著者
鳥海 不二夫 山本 仁志
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.2507-2515, 2012-11-15

近年,ソーシャルメディアの発達が目覚しく,FacebookやTwitterなど数多くのソーシャルメディアがWeb上で運営され,多くのユーザによって利用されている.ソーシャルメディアへの記事投稿にはコストが必要であるにもかかわらず,自発的に記事が投稿されるメカニズムは明らかとなっていない.ここで,ソーシャルメディアの基本的な仕組みは,多数の情報がコストをかけて投稿され誰もがアクセスし利用することができることから,公共財としての性質を持っているといえる.公共財への貢献を促進する仕組みとしては,協調しない者に対し罰則を与える規範ゲーム・メタ規範ゲームが提案されている.しかし,ソーシャルメディア上では非参加者を罰するということは不可能である.そこで,懲罰ではなく協調者にたいして報酬を与えるという方法を取ることが考えられる.一方で,報酬よりも懲罰のほうが効果的であるという報告があり,通常の条件下ではソーシャルメディアでは協調は進化しないと考えられる.そこで本研究では,報酬しか与えられない公共財ゲームであるソーシャルメディア上で,どのような条件が整った時に協調が促進されるのかを,エージェントシミュレーションによって明らかにする.
著者
白木原 渉 大石 哲也 長谷川 隆三 藤田 博 越村 三幸
雑誌
研究報告データベースシステム(DBS)
巻号頁・発行日
vol.2010-DBS-150, no.2, pp.1-8, 2010-07-28

情報検索エンジンでは最新の情報,特に流行している事柄を検索するのは難しい.近年,Twitter が急激に普及し始めた.Twitter では,世の中で流行している事柄 (流行語) について,多くの人が発言する傾向がある.Twitter のユーザーの中でも特に流行に敏感な人 (trendspotter) を知ることができれば,その人の発言に注目することで,流行している事柄についての情報をさらに簡単に手に入れることができる.本システムを実現する手法として,一般のバースト検出アルゴリズムを用いたが,これが Twitter の発言に対しても利用できることがわかった.さらに,本システムによって,5277 人のユーザーの中から,24 人の trendspotter を抽出することに成功した.
著者
河嶋 壽一
雑誌
じんもんこん2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.8, pp.231-236, 2011-12-03

遺物の一つの古文書などは歴史や文化情報などが反映された貴重な資料であるが,それらの版画や版本を刷るために用いられた版木は永年の使用により,絵や文字などの彫られた形状が摩耗あるいは損傷していく.版木の形状の損傷状態は多様であるため,形状を復元する場合には,形状の損傷状態に対応して適切な復元方法を適用する必要がある.本研究では,彫られた絵や文字の損傷状態が異なる版木を対象物として,3次元デジタルデータによる,損傷状態に対応した版木の形状復元方法を提示し,形状復元を行うとともに復元版木の制作を試みた.
著者
中山 浩太郎 小板 隆浩 今井 祐介
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.46-54, 2011-12-15
著者
岡村亮吾 山西良典 加藤昇平
雑誌
第73回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.1, pp.247-249, 2011-03-02

これまで多くの作曲家がそれぞれの感性で様々な楽曲を作り出してきたが,作曲は高度な知識や経験を必要とし,音楽に対する特別な教育を受けていない者には取り組むことが困難な表現活動であった.この問題を解決する手法の一つとして,機械学習を用いた自動作曲システムが注目されている.本研究では,楽譜情報をモデル化し,マイニングにより特定の音楽ジャンルにおけるベースライン・ドラムパートの特徴を抽出した.これらの特徴を確率モデルにより学習することで,ユーザの入力した楽曲に対してジャンル毎の特徴を反映したアレンジを自動生成するシステムを提案する.
著者
荒川 豊 田頭 茂明 福田 晃
雑誌
研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL)
巻号頁・発行日
vol.2010-MBL-55, no.10, pp.1-6, 2010-08-26

