著者
吉川 正剛 Masatake YOSHIKAWA
出版者
大手前大学CELL教育研究所
雑誌
大手前大学CELL教育論集 = Otemae University CELL journal of educational studies (ISSN:21855641)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.057-066, 2017-03-31

2011年の大学設置基準の改正により、大学でのキャリア教育やキャリア形成支援が原則義務付けられた。今後の就職支援部門の業務は、大学設置基準の趣旨を踏まえて学生のキャリア形成支援に資するよう再構成することが求められているが、そのあるべき姿は明確ではない。本稿では、文部科学省が想定している「キャリア教育」の意義から大学設置基準の条項を検討するとともに、職業紹介機関たる就職支援部門と厚生補導機関たる就職支援部門の位置づけを振り返ることにより、就職支援部門が行う「就職支援」の再定義を試みた。この中で、職業指導の「目標の二重構造」を提示し、今後の就職支援が「卒業後の進路決定」という学生の目標と「人生設計支援」という大学の目標の、2つの目標の二重構造の中で行われるべきことを示した。
著者
片山 剛 Takeshi Katayama 千里金蘭大学 教養教育センター
巻号頁・発行日
vol.11, pp.87-99,

後白河法皇の嗜好によって制作された『伴大納言絵巻』は、九世紀に起こった応天門の火災に取材した説話を絵画化したもので、炎の描写、多様な人物の躍動感にあふれた表現、劇的な展開などの魅力に溢れた絵巻物屈指の名作である。しかし、絵画の読み解きは必ずしも完全に行われているとはいえず、また絵巻物という性質ゆえに原本の体裁をそのまま伝えているとも思えないなどの問題を孕んでいる。 本稿では、従来の説に多くを依拠しながらも、未解決の問題に私見を加え、併せて細部の読み解きを試みるものである。
著者
森茂 智彦 山口 穂高 藤巻 吾朗 生駒 晃大
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.289-300, 2023-02-15

棚卸作業において,画像認識によって部材の数量を求めることは有用である.しかし,その精度が100%となることは保証されないため,正確な数量の把握には目視による認識結果の修正も必要である.当然この修正は速く正確に行えることが望まれる.そこで本論文では,画像を格子線で区切ることによって修正作業が効率的に行えるとの仮説を立て,検証する.木製の丸棒部材を用いて検証した結果,未検出の部材のみが含まれる画像の修正では格子線の影響が限定的であり,誤検出の印を消す修正および未検出と誤検出の同時修正が必要な画像において格子線を用いた条件で未修正数が減少した.一方で,修正に要した作業時間は格子線の有無によって変わるとはいえなかった.よって,丸棒部材において格子線は,画像認識後の修正作業を阻害する可能性は少なく,誤検出した印の修正に有効であると結論づけられる.
著者
熊本 忠彦
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-5, 2019-01-16

マイクロブログの1つであるTwitterでは,突発的な感情の発露を表すために,「日本が勝ったぁああ」や「それはやめて~~ーー」のような叫喚表現化したツイートを用いることがある.これまでの先行研究では,こういった叫喚ツイートの叫喚表現化された部分を検出し,元の表現(「勝った」や「やめて」)に変換することで,既存の様々な辞書を利用できるようにするための手法やツイートから叫喚ツイートを抽出し,投稿者の感情の大きな変化を検知するという手法が提案されている.しかしながら,抽出される叫喚ツイートの種類についてはあまり深く検討されておらず,比較的単純な正規表現により検索可能な叫喚ツイートのみが抽出されていた.そこで本論文では,先行研究で提案された正規表現を拡張し,より多くの叫喚表現に対応できるようにするともに,提案手法による叫喚ツイートの抽出割合や抽出精度を評価することで,その有効性を検証する.
著者
岡藤 勇希 牧田 昌大 松村 耕平 馬場 惇 中西 惇也
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.366-376, 2023-02-15

近年では,人間の労働力のサポート手段の1つとして,コミュニケーションロボットが積極的に活用され始めている.一方で,公共空間でロボットと対話をする際には恥ずかしさが発生することが知られており,これによりロボットの利用が妨げられる可能性がある.そこで本研究では,公共空間においてロボットの利用を促進させるために,ロボット利用時の恥ずかしさの発生要因と,恥ずかしさがロボット利用に対して与える影響を明らかにすることを目的として,ロボットを利用するサクラを用いた実験を実施した.実験結果より,ロボット利用中に感じる恥ずかしさは,周辺からの注目と周辺からの理解による要因に影響を受けることが示された.また,利用中の恥ずかしさを減少させることにより,ロボットとのインタラクション時間が延びることが示された.
著者
藤本 温
出版者
名古屋工業大学技術倫理研究会
雑誌
技術倫理研究 = Journal of engineering ethics (ISSN:13494805)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.123-141, 2007-11-30

