著者
高橋 恵理子 根建 金男
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.225-235, 2016-05-31 (Released:2019-04-27)
参考文献数
21

本稿では、青年期女性における身体不満足感への認知行動的介入の効果を検証するために、非無作為化試験を実施した。研究1では、認知行動的介入群において、外見に関する信念に焦点を当てて、自己の身体に対する思いやり/いつくしみを促進する実験課題を実施した。状態的な身体不満足感の得点について、外見に関する信念には焦点を当てずに身体について語る傾聴群、いずれの課題も行わない統制群と比較した。その結果、認知行動的介入群で状態的身体不満足感の得点が最も顕著に低減した。研究2では、研究1の実験課題を実際のカウンセリング場面に近づけて発展させ、認知行動的介入群でホームワークを含む4週間の介入プログラムを実施した。その結果、認知行動的介入群は傾聴群、統制群に比べて、身体不満足感などの得点がより減少する傾向にあり、主観的幸福感の得点はより増加することが示唆された。
著者
野中 俊介 大野 あき子 境 泉洋
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1-10, 2012-01-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、ひきこもり状態における家族機能を検討することであった。ひきこもり状態が行動理論および幸福感の観点による家族機能に及ぼす影響を検討するために、ひきこもり状態にある人の親(以下、ひきこもり群)107名および、ひきこもり状態の経験がない人の親(以下、統制群)79名を対象にひきこもり関係機能尺度(HRFS)、およびRelationshipHappinessScale(RHS;Smith&Meyers,2004)に回答を求めた。共分散分析の結果、ひきこもり群は統制群よりもHRFSの「正の罰」、「負の罰」得点、およびRHS得点が低いことが示された。これらの結果を踏まえ、介入において親の関係幸福感および関係性の機能の改善の意義について考察が加えられた。
著者
今井 民子 笹森 建英
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.29-53, 1991-10

ヴァイオリン音楽の発展を可能にした背景には,17世紀から18世紀の楽器製作の改良,演奏技術の確立があった。この論文では,先ず楽器製作の変遷を概観する。この時代の演奏技術の確立を把握する上で重要なのは,器楽形式の発展と,一連の技法書の出版,技巧を駆使して葵すカブリスの類の作品の出現である。レオボルト・モーツァルトMozart, Johann GeorgLeopoldやジェミニア一二Geminiani,FrancescoSverioの奏法に関する著書,ロカテッリLocatelli,PietroAntonioのカブリスは重要な役割をはたした。この論文では,彼らによって掲示された技法を具体的に考察する。20世紀,特に1945年以降は,音楽様式,演奏法が画期的な変貌を遂げた。その技法上の特質を明らかにする.これらを踏まえて,音楽文化が新芽し,形成され,さらに発展,変遷していく過程に教育書がどのような役割を果たすのかについても検証する。
著者
大門 正幸
出版者
人体科学会
雑誌
人体科学 (ISSN:09182489)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.22-31, 2020

<p>「胎内記憶」という表現は本来「母親の胎内にいる時の記憶」を指す語であるが、「過去生記憶」や「中間生」と呼ばれる受胎前の記憶、「誕生時記憶」なども含めた総称として用いられるようになってきている。胎内記憶研究の第一人者とされる池川明氏の活躍によって一般に知られるようになったこの概念は、広く受け入れられるようになると同時に、様々な批判を受けるようにもなってきた。本稿では、「専門家」による「胎内記憶」批判を検討し、それらが妥当性に欠けるものであることを示す。一方、「胎内記憶」推進派の言説や実践についても改善が望まれる点がある。特に次の二点は重要である。第一に、人生観に関する知見という「胎内記憶」研究から得られる「態度価値」を重要視するあまり、たとえば「子どもはみな親を選ぶ」のような過度な一般化がなされ、実際のデータから乖離してしまうことがある点である。「胎内記憶」を「根拠」とするのであれば、データについてはより慎重な取り扱いが必要であろう。第二の点は、「胎内記憶」と密接に関わる特殊能力の取り扱いについてである。具体的には、胎児との対話や、重い障がいを持った子どもとの対話など、「胎内記憶」同様、従来の脳還元主義的意識論では説明できないコミュニケーションである。これらについては、「胎内記憶」の真実性と同様に、調査・研究によってその実在性が確認されるべきであろう。</p>
著者
永島 俊夫 小泉 幸道 山田 正敏 柳田 藤治
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.34, no.7, pp.469-473, 1987-07-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
4