本研究では,2009 年 12 月から 2010 年 6 月にかけて収集した位置情報付きツイート 50 万件の中から,位置依存性の高い文字列を抽出する手法を提案する.提案手法では,あるキーワードを含むツイート群に対して,緯度および経度の標準偏差をそれぞれ求め,ツイート群のばらつきの度合いから,そのキーワードの位置依存性を測る.しかし,この手法では,依存する位置が複数存在するキーワード (例えば,チェーン展開している有名店舗名など) を位置依存性の低い単語として判定してしまう.そこで,ある一定の割合以上のツイートを含むエリアを高速に抽出する二次元深さ優先探索を提案する.提案手法では,まず,エリアを 100 キロ四方のグリッドに分割し,それぞれのグリッド内のツイート含有率を計算する.次に,ツイート含有率がある閾値を超えたエリアを 10 キロ四方のグリッドに分割し,同様の判定を行い,最終的には 1 キロ四方のグリッドまで走査する.これらの分析により,1 つのキーワードに対して複数の位置依存性を抽出することが可能となる.
著者
鈴木 貢
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.e30-e42, 2022-12-15
著者
小宮 常康
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.e34-e52, 2022-10-15
著者
高田 里惠子
出版者
桃山学院大学総合研究所
雑誌
人間文化研究 = Journal of Humanities Research,St.Andrew's University (ISSN:21889031)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.67-92, 2022-02-23

This article roughly outlines the life of Nosei Abe (1883-1966) - theauthor of numerous books, including two autobiographies - by quotingand reconstructing the discourses among others about him. Abe isalmost forgotten today, but as a philosopher, professor, Minister of Educationin the aftermath of the war, and educational advisor to CrownPrince, he was once famous as well as much admired and criticized.From people’s views on Nosei Abe emerges the characteristics of modernJapanese culture or political situation. First, I discuss how Abe is seen as having no academic achievementdespite publishing many books from Iwanami Shoten, a well-known academicpublisher. Abe was regarded as a dilettante who merely introducedwestern science and culture, or an essayist without philologicalresearch or genuine scholarship. From this perception of Abe, we cansee what is recognized as “academic” in humanities in modern Japan. The next notable thing is that Abe was accused of being a “conservativereactionary” by the younger generation of Japan during the ColdWar. However, Abe was one of the leading writers of Taishō-Culturalism,who advocated western individualism and liberalism in Japan in the early20th century. Abe described himself as a “liberal.” In fact, after Japan’sdefeat in the Second World War, Abe was also the chairman of the leftwingpeace organization headed by Iwanami Shoten. Meanwhile, Abe expressed his discomfort with the labor movementand admitted his aversion to the Soviet Union and the communist party.Some people criticized these contradictions in Abe and some fondly remembered his harmless “slovenliness” or “magnanimity.” One could saythat the mix of cultural liberalism and political conservatism in Abe is atypical example of modern Japanese intellectuals.
著者
森 磨美 工藤 彰 望月 祐希 Adam Degenhardt 安藤 英由樹 清川 清
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.58-60, 2014-09-12

新たな恐怖感の提示手法として本研究では重量変化を用いたキャラクタとのインタラクションシステムを提案する.体験者が背負っている人形に取り付けられたゴムロープの長さを変化させて下向きへの力を生じさせることで重量の変化を実現し,人間におぶさり押しつぶしてしまう妖怪“こなき爺”を,視覚,聴覚に加えて重量変化という触覚に関しても再現する.
著者
菅原 圭 上松 幸一
出版者
京都文教大学
雑誌
臨床心理学部研究報告 = Reports from the Faculty of Clinical Psychology Kyoto Bunkyo University (ISSN:18843751)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.141-153, 2020-03-31

In recent years, separation from both religion and Buddhist temples has been growing. The7th“Religious Influence Survey”Report (True Pure Land Buddhism Otani Movement Office Planning Department, 2014) gives a numerically-informed portrayal of the difficulty of maintaining Buddhist temples and of changes in the involvement of temple supporters. In the background of this phenomenon lie societal changes, including the trend toward the nuclear family, depopulation, decreasing population, and the advancement of science. Further, among public demands of Jodo Shinshu Buddhist monks, the “religious tint” is disappearing. Against this current reality, Jodo Shinshu Buddhist monks are continuing to take up the mantle of the priesthood. In this study, we administered the Szondi test to 11 male Jodo Shinshu Buddhist monks to investigate whether certain personality traits were more likely among those continuing to the priesthood. Our results showed that Jodo Shinshu Buddhist monks tend to be living with various conflicts. The influence of the environment was a major factor in this. It is highly possible that, since their environment is filled with a multitude of conflicts, it is causing these monks severe stress. At the same time, because these conflicts also constitute a defense for them, it is presumed that they may be dealing with conflicts that have not come to the fore.
著者
小川 隆章
出版者
環太平洋大学
雑誌
環太平洋大学研究紀要 = BULLETIN OF INTERNATIONAL PACIFIC UNIVERSITY (ISSN:1882479X)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.83-88, 2022-03-31

