著者
開發 孝次郎
出版者
日本大学
雑誌
日本大学芸術学部紀要 (ISSN:03855910)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.A101-A116, 2004-07-30

近年になり日本は天皇の存在によって大きな動乱が二度未然に防がれ救われた、と言われています。明治維新では錦の御旗が大きな内戦を阻止し、先の大戦では昭和天皇の終戦宣言が秩序だった終戦、武装解除を可能にしました。しかし明治以降の天皇の存在のあり方は日本の歴史の中では非常に特殊でした。維新後、国家経営者は天皇を国民統合の中心に据える戦略を取り、明治憲法もその線に沿って作られました。明治憲法は当時としてはなかなか立派なものでしたが、最高権力がいずれに属するのか必ずしも明確ではありませんでした。当時は元勲が天皇の周囲をかため、憲法の不備を充分に補っていました。しかし昭和天皇が即位した時点では唯一人西園寺公望しか残されていませんでした。そこに権力の空白が生じ、国家経営に失敗することになってしまいました。本論では満洲事変を中心に天皇、権力機構、当時の日本の国内事情、国外事情、中国事情を考察します。
著者
高橋 洋成 池田 潤 和氣 愛仁 永井 正勝
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、前二千年紀から前一千年紀にかけて、古代オリエント地方で広く親しまれたギルガメシュ叙事詩のデジタル・アーカイブを構築するものである。ギルガメシュ叙事詩は、前二千年紀初頭に成立した古バビロニア語版と、前二千年紀末に成立した標準版が、ある程度現存している。そこで、古バビロニア語版と標準版の異同をデジタル処理可能なかたちでアーカイブ化することで、テクストの対応関係ならびに発展段階をある程度まで可視化することができた。本研究で開発されたデジタル化の枠組みは、言語研究や文学研究に広く応用することが可能である。
著者
成田 健太郎
出版者
書学書道史学会
雑誌
書学書道史研究 (ISSN:18832784)
巻号頁・発行日
vol.2017, no.27, pp.29-41,85-84, 2017-11-30 (Released:2018-03-23)

In this article, I examine the nature of bibliographic records of calligraphic rubbings based on a grasp of their distinguishing characteristics as source material and give an outline of the preparation of bibliographic records and underlying ideas that I have been putting into practice at the University of Tokyo Library, to which I am affiliated, when making the Libraryʼs calligraphic rubbings publicly accessible.  The principal distinguishing characteristic of calligraphic rubbings as source material is the multilayeredness of responsibility. The responsibilities of many people from different periods accrue during the course of creating a calligraphic rubbing, and in research importance must be given to both the individuality and commonalities conferred on the material by these multiple responsibilities. But judging from precedents for bibliographic records of calligraphic rubbings―such as bibliographic records based on the Nippon (Japanese) Cataloging Rules, catalogues of Chinese books, metadata elements used in the main collections of rubbings in Japan, and the “Cataloging Rules for Chinese Rubbings” prescribed by the National Library of China―a form of bibliographic description that takes due account of the multilayeredness of responsibility has not yet been realized.  Meanwhile, it is worth noting that in the Functional Requirements for Bibliographic Records endorsed by the International Federation of Library Associations and Institutions it is reported that bibliographic records require functions for recording four attributes, namely, work, expression, manifestation, and item. However, because the locus of responsibility for each attribute cannot be recorded in this model, I have not applied it as it is to calligraphic rubbings and have only referred to its underlying ideas.  Taking the above observations into account, in this article I propose metadata elements that are divided into the five strata of work, version, materialization, item, and data and make it possible to record the multilayeredness of responsibility with a certain degree of accuracy.
著者
ますとみ けい 村井 源
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

物語の基本構造を抽象化するため、星新一のショートショート200作品のオチを分類し、逆転的事象の種類と要因を記述したデータ構造を作成した。オチの分類タグとして[状況設定判明][正体判明][利益喪失]など20前後、逆転のタグとして[人物の立場:被害者>加害者]など10前後を用意し、ケーススタディ分析を行った。今後タグの内容を精査し物語自動生成プログラムの基礎データとする。
著者
須見 洋行 大杉 忠則
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.73, no.12, pp.1289-1291, 1999-12-01 (Released:2008-11-21)
参考文献数
15
被引用文献数
2 4 8

