- 著者
-
海津 正倫
- 出版者
- The Association of Japanese Geographers
- 雑誌
- Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
- 巻号頁・発行日
- vol.58, no.2, pp.149-164, 1985-12-01 (Released:2008-12-25)
- 参考文献数
- 17
- 被引用文献数
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ガンジス川・ブラマプトラ川下流にひろがるベンガル低地の自然堤防を分類し,それらの形成環境,形成時期および形成過程に関する考察をおこなった。 本地域の自然堤防は,大規模に発達するが不明瞭なもの,大規模かつ明瞭なもの,連続的に分布するもの,不連続に分布するものの4種類に分類することができる。これらのうち,連続的に分布するものはさらに,顕著に蛇行するもの,樹枝状に分岐するもの,小規模に不規則に分布するものに細分類され,不連続なものも,弧状に分布するもの,斑状に分布するもの,河道および河岸にみられる河道州上に発達するものに細分類される。 大規模で不明瞭な自然堤防は,紀元前300年頃までにおけるガンジス川の河道変遷に伴って,大規模で明瞭な自然堤防は,ガンジス川の派川によってそれ以後に形成され,18世紀中頃までにすでに存在していたと考えられる。一方,弧状および斑状に分布する自然堤防は,ブラマプトラ川がマドブプールジャングルの東側を流れていた1830年以前に,それぞれブラマプトラ川本流および支流によって形成されたと考えられる。ガンジス川およびブラマプトラ川が現在の河道を流れるようになってからは,洪水時の水深が深く長期間湛水する地域では樹枝状の自然堤防が,湛水深があまり深くないか浅い地域では蛇行する自然堤防が発達する。現在の河道沿いの地帯では,新旧の河道州上に自然堤防が不規則に分布し,ベンガル湾に沿った潮汐の影響を受ける地域では非常に密度の高い水路に沿って小規模な自然堤防が連続的に分布する。