著者
高橋 裕一 川島 茂人 相川 勝悟
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.1270-1276, 1996
被引用文献数
9

将来予想される地球温暖化によりスギ花粉総飛散数がどのような影響を受けるかを予測した. 夏季の気温が2〜5℃上昇したと仮定すると平年並みの飛散年や少飛散年では気温上昇前に比べ総飛散数が2〜5倍に増加すると予想された. 大飛散年では増加は著しくなかった. 逆に夏季の気温が2〜5℃低下すると仮定すると総飛散数は激減すると予想された. 空中スギ花粉飛散シミュレーション法を用いてスギ花粉総飛散数に影響を及ぼす主な因子を調べた. 盆地やスギ森林地帯では夏季に形成された雄花量が大きく関係していること, 花粉発生源から遠く離れた平野部では飛散期の気象条件の影響を部分的に受けていることがわかった. 花粉飛散開始時期を前後しても総飛散数に大きな影響を及ぼさなかった.
著者
松川 有美子
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.67-70, 1989-03-11

本論は,音楽好きのダウン症の青年Mと計23回,4ヵ月半にわたって音楽活動を共にしてきた記録である。一緒に音楽を通して楽しみながら,音楽性と人間関係を広げていくことを主なねらいとした。明確に先を見通した具体的な計画を立てることはしないで,Mの実態と筆者がどのようなかかわりをもちうるか探りながら,状況に応じてそのつど,最もよいと思われる方向を決めていくという方法をとった。 23回のかかわりは,第1期-出会い,第2期-歌によるアプローチ,第3期-手拍子によるアプローチ,第4期-打楽器によるアプローチに分けられるが,その間,音楽面では体全体で音楽を感じ,体でうたう様子をみせ,オルガンのみに固執していたものが打楽器活動へと広がりを見せた。また対人面では,当初,筆者とのかかわりをもとうとしなかったのであるが,次第に筆者の手をひいて歩いたり,筆者の姿を見てうれしそうに笑うようになっていった。 この出会いをとおして,Mも筆者も一人だけの音楽から二人の音楽の世界をもつこと,つまり合奏を楽しみ,呼吸をあわせることができるようになった。そしてこれらから得たことは「「心の声」「体と心の叫び声」である音楽は声を出して「うたう」ことのみではなく,体全体を使って,手をうって,楽器を演奏してなど,うたい,音楽を楽しむことにある。」ということである。
著者
佐藤 久
出版者
仙台大学
雑誌
仙台大学紀要 (ISSN:03893073)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.11-26, 1982-10

ハンドボール競技における基本技術としてのシュートやパスを習得する上で,最も重要な要素はステップ法であると考えられる。そこで本研究では,ボールをキャッチしてからシュートに移行するまでのステップ法を3歩以内の運動経過から分類し,ステップ技術の特性を適出しようとした。またゲーム分析により,ステップ法をゾーン(距離・角度)との関係から明らかにし,指導上の基礎的資料を得ようとした。昭和55年,56年度の全日本総合ハンドボール選手権大会決勝戦2試合を,VTRで録画再成し,スローモーション調整によって記録分析を行なった。1) ハンドボール競技における「3歩の規則」をもとに,種々のステップ法は,次のように分類された。なおジャンプやプロンジョン法は,ステップの運動経過より形成され応用技術として位置づけた。2) これらのステップ法は,運動経過において類似した特性をもっていることが明らかにされた。3) 今日の競技場面において,フォアー・クロス・ステップからのジャンプシュートが全域にわたって多く利用されていることが認められた。
著者
片山 章郎
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 : 日本教育情報学会学会誌 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.13-20, 2002-02-28