In commercially obtained natto and experimentally-prepared natto preparations, relatively high concentrations of dipicolic acid, 20.55±13.67 mg/100g natto (0.006-0.048%, wet weight) were detected, using a simple method combined with ion-exchange column and colorimetric assay procedures. These values were less than that of the previous data (0.06-0.20%, wet weight) reported 60 years ago. Dipicolic acid was thought to be an intracellular component of natto bacilli and could be extracted in the water-soluble fraction by heat-treatment of the sample for 30min at 120°C. Furthermore, the partially purified material from natto bacilli caused very strong inhibition of the growth of sake yeasts (Kyokai 7 and Kyokai 9 mutant).
著者
田上 恵子 内田 滋夫
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.277-287, 2017-08-15 (Released:2017-08-15)
参考文献数
26
被引用文献数
6

キノコは放射性セシウム(Cs)を濃縮しやすいと報告されているが,キノコの種類及び生育環境の違いにより移行の程度が異なると考えられる。しかし,東電福島第一原発事故に起因する放射性Cs濃度の汚染レベルが地域により著しく異なるため,キノコ中の濃度だけで種類別に移行程度を比較できない。そこで,グローバル・フォールアウトに起因するキノコ中の137Cs濃度に着目し,自然環境下にて生育した43種類の野生キノコについてランク付けを行い,放射性Cs濃度が低い種類を推定した。今後の野生キノコ採取の再開に向けて有意義な推定ができた。

33 0 0 0 OA 初等科算数

著者
文部省 編
出版者
文部省
巻号頁・発行日
vol.教師用 第1, 1942
著者
上尾 真道
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文學報 = The Zinbun Gakuhō : Journal of Humanities (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
vol.109, pp.1-32, 2016-07-30

本論は, フロイトの代表的著作である『夢解釈』の冒頭にかかげられた銘, 「天上の神々を説き伏せられぬのなら, 冥界を動かさん」から出発して, 精神分析の始まりを印すフロイト思想に新たな光を投げかける試みである。第一節では, 『夢解釈』が出版される一八九九年以前のフロイトに着目しつつ, この著作の執筆が, 神経症論の著作の断念によって可能となったものであることを確認する。またそこでは, 上記の銘の由来であるヴェルギリウスの『アエネーイス』を参照しながら, 『夢解釈』の執筆が, この断念に対する一種の復讐であり, 一般的神経症論の転覆を企図するものであったことを確かめる。そこにおいて我々は, 正常と異常のあいだの分断を撹乱し, これに代えて諸葛藤の平面の理論を構築しようとするフロイトの姿を認めることとなる。続く第二節では, このようなフロイトの姿を『ヒステリー研究』における抑圧理論との関連から吟味する。そこでは連続的な表面のうえを伝播する力としての抑圧概念の意義が確認される。さらに第三節では, 『夢解釈』におけるフロイト独自の叙述スタイルが, 臨床的な夢解釈のスタイルと平行的であることを論じ, その特徴としての多重性について明らかにする。第四節においては, 上記のような視座を反映するものとして, 迷宮状の心的構成を描き出す『ヒステリー研究』の一節を検討するとともに, 同時にそれとは異なる理論化の方向性との関係を見る。この後者とは, 心的構成を階層化によって整理しようとするものであり, 力の伝播の問題を垂直的な分断性に変換するものと考えられた。最後に第五節では, この後者の理論化の方向性を, 『夢解釈』の背景でフロイトが取り組んだ父性の問いとの関連で考察する。そこでは父への「畏敬」との関連のもとで, 夢の荒唐無稽性が, 諸葛藤の平面としてではなく, 地下性として上層に対立するようになることを確認した。こうして本論はフロイトが, 深層を理論化するにあたり二重の立場のあいだで揺らぎつつ, 思考していることを明らかにした。
著者
高田 崚介 林 威 安藤 宗孝 志築 文太郎 高橋 伸
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2016-HCI-169, no.10, pp.1-7, 2016-08-22

防水機能を有するタッチパネル端末 (以下,防水端末) において,画面タッチ時の圧力を取得する手法を示す.本手法は気密性を有する防水端末にタッチした際に端末内部の気圧が上昇し,端末に内蔵された気圧センサの出力値が変化する現象を利用する.同じ圧力にてタッチした際の防水端末の気圧の変化量は,タッチ位置によって異なる.我々は実験により,タッチ位置ごとの気圧の変化量,ならびにタッチ圧力と気圧の変化量の関係を調査した.本稿にてその調査結果および考察を示す.
著者
久留島 典子
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.182, pp.167-180, 2014-01-31

