著者
島村 裕子 増田 修一
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.81-88, 2017-07-18 (Released:2017-08-04)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

本研究では, 理科教育における花粉管の伸長を観察できる植物およびその最適条件を明らかにするために, 花粉管の伸長観察に適した植物の探索を行った。その結果, ホウセンカの花粉は, ショ糖濃度10%で最も発芽率が高かった。一方, サルスベリ, モクセンナおよびチャノキにおいては, ショ糖濃度15%において最も花粉管の伸長が認められ, いずれの植物においても0.5%のエタノールを加えることで花粉管の発芽率が高くなる傾向が認められた。また, 薬包紙に包んだ花粉をシリカゲルとともに密封容器に入れ, 乾燥条件下で家庭用冷蔵庫にて, 6ヶ月間冷凍保存したところ, ホウセンカおよびモクセンナの花粉は, 寒天培地に付着10分後に発芽を開始し, 冷凍前と同程度の花粉管の伸長速度が保たれていた。チャノキおよびサルスベリでは, 発芽までに30分から1時間を要したが, 授業の前に花粉を培地につけておけば, 授業時間内に花粉管の伸長を観察できることが示唆された。マリーゴールド, ジニアリネアリス, ヒャクニチソウ, センニチコウおよびヒオウギスイセンは, 花粉管の伸長観察には適していなかったが, 花粉が学校でよく扱われる植物とは異なる形状をしていることから, 理科教材として興味深く観察することができると考えられた。これら本研究で明らかにした花粉管の観察およびその伸長に適した植物およびその条件に関する情報は, 花粉管の観察・実験への利用・応用に資することが期待される。
著者
清水 剛 朴 英元 Hong Paul
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.217-242, 2010-04-25 (Released:2018-02-25)
参考文献数
25

本稿では、企業のリスクマネジメントという視点から、製品に対するクレームをどのようにして組織的プロセスの改善につなげていけるかを日本の自動車会社の事例を取り上げて検討する。結果として、クレーム処理は合理的な原因追求と改善のプロセスから政治的なプロセスに変化する「政治化」を起こしやすく、組織的な改善にはつながりにくいことを明らかにする。また、「政治化」を引き起こす要因についても論じる。
著者
独立行政法人科学技術振興機構
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
JSTnews (ISSN:13496085)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.4-7, 2005 (Released:2021-02-10)

今年は国連が定めた「世界物理年」である。我が国でも、日本物理学会をはじめとする諸学会にJSTなども加わって世界物理年日本委員会が組織され、さまざまな活動を展開している。4月23、24日には、その中でも最大の「春のイベント」が東京で開催され、活動は佳境に入った。
著者
中島 東夫 川原 大 高松 史朗
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.66-70, 1987-06-10 (Released:2011-02-23)
参考文献数
7

1974年6月3日から12月3日まで, 大分生態水族館の11尾のコバンザメEcheneis naucratesを展示している水槽で, 水温が25℃以下に低下した時以外は, 連目消灯後, 産卵行動がみられ, 直径2.6mmの浮遊性卵が1日平均して約500個産卵された.産卵行動は, オスがメスの腹部を吸盤で刺激し, メスは産卵しそうになると水槽中央上方に泳ぎ出し, 4-6尾のオスがそのメスを追い, 吸盤で水面に押し上げ, 同時に産卵と放精が起こるとい'うものであった.6月15日にふ化した70尾の仔魚の飼育を試み, 9月1日まで26尾の成育が認められ, 並行してその時の仔稚魚の行動を吸盤により吸着がみられる時期まで記録した.仔稚魚の形態変化における特徴は, 吸盤の形成と尾鰭の伸長であり, それらの変化に対応して行動もいちじるしく変化した.吸盤が出現しはじめるまでの時期は尾鰭を折りたたみ, 斜め上を向いて泳ぎ, 餌をとる時には尾鰭を開き, 体をS字型に曲げ, 尾鰭をあおり, 体をまっすぐにして動物プランクトンに突進し, 餌をとった瞬間には, 尾鰭は元の状態に戻していた.吸盤が出現しはじめると, 尾鰭を折り曲げて水槽底で立ち, 吸盤の形成が完成すると, 体をあお向けにしたり, 腹ばいになったりして, 水槽底に横たわるようになった.もっとも成長の早い個体でふ化後35日, 体長55mmで水槽内に設置したパイプや板に吸着するようになった.
著者
力丸 裕
出版者
日本動物心理学会
雑誌
動物心理学研究 (ISSN:09168419)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.27-40, 2003 (Released:2008-01-30)
参考文献数
24
被引用文献数
1

