著者
新野 宏
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.309-312, 1995-05-31

去る2月3日から16日まで,科学技術庁振興調整費による重点基礎研究「シビアウェザーの発生機構に関する基礎的研究」の遂行のため,NCAR(アメリカ)のSenior Scientistのリチャード・ロットゥンノ博士が気象研究所に滞在された.博士は1949年生まれ.メソスケール現象を中心に,大気境界層の乱流からハリケーンや温帯低気圧に至るまでの幅広い分野の力学に関する論文を数多く発表されている.来日の機会をとらえてお話を伺った.
著者
上島 通浩 那須 民江
出版者
名古屋市立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

2-エチル-1-ヘキサノール(2E1H)の空気中濃度が高い建物でシックビル症候群(シックハウス症候群)、化学物質過敏症状等が生じるが、病態は未解明で、また、2E1H発生量の決定要因にも不明な点が多い。9週齢の雄ICRマウスを理論濃度値0,55,110,219ppmの2E1Hに1日8時間、7日間吸入曝露した。219ppm群では鼻腔の嗅上皮に構成細胞の減少、炎症細胞浸潤が見られた。呼吸上皮では炎症細胞浸潤は軽度で、また下気道では区域気管支、細気管支の平滑筋層に炎症細胞浸潤が見られた。この結果は、2E1H曝露時にみられる鼻の不快感、刺激性と一致すると考えられた。また、肝のアルコール脱水素酵素(ADH)活性は、0ppm群で6.9±0.9(nmol/mg protein/min)、219ppm群で7.6±1.4(nmol/mg protein/min)で、曝露によるADH活性の上昇は認められなかった。マウスでは2E1HがADHの、2-エチル-1-ヘキサナールがアルデヒド脱水素酵素の基質となることも示されたが、ppbの濃度域で生じるシックハウス症状の原因が、2E1Hから2-エチル-1-ヘキサナールへの代謝亢進による可能性はほぼないと考えられた。また、2E1H発生側の要因解明のために、セメント中に存在する化学成分と2E1H発生量との関係を検討した。CaO、Fe_2O、Na_2O、Mn_2O_3が発生促進と密接な関係があり、一方SiO_2、K_2O、MgOは発生を抑制すること、発生促進と抑制はセメントの種類、含水率、経時日数に依存することが明らかになった。今回の分析条件では、アルデヒドの発生は認められなかった。2E1Hの発生を避けるためには、コンクリートの十分な乾燥が必要であることが知られるが、さらに、床を形成するセメントコンクリートの材料を適切に選択することの重要性が示唆された。
著者
鍵弥 朋子 中村 美砂 森 一郎 谷口 恵美子 西上 圭子 尾崎 敬 覚道 健一
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.183-188, 2008 (Released:2008-10-30)
参考文献数
7

目的: 細胞診用に採取された尿を用いての遺伝子解析が可能な保存温度条件を明らかにするため, 尿の保存温度と時間経過による尿中細胞 DNA, RNA の変性・減少と細胞形態の変化を観察し検討した.方法: 自然尿を採取時から 15 日後まで 3 種の温度条件 (−20℃, 4℃, 25℃) で保存し, DNA, RNA を抽出した. PCR 法で p53 を検出可能であったものを DNA が保存されたと判定した. RT-PCR 法でβactin を検出可能であったものを RNA が保存されたと判定した. DNA, RNA 検出の再現性の確認のため, 9 例の尿を用いて検討した. 細胞形態は 2 回遠沈法で固定塗抹, パパニコロウ染色を行い観察. 顕微鏡下で細胞数を計測した.成績: 採尿直後に処理すれば DNA, RNA とも PCR 可能な状態で抽出できた. 尿を−20℃, 4℃で保存すれば DNA は 15 日後, RNA は 11 日後に抽出したものから目的配列を PCR 法で増幅可能であった. 抽出効率は男女間で差はみられなかった. 形態的検討では, 保存期間が長くなるにつれ塗抹細胞量が減少した. 細胞形態保存は 4℃保存が最も適していた.結論: 尿の至適保存温度は, 細胞形態保存は 4℃, 核酸保存は−20℃, 4℃であり, DNA は 15 日後, RNA は 11 日後の尿から抽出可能であった.
著者
新野 宏 伊賀 啓太 柳瀬 亘 伊賀 啓太 柳瀬 亘
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