豊臣秀吉による2度の朝鮮出兵(文禄・慶長の役,壬辰倭乱)に際して,朝鮮半島南部の海域で朝鮮水軍を率いて数々の勝利を挙げた李舜臣は韓国及び日本において人気の高い武将である。しかし,彼が海戦の勝利によって「制海権を保持した」とか,「日本軍の補給路を断った」とまで記述されているのは大げさであるように思える。本稿では史料・文献を精査したところ,日本の陸上軍が首都・漢城へ,さらに逃げる朝鮮国王一行を追って平壌へと進撃するのに合わせて日本水軍は海上を進み朝鮮西海岸を北上して,陸軍への補給をするという「水陸併進策」があったと多くの著作で主張されるが,それが真実かどうか,が重要であるようにみえた。李舜臣は一回目の侵攻(文禄の役)で日本水軍を閑山島海戦等で破り,この水陸併進策を挫き,2度目の侵攻(慶長の役)では鳴梁海戦でやはり水陸併進策を挫いたとみなされているようである。本稿ではこの水陸併進策について疑義を呈し,史料・文献を精査して考察を行った。
著者
平 千枝
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.611, 2022-10-15

大学入学共通テストでの『情報I』の出題に関する業務を大学入試センターで担当している筆者が,学生時代にプログラミングを学んだことが,業務や生活にどのように役立っているかを綴る.
著者
平山 健太郎 伊藤 克亘
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2012-MUS-94, no.16, pp.1-6, 2012-01-27

近年の日本のポピュラー音楽では,一つの声区のみで歌えないような高い音域を含む楽曲が数多く存在する.実際に一つの声区のみで歌おうとすると声が枯れてしまうという結果が多い.このような状況はしばしばカラオケで見受けられる.従来より,歌唱力の自動評価は様々な手法で行われてきたが,高音域の発声における発声状態の評価を行っているものは少ない.本研究では,基本周波数成分やフォルマント,倍音構造,残差スペクトルなどの特徴量から声区と発声状態のトレーニングデータを35次元で作成し,自動でユーザの音声データから高音域の発声評価を行うシステムを構築した.歌唱音声に対する音符単位の識別率は 93.18% であった.
著者
安田 豊
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.1244-1247, 2016-11-15

筆者の所属する学部では2016年度入試から科目「情報」に基づいた試験(ペーパーテスト)を実施している.その目的は従来的な英数理等の科目試験だけでは充分に測ることができないと考えられる,情報系の資質をもった学生を正しく選別することにある.我々は2008年から検討を開始したが,一般入試に選択科目として「情報」を追加することは容易でなく,結果的に我々が以前から行っていた作品応募によるAO入試に,筆記試験型を追加することで実現した.本稿ではそこに至るまでの検討過程を追いながら,AO入試として情報入試を実施することで得られる価値や継続的な作問の可能性について論じる.
著者
藤川 真樹
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1937-1947, 2021-12-15

釈迦は,3つの教理(十二縁起,四諦,八正道)を説いたとされる.本稿では,当該教理に対する著者の理解と仏教研究者とのディスカッションに基づき,(1) ソーシャルエンジニアの思惑どおりにモノを渡したり受け取ったりしがちな人の傾向性,(2) モノを授受するという判断に至るまでの心理的過程,(3) ソーシャルエンジニアリングに対抗するために人が日常的に実践すべき行動を考察する.この研究は,人工知能の父であるMarvin Minsky氏が残した興味深い言葉に著者が出会ったことがきっかけである.