The neural base of the bat's biosonar system is discussed here. The bat emits complex biosonar sounds (pulses) and listens to echoes for orientation and hunting flying insects. Different types of biosonar information are carried by different parameters characterizing pulse-echo pairs. For example, distance information is conveyed by echo delay, while velocity information is carried by Doppler shift. In the auditory cortex of the bat, not only frequency but also other information baring parameters such as echo delay and Doppler shift are systematically mapped as subareas. These computational maps greatly depend on subcortical signal processing. The subcortical auditory nuclei create delay lines and multipliers (or AND gates) for processing distance (echo delay) information, and also create level-tolerant frequency tuning and multipliers (or AND gates) for processing velocity (Doppler shift) information. These multipliers are called FM-FM and CF/CF combination sensitive neurons, respectively. The neurophysiological investigations of the bat's biosonar system provide an excellent database for neural computational models and sonar systems. Application of an agonist of inhibitory neurotransmitter to DSCF or FM-FM area behaviorally revealed the functions of these auditory subareas. Findings made by an on-board telemetry microphone from flying bats confirmed Doppler-shift compensation.
著者
中瀬 朋夏
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.143, no.2, pp.61-64, 2014 (Released:2014-02-10)
参考文献数
20
被引用文献数
1 3

安全で有効性の高いがん治療戦略の開発において,漢方由来成分を用いた治療法がその重要性を高めている.経験的に古くからマラリアの特効薬として利用されてきたアルテミシニンとその誘導体は,キク科の植物であるセイコウ(Artemisia annua L.)から分離されたセスキテルペンラクトンで,構造中のエンドペルオキシドブリッジ(-C-O-O-C-)と細胞内鉄イオンが反応し,フリーラジカルを生成する.近年,トランスフェリン受容体が高発現し鉄イオンを豊富に含有するがん細胞に対して,アルテミシニンの細胞毒性が極めて高いことが注目されている.筆者は,トランスフェリンのN-グリコシド鎖にアルテミシニンを修飾したがん標的アルテミシニンが,アポトーシスを介して,がん細胞に特異的な抗がん活性を示すことを明らかにした.さらに,抗がん薬の効果は細胞内環境の影響を大きく受けることから,がん細胞内の酸化ストレスやエネルギー産生を制御することで,アルテミシニン誘導体の効果を操る手法を開発した.その結果,酸化ストレス耐性のがん細胞に対して,抗酸化促進機能を担うシスチントランスポーター活性を抑制することにより,アルテミシニン誘導体の細胞毒性効果を増強できることが明らかになった.漢方由来成分の効果を最大限に発揮するため,がん標的送達システムや細胞内環境を調節・維持するトランスポーターを制御できる薬剤学的手法を駆使して,今後,臨床応用へ向けたさらなるがん治療戦略の開発を期待する.
著者
村尾 恵一
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2012-MUS-95, no.11, pp.1-5, 2012-05-26

クラリネットのリード振動を可視化するために高速度カメラにおいて撮影を試みた。その振動を解析し閉管楽器であるクラリネットのリードの振動特性を明らかにする。
著者
澤島 佑規 矢部 広樹 足立 浩孝 田中 善大
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.220-226, 2022-06-20 (Released:2022-06-20)
参考文献数
42

【目的】目的は重度の下肢運動障害をきたした被殻出血患者の運動機能の改善に関わる予測因子を明らかにすることである。【方法】対象は回復期リハビリテーション病棟(回復期病棟)入棟時に脳卒中機能評価法(Stroke Impairment Assessment Set:以下,SIAS)の下肢運動合計点数が3点以下の被殻出血患者42例とした。調査項目は年齢,性別,発症から回復期病棟入退棟までの日数,脳損傷側,回復期病棟入棟時のSIASの下肢運動合計・腱反射・筋緊張・触覚・位置覚・腹筋力・体幹垂直性・視空間認知点数,機能的自立度評価法(Functional Independence Measure)の運動・認知合計点数,発症数日後の皮質脊髄路走行領域の損傷度,血腫量,脳室穿破の有無とした。【結果】改善度を従属変数,改善度と有意な相関を認めた項目を独立変数とした重回帰分析を行った結果,年齢が若く,皮質脊髄路走行領域の損傷度が低く,SIAS体幹垂直性点数が高いほど改善度が大きかった。【結論】予測には年齢,皮質脊髄路走行領域の損傷度,重症例特有の予測因子と考える座位能力を用いることが重要である。
著者
梅田 英春 ウメダ ヒデハル Hideharu UMEDA
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.23, pp.73-80, 2023-03-31

