著者
新本 万里子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.25-45, 2018

<p>本稿は、モノの受容を要因とするケガレ観の変容を、女性の月経経験に対する意識とその世代間の違いに着目して明らかにすることを目的とする。パプアニューギニア、アベラム社会における月経処置の道具の変遷にしたがって、月経期間の女性たちがどのような身体感覚を経験し、月経期間をどのように過ごしているのかについて民族誌的な資料を提示する。その上で、月経を処置する道具を身体と外部の社会的環境を媒介するものとみなし、そこにどのような意識が生じるのかを考察する。これまで、パプアニューギニアにおいて象徴的に解釈されてきた月経のケガレ観を、女性たちの月経経験とケガレに対する意識との関連という日常生活のレベルから捉え直す。</p><p>本稿では、月経処置の道具の変遷にしたがい、女性たちを四世代に分類した。第一世代は、月経小屋とその背後の森、谷部の泉という場で月経期間を過ごした世代である。第二世代の女性たちは、布に座るという月経処置を経験した。この世代は、月経小屋が土間式から高床式に変化し、さらには月経小屋が作られなくなるという変化も経験している。第三世代は、下着に布を挟むという月経処置をした女性たちである。第四世代は、ナプキンを使用した女性たちである。各世代の女性たちの月経経験とケガレに対する意識との関係の分析を行い、第一世代の女性たちは、男性の生産の場から排除される自分の身体にマイナスの価値づけだけをしていたのではなく、むしろ男性の生産の場に入らないことによって、男性の生産に協力するという意識をもっていたことを明らかにする。第二世代、第三世代を経て、第四世代の女性たちは、月経のケガレに対する意識を維持しながらも、月経期間の禁忌をやり過ごすことができるようになったことを論じる。</p>
著者
兵頭 晶子
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.97-120, 2005-06-30

大正期、憑霊の行法としての鎮魂帰神法を大々的に喧伝した大本教は、その憑霊の是非をめぐり、日本精神医学会の機関誌『変態心理』から激しい弾劾を受けることとなる。従来、この弾劾は、「科学」による邪教・迷信打破の一環として評価されてきた。しかし、弾劾する側の『変態心理』が標榜する「精神医学」とは、今日の精神医学と決して同義ではなく、当該期の精神病学を含めた正統医学界を「物質医学」として批判するための反命題に他ならない。そこで新たな「心理」学の登場を促した催眠術や潜在意識は、スピリチュアリズムを復権させる装置でもあり、その潮流において再発見された鎮魂帰神法とは、重なり合う部分があるゆえの近親憎悪的な関係にあったのではないか。こうした観点から本稿では、大本教と『変態心理』の背後にある共通の磁場としての「精神」という潮流に焦点を当て、両者が実際には何をめぐって争い、その帰結はどこへ行くのかを検討する。
著者
野崎 清孝
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.21, pp.p89-93, 1993-03

日本地理学史上、集落地理学のうちの村落を対象とする研究一村落地理学一の占める役割は大きい。昭和初年の小川琢治と牧野信之助による奈良盆地における環濠集落と砺波平野における散村の起源をめぐる論争以来、多くの村落研究が進められてきた。綿貫勇彦は、村落研究を自然科学的方法と社会科学または歴史学的方法とのかかわりの中にもとめたが、基本的には景観論、集落形態論を重視する立場をとった。これは彼がルドルフ・マルチニーや、ハーパート・シュレンガーなどのドイツ学派の影響を受けたためであった。村落研究は歴史学や社会学、経済学、民俗学の方面からも進められたことはいうまでもない。中村吉治は、村落はもちろん歴史的存在であるから村落構造を知るため歴史的分析を行うのは当然であるし、現在の実態の調査を通じてそこに見られる歴史を知り、また書かれた史料や慣習、または記憶されている過去の史料をそれにあわせ考察することによって本質に近づかねばならないと述べた。鈴木栄太郎は、農村社会学の体系的理論を展開したが、とくに集団を結束させている要素の分析の必要性を強調した。柳田国男の民俗学は、民俗事象を研究の対象としたが、村落そのものを研究対象とするものではなかった。その後、柳田勝徳は、従来の民俗学のあり方を反省し、民俗学独自の立場から村落の把握が必要であることを主張した。さらに小野武夫は、村落研究の一面は政治史であり、社会史であり、経済史であるとともに、他の一面は地理学であり、民俗学であると考えたが、この構想は総合的村落研究の出発点であった。こうした研究の蓄積が進む中から村落の歴史地理研究は次第に社会地理学との接近によって村落の社会構造や地域における村落間の結びつきなどを解明する方向に研究の中心が移ってきた。最小の地域統一体を基礎地域とし、古い基礎地域の連合、あるいはそれをもとにした基礎地域の膨張がすでに中世にもみられたとする見解を述べたのは水津一朗であった。本稿は、このような村落研究の進みの中で村落をどのように歴史地理的に把握し、分析するべきかの問題点をとりあげることにしたい。ここではとりあえずa中世的秩序からの継承、b村落の成立と変遷、c村落の内部=構造、d村落結合と地域的紐帯に限定して述べる。
著者
木村 五郎 赤木 博文 岡田 千春 平野 淳 天野 佳美 大村 悦子 中重 歓人 砂田 洋介 藤井 祐介 中村 昇二 宗田 良 高橋 清
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.628-641, 2012

