著者
小栗 久典
出版者
日本弁理士会
雑誌
別冊パテント (ISSN:24365858)
巻号頁・発行日
vol.74, no.26, pp.153-164, 2021 (Released:2021-11-18)

仮想事例による検討を踏まえると,クラウド事業者,当該クラウド事業者が提供する機能を利用して自己のサービスを提供する企業,当該企業のサービスの利用者がネットワークで結びついて,所定のシステムやサービスを提供するような事案においては,従来論じられてきた,「支配管理性」に関する判断基準を前提とすると,道具理論・支配管理論に基づいたとしても,特定の主体につき特許権侵害(直接侵害)を問うことが難しくなり,結果として特許権者が十分な救済を受けられなくなる恐れがあるように思われる。このため,特許権侵害(直接侵害)につき,より実情に即した柔軟な判断を可能とする上では,従来の,各主体に対しての支配管理性の有無を問題とする基準に,もう一つの選択的な基準として,被疑侵害システムに対する支配管理を誰が行っているかという観点から「支配管理性」を考えるという基準を加えることにより,「支配管理性」の判断基準を拡張することにつき,検討する余地があると考える。
著者
明仁親王
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4-6, pp.73-101, 1966-07-31 (Released:2011-07-04)
参考文献数
49

1. ウロハゼとフタゴハゼGlossogobius giuris (HAMILTON) は同一種と認める人と, 異種或は異亜種として区別する人があるので, この両者の比較を試み, いくつかの違いを見いだした。2. ウロハゼとフタゴハゼGlossogocius giuris (HAMILTON) は形態上および分布上から考慮して別種とするのが妥当である。3. ウロハゼの学名には従来brunneusが日本では用いられて来たが, 高木 (1962) によってbrunneusはヨシノボリに用いるべきであることが明らかにされたので, 新たに学名を求める必要が生じた。そこでウロハゼの学名Gobius olivaceus TEMMINCK & SCHLEGELとGobius fasciato-punctatus RICHARDSONの発表年月日を調べ, Gobius olivaceusに先取権があることを見いだした。4. ウロハゼの学名はGlossogobius olivoceus (TEMMINCK & SCHKEGEL) が妥当であると考える。
著者
渋谷 雄平 井上 明 河上 靖登
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.432-436, 2006

<b>目的</b>&emsp;フィブリノゲン製剤納入先医療機関名の公表に伴い,神戸市では相談窓口の設置に加えて C 型肝炎ウイルス(以下 HCV)の無料検査(年齢制限及び HIV 同時検査なし)を実施した。それらの分析結果より今後の C 型肝炎対策についての一考察を加えた。<br/><b>対象と方法</b>&emsp;平成16年12月,保健所,各区役所保健福祉部など市内12箇所に相談窓口を設置するとともに,「平成 6 年以前に,公表医療機関で出産や手術等の際に出血のためフィブリノゲン製剤を使用された可能性がある神戸市民で,その後 C 型肝炎検査を一度も受けられていない人」を対象として,平成17年 3 月末まで HCV 検査を実施した。HCV 抗体を測定し,陽性の場合は HCV-RNA にてウイルスの有無を確認した。<br/><b>結果</b>&emsp;(相談件数・内容について)3,717件の「相談」があり,女性3,145件(84.6%),男性572件(15.4%)と女性が圧倒的に多かった。相談内容の主なものは,「肝炎検査について(検査場所,費用等)」,「過去に出産・手術をしたが大丈夫か」等であり,国の中間集計と同じ結果がみられた。<br/>&emsp;(C 型肝炎検査について)1,372人が検査を受け,女性1,165人(84.9%),男性207人(15.1%)と,「相談」と同様に女性が 8 割以上を占めた。HCV 抗体陽性は32人(陽性率:2.3%)で,その内 HCV-RNA 陽性者は13人(陽性率:0.95%)であった。持続陽性者は60歳代で 7 人と最も多かったが,30歳代でも男性 1 人を認めた。平成13年の非加熱血液製剤の使用医療機関公表時の実績(HCV 抗体陽性率:8.2%)と比較すると,今回の抗体陽性率は有意に低かった(<i>P</i><0.01)。HCV-RNA 陽性率を節目検診(平成15年度)と比較してみると,女性では低く(0.60%),逆に男性では高い傾向がみられた(2.90%)。特に69歳以下の男性では有意に高く(<i>P</i><0.05),節目外検診における HCV-RNA 陽性率にほぼ匹敵していた。<br/><b>結論</b>&emsp;「相談」・「検査」共に女性が多かったことが特徴的であったが,フィブリノゲン製剤は過去に外科的手術だけでなく,出産時にも頻繁に使用された経緯があるためと推察された。この公表を契機として肝炎対策を一層推進するために実施された今回の措置は,大規模な節目外検診として有益であった。今後も年齢に拘らず,C 型肝炎の感染リスクのより高い者を対象として,積極的に検査の普及啓発を展開していくことが適切な対応と思われる。
著者
Hikaru Horii Manaho Matsubara Kenji Sasaoka Takahiro Yamamoto
出版者
The Japan Society of Vacuum and Surface Science
雑誌
e-Journal of Surface Science and Nanotechnology (ISSN:13480391)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.125-130, 2021-12-23 (Released:2021-12-23)
参考文献数
40
被引用文献数
1

