著者
杉本 美華
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.17-29, 2009-03-25 (Released:2018-09-21)
参考文献数
34

日本には約50種のミノガ科が生息しており,幼虫の携帯型の巣筒であるミノは大きさや概形,表面に使われる素材等の特徴で属あるいは種までの同定が可能である.成虫が脱出後の空になったミノの保存性が高いことから,ミノでの同定によって過去の生息範囲を推測することができる.若齢幼虫期のミノは,形態が単純で種の特徴が十分現われていないために正確な同定は期待できず,これまで主に中齢幼虫期から終齢幼虫期のミノが同定に用いられた.しかし,日本産のミノガについて,このような識別形質を含むミノの形態の詳細な記載とその比較はこれまでほとんど行なわれてこなかった.そこで本研究では,ミノの形態から属あるいは種の同定を容易にすることを目的として,日本産ミノガ科23属30種について,成長した幼虫あるいは終齢幼虫のミノの写真を示し,その形態的特徴と蛹化状況を記述するとともに,これまで発表されていなかったミノによる種や属の検索表を2論文に分けて発表する.第2報では,害虫として注目されている種やレッドデータにリストアップされている種を含めた大型種10属11種について記載を行なった.その結果,ミノの本体は円筒形,紡錘形,または円錐形で,表面には種特異的な被覆物がつけられていた.中齢ないし老齢幼虫期のミノは,種や属を同定するための有効な特徴を備えており,これらの特徴に基づいて,30種についてミノの検索表を付けた.
出版者
National Institute of Polar Research
雑誌
Polar Data Journal (ISSN:24326771)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.89-98, 2021-09

Reconstructions of the past variations of atmospheric composition are important for better understanding of the changes in climate and atmospheric chemistry. The data from direct atmospheric observations of various trace gas mole fractions and isotope ratios have become available over the last few decades. The analyses of air bubbles in polar ice cores have provided those from the pre-industrial era to the mid-20th century. Old air is also found in porous snow layers (firn) on top of polar ice sheets, because the gas movements in firn occur mainly by molecular diffusion. Depth profiles of firn air components are therefore useful for bridging the records from direct observations and ice-core analyses (covering up to about a century). The firn air data are also helpful for constraining firn air transport models toward better understanding of snow densification and interpretation of ice core data. Here we present the depth profiles of air composition in the firn at the North Greenland Ice Core Project (NGRIP) site. Various gas components, including atmospheric O2/N2 ratio, greenhouse gases, halocarbons and their isotope ratios, were measured from air samples collected from the NGRIP firn by using combination of high-precision measurement systems. The data are presented in a spreadsheet format (.xlsx).
著者
遠藤 佳章 久保 晃 木村 和樹 三浦 寛貴
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.42-46, 2016 (Released:2017-02-20)
参考文献数
24
被引用文献数
1

【目的】超音波画像診断装置を用いて健常若年男性の腰椎各レベルの多裂筋横断面積の腰椎レベル高低での差異と左右差の2 要因を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は過去に腰部の疾病や外傷,腰痛の既往がない上下肢ともに右利きの健常若年男性55 名とした。超音波画像診断装置を用いて,腹臥位で左右の第5・4・3・2・1 腰椎レベルの多裂筋横断面積を計測した。【結果】多裂筋横断面積の左右比較では,第5・4 腰椎レベルで右側が有意に大きく,第3・2・1 腰椎レベルでは有意差は認められなかった。また,左右ともに下位腰椎にいくにつれて多裂筋横断面積は有意に増大した。【結語】腰部多裂筋横断面積は下方にいくにつれて大きくなり,利き側がより発達することが示唆された。
著者
比名 朋子 中井 祐一郎
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.13-21, 2015-09-26 (Released:2016-11-01)
参考文献数
9

本邦においては、人工妊娠中絶の施行条件は母体保護法によって限定されており、強姦による妊娠以外にも 身体的または経済的に母体の健康が維持できない場合に容認されている。また、その適用の可否は母体保護法指定医によって決定されるが、経済的条件(以下、経済条項と称する)が広く解釈されているために、事実上自由に人工妊娠中絶が行われているのは周知のとおりである。 一方、生活保護法は文化的かつ健康的な生活を保証するとともに、妊娠・分娩に関しては分娩費用以外にも妊娠に伴う附帯費用を付加した経済的援助を規定しており、生活保護受給者が妊娠・分娩によって「経済的に母体の健康が維持できない」ことはない。したがって、母体保護法の経済条項を無条件に適用することには疑義が残るが、旧厚生省は生活保護法受給女性における経済条項適用を容認するとともに、福祉事務所や民生委員に経済条項適用の可否決定に関して必要な情報を提供するように通達を行っている。 しかしながら、生活保護法の主旨を具現化すべき上記公務員にとって、妊娠が生活保護受給女性の健康を維持し得ないことを主張することは不可能であり、母体保護法指定医師とともに矛盾を抱え込まざるを得ない。
著者
狩谷 伸享
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.78-88, 2021-01-15 (Released:2021-02-19)
参考文献数
20
被引用文献数
1

まだ超緊急帝王切開を経験したことがない,という麻酔科医なら一度は超緊急帝王切開のシミュレーショントレーニングを経験されることをお勧めする.指導者としては,わずかな工夫で費用対効果の高いシナリオシミュレーションを実施して,学習者の満足を得たい.超緊急帝王切開のシナリオシミュレーションの実施の工夫について,筆者の経験を紹介する.
著者
琴寄 崇
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.10-18, 1986-02-15 (Released:2017-11-30)

15種の木粉類につき,初めに常圧空気中におけるTG-DTAを測定し,材種による違いがどの程度現れるかをみた後,断熱型の昇温過程記録装置を用いて常圧乾燥空気中かつ断熱条件下における,樹木中の各部位の発火性の差異や木粉に色々な爽雑物が混入した場合の発火性の変化について数種の実験的知見を収集した.次いで,堆積物の熱発火限界温度を求めるために従来筆者等が提案してきた手法を,これらの木粉類に適用したところ,実測値にほぼ一致する値が得られた。本手法を用いると,従来の諸法によるよりもはるかに簡単に堆積物の熱発火限界温度を求めることができる.