傾圧性と積雲対流に伴う凝結加熱の両方がその発達に重要な役割を演ずるハイブリッド低気圧の実態と構造及び力学を事例解析、線形安定性解析、数値実験により調べた。その結果、梅雨前線上に生ずるメソαスケールの低気圧や冬季日本海を含む高緯度の海洋上にに発生するポーラーロウ、日本付近に豪雨をもたらす温帯低気圧などの低気圧の特性や力学が環境場の構造や凝結加熱によりどのように変化するかが明らかになった。
著者
西岡 千惠 (2008-2009) 西岡 千恵 (2007)
出版者
高知大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

MEK/ERKシグナルが恒常的に活性化している白血病細胞株HL60、NB4について、既存の抗癌剤(シタラビン、ATRA)とチロシンキナーゼの下流シグナル阻害剤(MEK阻害剤AZD6244)との併用により、単剤に暴露されたときよりも更に効果的に細胞増殖が抑制されることをMTTアッセイやコロニーアッセイで明らかにした。また、併用の際、薬剤の投与の順番を変えることによっても相乗効果の程度に変化が見られ、薬剤投与の順番も重要であることを確認した。またこれらの薬剤を併用することによって、相乗的に細胞増殖抑制やアポトーシス誘導能が高められることを明らかにした。さらに、MEK/ERKシグナルが恒常的に活性化している白血病患者の末梢血から採取した白血病細胞においても、これらの薬剤の併用による相乗的な細胞増殖抑制効果を確認し、このような薬剤の組み合わせが実際の臨床の現場においても効果的ではないかと思われる。また、長期間のチロシンキナーゼ阻害剤投与による薬剤耐性化のメカニズムを検討し、臨床の現場における問題点の克服につなげていきたいと考えた。まず、チロシンキナーゼ阻害剤(sunitinib)を白血病細胞株に長期間投与し、薬剤耐性株を樹立した。そして、この耐性株を用いて耐性化の機序の検討を行った。その結果、親株ではsunitinibによって抑制されるJAK2-STAT5シグナル活性が耐性株では抑制されないことを確認した。また、耐性株では親株に比べてJAK2を活性化させるIL-6と、IL-6のプロモーター領域に結合する核内転写因子c-Junの量が増加していた。そこで耐性株をIL-6阻害剤やJAK2阻害剤で前処理しその後sunitinibを投与してみたところ、薬剤耐性株は親株同様suitinibへの感受性を取り戻した。以上の結果から、sunitinibによってc-Junを介してIL-6が誘導され、このIL-6によってJAK2-STAT5シグナルが活性化、薬剤耐性化を引き起こしたのではないかと考えられる。このようなケースでは、IL-6やJAK2の阻害によって耐性化が克服される可能性が示唆された。このように症例の状態に合わせて適切な薬剤を組み合わせることでより効果的な治療法となりえることを見出した。
著者
池添 昌幸
出版者
福岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

用途転用した公共建築物は運用後に利用要求が高度化し、空間改変が行われていることを実証するとともに最適化の条件を示した。さらに、公共建築物の民間利用によるストック活用事例を検証し、3つの活用パターンを明らかにした。最後に、公共建築物の新たなストック活用手法として、時間別の併用利用型施設の可能性を提示した。
著者
飯田 全広 末吉 敏則 尼崎 太樹 尼崎 太樹
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

SoC市場は、高集積化の進展とともに多様化しており、設計はより複雑になってきている。FPGAの搭載はこの問題を解決策として有望である。しかし、FPGAは大量のメモリからできているため、ソフトエラーが発生したときに回路故障につながる。本研究は、信頼性の高いリコンフィギャラブル・ロジックのアーキテクチャとして、SoC用フォールトトレラントFPGA(FT-FPGA)アーキテクチャと、その設計ツール(CAD)を提案している。また、FT-FPGAの試作チップを開発し、このチップの一連の評価によって、FT-FPGAは、ハードエラーおよびソフトエラーの回避と自動修復の能力を有することを確認した。
著者
山口 伊佐夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.351-357, 1966-09-25

