著者
藤野 博
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.63-72, 2013 (Released:2015-02-18)
参考文献数
41
被引用文献数
3

学齢期の高機能自閉症スペクトラム障害児への社会性の支援に関する研究動向を展望し、今後の課題を検討した。初期の研究でのおもな介入法は、会話や他者との関わり方など、コミュニケーションスキルを標的とするSSTに基づいていた。表情理解などの非言語的コミュニケーションや心の理論などの社会的認知の視点がそれに加わり、近年では抑うつや不安などの情動面の問題への認知行動論的なアプローチも導入されている。ほとんどの研究で効果が報告されているが、介入の標的や方法、研究デザインやアウトカム測度などが多様で、特定の介入法の効果に関して一般化できるだけの確実なエビデンスはない。介入プログラムのマニュアル化とコミュニティでの実践に基づくRCTによる効果検証は今後の課題であろう。その一方で、個人の生活史や社会的状況に密接に結びついた個別的な問題に対する形式的なスキル獲得を目指したアプローチの有効性と限界についても議論する必要がある。
著者
Adriana Meri Mestrimer Felipe Vinicius Pires Rincão Fabrício José Benati Rosa Elisa Carvalho Linhares Karen Janaina Galina Cleyton Eduardo Mendes de Toledo Gisely Cristiny Lopes João Carlos Palazzo de Mello Carlos Nozawa
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Biological and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:09186158)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.1092-1095, 2006 (Released:2006-06-01)
参考文献数
22
被引用文献数
22 60

Crude extract (CE) and aqueous (AqF) and ethyl acetate (EtOAcF) fractions of Guazuma ulmifolia LAM., Sterculiaceae and the corresponding AqF, EtOAcF of Stryphnodendron adstringens (MART.) COVILLE, Leguminosae were tested for their antiviral activity against poliovirus 1 (P-1) and bovine herpesvirus 1 (BHV-1) in HEp-2 cultured cells. The antiviral activity was monitored by plaque assay and immunofluorescence assay (IFA) under virucidal and therapeutic protocols. The therapeutic protocol demonstrated statistically significant positive results with both plants and for both virus strains. The highest percentages of viral inhibition were found for G. ulmifolia EtOAcF which inhibited BHV-1 and P-1 replication by 100% and 99%, respectively (p<0.05, Student's t-test). For S. adstringens, AqF was the most efficient, inhibiting BHV-1 and P-1 by 97% and 93%, respectively (p<0.05). In the virucidal protocol, G. ulmifolia CE inhibited the replication of BHV-1 and P-1 by 60% and 26%, respectively (p<0.05), while, for S. adstringens, inhibition of 62% (p<0.05) was demonstrated only with EtOAcF for P-1. IFA demonstrated that the greatest reduction in fluorescent cell number occurred with G. ulmifolia, under the therapeutic protocol for both virus strains. However, AqF and EtOAcF of S. adstringens were most efficient with the virucidal protocol for P-1. In conclusion, we demonstrated that G. ulmifolia and S. adstringens inhibited BHV-1 and P-1 replication, as well as, blocked the synthesis of viral antigens in infected cell cultures.
著者
増田 知之 小関 美咲 邵 宇晨 加藤 隼平 山中 敏正
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. EC, エンタテインメントコンピューティング = IPSJ SIG technical reports (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2018-EC-47, no.9, pp.1-5, 2018-03

近年,スマートフォンの普及により,誰もが手軽に自撮りできるようになり,その自撮りした写真をアプリで加工し ( 「盛り」 と呼ぶ),ソーシャル ・ ネットワーキング ・ サービスにアップすることが流行している.「盛り」 の要素の 1 つである 「色味」 には性差が存在することが報告されたが,他の要素については不明である.そこで本研究では,盛りの要素の中で最も代表的な要素である 「目」 に着目した.20 代平均顔の目に対して盛りを段階的に施し,20代の男女55名を対象に,その盛る量 (加工量) と魅力度の関係を調べた.その結果,目に盛る量と魅力度評価には,性別や生活環境 ・ 地域の違いで有意な差がみられなかった.以上の結果より,目に盛る量に関しては,性別・ 生活環境を問わず日本の若者に共通した感性が存在することが示唆された.
著者
梅屋 潔
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:24240508)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.342-365, 1995 (Released:2018-03-27)