戦功を記録し、それを根拠に恩賞を得ることは、武士にとって最も基本的かつ重要な行為であるとみなされており、それに関わる南北朝期の軍忠状等については研究の蓄積がある。しかし戦国期、さらには戦争がなくなるとされる近世において、それらがどのように変化あるいは消失していくのか、必ずしも明らかにされていない。本稿は、中世と近世における武家文書史料の在り方の相違点、共通点を探るという観点から、戦功を記録する史料に焦点をあてて、その変遷をみていくものである。明治二年、版籍奉還直前の萩藩で、戊辰戦争等の戦功調査が組織的になされた。そのなかで、藩の家臣たちからなる軍団司令官たちは、中世軍忠状の典型的文言をもつ記録を藩からの命令に応じて提出し、藩も中世同様の証判を据えて返している。これを、農兵なども含む有志中心に編成された諸隊提出の戦功記録と比較すると、戦死傷者報告という内容は同一だが、軍忠状という形式自体に示される儀礼的性格の有無が大きな相違点となっている。すなわち幕末の藩や藩士たちは、軍忠状を自己の武士という身分の象徴として位置付けていたと考えられる。ではこの軍忠状とは、どのような歴史的存在なのか。恩賞給与のための軍功認定は、当初、指揮官の面前で口頭によってなされたとされる。しかし、蒙古襲来合戦時、恩賞決定者である幕府中枢部は戦闘地域を遠く離れた鎌倉におり、一方、戦闘が大規模で、戦功認定希望者も多数にのぼったため、初めて文書を介した戦功認定確認作業がおこなわれるようになったという。その後、軍事関係の文書が定式化され、戦功認定に関わる諸手続きが組織化されていった結果が、各地域で長期間にわたって継続的に戦闘が行われた南北朝期の各種軍事関係文書であったとされる。しかし一五世紀後半にもなると、軍事関係文書の中心は戦功を賞する感状となり、軍忠状など戦功記録・申告文書の残存例は全国的にわずかとなる。ところがその後、軍忠状や頸注文は、室町幕府の武家故実として、幕府との強い結びつきを誇示したい西国の大名・武士たちの間で再び用いられ、戦国時代最盛期には、大友氏・毛利氏などの戦国大名領国でさかんに作成されるようになった。さらに豊臣秀吉政権の成立以降、朝鮮への侵略戦争で作成された「鼻請取状」に象徴されるように、戦功報告書とその受理文書という形で軍功認定の方式は一層組織化された。関ヶ原合戦と二度の大坂の陣、また九州の大名家とその家臣の家では、近世初期最後の戦争ともいえる島原の乱に関する、それぞれ膨大な数の戦功記録文書が作成された。この時期の軍忠状自体は、自らの戦闘行動を具体的に記したもので、儀礼的要素は希薄である。しかもそれらは、徳川家へ軍功上申するための基礎資料と、恩賞を家臣たちに配分する際の根拠として、大名の家に留めおかれ管理・保管された。やがてこうした戦功記録は、徳川家との関係を語るきわめて重要な証拠として、現実の戦功認定が終了した後も、多くの武家で、家の由緒を示す家譜等に編纂され、幕府自体も、こうした戦功記録を集成していくようになった。以上のように、戦功記録の系譜を追ってくると、戦功を申請し恩賞に預かるというきわめて現実的な目的のために出現した軍忠状が、その後、二つの方向へと展開していったことが指摘できる。一つは事務的手続き文書としての機能をより純化させ、戦功申告書として、申請する側ではなく、認定する側に保管されていく方向である。そしてもう一つは、「家の記憶」の記録として、家譜や家記に編纂され、一種の由緒書、つまり記念し顕彰するための典拠となっていく方向である。最初に考察した幕末萩藩の軍忠状も、戦功の記録が戦国時代から近世にかけて変化し、島原の乱で、ある到達点に達した、その系譜のなかに位置づけられる。そしてこのことは同時に、近代以降の軍隊が、中世・近世武士のあり方から執拗に継受していった側面をも示唆するといえる。
著者
大嶋泰治 [ほか] 共編
出版者
培風館
巻号頁・発行日
2010