著者
青野 篤子
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.201-218, 2003
被引用文献数
5 2

この論文では, まず, 対人距離または個人空間 (パーソナル・スペース) に関する研究の歴史を概観し, その中でも議論の多い性差に焦点を当てて主要な研究結果と論争点を紹介する。対人距離の性差については, 男性より女性の方が小さいという一貫した傾向を認めた上で, その原因を男女の地位の差によって説明する立場 (従属仮説) と, 結果が一貫しないとする立場とが対立している。従属仮説の観点から研究をより詳細に検討した結果は以下の通りである。1) 地位の低い者は高い者より対人距離が小さいと断定するに十分な証拠はない。すなわち, 被験者ないし相手の地位それ自体が効果をもつ場合もあれば, 地位の差が効果をもつ場合もある。2) 同様に, 女性は男性より対人距離が小さいとは言えない。すなわち, 被験者と相手の性の組み合わせによって性差の現れ方は異なる。3) 対人距離の性差は, 相互作用の状況, 被験者が相手に接近する場合と接近される場合で, その現れ方を異にする。今後は, 地位の要因を統制したときに性差が消失するのかどうかの検討, 従来「性差」だと言われてきたものが「被験者の性」, 「ターゲットの性」, 「接近者の性」のいずれの要因に起因するのかの, より詳細な検討が必要である。
著者
長島 和子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.p269-274, 1979-12

数種類の野菜について, 電子レンジ加熱によるビタミンC含量の変化を, 従来の加熱方法と比較検討した。1)野菜の生からの電子レンジ加熱調理では, ほうれん草の総ビタミンC残存率が最も高く93%であり, 従来の「ゆでる」加熱の2倍以上であった。2)じゃがいもの電子レンジ加熱は, 総ビタミンC残存率は80%で, 「ゆでる」加熱よりも約10%低い値であったが, 「ゆでる」加熱の7分の1の時間で調理可能であり, 味覚的にもすぐれていた。3)さつまいもでは, 蒸し加熱よりも電子レンジ加熱が高い総ビタミンC残存率を示したが, 味覚的には蒸し加熱におよばなかった。4)冷凍野菜の電子レンジ加熱では, ビタミンCの損失は非常に少なく, 総ビタミンC残存率は冷凍枝豆では100%, 冷凍かぼちゃで92%であった。
著者
藤 桂 吉田 富二雄
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.121-132, 2009

The relationship of Internet behavior to sociability and aggression in real life was investigated in a web-based survey. Weblog users (n=395) and online-game users (n=206) were asked to respond to questionnaires that included their behavior on the Internet, as well as to scales that measured real-life sociability, aggression, and social isolation. Results indicated that Self-reflection on weblogs and Feeling of Belonging during online-games related to enhancement of sociability. By contrast, Internet behavior such as flaming, as well as immersive and addictive use, related to decrease of sociability and increase of aggression regardless of the type of application that was used. These findings suggest that the effects of weblogs and online-games use depend on the type of behavior, as well as the types of application, that are used. It is also suggested that social isolation in real life decreased sociability through immersive and addictive use, and increased aggression through flaming.
著者
渡辺 智子 朝井 保美 島田 郁代 鈴木 亜紀子 高橋 節子 高居 百合子 Tomoko Watanabe Yasumi Asai Ikuyo Shimada Akiko Suzuki Setsuko Takahashi Yuriko Takai 千葉県立衛生短期大学栄養学 食品学 ブリストルマイヤーズ研究所 千葉県立市川工業高校 石冨KK 旭硝子KK 千葉県立衛生短期大学栄養学 食品学 Chiba College of Health Science Chiba College of Health Science
雑誌
千葉県立衛生短期大学紀要 = Bulletin of Chiba College of Health Science (ISSN:02885034)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.45-50, 1984

著者らは,日本人の代表的な外食の一つであるかつ丼について千葉県における栄養的な実態を化学分析的に調べ既に報告した。その結果地域により重量,価格,味に差があるが,共通して言えることぱ,その栄養価はどの地域のかつ丼も,ビタミンA,ビタミンC,鉄,カルシウムが不足していることであった。そこで今回は,東京都のかつ丼取り上げその栄養的実態を把握し,更に千葉県のかつ丼と比較することにより,両者の栄養的,味覚的特質を知り,栄養的に好ましい昼食の方向を探ることを目的とし,栄養分析調査を行った。その結果いささかの知見を得たので報告する。
著者
谷 謙二
出版者
埼玉大学教育学部地理学研究室
雑誌
埼玉大学教育学部地理学研究報告 = Occasional paper of Department of Geography, Saitama University (ISSN:09132724)
巻号頁・発行日
no.24, pp.1-26, 2004