学生の論理的文章作成能力が低下しているので,論理的文章の作成を早い時期から慣れさせる必要があると思った.そこで,1年前期に開講している「情報科学」で手書きによるレポートをほぼ毎週課し、添削して返却することにした.当初のレポートは文章や論理展開等にいろいろな問題があったが,添削する際に必ずほめるコメントをつけたり,課題に対する解説をしたりすることにより,文章が改善する点もあった.しかし,論理構成の向上は不十分であり,今後も新入生に論理的文章を作成させる必要があった.また,新入生の文章作成に対する意識も把握するために,最後の授業時にアンケート調査をした.その結果,新入生は論理的文章作成に慣れていなかったために,レポートに大きな負担感を持っていたことがわかった.ただし,レポート提出をよいことと思った新入生は,学習意欲が高まったり,文章作成の負担感が軽減したりしていた.
著者
須藤 崇志 丸山 広 中村 太一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. KBSE, 知能ソフトウェア工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.65, pp.41-46, 2008-05-22
被引用文献数
2

校正と推敲を繰り返すことは,論理的で分かりやすい技術文章を作成するのに効果的である.我々は,修飾語の並べ方と読点の打ち方の両方に関する作文規則を活用し,係り受け関係の分かりにくい文を指摘する推敲支援手法を提案してきた.我々の提案手法を実装したシステムを用いて,本学の学部生の学生実験の課題レポートにて効果を検証してきた.本稿では,学生実験のレポートから抽出した文を分析し,文を分かりにくくする要因を特定し,推敲支援に取り組む優先順位を明らかにした.さらに,我々が優先度の高い推敲支援手法をシステム化する際に,留意すべき点を考察した.
著者
小林 巌雄 立石 雅昭
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.37, pp.53-70, 1992-03-15
被引用文献数
8

新生代の新潟地域に分布する新第三系〜下部更新統の層序の資料を整理し, 対比を再検討した。これらの資料に加えて, 堆積相・化石相に基づき, 8つの時代の古地理図を描き, 古環境の概略を論じた。1. 前期中新世(18 Ma)の三川期:佐渡・岩船-津川地域で陥没盆地として発生した陸上の堆積盆に主に安山岩〜流紋岩の火砕岩類と砕屑岩類が堆積した。冷涼な気候であった。2. 前期/中期中新世(16-15 Ma)の津川-七谷期:著しい海進が広域に起こり, 暖流で洗われた多島海の海域が出現した。気候は温暖となり, 暖流系の各種生物群が生息した。後半に下部浅海ないし半深海へと変わった。3. 中期中新世の中頃(14-13 Ma)とその後半(11-9 Ma)の寺泊期:海が深くかつ拡大し, 温帯水域の海洋へと推移した。当時深海下にあった頸城地域に広大な海底扇状地が成長し, 佐渡〜新潟油田地域の北部では珪藻質軟泥が厚く堆積した。さらに, 玄武岩質の海底火山が佐渡地域などで噴出した。4. 後期中新世(7 Ma)の椎谷期:堆積盆の東側に当たる脊梁地域および海域全体に起きた大きな変動は, 古海洋に様ざまな変化をもたらした。地球規模の変動もこの時代に起こり, その影響もうけて海洋・陸上生物群が変化した。とくに, 北北東-南南西方向のトラフが成長し, 東側がらもたらされた粗粒堆積物で埋積された。5. 前期鮮新世(4 Ma)の西山期前半:脊梁山地側の隆起が進行したが, 一方海盆は再び拡大し, 暖流が流入する縁海としての日本海が顕在化した。海底の火山活動が活発化した地域もあった。6. 後期鮮新世/前期更新世初頭(3-1.5 Ma)の西山期後半〜灰爪期前半:東側の隆起と南側の海退が急速に進行し, 陸地が広く現れた。寒流の影響も受けはじめ。南方系の生物群とともに北方系の生物群が渡来した。海底の一部が隆起帯を形成したり, 佐渡・弥彦地域などでは陸地が出現した。7. 前期更新世(1 Ma)の灰爪期後半:新潟堆積盆地の中部・現在の日本海域を除いて, 新生代の堆積盆が陸化し, 扇状地や海岸平野が出現した。海水準変動による海進と海退が繰り返され, 暖期には南方系の海棲動物が北上した。
著者
宮下 健輔
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.68, pp.57-64, 2004-07-03
被引用文献数
1