本論文では、バリ島東部カランガッスム県アムラプラ周辺で演奏されている日本の大正琴を起源とするプンティン pentingとよばれる楽器と、2007年に設立されたプンティンのアンサンブルのグループ「ムルドゥ・コマラ Merdu Komala」の活動を研究対象としている。そしてこのグループの活動を通して、2つの点を明らかにした。一つは、この楽器やアンサンブルがカランガッスム県に独特な芸能であることが強調され、その後、歴史性が付与されていき、この芸能が「創られた伝統」となったことである。そしてもう一つは、バリの伝統音楽を演奏するために変容した楽器を使って、全音階の西洋音楽を演奏する試みが行われる中で、プンティンが、再び全音階を基本にしている日本の大正琴へと回帰しつつある現状についてである。
著者
Michele Back Jian Xu Jumpei Ueda Setsuhisa Tanabe
出版者
The Ceramic Society of Japan
雑誌
Journal of the Ceramic Society of Japan (ISSN:18820743)
巻号頁・発行日
vol.131, no.4, pp.57-61, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
26
被引用文献数
3

Nd3+-doped Y3Al2Ga3O12 garnet ceramic pellet was prepared by solid state reaction and used as prototype to investigate the potential of Nd3+-activated garnet phosphors as Boltzmann thermometers for cryogenic and high temperature ranges. Despite the conventional use of the near-infrared emitting Nd3+-activated phosphors for biological applications, their real use is hindered by a low sensitivity in the physiological temperature range. Instead, the photoluminescence analysis in the 100–800 K range demonstrated interesting performances in both the cryogenic and high temperature ranges. Indeed, by taking advantage of the Stark levels of 4F3/2 (Z-levels) and the ratio between the emission from the 4F5/2 and the 4F3/2 excited states is possible to build two reliable Boltzmann thermometers in the same material working in the cryogenic temperature range (100–220 K) and at high temperatures (300–800 K), respectively.
著者
佐々木 美保 宮尾 益理子 奥山 朋子 七尾 道子 越坂 理也 佐田 晶 石川 耕 水野 有三 熊野 宏昭 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.81-91, 2018-05-31 (Released:2019-04-05)
参考文献数
24

本研究の目的は、成人2型糖尿病患者の抑うつ・不安がセルフケア行動に及ぼす影響を検討することであった。外来通院中の2型糖尿病患者65名を対象に質問紙調査を実施した。階層的重回帰分析の結果、セルフケア行動のうち、患者の食事療法遵守行動は不安から有意な負の影響が認められた。また、フットケア遵守行動では、抑うつから負の影響が認められた。一方、運動療法遵守行動には抑うつ・不安いずれからも有意な影響性は認められなかった。抑うつ・不安の高い外来通院中の2型糖尿病患者には、食事療法やフットケアに関する療養指導に先立って、セルフケア行動遵守場面における抑うつ・不安が生じる際の対処行動について、行動分析によるアセスメントと介入を行っていくことが有効であると考えられた。
著者
永井 裕人 田殿 武雄
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.43-61, 2017 (Released:2023-03-01)
参考文献数
65

人工衛星などを用いた宇宙からの地形測量は,近年まで様々な手法で行われてきた.得られた地形のデータはDEM(Digital Elevation Model)と呼ばれ,商用利用も拡大しており,氷河研究においても重要な基盤データの一つである.この解説では,光学ステレオ立体視および合成開口レーダを用いたDEM作成技術の発展を総括する.そして無償公開されている画素サイズ30mのDEM を日本国内の各種地形およびヒマラヤ氷河域で比較し,生じる差異を検証する.国内の平地から山岳地域まで3種類の地形において精度検証したところSRTM1とASTER GDEMに対して,ALOS World 3Dがすべての地形で最も高精度であることが分かった.またヒマラヤ氷河域で生じるデータの欠損は,SRTM1では急斜面に多く存在するのに対して,ALOS World 3Dでは積雪の可能性が高く,平坦で標高の高い地表面に多く存在する傾向が明らかになった.山岳氷河の研究においては,これらの精度や特性の差異を考慮したうえで,適切なDEMを選択することが望まれる.
著者
浅場 健太郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回 (2019) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.4Rin124, 2019 (Released:2019-06-01)

本論文では、仮想通貨のホワイトペーパーの内容から、その仮想通貨が「詐欺仮想通貨」であるかを予測するモデルを作成する。これまで2400以上の仮想通貨が発行され、中ではICO(initial coin offering)から100倍以上の収益をもたらす通過が存在するなど、仮想通貨は新しい金融商品として注目を集めている。しかし、投資を受けることだけを目的にした、実用性のない「詐欺仮想通貨」も数多く発行されており、これを見分け、分類することは投資判断において非常に重要である。本稿による分析では、Doc2VecとRandom Forestを組み合わせた分類モデルにより、90%の精度で「詐欺仮想通貨」を検知することに成功し、ホワイトペーパーの内容から有意な分類が可能であることが示された。