The thermoelectric response of bilayer graphene over a wide temperature range (0 < T ≤ 400 K) was theoretically investigated using linear response theory combined with a Green's function technique. We found that the power factor PF for a fixed chemical potential μ exhibits a maximum at a certain T. On the other hand, we found that the PF for a fixed T exhibits a maximum (PFmax) at an optimal μ [or optimal carrier concentration (nopt)]. In addition, we clarified the T dependence of nopt and PFmax and explained the existence of nopt in terms of the thermal excitation of electrons between the valence and conduction bands, which cannot be predicted by the conventional Mott formula.
著者
野上 芳美
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.468-473, 1970-06-15

Ⅰ 境界状態または境界例の概念はKnight8)によってほぼ確立されたとはいえ,境界状態あるいはこれに相当する病態に関する文献を通覧すると,著者達の使用する用語もその概念もさまざまであって,極端なことをいえば「誰それのいう何々」という言い方をしないと話し手と聞き手の間に微妙な喰いちがいが起こりかねない。例えば,HochとPolatin5)の「仮性神経症型分裂病」は広義に境界状態に包含される病態であるが,これと完全に一致する記述はDouglas2)の「境界線分裂病」(borderline schizophrenia)のみである。Shenken12)は「境界状態」という用語を用い,その記述の大部分はHochとPolatinに準拠しているが,しかしさらに妄想反応と仮性神経症型うつ病をも含むものとしている。一方でSchmideberg11)は「境界患者」を定義するさい仮性神経症型分裂病は除外すると明言している。また最近Grinkerら4)はそのモノグラフで「境界線症状群」(borderline syndrome)という用語を用いたが,その類型として中核群,神経症的境界線群,精神病的境界線群,“as if”群をあげており,その包含する対象は広い,などなどのごとくである。第1表には諸家により用いられた用語をあげた。 著者らによる境界例概念とその強調する点の相違はそれぞれの属する学派・理論によるほか,彼らが症例を取り扱う施設の性格ならびに患者層の偏りに基づくこともあろう。だがそれらのほかにより根本的な根拠が考えられる。そのひとつは,ある症例を境界状態と診断する場合,神経症的ならびに分裂病的な二面の特性を認めつつもそのいずれにも属せしめえぬという否定的・除外的な態度もあり,そこではいかほど分裂病的(または神経症的)であり,かついかほど分裂病的(または神経症的)でないかという判断がなされていることである。「境界例という診断は患者の状態に関してではなく,精神科医の不決断・不確かさに関する情報を伝えている」(Knight)とか「診断の困難さを現わす用語」(井村)6)のごとき表現は単なる警句とはいえない。この診断の困難さあるいは不決断の幅,すなわち「精神病理学的スペクトル上の境界帯域」の幅は診断する側の抱く分裂病概念の幅に相応して狭くも広くもなる理である。あのGlover3)やZilboorg16)はこの不決断を認めぬ立場といえよう。もちろん,多くの人は境界例を広く分裂圏内に含まれる病態と認めてはいるが,万人に承認される境界例独自の病態特異的な所見が乏しい以上,不決断の幅は医師の主観に従って動揺せざるをえない。分裂病の診断基準にかかわる問題である。
著者
有川 二郎 杉山 和良 高島 郁夫 森松 組子 王 華 CLARENCE Peters WANG Hua CLARENCE Pet 宋 干 李 徳新 ANTTI Vaheri BO Niklasson 網 康至 伊勢川 裕二 五十嵐 章
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