筆者の所属する京都女子大学現代社会学部では,学生は入学すると同時にノートブック型パーソナルコンピュータ(ノートPC)の 所持を義務づけられる.しかし1年次にはノートPCを積極的に利用する授業科目が開講されておらず,大部分の学生がノートPCをほとんど大学には持って来ず,また自宅でもあまり利用せずに1年間を過ごしてしまう.筆者は昨年度後期において,1年次配当の科目を担当することになり,そこで受講生に毎日ノートPCを大学へ持参するよう指示した.そして約半年間にわたってノートPCの利用状況(利用時間や利用目的)を調査した.調査は記名式のアンケート形式で行なわれた.本稿はその調査について結果を報告するとともに,調査結果について分析・考察を行なうものである.The newly registerd students of the faculty to which the author belongs are required to possess a notebook PC. But any class which utilizes notebook PC positively is opened in 1st grade, so most of the students do not bring a notebook PC to the university and utilize it rarely at home for the 1st school year. The author had an opportunity to take charge of the subject at 2nd semester of 1st grade. He instructed the participants to carry a notebook PC to the university everyday. And he investigated the utilization status of notebook PC (how long and to what to utilize it) over approximately half year. The investigation was a questionnaire survey with open ballots. The author analyzed and considered the results of the investigation and this paper reports the findings from it.
著者
中道真一 田辺浩介 原田隆史
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告情報学基礎(FI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.105, pp.53-64, 2008-10-30

近年の Web 技術の進歩などを受けて,図書館システムについても新た態機能の追加などが検討されてきている。本研究は,オープンソース図書館システムをベースとして, Web 2.0 的な機能などいくつかの新しいサービスのうち,どのような機能を中心に実装するのが良いかについての検討を行ったものである。候補となる機能の候補を対象としてインタビュー調査とケプナー・トリゴー法の決定分析プロセスをもとにした手法で意見の集約を行った。また,その結果をうけて FRBR の採用,集合知の利用などの新しい仕組みを取り入れたプロトタイプシステムを作成して評価した。With the development of network and web technologies, new functions for library systems have been discussed. In this paper, we surveyed and examined functions to be implemented among new functions related to Web2. 0 open-source library system. Based on the systematic examination, evaluation of user studies, the results of the interview and the decision making process of Kepner-Tregoe Program, we have developed a prototype system which includes new features like FRBR and collective intelligence.
著者
田中 肇 栗田 玲
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.461-465, 2005-06-05
被引用文献数
1

液体は, 乱雑かつ一様な粒子配列をもつ, 気体以外では唯一の物質の熱力学安定相であると考えられてきた.最近この常識に反し, 単一原子または分子種からなる物質に, 2つ以上の液体状態が存在することを示唆する実験結果が報告されている.このような液体状態間の1次相転移は液体・液体相転移と呼ばれる.ここでは, この興味深い現象についての最新情報を紹介するとともに, ガラス転移現象, 水の熱力学異常など液体における他の未解明現象との関係についても議論する.
著者
浜田 実 渋谷 陽二
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. A編 (ISSN:03875008)
巻号頁・発行日
vol.50, no.452, pp.584-592, 1984-04-25

複数の自由縁の円孔を持つ円板の曲げ問題の解法として,極座標に対する重調和方程式の一般解を繰返し用いる方法を提案し,これにより,偏心位置に1円孔または対称位置に等大2円孔を持つ円板の外縁に一様曲げモーメントが作用する場合と,中央集中荷重が作用する場合の解を求める.また有限要素法と実験による結果と本解とを比較することにより,本解の妥当性を確かめる.
著者
中野 学而
出版者
ストラータ同人会
雑誌
Strata
巻号頁・発行日
vol.17, pp.27-52, 2003-12-25