著者
明星聖子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.58, pp.37-44, 2004-05-28
被引用文献数
1

コンピュータは、はたして、文献学が現在陥っているジレンマを解決してくれるのか。その答えを探るために、ここではそのジレンマを、カフカのテクスト編集を具体例に説明する。カフカの草稿を忠実に編集しようとして、3種類のカフカ全集が出版された。その最新のものが示す型破りな形態は、草稿への忠実の追求が、じつは、紙の本というメディアの限界への挑戦だったことを明らかにしている。とすれば、コンピュータという新しいメディアに何を託すべきか。草稿という存在がもつ文学的意味を考えながら、学術的編集において今後コンピュータが担うべき役割を示唆する。This paper describes the dilemma into which scholarly editing has lapsed for the past thirty years, using Kafka-editing as an example. Following the publication of the complete edition by Max Brod, two different types of critical editions were released in order to explore the faithful reproduction of his hand written manuscript. The unconventional form of the latest one reveals the many limitations of the book-form media. Since computer as a media offers new possibilities for the presentation of text, a fresh type of critical editing has the potential to be realized. This study suggests the general direction future computer editions may take.
著者
大橋裕太郎 小川 秀明 永田 周一 馬島 洋 有澤 誠
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.123, pp.51-55, 2007-12-07

私達研究グループは、動物園が科学教育や体験学習に対して大きな役割を果たすことに着目し、動物園での参加型学習環境の構築を行っている。その中で、携帯電話や携帯型音楽機器などのモバイル機器を利用したユビキタス環境での学習支援をひとつのテーマとしている。具体的な試みとして、情報ツールを通じて利用者が動物園のリソースを有効に活用することを目的とした「Being-いきてること展」を2007年4月24日から5月6日にかけて東京都井の頭自然文化園で行った。展覧会では、小中学生が作成した動物の音声案内を園内のナビゲーションとして活用する実践を行った。また、それを聞いた来園者が携帯電話を利用して自分の声をサーバに記録することができる Voice Trackback システムを開発し、運用を行った。利用者の主観評価では、肯定的判断をした回答者の偏りに優位な差を認めることができた。Our research group found that zoological park is a resourceful place for learning by experience. Our goal is to reconstruct learning environment for children in zoo by using emerging information technology such as mobile phones, podcasting and interactive website. Concretely, we held "Being Exhibition", which proposed information tools so that visitors (especially children) are able to put resources in zoo to practical use from 24th April to 6th May. In this exhibition, we arranged voice guidance made by elementary school student. In addition, we developed Voice Feedback System, a collaborative voice data gathering system for environmental learning. Users report their thoughts by their own voice with mobile phones, after going around the zoo. According to a subjective assessment, it was observed that a number of participants who had positive response were statistically-meaningful.
著者
高石 道明
出版者
筑波大学大学研究センター
雑誌
大学研究 (ISSN:09160264)
巻号頁・発行日
no.28, pp.41-65, 2003-12

こんばんは。高石でございます。本日の私の役割は、国立大学の事情についてお話することです。大学の職員のあり方について、ご存知の通り、現在様々に議論が交わされております。国公私立それぞれの大学職員の事情を話してもらって、そして ...
著者
奥田 裕規 井上 真 安村 直樹 立花 敏 山本 伸幸 久保山 裕史
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.37-42, 1998-10-01
被引用文献数
2

高度経済成長期以降,全国の山村において4割もの人口が若年層を中心に流出した。しかしながら,東北地方の人口減少は他の地方と比べ,比較的緩やかであった。これは,家の跡取りとして財産を引き継ぐ替わりに親の世話をするという「使命」を負わされ,その「使命」を果たすため,農業や出稼ぎをしたり,「国有林材生産協同組合」(以下,「国生協」という)等に勤務することにより山村に残り,または通勤圏内に仕事を見つけ,都市部からUターンしてきた人たちが35歳以上世代に多くいたからである。ところが,1990年以降,人口減少の程度が激しくなっている。この理由として,都市部に出た34歳以下の子供たちが,故郷に帰って財産を引き継がねばならないという「使命」から解き放たれ,故郷に帰ってきていないことがあげられる。山村が今後も維持されていくか否かは,この子供たちが山村に戻ってくるか否かにかかっている。アンケート調査によると,女性の子供たちに,故郷で親の世話をするべきだと考え,将来,故郷に帰るか否か迷っている傾向がみられる。このような子供たちが自ら望んで故郷に帰って来るために,どのような環境を整えればよいのか,今後,更に研究を進めていく必要がある。
著者
加藤 隆雄
出版者
日本教育社会学会
雑誌
日本教育社会学会大会発表要旨集録
巻号頁・発行日
no.40, pp.2-3, 1988-10-14

