著者
渡辺 峻
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.38-50, 2013-07-01 (Released:2013-07-01)
参考文献数
46

本稿では,情報理論的に安全な秘密鍵共有とそれに関連するトピックについて概説する.まず,秘密鍵共有のモデルについて説明した後,鍵共有プロトコルが情報整合と秘匿増強と呼ばれる二つのステップから成ることを説明し,幾つかの安全性基準を紹介する.その後,情報整合の手段としてSlepian-Wolf 符号化と呼ばれるデータ圧縮法について説明する.次に,従来広く使われていた秘匿増強の方法について述べる.特に,その方法によって生成された秘密鍵は弱い安全性を満たすものの,その他の安全性基準は満たさないことを説明する.そして弱い安全性基準以外の基準を満足するにはどのように秘匿増強を行えばよいか説明する.更に,Slepian-Wolf 符号化と秘匿増強の一般化として,多端子情報源符号化問題と多端子乱数生成問題について説明する.これらの応用として,3者以上の正規ユーザ間での秘密鍵共有と秘匿関数計算について紹介する.
著者
大橋 鉱二 宗綱 栄二
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

フルクトースは「果糖ブドウ糖液糖」として多くの飲料の甘味料として利用され、先進国では生活習慣病の原因として注目されている。多くの研究により「フルクトース対する脆弱性」が示されている。申請者らも、これまでにフルクトース過剰摂取により誘発される生活習慣病の作用機序を研究している (J Pineal Res 2012)。しかし分子メカニズムにおいては不明な点が多い。申請者らはエピジェネティックな制御に着目し研究を進めてきた。エピジェネティックな制御を司る機構として、DNAのメチル化、ヒストン修飾、miRNAがある。この中でも申請者はDNAのメチル化に焦点を当て研究して来た。DNAのメチル化とは塩基配列に変化を伴わず遺伝子の発現を調節する。申請者はフルクトースを過剰摂取した成獣ラットにてDNAの高メチル化と遺伝子発現の異常を確認している(Life Sci 2016)(BBRC 2015)。本研究の目的はフルクトースの過剰摂取が胎内環境を介して仔の糖代謝・インスリン感受性に与える影響を「エピジェネティック」な観点から解析することを目的とする。申請者はこれまでエピジェネティクスの中でもDNAメチル化に焦点を当て研究して来た。本研究ではDNAメチル化に加え、ヒストン修飾やmiRNAによる遺伝子発現のエピジェネティックな制御にも焦点を当て解析する。本年度は妊娠させたラットに出産までフルクトースを過剰摂取させた、仔ラットを用いて解析している。現在、このモデルを用いて以下2点について解析している。A.過剰フルクトース母獣から生まれた仔肝臓のDNAメチル化・ヒストン修飾変化の解析B.過剰フルクトース母獣から生まれた仔肝臓のmiRNA発現変化の解析特に、過剰フルクトース母獣の仔の肝臓組織におけるmiRNA発の異常が示唆される結果が得られつつある。
著者
末盛 慶 小平 英志 鈴木 佳代
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
vol.137, pp.39-52, 2017-09-30

近年,ワーク・ライフ・バランスに関する研究が蓄積されている.しかし,その多くは共働き世帯など夫婦世帯を対象とした研究が多い.しかし,ワーク・ライフ・バランスの実現がより困難であることが推測されるのはひとり親家庭である.ひとり親家庭の場合,理論的に1 人で家庭役割や職業役割等を遂行していく必要があるからである. 以上の問題意識から,本稿では,シングルマザーの家庭領域から仕事領域に対するワーク・ファミリー・コンフリクト(FWC)の規定要因を分析した.分析対象は,名古屋市区部に在住し,年齢の記入があり,就業しているひとり親の母親113 名である. 分析の結果,時間のFWC に関しては,仕事過重と貧困状態が有意な関連を示した.ストレインのFWC に関しては,仕事過重,上司のサポート,および貧困状態が有意な関連を示した.行動価値のFWC に関しては,学校関与と上司のサポートが有意な関連,貧困状態は有意傾向で関連を示した.以上の結果から,仕事の過剰や上司のサポートといった要因に加え,貧困状態がシングルマザーのワーク・ファミリー・コンフリクトを高めることが示された.
著者
西島 恵介 神山 文子 藤田 米春
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.57-58, 1997-09-24

推理小説を理解する場合には, 話のあらすじとなる論理的構造と, それを補完する様々な事実や登場人物の性格, 感情などが読者の知識体系と整合的に取り入れられたモデルを構築できることが必要となる。本報告では, 文献[1]の短編推理小説を事例とし, その論理構造を抽出し, 分析を行なった。また, 登場人物の感情が論理構造に影響を与え, 推理がなされている事に関して考察を行なった。
著者
宮島 喬
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.22, no.10, pp.10_78-10_83, 2017-10-01 (Released:2018-02-10)
参考文献数
8
著者
渡辺 俊太郎 小玉 正博
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
健康心理学研究 (ISSN:09173323)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.32-39, 2001-12-25 (Released:2015-01-07)
参考文献数
20
被引用文献数
5 6