1. 研究分担者、杉山和良らは中国、北京市と西安市近郊で野生げっ歯類の捕獲調査を実施し、2地区より100例のげっ歯類が得られ抗体および抗原の分布を明らかにした。2. 中国側研究分担者、李徳新を3カ月間、日本側研究機関に招聘し、得られた材料の解析を行い、中国由来2株のウイルスの遺伝子配列が一部決定され、日本側流行株よりもむしろ韓国由来株に近縁であることが明らかになった。3. 研究代表者、有川二郎と研究分担者、森松組子は米国側研究分担者、Petersを訪問し、世界各地での本ウイルス流行状況と遺伝的解析方法についての最新情報を得た。4. 研究分担者、Vaheri(フィンランド)をわが国に招聘し、北欧地域調査と北欧由来およびアジア由来ウイルスの相互比較の可能性について情報交換と将来計画を検討した。5. 研究代表者有川と研究分担者、高島は、英国、オーストリアおよびスロバキア側研究分担者の所属研究機関を訪問し、欧州におけるハンタウイルス感染症流行地域拡大に関する情報を得た。病原性の高い血清型(Dobrava型)である可能性についても情報を得た。6. 研究分担者、森松、苅和は英国側研究分担者の研究所を訪問し、遺伝子再集合ウイルス作製法ならびにReverse genetics法に関する最新の情報を得た。7. 研究代表者、有川および研究分担者、森松、高島、苅和は、韓国側研究分担者、李鎬汪の研究所を訪問し韓国流行株との比較解析に関する情報収集を行った。8. 中国側研究分担者(王 華)をわが国に招聘し、中国の人と動物由来ウイルスの遺伝子の相互関係の解析を実施中である。現在までに約50株の遺伝子の増幅に成功した。9. 中国側研究分担者(陳 化新)をわが国に招聘し、中国の野生げっ歯類の生態とハンタウイルス流行との関係について情報収集を行った。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1190, pp.114-116, 2003-05-05

4月11日、首相官邸のファクスが1枚の紙を吐き出した。送り主はファクスを受け取った財務省出身の首相秘書官に電話でこう告げた。「小泉(純一郎)首相に見せておいてくれ」。 「道路四公団民営化の推進についての石原伸晃大臣発言について」というタイトルが付されたこの文書は、石原行政改革担当相の言動に異議を唱える内容が書き連ねてある。
著者
竹原 卓真 井上 捺稀 山本 ルナ 清水 美沙
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.121-128, 2021 (Released:2021-04-30)
参考文献数
44
被引用文献数
1

Faces with larger eyes and double eyelids are perceived as more attractive than those devoid of these features. Moreover, eye bag makeup has become fashionable among nonprofessional lay young females to enhance the perceived size of their eyes. The majority of research on the influence of the upper eyelids on facial attractiveness has been conducted using artificially generated faces; however, research on facial attractiveness forming eye bag makeup remains unexplored. This study investigated the physical and mental attractiveness of real female faces with single/double eyelids and with/without eye bag makeup. The results indicated that faces with double eyelids were rated as more attractive than those with single eyelids. Faces with eye bag makeup were generally perceived as less attractive than those without them. While this was the case regardless of the type of eyelids for mental attractiveness, eye bag makeup only impacted the faces with double eyelids for physical attractiveness.
著者
野口 洋文
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.S195_2, 2019