昭和40年9月福井県真名川流域の豪雨は日雨量870mm以上を示し, この地帯としても, また我が国としてもまれにみる大雨量であった。幸い本流域の源流部附近に設置してある笹生川ダム, 雲川ダムにおいて雨量およびダム水位, 放流量等が観測されたのでダム流入量すなわち流域のHydrographを誘導し, 豪雨の特性と豪雨にもとづく山地帯Hydrographの特性について2,3の検討を加えた。
著者
遠藤 浩子 大八木 規夫
出版者
財団法人深田地質研究所
雑誌
財団法人深田地質研究所年報
巻号頁・発行日
vol.1, pp.73-96, 2000-07-10

鹿児島県出水市針原地区においt,梅雨に伴う大雨により1997年5月10日大規模な崩壊が発生し,21名が亡くなった。この崩壊源の規模は幅79m,奥行185m,深さ20m,体積12.4万m^3であった。崩壊源周囲の地質は矢筈岳火山岩類に属する鮮新世・更新世の火山岩類で,下位から火砕岩,淡灰色安山岩溶岩,暗灰色安山岩溶岩で構成されている。これらの安山岩類は著しく風化しており,崩壊源の側方崖や滑落崖では浅部は粘土質の赤褐色風化帯,その下位は玉葱状構造のよく発達した風化帯となっている。崩壊発生場所は凹状地形を呈し,1982年長崎災害の事例と類似した反復性後退崩壊の特徴をもった斜面であった。移送堆積域では,崩壊源脚部から450m下流右岸側に,玉葱状構造を残存した状態で運搬された高さ1m,幅3mのブロックを発見した。この位置は,他の機関が同様の堆積物を確認した位置よりも140m下流である。上のブロック発見位置は,空中写真判読によって小規模ながら流山の形態を示している。このような流山地形は上述のブロック発見位置よりも55m下流であった。この場所は災害後に土塊が擾乱されたが,玉葱状構造をある程度保存した礫を確認できた。したがって,崩壊源脚部から500m付近までは岩屑なだれの状態を保った部分があったと考える。また,移動体の移送の途中から流動性の高い部分も形成したと推定される堆積物も認められた。
著者
川村 隆一 植田 宏昭 松浦 知徳 飯塚 聡 松浦 知徳 飯塚 聡 植田 宏昭
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

大気海洋結合モデルならびに衛星リモートセンシングデータ等の観測データを併用して、夏季モンスーンのオンセット変動機構の重要な鍵となる大気海洋相互作用及び大気陸面相互作用のプロセスを調査した。標高改変実験からは亜熱帯前線帯の維持のメカニズム、植生改変実験からは降水量の集中化と大気海洋相互作用の重要性が新たに見出された。また、オンセット現象と雷活動との相互関係、夏季東アジモンスーン降雨帯の強化をもたらす台風の遠隔強制やモンスーン間のテレコネクションのプロセスも明らかになった。
著者
岩本 保典
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.414-419, 1987-08-05
被引用文献数
3