エスノメソドロジーが対象としてきたのは、日常世界の自明視された領域であり、成員の日常的実践の形式的構造である。しかし、エスノメソドロジーは、実践形式が新参者を通して自身をいかに再生産するのかに関して、つまり成員の社会化過程に関しては、固有で定式化された回答を与えてこなかったように思われる。翻って社会化論も未だ十全にエスノメソドロジーの成果を取り込んではいない。本報告の目的は、エスノメソドロジーが社会化論に対してどのような視角を切り開いたのかを検討することにある。手順として、社会化論の立場からエスノメソドロジーの理論を本報告の趣旨に即して再構成し、それが提起した問題を定式化する。そして、エスノメソドロジーの知見は社会化論にいかなる意義を持つのかを述べる。
著者
垣花 真一郎
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.241-251, 2005-06-30

清音文字の呼称と濁音文字の呼称の間には, 弁別素性[voice]の価が負から正へ変化するという関係がある。濁音文字習得に際し, 子どもがこの有声化の関係を利用しているかが3つの研究により検証された。研究1では, 4-5歳の濁音文字初学者が, 有声化の基底事例として清音文字-濁音文字の呼称(例か(ka)→が(ga))を提示された場合に, 与えられた清音文字の呼称(例た(ta))から, 対応する未知の濁音文字(だ(da))の呼称を推測できるかが検証された。その結果, 半数近くの者にこれが可能であることが示された。研究2では, 4歳児の濁音文字習得の中後期群に対して, 非文字の清音文字-濁音文字対を目標事例とする類推課題(例X(pa)→X゛(ba))を実施し, 9割程度の者に非文字の濁音文字呼称の推測が可能であることが示された。研究3では4-5歳の濁音習得途上の子どもの読字検査データを分析し, [voice]の関係に違反した"ば行"の習得が他の濁音文字に比べて困難であることが示された。3つの研究から, 子どもは濁音文字の呼称を単純な対連合ではなく, 既習の清音文字-濁音文字の関係を基にした類推によって習得していることが示唆された。
著者
鈴木 幹雄
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学 : 美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
no.29, pp.287-298, 2008-03-27

バウハウス教授陣のアメリカへの亡命に伴ってシカゴへ設立されたNew Bauhausに関して,我々は,『50年シカゴにおけるバウハウスの後継学校50.Jahre new bauhaus. Bauhausnachfolge in Chicago』とロサンゼルス郡美術館の共同研究『亡命者達と移民達-ヒットラーからのヨーロッパ芸術家達の逃走Exiles+emigres. The flight of European artists from Hitler』を手掛りに一定の一般的理解を持つことができる。本論ではこれら資料と並んで,イリノイ大学ジョン・ワォーリー文書のホルダー198,ペーター・ゼルツ,リチャード・コッペ著「美術教師の教育」,モホリ・ナギの弟子であり,後イリノイ大学美術部門の主任教授となった人物,リチャード・コッペの証言「シカゴのNew Bauhaus」(ドイツ語書籍『バウハウスとバウハウスの人々Bauhaus und Bauhaeusler』)を手掛りに,本テーマを開明する。
著者
山本 眞一
出版者
筑波大学大学研究センター
雑誌
大学研究 (ISSN:09160264)
巻号頁・発行日
no.32, pp.89-97, 2005-03

皆さんこんばんは、お忙しいところ沢山の方に集まっていただきまして、ありがとうございます。私は当センター長の山本でございます。これでこの短期集中公開研究会も第8回ということになりました。西暦2000年度から続けております ...
著者
新田 直子 馬場口 登 北橋 忠宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.1838-1847, 2001-08-01
被引用文献数
24

