより、サブタイプ間の相互の移行は可能であることが分かった。ステップ刺激では予測指向運動を行っていたネコは短潜時または長潜時の位置誘発型に移行したが、速度・位置誘導型指向運動からは長潜時の位置誘導型指向運動に移行した。短潜時の位置誘発型指向運動は上丘、長潜時の指向運動は大脳皮質を介していると考えた。光点をゆっくりと動かすと、ネコはこれを滑らかな軌跡を描いて追跡する(head pursuit)。これは速度誘導型指向運動の経路を用いて発現していることが強く示唆された。
著者
平川 奈緒美 森本 正敏 垣内 好信 笹栗 智子 石川 亜佐子 杳川 嘉彦 鳥飼 亜利寿 十時 忠秀
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

複合性局所疼痛症候群(CRPS)患者における交感神経機能の関与特にα2アドレナリン受容体の関与について
著者
RYU Jegoon NISHIMURA Toshihiro
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE transactions on information and systems (ISSN:09168532)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.359-366, 2010-02-01
参考文献数
30
被引用文献数
1 2

In this paper, Cellular Neural Networks using genetic algorithm (GA-CNNs) are designed for CMOS image noise reduction. Cellular Neural Networks (CNNs) could be an efficient way to apply to the image processing technique, since CNNs have high-speed parallel signal processing characteristics. Adaptive CNNs structure is designed for the reduction of Photon Shot Noise (PSN) changed according to the average number of photons, and the design of templates for adaptive CNNs is based on the genetic algorithm using real numbers. These templates are optimized to suppress PSN in corrupted images. The simulation results show that the adaptive GA-CNNs more efficiently reduce PSN than do the other noise reduction methods and can be used as a high-quality and low-cost noise reduction filter for PSN. The proposed method is designed for real-time implementation. Therefore, it can be used as a noise reduction filter for many commercial applications. The simulation results also show the feasibility to design the CNNs template for a variety of problems based on the statistical image model.
著者
田中 恵子 辻 省次
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

腫瘍隨伴性神経症候群のなかで、抗Hu・抗Yo抗体などの特異な抗体を有する群は、臨床像・拝啓腫瘍に一定の特徴を有し、自己抗体が患者の腫瘍と病変神経組織を共通に認識するなどの特徴から、抗体による神経組織障害機序が考えられている.我々はこれまで、これらの自己抗体を用いて様々な方法で動物モデルの作製を試みたが、抗体による組織障害は惹起できなかった.そこで細胞障害性T細胞(cytotoxic T cell:CTL)が関与する病態機序の可能性を考え、抗Hu抗体を有する患者の抹梢血を用いてCTL活性を検討した.標的細胞を患者自身から得た線維芽細胞とし、線維芽細胞のclass 1分子を利用し、HuDのrecombinant蛋白をmicroinjectionにより線維芽細胞の細胞質に注入することによりHu抗原分子断片を呈示させ、CTLの標的とした.同一患者から採取しIL-2下で培養した抹梢血リンパ球と共培養した結果、80%の線維芽細胞が消失した.この結果は、本症の組織障害にCTLが関与している可能性が推定された.一方、抗原分子のペプチド構造を明らかにするため、患者のHLA型を解析し、多くの例で共通であったA11分子をaffinity chromatographyにより精製し、HPLCで分取した後そのアミノ酸配列を決定した.今後この中から使用頻度の高いペプチドモチーフを調べ、Hu蛋白のアミノ酸配列との比較により、リンパ球の抗原決定基を推定する.