This paper analyzes the expansion of Tokyo's commuting zone for the duration encompassing the Second World War and ending during the post-war reconstruction period. This paper will also debate the institutional factors that influenced this expansion. Previous research into the growth of metropolitan Tokyo has focused either on the period following the rapid economic growth of the 1960s, or has focused on the changes that occurred between World War One and World War Two. However, the sheer number of commuting workers increased dramatically between 1930 and 1955. By 1955, the suburbs where over 10% of workers plied their trade in Tokyo, stretched out in a 50 km radius from the capital...
著者
西原 正洋
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.169-172, 2006-03

細川京兆家と庶流家の関係は、本家京兆家と庶流家の結びつきが強く、いわゆる「同族連合体制」と呼ばれる体制をとっていると詳細に述べられている。先行研究の中で、「同族連合体制」論の論議は、京兆家の側からの論理に基づく議論が中心であった。すなわち、京兆家が庶流家を内衆による「統制」をするなど、庶家を京兆家がどう動かしたことに、主眼に置かれてきたように思われる。確かに「同族連合体制」は京兆家側からの庶流家への強い影響力があったことは間違いないであろうが、庶家側から見てもただ単に「統制」されるものではなく、庶流家にも当然の事ながら「同族連合体制」の利点の一端を享受していたと考えるのが自然であろう。また、「同族連合体制」の解体の時期は諸説によりまちまちだが、おおむね政元暗殺以前とする意見が多い。しかし、私は政元暗殺以後も細川氏が一族で行動したことが史料上からも散見され、「同族連合体制」が変質しながら、しばらくは存続していたと考えており、それに基づいて考察することとする。
著者
菊地 恵太
出版者
東北大学
巻号頁・発行日
2019

課程
著者
久保田 裕之
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.113-123, 2011-06-01

本稿では,「家族の個人化」と呼ばれる状況のもと,家族福祉論をその正当化根拠から批判的に検討することによって,家族か/個人かという政策単位に関する議論を一歩進めることを目的とする。具体的には,政策単位をめぐるこれまでの議論を概観することで,家族のニーズを個人の選択に還元する個人単位化論も,家族自体をある種のニーズとして扱い続ける家族福祉論も,「家族の個人化」と家族福祉の間の緊張関係を克服できないことを示す。次に,家族福祉とニーズ論との関係を整理することで,ニーズ概念の限定性と優先性から,ニーズに対する福祉の<過小>と<過剰>という二つの危険を抽出し,家族自体をニーズと捉えることのパターナリズムを批判する。その上で,フェミニスト法学・倫理学における<依存批判>の議論を援用することで,従来の家族に期待されてきたニーズの束を分節化し,家族を超えて福祉の対象とする新たなアプローチを提唱する。
著者
楊 一
出版者
大阪市立大学経営学会
雑誌
経営研究 = The business review (ISSN:04515986)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.63-85, 2020-11

1 はじめに : 演劇、映画、音楽、などに代表されるクリエイティブ産業では、企業の競争優位の獲得や市場価値の創出において人々の創造性が特に重要となる。先行研究では、不確実性(uncertainty)や曖昧性(ambiguity)の高い環境に直面している中での創造性の発揮について、即興(improvisation)や疎結合(loose coupling)などの自由裁量の視点から考察したものが多い。……
著者
佐藤 真人
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.359-383, 2007-09-30

神仏隔離の意識ははやく『日本書紀』の中にも認められており律令神祇制度の形成期から神道の独自性を支える要素であったと推測される。神仏習合が頂点に達した称徳朝に道鏡による宇佐八幡宮託宣事件が王権の危機を招いたことにより神仏隔離は一層進展した。天皇および貴族の存立の宗教的根拠である天皇の祭祀の場において仏教に関する事物を接触させることは、仏教的な国王観の受容を許すことになる。そこに神仏隔離の進展の大きな要因があった。さらに九世紀には『貞観式』において、朝廷祭祀、とりわけ天皇祭祀における隔離の制度化が達成された。この段階では平安仏教の発達によって仏教が宮中深く浸透したことや、対外危機に起因する神国思想が作用したと考えられる。平安時代中期以降は、神仏習合の進展にもかかわらず、神仏隔離はさらにその領域を広げていった。後世の展開を見ると神仏隔離は天皇祭祀の領域に限られるものではなく、貴族社会に広く浸透しさらには一般社会にも規範として定着していき今日の神道を形作る大きな要因となった。