新潟県佐渡島の人々の間では,ムジナ(貉(ムジナ))ないしトンチボ(頓智坊)と呼ばれる動物がしばしば話題に上る。この動物は動物でありながら神であり,ときに人間にも変身する存在として知られている。ところが,注意深くこの概念を巡る語りをみてみると,その意味が極めて同定し難いことがわかる。われわれからみると明らかに異質な存在が,同じものであるかのように「あたりまえ」のものとして語られるのである。本稿の目的は,そのムジナについての語りの分析を通じて,従来人類学者が「象徴」という概念を用いる衝動に駆られるとき,いったいなにが起きているのか,また,語りの中でそのような概念の果たしている役割は何か,という問いに答えようとするものである。「あたりまえ」と考えられていることを相対化し,考察するために,従来の中間的話体に加えて,テキストの微視的な分析を行うことにより,われわれ,そしてかれらの中で起こっているコンテキストのくむかえや矛盾の無視などが明らかにされる。

3 0 0 0 OA 丶山存稿

著者
外山正一 著
出版者
丸善
巻号頁・発行日
vol.後編, 1909
著者
馬場 千恵 村山 洋史 田口 敦子 村嶋 幸代
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.727-737, 2013 (Released:2014-01-15)
参考文献数
33

目的 社会とのつながりの欠如から孤独感を持ちやすい状況にある育児中の母親へ効果的な支援を行うため,ソーシャルネットワーク(接触頻度)とソーシャルサポートの状況を把握し,それらと孤独感との関連を明らかにする。方法 2008年 8~11月に,東京都 A 区の 4 つの保健センターで行われた 3~4 か月児健康診査に来所した母親978人を対象に,無記名自記式質問紙を配布した。調査項目は,改訂版 UCLA 孤独感尺度,母親と子どもの基本属性,育児環境,夫(パートナー)•実父母•ママ友達•友人の有無,およびそれらとのソーシャルネットワーク(接触頻度)とソーシャルサポートであった。接触頻度は,直接会うこととそれ以外に分けて測定した。分析は,まず,孤独感尺度を従属変数とし,夫(パートナー)•実父母•ママ友達•友人の有無を独立変数とした重回帰分析を行った。次に,孤独感と夫(パートナー)•実父母•ママ友達•友人との接触頻度とソーシャルサポートとの関連を検討するため,孤独感得点を従属変数とした重回帰分析を行った。接触相手やサポート提供者等がなく欠損値があった者は分析から除外されたが,ママ友達がいない者の分析は追加し,副解析として重回帰分析を行った。結果 配布した963票のうち432票を回収し,417票を有効回答とした(有効回答率43.3%)。母親の孤独感の平均得点は34.4±9.0点であった。重回帰分析の結果,ママ友達および友人がいない者ほど,孤独感得点が高かった。すべての接触相手•サポート提供者がいる者(ママ友達もいる者)は,夫(パートナー)との会話時間が長いほど,ママ友達,友人との会う頻度が少ないほど,また,実父母やママ友達,友人からのソーシャルサポートが低いほど,孤独感得点が高かった。一方,ママ友達以外の接触相手•サポート提供者がいる者(ママ友達がいない者)では,孤独感得点と接触頻度,ソーシャルサポートとの関連はなく,対人態度や母親意識が関連していた。結論 母親の孤独感の予防•軽減には,ママ友達や友人の有無,実父母•ママ友達•友人との関係,対人態度,母親意識等をアセスメントし,その上で,母親役割の肯定感を高められるような介入や,ママ友達•友人と直接会う機会および実父母•ママ友達•友人からソーシャルサポートを得られるような働きかけを行うことが重要であると考えられた。
著者
熊崎 薫 濡木 理 石谷 隆一郎
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.230-235, 2014-08-31 (Released:2014-09-03)
参考文献数
15

Structural determination of membrane proteins is a key step to understand the molecular mechanisms of the membrane proteins. Lipidic cubic phase (LCP) crystallization is a technique to crystallize the membrane proteins in lipid environment and one of the effective approaches for the membrane protein crystallization. In this article, we describe the overview of crystallization of the membrane proteins in LCP, including the basic principles and procedures of LCP crystallization.
著者
杉山 高志 矢守 克也
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.si4-6, (Released:2018-06-26)
参考文献数
11
被引用文献数
8