本稿では、技術者倫理の要であると言われる「(技術者は)公衆の安全、健康、福利を最優先する」という規程における「公衆」概念を検討する。日米の工学系学協会による倫理綱領の分析から始めて、インフォームド・コンセントという概念を用いて「公衆」を規定するM.Davisによる提案の可能性と問題点を考察する。
著者
林 在圭 イム ゼエギュ Jaegyu Lim
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 = Shizuoka University of Art and Culture bulletin
巻号頁・発行日
vol.14, pp.21-30, 2014-03-31

人間の暮らしにとって衣食住は根幹をなすものである。ここでは、特に「衣」に焦点を当てて韓国服飾の伝統とその特徴についてみる。そこで、韓国の伝統衣裳の現状を知るために忠清南道舒川郡韓山の苧布の韓山モシを取りあげる。韓山モシは夏用の高貴な織物の生地で、伝統的に主に舒川郡一帯の韓山で生産されている。ところが、化学繊維の普及と増大によって苧麻栽培は激減し、韓山モシは壊滅的状況に追い込まれた。そのため、1980 年代半ばに伝統文化復活の一環として、地方行政の舒川郡や国が韓山モシの保存・継承のために力を注いでいる。そして、1990 年代には韓山モシ館を建立し、さらに2000 年代に入ってからは韓山モシ世界化事業団を組織化して、その復興に努めている。
著者
孫 昊 Hao Sun
出版者
同志社大学
巻号頁・発行日
2018-03-22

本論文では,計量的な手法を用いて川端康成の代筆問題と文体問題に取り組み,次に挙げたことを明らかにした。①小説『乙女の港』と『花日記』は川端康成と中里恒子の共同執筆である。②『コスモスの友』,『古都』,『眠れる美女』と『山の音』は代筆の可能性が低い。③泉鏡花,徳田秋聲と横光利一と比べ川端康成文体の存在が確認され,終戦の1945 年を境に川端康成の語彙の豊富さと,機能語の助詞,副詞,接続詞に変化が見られた。
著者
飯野 秋成 黒木 宏一
出版者
新潟工科大学
雑誌
新潟工科大学研究紀要 (ISSN:1342792X)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.15-24, 2019-03

Effectiveness of original lecture method to introduce European architectural history for students at the stage of basic study of architecture was considered. In our lectures, dynamic change of European churches’ shape from ancient times to modern times, and relationship between design disciplines of modern European countries, were focused on, and year number of Christian era were not used. Based on the questionnaire to students conducted after the lecture, it was clarified that weak consciousness of European architectural history they had was wiped out, and their desires of next learning stage of architectural history were also evoked. As another method, we tried a lesson that was easy to grasp the flow of Architectural works and styles, using sheets with parallel European and Japanese age.
著者
奥村 萬亀子 MAKIKO OKUMURA
雑誌
京都府立大学学術報告. 理学・生活科学 = The scientific reports of the Kyoto Prefectural University. Natural science and living science (ISSN:0075739X)
巻号頁・発行日
vol.47・48, pp.25-33, 1996-12-25

丹波福知山地方に「ちょろけん」と呼ばれる手織の自家用織物がある。ところが「ちょろけん」とは江戸時代唐船や紅毛船により舶載され珍重された渡来裂であり, その名は早くに定着しているがその定義や使用例に不明な点が多い。この二つの裂の関係を「木目文様」を鍵として考察する。
著者
木村 滋 冨野 弘之 Shigeru KIMURA Hiroyuki TOMINO
雑誌
日本赤十字秋田短期大学紀要 = Bulletin of the Japanese Red Cross Junior College of Akita (ISSN:13430033)
巻号頁・発行日
no.10, pp.9-22, 2006-03-15

辺縁系由来の情動活性化、記憶、意識について脳科学を概観し、好みの音楽を聴いて影響される被験者の脳波(α,β,θ)を調査した。また、モーツアルトの小夜曲、バッハのG線上のアリアの最初の小節とこおろぎの音のスペクトル分析をした。これらの音楽と音は癒し効果があるということで知られている。研究者の中にはモーツアルトの音楽や秋のこおろぎのような虫の音の3.5KHz~4.5KHzの周波数帯の音は癒し効果があると信じている人もいる。脳波測定の被験者は10代後半の女性、20代前半の男性、50代の男性、60代の女性で好みの1つの音楽、実験用に指定したよく知られた2つの歌謡曲、バッハのG線上のアリアを聴きながら脳波(α,β,θ)を測定した。好みの音楽はそれぞれβ波減少(-11~-1.3%)、θ波減少(-10~0%)とαW増加(+21.2~0%)を示した。指定した音楽は好みの音楽とほぼ同様の効果を示した。音響学的に分析したモーツアルトのセレナーデとバッハのG線上のアリアは上記の周波数帯には部分的にしか集まっていなかった。