<p>現在、糖尿病に対する移植療法として、膵臓移植と膵島移植がある。膵島移植は、局所麻酔下にて膵臓から分離した膵島を経門脈的に注入するため、膵臓移植に比べ低侵襲である。現在までに欧米で1000例以上の移植報告がなされており、日本でも2004年より臨床膵島移植が開始されている。発表者の野口はハーバード大学で膵島分離技術を習得したのち、日本初となる心停止ドナー膵島移植(2004年)、世界初成功例となる生体膵島移植(2005年)、日本初となる脳死ドナー膵島移植(2013年)を実施した。過去5年間に実施された膵島移植の約85%を発表者が実施している。しかしながら、本邦ではドナー数が圧倒的に少なく、脳死ドナー数をどのようにして増やすかが膵島移植の成功へのカギとなる。脳死ドナー不足の解消には時間がかかる現状を考慮し、別の治療法を模索する動きも活発化している。特に、再生医療研究が世界中で活発に行われているが、インスリン分泌細胞への分化誘導法が確立されておらず、いまだ研究段階であるのが現状である。本シンポジウムでは膵島移植の現状と問題点を示すとともに、最先端の糖尿病治療研究について紹介する。</p>
著者
阿部 力哉 近藤 誠 久道 茂
出版者
Japan Association of Breast Cancer Screening
雑誌
日本乳癌検診学会誌 (ISSN:09180729)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.145-157, 1995

