著者
田栗 正章
出版者
一般社団法人 日本統計学会
雑誌
日本統計学会誌 (ISSN:03895602)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.193-228, 2017-03-31 (Released:2017-12-05)
参考文献数
26

本稿は,2 つの部分から構成されている.第I 部では,これまでの研究において考察した,3 種類の最適化問題と解の安定性について,その概要を紹介する.具体的には,いくつかのパラメータの最尤推定値に対する安定性問題,2 次制約がある場合の相関係数最適化問題,および最適層別とその安定性の問題である.特に,これら3 種類の問題における安定性については,多少の補足的な検討を行う.第II 部では,我が国の統計教育における現在の諸課題を指摘し,今後の統計教育の目指すべき方向についての検討を行う.また,それらの諸課題への対応策や,いくつかの提案も行う.
著者
堀畑 正臣
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, 2001-09-29

「(さ)せらる」(尊敬)の例は,文禄元年(1592)成立の『天草版平家物語』において多用されている。室町期の尊敬の「(さ)せらる」については,先学によりいくつかの用例が指摘されているが,それらは後世の写本段階の用例や,解釈の誤りによるもので,未だキリシタン資料以前の中世文献での「(さ)せらる」(尊敬)の指摘はない。「(さ)せらる」(使役+尊敬)は古記録とその影響のある文献に多くの用例が見られるが,室町期の軍記・説話・物語・抄物等には,「(さ)せらる」(使役+尊敬)はあるが,「(さ)せらる」(尊敬)の例はない。今回,記録年代の長い,仮名交じりの古記録文献で調査を行った。『言国卿記』(1474〜1502)の一部,『お湯殿の上の日記』(1477〜1625)の一部,『北野天満宮目代日記』(1488〜1613)の全体,『家忠日記』(1577〜1594)の全体である。調査から,『言国卿記』の「(さ)せらる」は「御庭ノ者ニウヘナヲサせラル」(文明六〔1474〕年3・8)のように(使役+尊敬)の例である。一方,『北野天満宮目代日記』では「八嶋屋ノ井のモトヱネスミ(鼠)ヲいぬ(犬)かオイ(追)入候,ネスミモいぬ井ヘヲチ候間,ネスミハ井内ニテシヌル,いぬハヤカテ取上候,井の水を早々御かへさせられ候へのよしうけ給候,則御門跡さまへ申」(延徳二〔1490〕年12・25)のような例が多く見える。この例は,御門跡に対して「水を御かへさせられ候へ」と頼んでいる。この時「水をかえる」行為は配下の者達が行うが,その行為全体は御門跡の行為として相手には意識される。このように上位者の行為に収斂されるような「(さ)せらる」の例を経て,尊敬用法が成立する。自動詞についた尊敬の「(さ)せらる」は,『お湯殿の上の日記』「御かくらにならせられまし。」(永禄六〔1563〕年3・29〔写本〕)が早い例である。自筆本では「こよひの月またせらるる」(元亀三年〔1572〕3・23),「こよひの月おかませられ候」(同年4・23)の例等がある。
著者
烏谷 昌幸 Karasudani Masayuki
出版者
法政大学サステイナビリティ研究教育機構
雑誌
サステイナビリティ研究 (ISSN:2185260X)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.91-107, 2015-03

This article examines the process of constructing policy legitimacy on nuclear power in postwar Japan, with the objective of identifying new sociological implications for journalism studies. Since an early stage -- particularly in the 1950s and 1960s -- the concept of "Peaceful Uses of The Atom" has frequently been used as an influential political symbol to legitimatize the policy of promoting nonmilitary use of nuclear power. Before the debate over nuclear power safety emerged in the 1970s, while the majority of Japanese people had strongly opposed the concept of "Atoms for War" in light of the fact that Japan was the first nation in the world to be bombed with atomic weapons, they earnestly supported the idea of "Atoms for Peace". That is why politicians, scientists and journalists had disputed over where to draw the line between peaceful and military uses, which constitutes the political spectrum over nuclear policy. There are three findings in this article. First, politicians, scientists and journalists had conflicting perspectives about the definition of "peaceful uses." On this, it is necessary to analyze where they draw the line. Second, negative labeling such as "nuclear allergy" and "pro-nuke agitator" often reflected the perception gap between those who attempted to broaden the definition of "peaceful uses" as much as possible and those who strongly opposed that broadened interpretation. Third, the process of constructing policy legitimacy on nuclear power depended not only upon the debate over "peaceful uses" as a legitimate symbol, but also upon recognition of the USSR as "friend /enemy." The majority of strong proponents of nuclear energy development were also anticommunists and often condemned the fact that progressive intellectuals had avoided criticizing USSR's nuclear tests. In conclusion, the article argues that it is important for journalism studies to develop a theory to analyze how journalists define what is a legitimate policy scope. 本研究の目的は、原子力政策をめぐる正当性の境界について分析と理論的考察を加え、ジャーナリズム研究の一助とすることにある。日本の原子力開発政策の初期段階、1950年代から60年代にかけては、「平和利用」という概念が原子力政策を正当化する象徴として積極的に活用された。被爆国であった日本では「軍事利用」が絶対悪とみなされた一方で、「平和利用」政策が国民に好意的に受入れられた。そのため、どこからどこまでが「平和利用」の範囲と認定されるかが政策の正当性を決定する上で大きな問題となったのである。分析の成果は大きく分けて3つある。第一は、原発導入に関して積極論、慎重論、反対論が「平和利用」の概念の広がりに関して異なる認識をもっていたことを明らかにしたことである。その上でそれぞれの線引きの思想的根拠がいかなるものであったかを説明した。第二は、「核アレルギー」や「核武装論者」などの政治的レッテルが、正当性の境界に対する異なった認識の落差から生まれてくるものであることを明らかにした。第三は、原子力政策の正当性が軍事利用か平和利用かという軸だけではなく、親米か親ソかという政治的イデオロギーに関わる軸によっても大きく左右されていたことを指摘した。以上の分析を踏まえ、結論としては、ジャーナリズムの言論を分析していくうえで、正当性の線引きをどれだけ明快に行っているかが非常に興味深い論点であることを指摘した。
著者
志賀 令明
出版者
福島県立医科大学
雑誌
福島県立医科大学看護学部紀要 (ISSN:13446975)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-6, 2014-03