【背景・目的】Lactobacillus acidophilus L-55 (L-55株)には,マウスアレルギーモデルに対する症状緩和効果が認められている.そこでL-55株含有ヨーグルト飲用による,スギ花粉症臨床指標への影響について検討した.【方法】スギ花粉症患者にL-55株含有ヨーグルト(L-55ヨーグルト群, n=26)あるいは非含有ヨーグルト(対照ヨーグルト群, n=26)を花粉飛散時期を含む13週間飲用してもらい,症状スコア,症状薬物スコア,IgE抗体について検討した.【結果】L-55ヨーグルト群の総症状スコアと症状薬物スコアは,対照ヨーグルト群より低い傾向が認められた.特に治療薬併用例(n=23)では, L-55ヨーグルト群の花粉飛散後第5週の総症状スコア,第4週の咽喉頭症状スコアおよび第1週の総IgEの変化比が有意に低値であった.【結語】L-55株はスギ花粉症に対する緩和効果を有し,治療薬の併用により効果的に症状を軽減,あるいは使用薬剤を減量することが期待された.
著者
小嶋 文博 刈谷 円 細川 知子 Fumihiro Ojima Madoka Kariya Tomoko Hosokawa
出版者
盛岡大学短期大学部
雑誌
盛岡大学短期大学部紀要 = Bulletin of Morioka Junior College (ISSN:09168079)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.21-30, 2004-05-01

野菜・果実類の酸化還元電位を測定し,加熱したほうが食品の酸化還元電位が低下することが判った。これは(1)食品中のポリフェノラーゼなどが加熱により失活するため,抗酸化成分の酸化・分解が抑制されること,(2)加熱より細胞組織が柔軟化し,細胞内容物が細胞外に浸出しやすくなることなどが主な理由であると考えられた。また酸化還元電位の異なる食品の摂取試験から,人体の酸化還元電位よりも相対的に低い酸化還元電位を有する食品の摂取が人体(尿)の酸化還元電位を低くすることが示唆された。特に野菜・果実類を加熱して摂取することが,生で摂取するよりも,人体の酸化還元電位という指標から体内の酸化還元電位の改善に有効であることが示唆された。
著者
野口 晶子
出版者
京都造形芸術大学
巻号頁・発行日
2005

博士論文
著者
吉野 啓子 永井 真由美
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. [音楽情報科学]
巻号頁・発行日
vol.2013, no.28, 2013-08-24

「初音ミク」 誕生が産んだ CGM ムーブメントをエンターテインメントの方向に伸ばした 「Project DIVA」 シリーズ.そして Project DIVA シリーズの販促イベントとして実施した所,世界にインパクトを与えた 「ミクの日感謝祭」.本講演では Project DIVA (アーケード) を構成する技術とその歴史,「ミクの日感謝祭」 に代表される 3D ライブのテクニカルな部分を紹介する.
著者
尹 小娟
出版者
九州大学大学院比較社会文化学府比較文化研究会
雑誌
Comparatio (ISSN:13474286)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.47-57, 2018-12-28

This article aims to examine a certain feature of Ju.ran Hisao as a recruited writer in the South (Nanpo) during the Pacific War. His southern works written during the wartime humorously describe life there in wartime as if it were normal daily life. While on the whole he demonstrated a cooperative attitude towards the wartime policy of the Japanese government of that time, his will to value literariness in his writing is also discernible, and it is in this aspect that his works prove to be unique
著者
柴田裕基 中山伸一 真栄城哲也
雑誌
第73回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.1, pp.273-274, 2011-03-02

本研究の目的は,アーティスト間の影響関係に基づき,ロックミュージックで重要な役割を果たしたアーティスト達を明らかにすることである.アーティスト間の影響関係 (影響を受けた・与えた) が,ロックミュージックの発展の重要な要素であると考えられる.音楽批評サイト等から,ロックおよびポップスに含まれるアーティスト間の影響関係を網羅的に収集し,アーティスト間の影響関係ネットワークを構築した.このネットワークを対象に,独自に考案した影響力の伝搬の定量的指標を用いて,影響力の大きなアーティスト群を抽出した.
著者
佐藤 正夫
出版者
学習院大学
雑誌
東洋文化研究 (ISSN:13449850)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.177-197, 2011-03