近藤 誠<BR>慶應義塾大学医学部放射線科<BR>乳がん検診の意義があるというためには, 次の5つの項目をすべて充たす必要があります。すなわち, (1) 乳がんの性質が検診に適していること (性質上, 早期発見・早期治療による乳がん死亡減が合理的に予想されること), (2) 検診により乳がん死亡が減ること (いわゆる有効性), (3) 他の死因を含めた総死亡数が減少すること, (4) 検診による不利益がないこと, (5) 不利益がある場合には, 上記 (3) の程度との比較衡量, です。しかし, (1) から (5) までの点はいずれも否定されます。詳しくは, 拙書「それでもがん検診うけますか」 (ネスコ/文藝春秋), 大島明氏 (大阪がん予防検診センター) の「癌検診は果して百害あって一利なしか……近藤誠氏の著書を読んで」 (メディカル朝日95年2月号), および私の「癌検診・百害あって一理なし」 (同95年3月号) を読んでください。<BR>ここではすべての論点に触れるのは不可能ですから, (1) 乳がんの性質が検診に適しているかどうかについて考えてみますが, まず, 乳がんと病理診断される病変のなかには, 放置しても人の命を奪わない「がんもどき」と, 「本物のがん」とがあります!その場合, がんもどきは定義上, どこまでいっても致死性でない病変ですから, 早期発見が無意味なことは当然です。が, 本物のがんに対しても, 検診は理論上無意味なのです!というのも, 本物の乳がんが人の命を奪う原因のほとんどは転移ですから, 検診に意味があるがんは, 早期発見時点ではまだ転移が生じてなくて, そのまま放置すると転移が生じるもの, ということになります。ところが転移が生じる時点は, 数々の証拠からは, 早期発見できる大きさになるはるか以前, と考えられるので, それでは検診は無意味です。<BR>また, がんの本質からも, 乳がんは検診に適していないといえます。というのも, がんは遺伝子の異常をその本質とするので, 個々のがん細胞は同じ遺伝子異常をそなえており, それゆえ転移に関しても同じ性質をもっているはずだからです。発見されたがんが転移する性質をもっているなら, その性質は1個のがん細胞が発生したときから, 個々の細胞にそなわっていると考えるのが素直です。そしてがん細胞は早期発見できる大きさになるまでに, 二分裂を約30回繰り返しています (細胞数は10億個になる) から, 転移する性質のがんでは, 発見した時点までに, もう転移が成立している, と考えるほうが自然です!他方, 早期発見したがんに転移がない場合, 30回もネズミ算を繰り返すうちにも転移できなかったわけですから, それ以降も, 仮に放置しておいてももう転移しないと考えられるでしょう。このように, 乳がんは (そして他臓器のがんも), その本質からも性質からも, 検診に適している (検診で死亡数を減らせる) とは考え難いわけです。<BR>久道 茂<BR>東北大学医学部公衆衛生学<BR>がん検診は早期発見, 早期治療によって, がん死亡率を減少させることを目的としている。厚生省成人病死亡率低減目標策定検討会がまとめた目標は, 40歳から69歳の壮年層の死亡率を平成元年を基点として2000年までに, 胃がん, 子宮がんの半減, 肺がん, 乳がん, 大腸がんの上昇を下降に転じさせるとした。<BR>がん検診にはそれを行う条件がある!死亡率, 罹患率の高いこと, 集団的に実施可能な検診方法であること, 精度の高いスクリーニング法であること, 早期発見による治療効果が期待できること, 費用効果・便益のバランスがとれていること, 死亡率の減少効果があること, 一次スクリーニングだけでなく, 精度検査も含めて一連の検診体系で安全であること, などである。<BR>がん検診に関する研究の方法には手順がある。検診を実施する前に行うスクリーニングテストの精度, 実施可能性, 安全性, 信頼性, 有効性および費用の検討である!その方法として, ケースコントロール研究, 長期のコホート研究, 時系列研究などがある。重要なのは, 実施前から研究計画の手順を踏んでたてておくことである!<BR>がん集検には得失の両面がある。「百害あって一利なし」というキツイ言葉もあるが, がん検診の最大の得 (gain) は早期発見による救命効果である!一方, 失 (loss) は見逃しや偶発症などがある。これらの得失に関してきちんと評価しなければならない。<BR>評価の方法には事前評価, 平行評価および振り返り評価があるが, 別な視点から, 検診を受けたグループが当該がんの死亡数と率が確かに減少したのかを評価する疫学的評価がある。次に, スクリーニングの精度検討や安全性などの検討を行う技術的評価がある。それから経済的評価, システム評価などがある。国際的にはUICC (国際対癌連合) ががんのスクリーニングの評価に関する定期的な会議を行っている!第6回会議 (1990年) では, 世界各地で行われているがん検診を再評価して1冊の本にまとめている。
著者
山田 由佳子
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.73-84, 2014-12-31 (Released:2017-05-22)

Jean Fautrier a peint les Otages entre 1942 et 1945. Le mot <<otage>>, durant l'Occupation, renvoie a une personne executee par la Gestapo pour sanctionner son appartenance a la Resistance. Fautrier a presente 46 peintures et 3 sculptures d'otages a la galerie Rene Drouin en 1945. Nous examinons le sens donne par Fautrier a sa representation des tetes d'otages. Pour considerer cette question, nous nous appuyons sur les textes de Francis Ponge et Michel Ragon, pour qui les facies evoquent le Linge de Veronique. Deuxiemement nous voyons que la matiere et la forme abstraite des tetes ont deconcerte les critiques: Selon l'analyse de Karen K. Butler des textes d'Andre Malraux et de Ponge consacres aux otages, ces oeuvres pouvaient mieux transmettre la definition meme de l'otage que des representations d'otages moins abstraites. Nous montrons la particularite des Otages par rapport aux oeuvres de Fautrier de la premiere moitie des annees 1940, notamment les gravures. Nous voudrions relever une analogie entre le Linge de Veronique et tete d'otage: il s'agit du lien entre l'image et la production de l'image.
著者
山崎 元一
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho
巻号頁・発行日
vol.53, no.3・4, pp.267-311, 1971-03