The present study was conducted to develop an Anger Arousal and Lengthiness Scale (AALS), and to investigate its validity and reliability. The AALS was designed to measure individual differences in proneness to anger arousal and the tendency towards maintaining anger over a long period. These tendencies are considered to be risk factors for ischemic heart disease. Two hundred and sixty two college students participated in the study. A factor analysis of 13 items included in the AALS yielded two factors, proneness to anger arousal and tendency toward anger lengthiness. Both Cronbach's alpha coefficient and test-retest correlation were high enough to support the reliability of the AALS. The validity of the scale was established by significant correlations of this scale with both the Japanese version of the Buss-Perry Aggression Questionnaire and the anger scale of the Cornell Medical Index. The utility of the AALS was discussed in the context of the relationships between emotion and health.
著者
村上 貴聡 立谷 泰久
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究はスポーツ審判員を対象とした心理的ストレスに注目し,審判員のストレッサー並びにストレス反応を明らかにする.そして,審判員のストレスの実態とその効果的対処を理論的,実践的に検討することを通して,審判員を対象としたストレスマネジメントプログラムの開発とその評価を行うことを目的に推進している.具体的には,審判員のストレスに関わる国内外の文献的研究を行い(研究1),面接調査を実施することにより審判員のストレッサー及びコーピングの実態を明らかにする(研究2).次に,審判員のストレッサー並びにコーピングを測定する評価尺度を開発し,その関連性を検討することにより審判員の心理的ストレスモデルを構築する(研究3).最後に,審判員に対するストレスマネジメントプログラムを考案し,その効果を検証する(研究4).2017年度は研究1及び2を実施した.調査対象者の収集においては,複数の競技団体と十分に連携して研究を実施することができた.実施にあたっては,国際審判員の資格を有するテニス審判員5名,ハンドボール審判員3名,サッカー審判員2名を対象として,「審判員のストレッサーとコーピング」について半構造化面接を行った.その結果,審判員のストレッサーとして,ジャッジへの不安,選手や観客からの抗議,時間的負担,金銭的負担,パフォーマンスの評価,対人関係などの内容が報告された.また,報告されたストレッサーに対して,どのようなストレスコーピングを活用しているかを分析した結果,認知的方略,メンタルスキル,ソーシャルサポート,回避などの内容が示された.さらに,サッカーの1級審判員52名を対象にして,メンタルヘルスの調査を行った結果,心理的ストレスや身体的ストレスは低いものの,社会的ストレスがやや高い傾向がみられた.2018年度はこの成果を踏まえ,審判員のストレッサー並びにコーピングを測定する評価尺度を開発する.
著者
笠原 一人
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.75, no.649, pp.727-736, 2010-03-30 (Released:2010-06-09)
被引用文献数
2

This Paper examines the Architectural works and activities of Isaburo Ueno. He went to Berlin and Wien to study architecture in 1920's after graduated from Waseda Univ. in Tokyo. He worked at Josef Hofmann's studio, and got married with a Wiener Werkstätte designer Felice Lizzi Rix. After he came back to Japan, he established his own architectural studio. He founded 'The International Architectural Association of Japan' in 1927, and became the chairman of the association. He designed architectures based on modernism, while he applied some ornaments on his works. That ornaments designed by his wife Lizzi, as the collaborationist. Then after World War II, he devote to education of architecture and design.
著者
Annette L. Fayet Masaki Shirai Sakiko Matsumoto Aimee Van Tatenhove Ken Yoda Akiko Shoji
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
ORNITHOLOGICAL SCIENCE (ISSN:13470558)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.189-195, 2019 (Released:2019-07-29)
参考文献数
37
被引用文献数
1

To identify drivers of local variation in breeding success in colonial seabirds, we studied the role of breeding phenology and parental quality on the breeding performance of two neighbouring subcolonies of Streaked Shearwaters Calonectris leucomelas, with similar habitat but different success. Egg dimension and parental quality during incubation, but not phenology, predicted hatching success. Birds at the low-success colony laid smaller eggs, reared smaller chicks and neglected eggs more frequently, leaving them vulnerable to predation. Our findings suggest that local variation in breeding performance in this species arises from differences in breeding quality, perhaps driven by age or experience.
著者
塚本 勝巳
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.249-262, 1993-12-31 (Released:2011-03-14)
参考文献数
23
被引用文献数
3 2