This year marks the centennial of the annexation of Korea by Japan and the 91st anniversary of the incipience of the March First Movement. Nonetheless, there is a relative paucity of research in Japan into Japanese-Korean relations during this era. More specifically, so far there has been little comprehensive research into the Korean Declaration of Independence Using primary sources in the context of the March First Movement. The present paper focuses oll the Declaration itself against the backdrop of the March First Movement, and explores how it came to be drafted and spread throughout the country. The significance of the Declaration is explored by examining how one Japanese person obtained and stored it in Pyongyang. It is the author's opinion that this examination of the Declaration of Independence as a historical document provides a new perspective on the March First Movement. Needless to say, this study in itself does not make a case for a major change in views of the March First Movement or of the Declaration's signatories as''traitors", but it does pose questions worthy of further examination.
著者
沢 俊行
出版者
日経BP社
雑誌
日経メカニカル (ISSN:03863638)
巻号頁・発行日
no.539, pp.60-66, 1999-08
被引用文献数
1

あの大惨事を覚えているだろうか-。1991年6月6日,山梨県御坂町の国道137号線。通称「御坂峠」の下り坂を約4kmにわたって,1台の大型トレーラが暴走。道路沿いの電柱や標識をなぎ倒し,走行中の車17台を巻き込んで大破した(図1)。死者2名,重軽傷者12名-。翌日の新聞は,「さながら竜巻が通り過ぎた跡のよう」(91年6月7日付け朝日新聞)と,この白日の悪夢を伝えた。
著者
近藤 由佳里 大庭 智子 田中 智子 古賀 あゆみ 光吉 久美子 大塚 康代 野口 ゆかり 新小田 春美 平田 伸子 加耒 恒壽
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.518-529, 2005-01
被引用文献数
3

現在, 意図しない妊娠による結婚「できちゃった結婚」が増加している。妊娠, 結婚という2つの大きなライフイベントに同時に直面するため, 母性不安が大きく, 順調な母性発達過程からともすると逸脱しやすいのではないかと考えた。そこで今回, 「できちゃった結婚」妊婦の母性不安と母性発達の現状を明らかにするため, 計画妊娠初産婦と比較する研究調査を行った。期間は2003年9月〜12月。F市産婦人科5施設の初産婦319名を対象に自記式質問紙調査を行い, 以下のことが明らかとなった。(1)「できちゃった結婚」群は計画妊娠群より母性不安度が高く(p<0.001), 特に妊娠判明時「戸惑った, 困った」と答えた妊婦が, 有意に母性不安度が高かった(p<0.001)。(2)母性不安因子は, 「薬や喫煙の影響」「経済状態」「産後の体型の変化」「世間体」「育児」「母乳」「夫の思いやり」「夫の反応」「家族の反応」の9項目において, 「できちゃった結婚」群が有意に高かった。(3)母性の発達過程(母性意識, 愛着形成)については, 両群で有意な差はみられなかった。(4)母性不安度の高い人は母性意識が低く, 特に「できちゃった結婚」群において強い相関がみられた。(5)母性不安度が高い人は対児感情が低かった。
著者
小田 匡保
出版者
駒澤大学
雑誌
駒澤地理 (ISSN:0454241X)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.21-51, 2002-03
被引用文献数
2

This paper makes a bibliography of geography of religion in Japan on the basis of Bibliography of Geography edited by the Human Geographical Society of Japan and attempts to analyze it statistically, so that it examines the research trend in the geography of religion in postwar Japan. Bibliography of Geography appeared ten times every five years after the Second World War. It covers extensively most of the geographical literature published in Japan. The number of books and articles related to the geography of religion collected from Bibliography amounts to 390, of which more than 360 items are written by geographers. Main points obtained through the analysis are as follows: 1. The volume of the items has increased steadily after the war. 2. In the second and the third stage (1957-1976) Ogoshi and Uchida wrote many papers. In the fourth stage (1977-1986) Nagano and Iwahana were productive, and in the fifth stage (1987-1996) other geographers such as T. Tanaka, Sekiguchi, Oda and Nakagawa were also active. 3. It is geographers born in the 1950s who published more works than any other. On the contrary there are somehow few scholars in the immediately earlier generations born in the 1930s and 1940s. 4. Mountain religion has often been studied by geographers in spite of its small number of believers and temples, whereas so-called new religions have received little attention. 5. Popular research subjects include religious city and settlement, pilgrimage, cemetery, distribution of religion, rural religious organization, pictorial map, and mountain sacred area. Many of them attract more interest recently, but the literature related to the religious city and settlement has decreased in number.