The aim of the present essay is to clarify the exact position of the low-classed people, especially that of the untouchables, Caṇḍālas, in ancient Indian society. The writer seeked into this problem based on the Buddhist canons, as well as Arthaśāstra, Dharmasūtra and Dharmaśāstra.In the first section the writer assumed that the institution of untouchables had its origin in the pollution concept which is still prevalent among the primitive people. It seems that the institution was developed in its religious and ritualistic aspects by the Brahmans in the process of the establishment of the Aryan agricultural societies and the subsequent formation of the territorial states, and was finally established with the further support of the Kṣatriyas. This institution was also acceptable for the other two classes, Vaiśya and Śūdra, who were the chief producers of the relevant society.In the second section the writer discussed that this institution of the low-classed people developed into a complicated system itself, and there might have been a distinction of higher or lower ranks even among themselves. Among the low-classed people, so-called Caṇḍālas outnumbered the most, and was made the lowest untouchables of the society. In the next third section it was discussed that the Caṇḍālas were mostly forming kinship societies among themselves and settled in a circumference of a Varṇa Society, still keeping their traditional customs and manners and earning their livelihood by serving for the despised professions such as services concerning the death, which was regarded as the most filthy occupation.Finally, in the fourth section, problem of the contact between the members of Varṇa Society and the untouchables was discussed, based on the concrete evidences observed in the Buddhist canons, giving as well various theoretical regulations picked up from Arthaśāstra, Dharmasūtra and Dharmaśāstra. Among the above sources, the latter documents have been used chiefly to clarify the expiation ritual (prāyaścitta) which was developed by the Brahmans aiming at maintaining purity of the Varṇa Society. It was also pointed out that the members of the Varṇa Society could not generally avoid the contact with Caṇḍālas in their everyday life, despite of the strict taboo concerning the above.The institution of untouchables superficially seems to be based on extremely religious and ritualistic demands to maintain the purity of the Varṇa Society but there certainly existed behind it other social, economic and political demands. Namely, exclusion of the low-classed people was to frame the Varṇa Society from outside, and further to consolidate the inter-class relationships within the Varṇa Society making them the ritualistic status order (viz. four varṇas).
著者
松田 えりか 近藤 宏 木下 裕光 砂山 顕大 石崎 直人 鮎澤 聡
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.122-130, 2020-10-31 (Released:2021-02-10)
参考文献数
30

【目的】慢性腰痛患者に対する鍼治療の直後効果に影響する因子について,心理社会的要因を探索的に検討した.  【対象と方法】対象は2019年8月~12月までに本学東西医学統合医療センター鍼灸外来を訪れた初診慢性腰痛患者のうち,初診時にVisual Analogue Scale(以下VAS)にて評価した腰部疼痛強度が30mm以上の者56人とした.初診時に自記式質問票を使用し,心理尺度(Pain Catastrophizing Scale(以下,PCS),Hospital Anxiety and Depression Scale,Pain Self-Efficacy Questionnaire),社会的要因(同居家族状況,最終学歴,社会参加状況),腰部機能障害,鍼治療に対するイメージなどを調査した.初回治療直後のVAS値が30mm未満となり,かつ対象者自身が疼痛の改善を認めた者を「高反応群」,それ以外を「低反応群」とした.この2群間で対象者の属性と身体的および心理社会的調査項目を探索的に比較し,さらに2群の区分を二値の従属変数とするロジスティック回帰分析を行った.  【結果と考察】高反応群は22人,低反応群は34人であった.2群間の探索的な比較において統計学的な有意差が認められた項目は,鍼治療に対するプラスイメージ(P=0.001)とマイナスイメージ(P=0.004)のみであった.ロジスティック回帰分析では,PCS(OR:0.886(95%CI:0.808~0.971);P=0.010),鍼治療に対するプラスイメージ(OR:5.085(95%CI:1.724~15.002);P=0.003),同居人数(OR:0.355(95%CI:0.149~0.844);P=0.019)が直後効果に影響を与える因子として抽出された.この結果,慢性腰痛患者の鍼治療効果に心理社会的要因が影響を及ぼすことが示唆された.