我々は放送型スポーツ映像に対して映像・試合の構成に従い,ストーリー上重要と考えられる部分への意味的なアノテーションの自動生成を試みる.まずクローズドキャプションと呼ばれる言語ストリームから,キーワード列探索によりスポーツ映像において重要な意味をもつ実際に試合が進行している部分を抽出した上で,各部分でのプレイ・プレイを行った選手に関する情報を抽出しアノテーションを生成する.次に生成したアノテーションを付ける映像位置を決定するため,画像ストリームに対するマッチングにより同様に試合進行部分を抽出することで映像分割を行う.最後に両ストリームの時間的同期をとることによって,生成したアノテーションを映像に対して与える.本手法をスポーツ映像の例として実際のアメリカンフットボールの試合映像に適用し実,験を行った結果,再現率75%,適合率90%で映像の正確な試合進行部分に対して自動的にアノテーションを付けることが可能となった.
著者
西澤 隆 元村 佳恵 村山 秀樹 平 智
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

メロンの「うるみ果(水浸状果)」発生要因とその防止技術について,以下の諸点について明らかにした.1.メロンの「水浸状果」は,果実肥大期の後期に株が一時的に遮光条件下に置かれることによって誘発される生理障害であることを明らかにした.2.「水浸状果」の発生には品種固有性が存在し,供試した品種中では‘アンデス'には「水浸状果」が認められたものの,‘ラスター'では認められなかった.3.遮光処理は果実内におけるスクロースの蓄積を阻害したものの,ヘキソースの蓄積はほとんど阻害されなかったことから,遮光処理は果実内における糖代謝関連酵素の活性を変化させる可能性が示唆された.4.遮光処理は果実内におけるアセトアルデヒド,エタノール生成量を増加させたことから,「水浸状果」は‘プリンスメロン'等で発生が報告されている「発酵果」の一種であり,遮光処理によって果実はより嫌気的な状態に置かれるものと推察された.5.遮光処理はエチレン生成量を増加させ,同時に果肉硬度を低下させたことから,遮光区における急激な果肉硬度の低下には,エチレン生成が関与しているものと推察された.6.摘葉処理および着果過多処理により株のソース・シンクバランスを変えても,果実に水浸症状は認められなかったことから,「水浸状果」は遮光処理によって果実内への光合成産物の供給が制限されることが主要因で起こる生理障害ではないと推察された.7.ABA処理は葉の光合成速度を低下させると同時に果実からのエチレン生成量を増加させ,果実の軟化を促進させた.8.メロンの「水浸状果」の防止には,フィルムの張り替え等による受光態勢の改善,品種の選択,窒素肥料の適正化等が重要であると考えられた.
著者
花井 友美 小口 孝司
出版者
昭和女子大学
雑誌
學苑 (ISSN:13480103)
巻号頁・発行日
vol.772, pp.1-10, 2005-02-01

Computer-dating, the meeting with others through the Internet, has proliferated for several years. The aims of this study are (a) classifying the purposes of computer-dating usage and (b) investigating the computer-dating users' behaviors and interpersonal relationships (i.e., how many people they contact, how much they are satisfied, and how long they continue to use it). Then it might be expected that (c) they are related with the level of the users' loneliness. Twenty-six participants, who have used computer-dating, were recruited through the Internet and completed questionnaires that examined their loneliness, purpose of computer-dating usage and items regarding usage of computer-dating. The results showed: (1) there were two different types of purposes, "making relationship" and "conversation," and (2) the more loneliness they had, the higher "making relationship" purpose they had. In addition, (3) the purpose for "making relationship" promoted the later interpersonal behaviors on computer-dating.
著者
小海宏之 前田明子 山本愛 加藤佑佳 岡村香織 園田薫 安藤悦子 岸川雄介
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.91-96, 2010-03

本研究は、小海ら(2000 ,2004,2008)による日本語版 Mini-Mental State Examination(MMSE)の検出力と特異性を明らかにした。この MMSEの cut-off値を 24/25点とした場合、感度 0.837、特異度 0.957となり、臨床群( amnestic Mild Cognitive Impairment; MCIと probable Alzheimer's Disease; ADを含む)と健常群を判別するためのスクリーニングテストとして、十分な検出力と特異性を有することが示唆された。しかし、同様に 26/27点を cut-off値とした場合、感度 0.889、特異度 0.739となり、amnestic MCI群と健常群を判別するためのスクリーニングテストとして、十分な検出力と特異性を有するとは言い難く、他の認知機能検査による精査を行う必要性があることが示唆された。