ポストモダンと呼ばれる現代で生活する若者の心理は,それ以前の規律訓練型社会といわれた時代に成長した人とは異なってきているといわれる.最も大きな違いは,わが国における物語性(深層構造)の喪失と,表層主体の現代社会で若者が生きていかざるを得ないというところにある.ここではわが国の時代の変化に伴う文化の変容に焦点をあて考察し,これから看護を志す若い人たちの理解を促し,看護観の形成に寄与したいと考えている.
著者
Hiroyuki Ariyama Masanori Taru
出版者
The Japanese Society of Systematic Zoology
雑誌
Species Diversity (ISSN:13421670)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.187-200, 2017-11-25 (Released:2017-12-05)
参考文献数
18
被引用文献数
3

Three species of Grandidierella (Crustacea: Amphipoda: Aoridae) were collected from coastal areas of the Tohoku and Kanto-Tokai Districts, East Japan. The first species is G. sanrikuensis sp. nov. from Miyagi Prefecture, which is characterized by the male gnathopod 1 with carpus bearing 3 teeth (only middle tooth large). The second species is G. rubroantennata sp. nov. from Chiba Prefecture. This new species is identical with G. insulae sensu Ariyama (1996), but is different from the true G. insulae Myers, 1981 in the more flagellar articles of the antennae. The last species is G. osakaensis Ariyama, 1996, from river mouths in Kanagawa and Shizuoka Prefectures and an anchialine pool in Izu Oshima Island, Tokyo Prefecture. This species can inhabit various sandy mud bottoms in a brackish environment. Including G. japonica Stephensen, 1938, four Grandidierella species occur in the districts.

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1927年05月21日, 1927-05-21
著者
遠藤茂平 書・画
出版者
文求堂
巻号頁・発行日
vol.[初編], 1877
著者
松村 俊和
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.92, no.11, pp.943-949, 2017-11
著者
古市 将樹
出版者
Waseda University
巻号頁・発行日
2002

制度:新 ; 文部省報告番号:甲1671号 ; 学位の種類:博士(教育学) ; 授与年月日:2002/6/25 ; 早大学位記番号:新3409
著者
滝沢馬琴 著
出版者
成文社
巻号頁・発行日
vol.第26冊−第30冊, 1886
著者
片町 太輔 池田 実 董 仕 谷口 順彦
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.31-39, 2011 (Released:2011-03-18)
参考文献数
42
被引用文献数
1 1 2

中国の長江から利根川流域に導入されたハクレン集団の遺伝的多様性を検討するため,成魚,流下卵,仔魚の計 56 個体を対象に mtDNA 調節領域(454 bp)のシーケンス分析を行った。その結果,26 種類のハプロタイプが検出され,ハプロタイプ多様度(h)は 0.920,塩基多様度(π)が 0.011 であった。これらの値と既報の長江中下流域の集団の値との間には大きな差異はなく,ハプロタイプの系統関係も近縁であった。これらの結果から,利根川集団が長江の中下流域を起源としており,導入後も大きな有効集団サイズによって再生産を繰り返していることが示唆された。
著者
小沢 修司
出版者
京都府立大学
雑誌
福祉社会研究 (ISSN:13471457)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.2-11, 2000-06

1980年代以降、戦後「福祉国家」体制の動揺のなかでさまざまな再編、見直し論議が盛んに行われてきている。本稿では、ベーシック・インカム構想を取り上げ、その系譜の説明、類似の提案である負の所得税、参加所得、社会配当との比較検討などを行いつつ、アンチ「福祉国家」の租税=社会保障政策論として、自由主義者から社会主義者、エコロジストやフェミニストなど幅広い立場から多くの関心を集めている根拠を探っている。ベーシック・インカム構想が支持されているのは、人々を性別分業にもとづく核家族モデルから解き放ち、資力調査に伴うステイグマや「失業と貧困の罠」から解き放ち、不安定度が強まる労働賃金への依存から解き放ち、労働の人間化や自主的市民活動の広範な発展に寄与することが期待されているからである。ただ、労働と所得の切り離しの是非、公務労働の役割についてなど今後解明されるべき論点も残されている。

4 0 0 0 OA 小説作法

著者
田山花袋 (録弥) 著
出版者
博文館
巻号頁・発行日
1909