カレー製造に比較的よく用いられている香辛料9種について,120℃に加熱した場合の香気成分の変化をガスクロマトグラフィーにより比較検討した.(1) カルダモン,クローブ,クミンは加熱により主要な成分が増加し,全香気成分量も増加した.(2) オールスパイス,メースは加熱により全香気成分量が減少したが,その割合は比較的少なかった.(3) フェネル,シナモン,コリアンダー,フェネグリークは加熱により各成分が大きく減少し,特にフェネグリークはそれが著しかった.(4) 各香辛料の香気成分は,加熱により増減が見られたが,低沸点化合物量は全ての香辛料で減少が認められた.(5) 香辛料の種類により,加熱による変化に特徴が見られたことから,製造時においてもこれらの点を充分考慮する必要があると思われた.
著者
膽吹 覚
出版者
龍谷大學國文學會
雑誌
國文學論叢 (ISSN:02887770)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.51-58, 2008-02
著者
倉田 毅 田村 慎一 小島 朝人 岩崎 琢也 佐多 徹太郎 山西 弘一
出版者
国立予防衛生研究所
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1989

HIV感染後、エイズ発症に至るまでの体内での動態についてはよくわかってはいない。in vitroでみると、HIVと突発性発疹の病原体であるヒトヘルペスウイルス6(HHV6)は、CD4陽性Tリンパ球を標的とする。エイズ発症初期の全身リンパ節の系統的腫脹(PGL)の特徴は異常なリンパ濾胞の過形成と樹状突起細胞の腫大であり、B細胞の増生である。悪性リンパ腫として疑われて生検されたPGL初期のリンパ節で抗原の分布を免疫蛍光法、ABC法でみると、HIVは主として胚中心を中心として濾胞内に大量に存在するのに対し、HHV6は濾胞周辺領域に大量に検出された。両ウイルスは、23例でみるとエイズの症状の進行と共に、萎縮期の全身リンパ節における検出率が減少した。HIV抗原は樹状突起細胞を中心にその周辺に網状に、HHV6抗原はマクロファ-ジおよびリンパ球にみられ、両者の分布域と細胞は明らかに異なっている。今回の事実から、HHV6は、HIVがリンパ節内において活性化されると共に、異なった領域で活性化され相互に作用しながらCD4陽性細胞を破壊するものと推定される。他のウイルスが日和見感染としてエイズの後期において活性化されるのに対し、この2つのウイルスはPGL期において重要な役割を担っていることが明らかになった。AC患者の末血20名をみると、両抗原が検出されることはないが4ー7日の培養で、6名でHIV、7名でHHV6が検出されてきた。この時期においては両ウイルスは活性化されているとはいえず、ACからPGLへの進展の要因が何であり、それがどのようにHIVとHHV6動かすかについての検討が次の課題である。
著者
柴山 元彦
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.105, no.6, pp.718-722, 1996-12-25 (Released:2009-11-12)
被引用文献数
2 2
著者
安 道永
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.75, no.657, pp.2737-2745, 2010-11-30 (Released:2011-02-25)

The purpose of this paper is to realize the tendency to the distribution of painters' address by schools, and to deliberate whether to involve between the distribution of painters' address and patrons. The results are as follows: (1)Sizyo-school gathered on Sizyo-dori. (2)Maruyama-school gathered on Higasinakasuzi-dori after Koka. (3)Kisi-school gathered around Teramatihigasinodoin and on Itizyo-dori and Nakatatiuri-dori. (4)Hara-school gathered on Itizyo-dori and Nakatatiuridori. (5)Motiduki-school gathered a narrow area. (6)Kano-school showed a same tendency as Motiduki school after Tenpo. (7)Tosa-school gathered on Teramatimarutamati. (8)Turusawa-school divided into Turusawa, Yamamoto, and Isida. (9)The painter of letters gathered on outskirts.

