著者
井上 勝生
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文學報 (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
vol.111, pp.67-91, 2018-03-30

特集 : 日清戦争と東学農民戦争Special Issue: the Shino-Japanese War and the Donghak Peasant War本史料は, 日清戦争中, 第五師団後備第19大隊に従軍した一兵卒の従軍日誌である。同大隊は, 当時も「東学党討滅大隊」と呼ばれていた東学農民軍殲滅部隊である。筆者の兵士は, 1894年7月23日, 召集令状を受取り, 松山市で後備第19大隊へ入り, 最初, 下関守備隊に就く。ついで10月28日, 東学党討滅のために, 渡韓を命令され, 11月12日, 龍山を出発, 東学農民軍に対する「3路包囲殲滅作戦」に従軍した。兵士は, 同大隊の第1中隊に配属され, 東側の道を進軍する。京畿道利川から忠清道忠州, 鳥嶺を越えて, 慶尚道聞慶へ入り, 全羅道南原へ, さらに南部の長興戦争などに参戦。討滅は, 出発の3日後, 利川で, 指導者の子息を投獄, 銃殺するところから始められる。以後, 東学農民軍の集結する村落を襲撃し, 指導者らを銃殺。途中, 大隊本部・第3中隊へ軍資金を運搬する任務にあたっては, 文義・沃川戦争直後の村々の惨状を目撃, 慶尚道から全羅道へと討伐に従軍した。南原以後, 討伐は, 拷問・銃殺・焼殺, 村の焼き払いなども激化する。討伐作戦最前線の戦場の状況が記されている学術的に貴重な歴史史料である。This is the full text of the "campaign journal" kept by one of the soldiers participating in the Japanese offensive against the Donhak Peasant Army in Korea, during the Sino-Japanese War. It describes the total annihilation campaign carried out by the Japanese, including shooting captured members of the Peasant Army, burning their villages, and direct gunfights between the two sides. The detailed account of the situation on the battlefront makes it an extremely valuable historical resource.
著者
土井 秀和
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 第IV部門 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.107-116, 1983-09-30

近年シュート技術の発展は目ざましいものがあるが,サイドシュートは技術的課題を多く含んだものであるため実践的な試みが積み重ねられている。とりわけこのシュートの巧拙はチームの得点能力に大きな鍵となっている。本研究は多様なサイドシュートのうち特に左サイドからのジャンプシュートをとりあげ,その成功に影響を及ぼす助走の方向と踏み切り姿勢を実験条件として,サイドシュートの技術的特性を運動形態学的に分析したものである。結果として次のことが明らかにされた。1)防御者にボールを奪われないようにする方法として,ボールを前方又は後方高く保持しながら上体をゴールラインの方向に傾けるか,背中を防御者に向けることが有効である。2)右手投げの場合,リリース時のボール速度を最大にする技術として,左肩を前方に出した半身の姿勢によって胴体をねじり,その後右足を後方に振りながらねじり戻し動作を行なうことが有効である。3)ゴールポストにボールが入る空間をより大きくするために,リリース時のシュート角度を大きくすることは極めて重要である。(1)ゴールラインの方向から助走して行なうシュートの場合は,踏み切り姿勢にかかわらず,ペナルティースローラインの方向に跳躍できるのでシュートの成功に有利である。(2)またフリースローラインの方向から助走して行なうシュートの場合は,右足で踏み切りその際右肩を前方に出す踏み切り姿勢によって,フォワードスイング期に上体をペナルティースローラインの方向に傾けながら,サイドスローを行なうことができるのでリリース時のシュート角度を大きくすることができる。In the Hand Ball game, various shoot-techniques are carried out. Among them, the most important one to win the game is the side-shoot technique. So, this study analyzes morphologically some techniques of jumping-side-shoot from the left side of the Hand Ball coat. This experiment sets the conditions on the directions of approach-running and the postures of jumping-up in performing side-shoot. This study leaves much problem, but following tendencies can be observed from the results obtained so far; 1) It is important technique for the success of the side-shoot that the shooter don't be cut the ball by his defenders. So, when he tries to side-shoot, he must incline his upper part of body toward the Goal-line or must turn his back to the defender, holding the ball upward or backward. 2) In any directions of approach-running, the right-hand-thrower jumps up by his left-foot and puts his left-shoulder forward, and then he twists his upper part of body to the right in the air. So, he makes the effective throwing motion for side-shooting. 3) Concerning the side-shoot running-approach direction from the Coal-line, if the shooter jumps up toward the Penalty-Throw-line in any postures of jumping-up, he can spread the shooting-angle which makes the goal-space much wider. 4) About the side-shoot running-approach direction from the Free-Throw-line, if the shooter jumps up by his right-foot and puts his right-shoulder forward and then he inclines his upper part of body toward the Penalty-Throw-line, he could success the good shooting by making the same conditions as above 3).
著者
久田 健吉
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.83-97, 2004-01-10

