著者
吉尾 雅春 村上 弦 西村 由香 佐藤 香織里 乗安 整而
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0826, 2006 (Released:2006-04-29)

【目的】座位で骨盤の傾斜角度を変えて,屍体の大腰筋腱を他動的に牽引して股関節を屈曲する際の張力を調べることによって,座位における大腰筋の機能について検討した。【方法】ホルマリン固定した屍体10体で,明らかな骨変性のない17股関節,男性10股関節,女性7股関節を対象とした。第11,12胸椎間で体幹を切断し,脊椎,骨盤を半切,膝関節で離断,大腰筋腱,股関節の関節包,各靱帯のみを残し,骨格から他の組織を除去して実験標本を作製した。背臥位で両側の上前腸骨棘と恥骨結節とを結ぶ面が実験台と水平になるように,実験台に骨盤をクランプで固定した。実験台は股関節部分で角度を任意に調節できるようにし,床面と水平になるように設置した。骨盤側の台を座位方向に起こして,骨盤長軸と大腿骨とで成す股関節屈曲角度を0度,15度,30度,45度,60度,75度,90度に設定した。それぞれの角度で大腰筋腱を起始部の方向から徒手的に牽引して,股関節が屈曲し始めたときの張力を測定した。張力の測定にはロードセル(共和電業,LU-20-KSB34D)を用い,センサーインターフェイスボード(共和電業, PCD-100A-1A)を通してパーソナルコンピュータで解析して求めた。大腿骨の重量や長さなどの個体因子を排除するために,股関節屈曲角度0度での張力を1として,張力の相対値を求めて検討した。牽引時の主観的抵抗感も検討因子に加えた。統計学的検討はt検定により,有意水準を5%未満とした。【結果】各角度での張力の相対値は0度:1.00,15度:1.05±0.08,30度:1.04±0.11,45度:1.07±0.12,60度:1.25±0.11,75度:1.44±0.15,90度:1.82±0.29であった。15度と30度との間で差が認められなかった以外は,0度から45度まで有意に張力は微増,60度,75度で著明に増加,90度で張力は激増し,60度以上での張力はすべての角度との間で有意差がみられた。牽引時の主観的抵抗感は60度以上で強く,75度でかなり強さを増し,90度では股関節屈曲が困難なほど極めて強い抵抗があった。【考察】第40回大会で骨盤を固定した健常成人の他動的股関節屈曲角度が約70度であることを報告した。主観的抵抗感も加味すると,通常の生体座位における自動的股関節屈曲に75度,90度で得られた張力を求めるとは考えにくい。座位で大腰筋を用いて股関節を自動屈曲するためには骨盤後傾位が効率的で,骨盤前傾位では股関節を屈曲することが困難になる。逆の視点で考えれば,骨盤後傾位で体幹を伸展した座位姿勢を保持するためには下肢が挙上しないようにハムストリングなどの作用が求められるが,前傾位では下肢は挙上しにくいために大腰筋の作用によって体幹伸展保持が保障されるという,60度を境にした役割の切り替えがなされる筋機能を有していると考えられた。
著者
田村 豊
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.375-379, 2013-07-15