本研究では,東日本大震災の発生以降,日本社会が直面する最大の防災課題として位置づけられた津波からの避難行動を研究対象として,以下のことを示した。まず,避難訓練を支援するために開発したスマートフォンアプリ「逃げトレ」について紹介した。次に,「逃げトレ」が,避難行動の分析・改善の鍵を握る人間系(避難行動)と自然系(津波挙動)との相互関係を,実際に避難する当事者に対して可視化するためのインタラクション表現ツールであることを示した。その上で,「逃げトレ」の効果性,とりわけ,これまでの避難対策や手法―たとえば,ハザードマップや従来型の集団一斉訓練など―に対する優位性を,「コミットメント」(特定のシナリオを絶対視し,そこに没入する傾向性)と「コンティンジェンシー」(それを相対視し,そこから離脱する傾向性)を鍵概念として明らかにした。最後に,人間科学と自然科学の性質のちがいにも言及しながら,「逃げトレ」が担保する「コミットメント」と「コンティンジェンシー」の相乗作用は,「想定外」に対する対応原理としても重要であることを指摘した。
著者
松浦 健治郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.920-925, 2015-10-25 (Released:2015-11-05)
参考文献数
6
被引用文献数
1

本研究では、城下町都市を対象として、堀の再生の現状を分析した上で、堀の再生手法・方法を明らかにすることを目的とする。明らかとなったのは、第1に、全体の1/4の都市で堀の再生が行われており、堀を再生することにより、城下町の風情が増し、市民の憩いの場となること、第2に、内側に城郭のある堀で復原や復元の再生が行われている事例が多いこと、第3に、段階的整備(平面的)・段階的整備(断面的)・他の遺構と一体的に再生・公共施設整備と連動して再生・堀の連続性を確保・既存の堀とは別に堀を再生・堀跡の線形表示という7つの再生方法があること、である。
著者
石井 直人 脇田 久嗣 宮崎 和城 高瀬 保孝 浅野 修 草野 一富 白戸 学
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.144, no.4, pp.154-159, 2014 (Released:2014-10-10)
参考文献数
16

日本皮膚科学会によるとアトピー性皮膚炎(AD)の定義は「増悪と寛解を繰り返す,痒みを伴う湿疹を主病変とする慢性に経過する疾患」とされており,今なお患者数が増大する傾向にある.AD では重度な痒みを伴うことが特徴であり,既存薬では十分な痒み抑制作用が得られているとは言えず,痒みのコントロールが治療の課題の一つと考えられている.そこで改めてAD 病態を振り返り,治療薬開発の現状を纏めた.その中でphosphodiesterase 4(PDE4)阻害薬に注目し,E6005 を題材としてPDE4 阻害薬のAD 適応を目指した取り組みを紹介する.E6005 は無細胞 PDE 活性測定系において選択的なPDE4 阻害作用を示し,ヒト末梢血リンパ球・単球からのサイトカイン産生を抑制したことから,PDE4 阻害に基づくE6005 の抗炎症作用を確認できた.ハプテン誘発接触皮膚炎型マウスモデルにおいて,E6005 を連続塗布すると有意な皮膚炎抑制効果が得られ,かつ皮疹部におけるサイトカイン・接着分子の発現抑制効果が認められた.さらにAD マウスモデルであるNC/Nga マウスに E6005 を連続塗布するとAD 様皮膚炎抑制効果が得られたほか,単回塗布による即時的な掻破行動抑制効果も認められた.PDE4 阻害作用に基づく嘔吐誘発に関してキシラジン・ケタミン麻酔覚醒モデルを用いて検討したところ,E6005 は第一世代PDE4 阻害薬シロミラストと比較して嘔吐誘発性が低いことが分かり,治療濃度域の広さが認められた.E6005 は血液中で速やかに代謝され,中枢神経系への分布が非常に少ないこ とから嘔吐誘発性の低下に繋がった可能性がある.これらの結果より,E6005 は全身的暴露を最小限に抑えた局所投与型薬剤として,抗炎症作用のみならず痒み抑制作用を併せ持つアトピー性皮膚炎治療薬として期待される.
著者
能津 和雄
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