ヘーゲルの国家論の特徴は、国家は人倫を大切にする国家でなければならないとした点にある。人倫を大切にする国家、つまり人倫の国家とは絶対的人倫の理念の認識に基づく諸個人の共存の国家であって、個人が己の個別的意志を普遍的意志へと陶冶していくことにおいて成り立つ国家である。しかし、同時にその国家はその個人を陶冶させる国家でもなければならない。それゆえ国家はこの人倫を発展させる知恵を、制度の知恵としてもつのでなければならない。そうしなければ国家は真の国家とはならない。ヘーゲルはこう考えていたのである。人倫の心とは信頼と尊敬の心。私の終生のテーマとの関連で言えば、隣人愛や慈悲や恕の心となろう。この心の源は市民生活の中にある。法的権利は守られてはいるが、ある意味で弱肉強食の世界になっている市民社会。この市民社会の中にあって、共生の生活をし、互助組織をつくってこの心を育んでいる市民たち。ヘーゲルはこの心ほど大切なものはなく、この心を育てる国家こそ真の国家、こういう国家になってはじめて市民が思いを寄せる国家になることができる。バラバラな「ドイツ的自由」の国家でなく、強固な国家権力をもつ国家を実現することができる。宥和の国家を実現することができる。ヘーゲルはこう考えていたのである。
著者
昆 恵介 福士 幹太 辻 智悠 佐藤 健斗
出版者
公益社団法人 日本義肢装具士協会
雑誌
POアカデミージャーナル (ISSN:09198776)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.107-114, 2021 (Released:2021-09-01)
参考文献数
19

本研究では国内でこれまでに流通してきた膝装具の代表的ものとして、OAファンタジー、CBブレース、アンローダーワンを取り上げ、装具の矯正力について比較し、その特徴と差異を明確にすることを目的とした。方法は膝内反変形を再現した模擬生体(ファントムモデル)に各種膝装具を装着し、装具が発生している矯正力を動作解析によって計測を行った。結果として、膝装具はいずれも変形性膝関節症患者の変形を矯正するに必要な3点支持の矯正力を発揮していないことを明らかにした。
著者
永井 伸夫 佐伯 由香
出版者
文化女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は,足浴操作が免疫機能および自律神経機能におよぼす効果を明らかにし,身体への効果を総合的に検討することである。健康な20歳前後の女子学生(21〜24歳)を対象者として,足浴操作は椅座位にて42℃の湯に足を浸けて10分間行うことを基本とし,その他に足を湯に浸けた状態で足底部への刺激として気泡刺激と振動を加える操作を行った。自律神経機能の評価は心拍変動の周波数解析を行い,免疫機能については,白血球分画,リンパ球サブセットをフローサイトメトリーにて解析し,またナチュラルキラー(NK)細胞の細胞障害活性を測定した。さらに足浴によるストレス軽減の有無等を検討するため,血漿中のTh1細胞産生サイトカイン(IL-2,IFN-γ,TNF-α),Th2細胞産生サイトカイン(IL-4,IL-6,IL-10)の測定を行い,Th1/Th2バランスについて検討した。足浴を行うことにより,副交感神経系の機能が亢進する傾向が認められ,これによって免疫機能においてもNK細胞障害活性が有意に増加し,これらの効果は足浴による温熱刺激に足底部への触・圧刺激が加えられることによって増強された。白血球分画においては,足浴後に好中球の増加が認められたが,これも自律神経系の変化によることが推察された。足浴の効果が,足底部への体性感覚刺激によるものなのか,温熱刺激が加わることによってもたらされた効果なのかを明らかにするために足底刺激のみを行った場合と,膝下まで湯につけた場合とを比較検討したところ,足底部への触・圧刺激と温熱刺激の両方が存在することで効果が現れることが確認された。足浴を一定期間(7日間)実施し,その前後における免疫機能,自律神経機能の評価を行ったところ,自律神経機能では副交感神経系の機能が亢進し,このことによりNK細胞障害活性が増加し,免疫機能を高める傾向が得られた。またTh1/Th2バランスを示すサイトカインについては,足浴により大きな変化を示すことはなく,概して低値を示していた。足浴によりリラクゼーション効果がもたらされ,副交感神経系が優位になることで免疫機能を高めることが推察された。これらのことから免疫機能の低下した患者や高齢者などを対象に気泡・振動付きの足浴を行うことによって,身体機能の改善が期待できることを示唆し,足浴を用いた効率的ケアに貢献するものと考えられた。
著者
山田 浩喜 佐藤 忠彦
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.161-172, 2020 (Released:2021-04-21)
参考文献数
21