2 0 0 0 OA 依存性の研究

著者
江口 恵子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.45-58, 1966-03-31 (Released:2013-02-19)
参考文献数
113
被引用文献数
1
著者
足立 智英 小林 祥泰 山下 一也 岡田 和悟 恒松 徳五郎
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.14, no.5, pp.495-498, 1992-10-25 (Released:2009-09-03)
参考文献数
10

視床出血は片麻痺, 意識障害, 知覚障害等の症状にて発症することが多い.いわゆる視床症候群では, その一症状として小脳性と考えられる運動失調を呈することが知られているが, 他の神経症状を伴っていることが多く, 運動失調のみを呈することは極めて稀であるとされている.今回我々は, 運動失調を主徴とし, CT上左視床外側に限局した視床出血を認めた例を経験した.視床出血で, 運動失調を主徴とした症例は, 過去にも自験例を含めて4例の報告しかなく, いずれの例も視床外側部に一致した出血巣を認めている.本例は, 運動失調を主徴とする場合に小脳のみならず視床出血の可能性を考える必要があることを示しており, 病巣の局在診断上注意を要する症例と考えられたので報告する.
著者
Kai Battenberg Makoto Hayashi
出版者
Japanese Society for Plant Biotechnology
雑誌
Plant Biotechnology (ISSN:13424580)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.79-83, 2022-03-25 (Released:2022-03-25)
参考文献数
43
被引用文献数
1 2

Since molecular phylogenetics recognized root nodule symbiosis (RNS) of all lineages as potentially homologous, scientists have tried to understand the “when” and the “how” of RNS evolution. Initial progress was made on understanding the timing of RNS evolution, facilitating our progress on understanding the underlying genomic changes leading to RNS. Here, we will first cover the different hypotheses on the timings of gains/losses of RNS and show how this has helped us understand how RNS has evolved. Finally, we will discuss how our improved understanding of the genetic changes that led to RNS is now helping us refine our understanding on when RNS has evolved.

2 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1942年11月09日, 1942-11-09
著者
Iwai Ohbayashi Yuki Sakamoto Hitomi Kuwae Hiroyuki Kasahara Munetaka Sugiyama
出版者
Japanese Society for Plant Biotechnology
雑誌
Plant Biotechnology (ISSN:13424580)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.43-50, 2022-03-25 (Released:2022-03-25)
参考文献数
40
被引用文献数
1 7

In two-step culture systems for efficient shoot regeneration, explants are first cultured on auxin-rich callus-inducing medium (CIM), where cells are activated to proliferate and form calli containing root-apical meristem (RAM)-type stem cells and stem cell niche, and then cultured on cytokinin-rich shoot-inducing medium (SIM), where stem cells and stem cell niche of the shoot apical meristem (SAM) are established eventually leading to shoot regeneration. In the present study, we examined the effects of inhibitors of auxin biosynthesis and polar transport in the two-step shoot regeneration culture of Arabidopsis and found that, when they were applied during CIM culture, although callus growth was repressed, shoot regeneration in the subsequent SIM culture was significantly increased. The regeneration-stimulating effect of the auxin biosynthesis inhibitor was not linked with the reduction in the endogenous indole-3-acetic acid (IAA) level. Expression of the auxin-responsive reporter indicated that auxin response was more uniform and even stronger in the explants cultured on CIM with the inhibitors than in the control explants. These results suggested that the shoot regeneration competence of calli was enhanced somehow by the perturbation of the endogenous auxin dynamics, which we discuss in terms of the transformability between RAM and SAM stem cell niches.
著者
野田 松平
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.387-392, 2019-11-30 (Released:2020-11-30)
参考文献数
6

太陽光発電設備の大量導入が進み,寿命に到達して大量のパネルが廃棄されはじめるとされる2030 年代が来る前に,九州では 2020 年度に点検・保守により交換される廃棄パネルが年間約 200 ton (2 MW に相当) に上ると推計されている。われわれは,その廃棄パネルのリサイクルを推進すべく,2018 年「福岡県太陽光発電 (PV) 保守・リサイクル推進協議会」を設立し,廃棄パネル回収システムを含む「廃棄パネルリサイクルシステム」の構築を始めた。現在,クラウドを通して会員間で情報を共有し,IoT を活用した効率的回収を目指す「スマート回収支援システム」を開発中である。実証試験により本システムの有効性を確認した後,2020 年度には電子マニフェストとの連携も可能とし,本システムの充実化を図る。ここで重要なことは,本リサイクルシステムの持続性であり,そのためには前記協議会が自立して持続可能な機関になる必要があり,並行して自立化のための独自技術開発を始めたところである。