<b>1.はじめに</b><br>&nbsp; 2016年4月14日の前震、16日の本震の2度にわたって震度7を記録し、1900回以上の揺れを感じた熊本地震は、各地で交通途絶を引き起こした。特に熊本県阿蘇郡南阿蘇村の立野地区における大規模な土砂崩れは、熊本市から阿蘇市を経て大分市に至る主要交通路である国道57号線とJR豊肥本線に甚大な被害をもたらした。中でも国道については従来ルートでの原状回復を断念して、別途北側に復旧ルートを建設することが決定している。<br>&nbsp; このような状況は、九州における一般的な観光形態である周遊型観光に大きな支障をきたしている。特に阿蘇方面と熊本市内方面を組み合わせた周遊ルートは、貧弱な迂回路への交通集中に伴う渋滞が常態化していることもあって、積極的な利用促進ができない状況にある。一方、「熊本地震」のネーミングが観光客に与えた影響は甚大で、熊本県内のみならず、地震の被害を受けていない九州の他の地域にまで風評被害をもたらした。<br>&nbsp; 自然災害による影響は、物理的な損害のみならず、風評被害に代表されるように間接的な被害を受けることも多い。本報告では、九州における周遊型観光の目的地のひとつとして著名な熊本県阿蘇郡南小国町に所在する黒川温泉を事例として取り上げ、熊本地震の影響を検証する。 <br> <b>2.黒川温泉の概要と周遊型観光での位置付け</b><br>&nbsp; 黒川温泉は400年以上にわたる長い歴史を持っているが、全国的に有名な観光地になったのは比較的最近のことである。高度成長期には1964年に開通した九州横断道路が、4kmほど東側に位置する瀬の本に通じたことから、それに便乗して旅館が開業したものの、この時は定番の観光地として定着することができなかった。しかし、1980年代から各旅館が競って露天風呂を作ったことで観光客から注目を浴び、一躍全国区の人気を得ることとなった。その際、旅行会社により前述の九州横断道路を活用したツアーが造成され、他の阿蘇地域の観光地とは切り離された形で周遊型観光に組み込まれた。このため、黒川温泉は熊本県に所在するにもかかわらず、これまで大分県の由布院や宮崎県の高千穂と組み合されることが多かった。もっとも近年では、阿蘇くじゅう観光圏の枠組みで2011年3月から1年間にわたって行われた「阿蘇ゆるっと博」に黒川温泉も参加したことから、熊本県阿蘇地方の一部としての認知度を上げることに成功している。 <br> <b>3.熊本地震が黒川温泉にもたらした影響</b><br>&nbsp; 今回の熊本地震により、黒川温泉においても29軒中3軒の旅館が3ヶ月以上の長期休業を余儀なくされているが、他の旅館での被害は軽微であり、ゴールデンウィーク中にはほぼ通常営業に戻った。しかし、阿蘇経由の熊本市方面からのアクセスが不便となったうえに、福岡方面からの代表的なドライブルートであった国道212号線が熊本県境に近い大分県日田市南部で土砂崩れによる通行止めになったことで、黒川温泉へのルートが不通になったと解釈されたことから訪問客は激減した。一方、九州横断道路については大きな被害はなかったものの、このルートを利用するツアーが軒並み中止されたうえに、定期観光バス「九州横断バス」のうち4往復中3往復が運休したことから、訪問客の減少に輪をかける形となった。その結果各旅館の収入が激減し金融機関から緊急融資を受けたり、宿泊客がいないことにより一時的に休館に追い込まれる旅館も見られた。このため、観光地としての黒川温泉は直接的な被害よりはむしろ、風評被害などによる間接的なダメージの方がはるかに大きかった。 <br> <b>4.今後への展望</b><br>&nbsp; 熊本県観光連盟は阿蘇地域における道路の不通区間を明示したうえで、代替ルートを案内した地図を作成し、6月から各地で配布することで観光客の呼び戻しに力を入れた。また、黒川温泉が所在する南小国町観光協会では、大分自動車道九重インターからの代替ルートを実走した様子を早送りビデオ画像でネット上に公開し、その周知に努めた。さらに7月1日から国の補助金により九州での旅行が割安になる「九州ふっこう割」がスタートした。加えて黒川温泉観光旅館協同組合では、大分県由布院温泉と連携して観光客の誘致に乗り出した。これらの取り組みが功を奏し、7月以降は黒川温泉でも営業しているすべての旅館が満室になる日も出ている。しかし、この事象はあくまでも一時的なものであり、今後の本格的な復興までに長い時間がかかることを考慮すれば、今のうちから長期的視点に立った観光振興を考えるべきである。その際には訪問者の発地別の需要を見極め、交通手段のあり方を再検討したうえで、それに対応した供給を行うことが重要である。 <br> ※本研究はJSPS科研費26360076(研究代表者:能津和雄)の助成を受けた研究成果の一部である。

3 0 0 0 OA 大神宮叢書

著者
神宮司庁 編
出版者
西濃印刷岐阜支店
巻号頁・発行日
vol.第6 前篇, 1940