In this paper, POS data with IDs of drugstores is applied to the analysis method proposed by Govaert & Nadif (2010). By using the Poisson latent block model with snacks purchase history data at drugstores located in the Gifu region, we cluster both the customers and the snacks brands simultaneously, and grasp the snack brand group that the customer group with a high purchase frequency choose. Furthermore, based on the model estimation, we discuss effective marketing measures in drugstores. Although we analyze only snack category, it can be extended to other product categories and is an effective way to summarize Big Data.
著者
吉岡 恒生
出版者
愛知教育大学
雑誌
治療教育学研究 (ISSN:09104690)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.13-21, 2010-02

本論では,子どもを援助する者の「心の傷」が援助プロセスへ与える影響について論じた。子どもを援助する者の「心の傷」が子どもの「心の傷」に触れる際に,どのようなプロセスが起こりうるか,またその癒しの効果と危険性はどのようなものかについて,「傷ついた癒し手」「メサイア・コンプレックス」等の概念を用いて論じた。また,特別支援学校教員への記述式アンケートにより,自身の子ども時代の「心の傷」をめぐるエピソードが,特別支援学校教員としての職業選択・教育実践に影響しているかもしれない,と半数近い者が感じていることがわかった。またアンケートの記述をもとに,「心の傷」が職業選択・教育実践にどのように影響するかについて,7事例を紹介しつつ考察した。以上を踏まえて最後に,特別支援学校における「子どもたちの心の傷とその対応」について論じた。
著者
松浦 敏雄
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.661, 2021-11-15

このコラムでは,主として高校でのプログラミング教育を想定して,プログラミングの面白さを伝えるにはどうしたらよいかについてお話しします.プログラミング教育の目的は,プログラミングの面白さ・難しさ(思い通りに動かないなど)を体験することを通して,コンピュータの本質に近づくことと考えています.具体的な目標は,自ら簡単なプログラムを組めるようになることです.この目的を少ない授業時間(50分×10回程度を想定)で達成するための具体的な方法を提案します.
著者
上ノ原 秀晃
出版者
文教大学
雑誌
人間科学研究 = Bulletin of Human Science (ISSN:03882152)
巻号頁・発行日
no.40, pp.45-59, 2019-03-01

The 2017 House of Representatives Election was the fourth national-level election after the introduction of the Internet-based election campaigning in Japan. Some studies have indicated that this change in campaigning rules had some impact on voters' attitudes or behaviors while other studies have contended that it has not changed election results. This paper examined how candidates utilized social media, rather than its effect on voting behavior or electoral outcomes. This paper focused on the type of candidates who tended to use Twitter, the frequency of tweeting, and what candidates tweeted about; 42,854 tweets from 619 candidates over a 12-day period of campaigning were collected and analyzed using the text mining software KH coder. Results revealed that incumbent candidates, candidates in toss-up districts, and long-shot candidates were more likely to use Twitter than favored candidates and candidates in SMDs, while candidates in some opposition parties were more likely to tweet quite often. The computerized content analysis of candidates' tweets revealed that most candidates used Twitter to post information on their campaign activities while few tweets discussed policy issues. Candidates from some opposition parties, and especially those from the JCP(Kyôsantô), used RTs to communicate with their constituencies and they posted tweets to discuss policy issues. A trend analysis of hashtags has revealed a change in strategy for the JCP and other members of the opposition coalition and greater online prominence for two new parties—the Party of Hope(Kibô-no-Tô)and the CDP(Rikken Minshutô).2017年衆院選において候補者がどのようにソーシャルメディアを活用したのかに注目し、どのような候補者がツイッターの利用に積極的であったのか、どのような内容が投稿されたのかを分析した。619人の候補者の選挙期間中の投稿42,854件のツイートを収集し、テキスト分析を行った。利用の有無に対しては、現職と新人の差、選挙区と比例代表の違い、当選の見通しの違い、政党の違いが影響しているが、投稿量に対しては政党の違いのみが影響していることがわかった。投稿内容を分析すると、全体として告知や報告が中心で政策論争は低調であったが、一部の野党は政策論争やRTによるコミュニケーションに積極的であった。これらは概して諸外国と共通する傾向である。また、ハッシュタグのトレンドを分析したところ、選挙期間中の共産党の選挙戦略の変化や、2つの新党の党勢の推移も読み取れた。