大分県飯田高原の標高880m, 傾斜7.2°の厚層多腐植質黒ボク土の傾斜野草地を, 原地形のまま開畑して斜面長20mの圃場を設け, 慣行的なキャベツ栽培条件(キャベツ単作, 6月定植の9月収穫, 上下作畦高畦)のもとで, 土壌侵食誘発要因と侵食量を調査し, つぎの結果を得た. 1. 流出土が発生する限界降雨強度は2.7〜3.0mm/10minであり, 降雨強度と降雨の表面流去率の間には高い正の相関関係があった. 2. キャベツ栽培期間の6〜9月の降水量に対する表面流去率は1984年28%, 1985年34%であった. 梅雨期の大雨の際には表面流去率が大幅に増加した. 3. 6〜9月の流出土量(乾土kg/a)は1982年493, 1983年491, 1984年292, 1985年774kg/aで4年間合計1996kg/a (土層厚で49.6mmに相当する) であり, この流出土量の78%は梅雨期に発生した. 4. 当地域のキャベツ作型は, 6月定植の9月の収穫が最も多い. この場合, 6, 7月の梅雨期のキャベツによる地表被覆率は20%程度であり, 土壌侵食を受けやすい状態にあった. 5. 時間降水量15mm以上の降雨が続く場合には, 一時的な地中停滞水位は地表近くまで上昇しており, 当地域で行われている上下作畦高畦がキャベツ栽培にとって妥当であることを認めた. しかし, この作畦方法は侵食が増大しやすい条件を備えていた. 6. 降雨強度3mm/10min以上の積算降水量およびその降雨の運動エネルギー積算値の単位量当たり流出土量は年々増大した. このことは, 野草地開畑後の年次の進行とともに, 土壌の受食性が急速に大きくなることを示していた. 受食性の増大には, 開畑後の野草残渣量の急激な減少と形状の変化が強く影響を及ぼしていると推定した.
著者
平松 和昭 黒澤 靖 原田 昌佳 森 牧人 福田 信二 黒澤 靖 原田 昌佳 森 牧人 福田 信二
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,窒素・リンを対象に,都市化・混住化が進むアジアモンスーン地域の農業流域における流域水環境統合管理モデルの開発を目指した.流域モデル構築にはGIS技術を利用し,DEMや土地利用,河川網,点源などの詳細な流域情報を統合することで分布型モデルを開発した.また,定量化が容易でない排出負荷や閉鎖性水域の水質動態のサブモデルには,適宜,人工知能技術や時間-周波数解析手法を導入し予測精度を向上させた.モデルの構築に当たっては,九州最大の河川流域で,流域内に多様な土地利用が拡がる筑後川流域と,福岡市西方に位置し,混住化が進行している農業流域である瑞梅寺川流域という,流域規模・特徴の大きく異なる二つの流域を精査流域と位置付け,個々の素過程の定量化やサブモデルの検討,全体モデルへのネットワーク結合方法の詳細を検討した.
著者
沢野 伸浩 後藤 真太郎 濱田 誠一 濱田 誠一
出版者
星稜女子短期大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

国土地理院による『電子国土Webシステム』を用い、インターネットブラウザ上から海岸線の環境脆弱性指標情報を書き込み、関係者間で共有できるシステム構築を行った。また、サハリン・オホーツク海沿岸で行われている石油・天然ガスガス開発の進捗より、宗谷岬を航行するタンカーや危険物積載船舶の動向を把握するために船舶自動識別装置から送信される電波を受信するための受信局を設置し、GISや自前で構築したプログラムを用いて同海域の船舶航行密度や行き先等の解析を可能すると同時に、同海域の船舶航行の実態を明らかにした。
著者
田中 健次 稲葉 緑
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,生活用製品業界における事故回避のために,企業,市民,行政の三者間における事故情報活用システムのモデルを構築した.企業内での設計・運用間でのトラブル情報の共有化構造に,社会全体での事故情報システムを統合したものである.特に市民ユーザの安全意識を高め事故情報やリコール情報を効果的に活用するために,Web利用を含めた事故情報活用システムのプロトタイプを作成,評価した.
著者
江田 匡仁
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、大動脈瘤に対する低侵襲手術のための治療デバイス開発を行った。動脈瘤の進展を防ぐDoxycycline(DOXY)に着目し、生体吸収性材料(ポリ乳酸)とDOXYを混和してelectrospinning法で紡糸し担体を作製した。DOXYの徐放化が可能で、平滑筋細胞やマクロファージと共培養するとMMPs、カテプシン、炎症性サイトカイン、ケモカインを抑制し、エラスチン発現が亢進した。大動脈組織との共培養ではエラスチン分解が抑制され、MMP-2の発現も抑制した。さらに、アポE欠損マウスによる大動脈瘤モデルでは、エラスチン分解抑制、MMP2,9、IL-6、TNF-αの発現抑制、TIMP-1、IGF-1の発現促進を認め、新たな動脈瘤治療の可能性が示唆された。
著者
樽井 武
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、日本語の影響(干渉)を受けた英語のスピーチリズムの確認と著者が開発したPC用自習プログラムを活用し、日本語的な英語のリズムを英語的なリズムに変化させる過程を解明する。たいていの日本人は、日本語の影響を受けたリズムで英語を話すが、学習者が強勢のある音節と強勢の無い音声の重要さに気づき、PC用の自主学習プログラムを活用して内容語と機能語の音声特徴および機能語の強形と弱形そして他の音声特徴等に気づいた上で音節の強勢の有無をコントロールできるまで学ぶことで、そのような日本語的な音声特徴も次第に減少していくことが示された。