食卵は,高い栄養価を有し,比較的安価な動物性タンパク食品である。日本では鶏卵とうずら卵が主なものであるが,外国ではアヒルや七面鳥の卵も食する習慣がある。鶏卵は,生卵として喫食する他,卵加工品および食品の原料としても広範囲に利用されている。生卵を食するというわが国独自の食習慣は,一方で食中毒などの食品衛生上の問題点も指摘されている。一般に食中毒といえば,微生物のみならず化学物質や自然毒を原因とするものも含まれる。その内,微生物を原因とするものは,食品媒介感染症と呼んでいる。しかし,本文では慣用的に用いられる食中毒という表現を用いることにする。食卵に起因する人の健康障害因子としては,病原微生物をはじめ,食物アレルギーのアレルゲン,動脈硬化との関連が指摘されるコレステロールなどが知られている。その内,最も重要なのが病原微生物で,中でも鶏卵のサルモネラ汚染がしばしば深刻な問題を提起している。事実,1990年9月に広島市を中心に1府9県に及んだ大規模なサルモネラ食中毒の発生は記憶に新しい。この事例では,大手の菓子メーカーでティラミスケーキの原料として使われた液卵にSalmonella Enteritidis(以下SE)が混入していた。ケーキの製造過程で室温に長時間放置したためSEが増殖することにより,それを食した若い女性を中心に食中毒が発生した。大手の菓子メーカーが介在したため広域に食中毒が発生し,患者数458名という記録に残る大規模な食中毒となった。このように食卵の衛生で最も注意すべき課題は,いかにSE食中毒を防ぐかである。そこで本解説では,内閣府食品安全委員会が公表したリスクプロファイルを基にサルモネラ食中毒の発生状況,SEの性状と食中毒の特徴,食卵の汚染要因,および対策について概説したい。
著者
大見 広規 マーティン メドウズ Hiroki OHMI Martin Meadows
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 = Bulletin of Nayoro City University (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.67-72, 2019-03

1906,1966年には,丙午の迷信に従い,出生率や出生性比など,人口動態統計に大きな変化が起こった。次の丙午年は2026年,今から8年後であり,子どもを出産する女性の年齢が30歳前後であることを勘案すると,本学の学生が相当する年齢層となる。学生を対象に,丙午出産についての意識調査を実施し,2026年の人口動態統計の傾向を予測した。回収率は15.4%と低く,特に男性での回収数が少なかった。丙午迷信は約40%が知っていたが,由来は知らないものが多かつた。本人,親,親戚の80%以上が迷信を気にしていず,男女とも約80%以上が,丙午出産を避けようと思っていなかった。避ける場合は,避妊が主であり,人工妊娠中絶や虚偽の届けは考えていなかった。半数以上が,2026年には人口変動が起こらないと予測していた。しかし,20%弱の学生が気にしており,女性は半数がパートナーや親など周囲に影響を受けると回答していること,さらに,生殖医療の普及や,近くなったときのメディアからの情報など,様々な社会因子も予想されることから,若千の出産数減少や,出生性比の変化が起こる可能性は否定できないと予想した。
出版者
日経BP
雑誌
日経ビジネス = Nikkei business (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.2009, pp.60-63, 2019-09-23

「発売したばかりなのにもうお店にない」「抹茶ティラミスのケーキを食べているよう」。梅雨が長引いた今夏。天候不順でアイスクリーム業界は例年よりも苦しい状況だが、SNS(交流サイト)では8月に発売されたアイス「ガリガリ君 抹茶ティラミス」が話題にな…

2 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1943年10月13日, 1943-10-13
著者
杉浦 実
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.373-381, 2014
被引用文献数
8

β-クリプトキサンチンは日本のウンシュウミカン(以下,ミカン)に特徴的に多く含まれているカロテノイド色素の一種である。われわれはこれまでの研究から,ミカンを食べる習慣を有する日本人の血中β-クリプトキサンチン値は欧米人と比べて顕著に高いことを見出してきた。現在,国内主要ミカン産地である静岡県三ヶ日町の住民を対象にした栄養疫学調査(三ヶ日町研究)を継続的に行っているが,これまでに血中β-クリプトキサンチンレベルと動脈硬化や肝疾患,メタボリックシンドローム等の様々な生活習慣病リスクとに有意な負の関連があることを見出してきた。本稿では,β-クリプトキサンチンに関する最近の疫学研究の知見について紹介する。
著者
桑原 慶紀 吉田 幸洋 中村 清 伊藤 茂
出版者
The Society for Reproduction and Development
雑誌
Journal of Reproduction and Development (ISSN:09168818)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.j55-j60, 1995 (Released:2010-10-20)