3 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1919年09月13日, 1919-09-13
著者
Koichi Tomoda Kaoru Kubo Kazuo Hino Yasunori Kondoh Yasue Nishii Noriko Koyama Yoshifumi Yamamoto Masanori Yoshikawa Hiroshi Kimura
出版者
The Japanese Society of Toxicology
雑誌
The Journal of Toxicological Sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.331-337, 2014-04-01 (Released:2014-03-18)
参考文献数
23
被引用文献数
5 7

Cigarette smoke induces skeletal muscle wasting by a mechanism not yet fully elucidated. Branched-chain amino acids (BCAA) in the skeletal muscles are useful energy sources during exercise or systemic stresses. We investigated the relationship between skeletal muscle wasting caused by cigarette smoke and changes in BCAA levels in the plasma and skeletal muscles of rats. Furthermore, the effects of BCAA-rich diet on muscle wasting caused by cigarette smoke were also investigated. Wistar Kyoto (WKY) rats that were fed with a control or a BCAA-rich diet were exposed to cigarette smoke for four weeks. After the exposure, the skeletal muscle weight and BCAA levels in plasma and the skeletal muscles were measured. Cigarette smoke significantly decreased the skeletal muscle weight and BCAA levels in both plasma and skeletal muscles, while a BCAA-rich diet increased the skeletal muscle weight and BCAA levels in both plasma and skeletal muscles that had decreased by cigarette smoke exposure. In conclusion, skeletal muscle wasting caused by cigarette smoke was related to the decrease of BCAA levels in the skeletal muscles, while a BCAA-rich diet may improve cases of cigarette smoke-induced skeletal muscle wasting.
著者
小川 明水 伊東 栄典
出版者
情報処理学会九州支部
雑誌
火の国情報シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, no.2, pp.1-4, 2021-03-01

動画・イラスト・音楽・小説などのコンテンツを投稿・閲覧するCGMサイト(Consumer GeneratedMedia)が人気である。CGMサイト内で人気を得たコンテンツが,ネットや実世界に広がるようになっている。例えば人気を得たオンライン小説が,漫画やアニメになり,多くの閲覧者を得ている。内容が多様で,かつ品質が均質でないオンライン小説群から,人気小説の傾向(流行の傾向)を抽出したり,将来人気となる小説を見つけることが出来れば,商機に繋がる。オンライン小説では,ある人気小説に触発された作家が,その人気小説のオマージュ小説を投稿することで,流行が始まることが有る。本研究では,ある人気小説に触発されて次々と生み出される小説群の繋がりを創作の連鎖と呼ぶ。本研究では,オンライン小説の将来流行予測や人気小説発見を行う前提として,小説の連鎖関係に基づくオンライン小説の傾向を分析する。
著者
馬 健 井上 朝雄
出版者
九州大学大学院芸術工学研究院
雑誌
芸術工学研究 (ISSN:13490915)
巻号頁・発行日
no.35, pp.1-20, 2021-10-01

This paper focuses on the use of natural light in the exhibition rooms of contemporary art museums. Through daylight simulations, it examines the effects of daylighting methods on the illuminance of the exhibition rooms, and clarifies some of the possibilities of using natural light in exhibition spaces. First of all, in order to clarify the overall picture of daylighting methods, multivariate analysis was used to classify the daylighting methods of the exhibition rooms with top lights, and the characteristics of the results were discussed. Based on the results of the classification, daylight simulations are conducted for 11 representative cases, and the characteristics of natural light use in each case are discussed under the conditions of different season, time of day, etc. from the viewpoint of instantaneous illuminance values. In order to compare the results with the instantaneous illuminance values under ideal weather conditions, annual daylight simulations were conducted using meteorological data that can also consider the actual weather conditions of each case study. The characteristics of the light environment of the 11 cases were discussed in terms of spatial illuminance distribution, calculated values, appearance time of the specified range of illuminance, and climatic characteristics. Finally, by comparing the above simulation results with the design background of some case studies, the effects of the daylighting amethods were comprehensively discussed.
著者
島谷 謙
出版者
世界文学会
雑誌
世界文学 (ISSN:03852903)
巻号頁・発行日
no.134, pp.87-94, 2021-12