著者らは独自に開発した装置を用いてヤギ胎仔の長時間子宮外保育を試みてきた.すなわち,帝王切開で娩出したヤギ胎仔の臍帯血管にカテーテルを挿入し,ECMO(Extracorporeal Membrane Oxygenation)回路に接続する.胎仔は人工羊水中に置かれ,胎児循環を保持し,低酸素環境下で保育される.これまでの著者らの成績では10日間の保育が限度で,慢性循環不全を主たる原因として死亡しており,保育状況・期間ともに不満足であった.最近著者らは胎仔の体内環境の変動をできるだけ少なくし,水分貯留傾向と関係すると思われる飲水行動を抑制する目的で子宮外保育期間中,胎仔にminor tranquilizerと筋弛緩剤を投与した.その結果,保育期間中,胎仔の状態は極めて安定しており,水分貯留傾向も認められず,約20日間というこれまでにない長期間保育に成功した.さらに,子宮外保育からの離脱を試みたところ,レスピレーターによる人工換気は必要としたものの良好な換気が得られ,保育期間中に肺の機能的成熟が進行したことも確認できた.以上により,臍帯動静脈A-VEC MOが未熟動物の長期にわたる保育法として有効であることが証明されたが,長期間の体動抑制による未熟動物の筋力の発達成熟におよぼす影響などの解決すべき問題があり,正常新生仔への移行にはさらなる改善が必要である.

2 0 0 0 OA 蕗原拾葉

著者
長野県上伊那郡教育会 編
出版者
鮎沢印刷所
巻号頁・発行日
vol.第11輯, 1940
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.396, pp.50-51, 2006-03-24

2004年9月,横浜市営地下鉄のトンネル内で,上下線の線路を仕切る間仕切り版が落下し,地下鉄の車両が接触する事故があった。 場所は,戸塚駅-踊場駅間にある矢沢中間換気所。間仕切り版の工事は,踊場駅の建築工事の一部として,横浜市交通局が発注し,設計を梓設計が,施工を西松建設が,それぞれ受注した。

2 0 0 0 OA 青木南八遺稿

著者
青木得三 編
出版者
青木得三
巻号頁・発行日
1923
著者
吉本 真
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.166-175, 2020 (Released:2020-08-07)
参考文献数
93

肝臓は門脈によって腸管と直接繋がっている.近年,腸肝循環を介して腸管由来の因子が肝疾患の発症や悪化に非常に大きな役割を担っていることが明らかにされている.ヒトの腸管には数百種類の腸内細菌が定着しているといわれており,次世代シークエンスやメタボローム解析技術の発展により,予想以上にヒトの健康,特に肝機能に深く関与していることが示されている.様々なストレスで腸管バリアが破たんすると,リポ多糖(Lipopolysaccharide: LPS)やリポタイコ酸(Lipoteichoic Acid: LTA)などが肝臓のTLRなどを介した炎症シグナルを誘導し,肝線維化や肝臓がんを促進する.さらに,胆汁酸はファルネソイド X 受容体(Farnesoid X Receptor: FXR)やGタンパク質共役受容体(Transmembrane G protein-coupled Receptor 5: TGR5)などを介して代謝関連の遺伝子発現を調整し,肝臓の恒常性を維持する一方で,一部の腸内細菌の働きにより,デオキシコール酸(Deoxycholic Acid: DCA)やリトコール酸(Lithocholic Acid: LCA)などの二次胆汁酸が過剰に蓄積すると肝障害や肝臓がん促進に繋がるストレスを誘導する.腸肝軸(Gut-Liver Axis)を介した肝疾患の発症メカニズムを解明することは,肝疾患の予防を目的とした腸内細菌叢の制御方法の開発に繋がると考えられる.
著者
小川 雅之 細田 正洋 福士 政広 小柏 進
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
Radioisotopes (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.313-320, 2008-05-15
参考文献数
17

東京では通勤手段として地下鉄の利用率が高いことから,地下鉄車内の線量率を把握しておくことは保健物理学的に重要である。そこで,都内の地下鉄12路線について空間γ線線量率の測定を行った。その結果,最大値(36.5nGy/h)は最小値(23.3nGy/h)の1.6倍であった。また,車内の線量率は,車外より33%低い値であった。更に,地下鉄線内の線量率は深さに依存せず,地下構造物やホームの構造物中に含まれる天然放射性核種濃度に依存すると考えられた。