著者
湯浅 俊彦
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.119, pp.2129, 2021-11-30 (Released:2021-12-09)

大学図書館における電子資料の契約と提供は,業務処理のテクニックの問題ではなく,現在の大学図書館の喫緊の課題である大学DX(デジタルトランスフォーメーション)と関連づけて考える必要がある。本稿では,日本語タイトルの電子学術書を授業で活用するための歴史的経緯を振り返り,学生が1人1台のデバイスをもつことなどの情報環境整備,電子図書館サービスなどの図書館情報資源整備の必要性を検討する。また,学生の授業成果物などを電子書籍化し,電子図書館に登録・公開する「知の循環構造」の構築を実践的に行う,図書館のプロデュース機能から見た電子資料の契約と提供について考察する。
著者
榊原 章一 中野 崇 加藤 一夫 中垣 晴男 福田 理
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.459-464, 2011-12-25 (Released:2015-03-14)
参考文献数
27
被引用文献数
1

齲蝕は歯垢中の細菌が産生する酸が歯質を脱灰することによって起こる。一方フッ化物は齲蝕予防効果があり,歯垢中に低濃度で常時存在することでそれを発揮する。フッ化物による齲蝕予防効果の1 つに歯垢細菌の糖代謝に対する抗酵素作用があり,菌体外への乳酸などの有機酸の生成を抑制する。本論文ではフッ化物の具体的な効果を解明するため,250 ppmF NaF 溶液を用いた際の,歯垢細菌へのフッ化物の影響を調査した。NaF 溶液で洗口した群を実験群,蒸留水で洗口した群を対照群とし,各群の洗口後,10 分後に10%グルコース溶液にて洗口を行い,更にその後5 分後に歯垢採取を行い,採取した歯垢のフッ化物,乳酸及びグルコースの濃度を測定した。本実験より以下の結果を得た。・実験群では,フッ化物濃度は有意に上昇した・実験群ではグルコース洗口後の乳酸の産生濃度が有意に減少した・実験群ではグルコースの残留量が多い傾向にあった本実験の結果より,フッ化物洗口によってフッ化物イオンが歯垢中に取り込まれ,歯垢細菌の乳酸産生を抑制したことが明らかとなった。しかしながら,NaF 溶液による歯垢中フッ化物濃度の上昇は一時的であるため,今後は歯垢中フッ化物濃度を長時間高濃度に維持する方法について検討が必要である。
出版者
日経BP社 ; 1985-
雑誌
日経マネー (ISSN:09119361)
巻号頁・発行日
no.369, pp.32-35, 2013-07

昨年11月から始まったアベノミクス相場。最近も株高が一段と勢いづいた。節目となる参院選後も買いチャンスは続くのか。2014年前半までの日経平均予想を見ていこう。 日経平均株価は5月の連休明けに1万4000円台を回復。
著者
松本 正生
出版者
埼玉大学社会調査研究センター
雑誌
政策と調査 = Policy & research (ISSN:2186411X)
巻号頁・発行日
no.12, pp.3-36, 2017-03

2016年7月の参院選後にさいたま市で実施した中学生・高校生・有権者の3調査の結果をもとに、高校生を中心とした若者の政治意識や情報環境を検討する。併せて、子どもから大人へと至る政治的社会化の過程も探索する。若者は、自分の一票にリアリティを持てず、政治への不満や政治家への不信も抱いている。にもかかわらず、高校3年生をはじめとする18、19歳の新有権者たちは、初めての選挙に予想以上の高い投票率で対応した。彼らを投票へと動機付けた要因は何か。In this paper, we examine the political consciousness and socialization environment of young people, especially high school students. At the same time, we also explore the process of political socialization from children to adults. This is based on the results of three surveys targeting junior high school students, high school students, and voters conducted in Saitama City following the elections of the Upper House of the Diet in July 2016. Young people do not believe in their vote, are dissatisfied with politics, and distrust politicians. Despite this, new voters between the ages of 18 and 19 years, including high school third graders, responded to their first election with a voting rate higher than expected.What were the factors that motivated them to vote?はじめにⅠ.政治意識1.「選挙権」と「被選挙権」2.「政治を動かしているのは…」3.「政治満足度」と「政治家信頼度」Ⅱ.社会化環境1.「ニュース・ソースへの接触度」2.「友人」と「家族」3.「コミュニケーション・ツールは…」Ⅲ.投票への動機付けと投票志向性1.「(投票)した」か「しなかった」か2.「(投票に)行く」か「行かない」かまとめにかえて
著者
戸塚 隆子
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.105-122, 2001-03

石川啄木の第一歌集『あこがれ』の序詩「沈める鐘」には<永遠の生命>との一体感と神の加護を得て詩人の王座を築こうとする想いが描かれている。この<永遠の生命>都は主に明治・大正期の総合雑誌「太陽」を舞台に繰り広げられた高山樗牛と姉崎嘲風のドイツ思想・文化受容と日本文明批評の論説から影響を受けた詩語と考えられる。先行研究では、啄木の評論がいかに高山・姉崎の影響を受けているか、または、『あこがれ』は高山と姉崎の論説を機に啄木が執筆・中断した評論「ワグネルの思想」の詩作品かという指摘があるが、それだけにとどまらないのではないか。詩表現に即して読んでいくと、『あこがれ』の世界と高山・姉崎の主張は想像以上に深く共鳴しあっていると考えられるのである。例えば、「われなりき」などに顕著な「今」=「瞬間」に「永遠」を感受する時間認識がある。これは姉崎嘲風の「清見潟の除夜」の時間認識と重なる。また、詩「閑古鳥」に表されたこの世の汚濁と戦う勇士の姿がある。この戦闘意識も姉崎の「戦へ、大に戦へ」に触発されたと考えられる。ここで注意しておきたいのは詩の優位性と詩人の使命の自覚が詩中に認められることであるが、芸術至上主義的な発想もすでに高山樗牛の「美的生活を論ず」や姉崎嘲風の「久遠の女性」に著されている。姉崎の「民族の運命と詩人の夢と」は国民の精神に関与しその運命を導くものとして「詩人」を捉えているが、啄木は予言者としての詩人の存在をここから学んだのではないだろうか。以上を踏まえ、再び「永遠の生命」に戻りたい。高山樗牛・姉崎嘲風の論説全体から考えると、この言葉は先行研究で理解されているように宇宙の大生命との一体化を示すスピリチュアリズムだけを意味しない。高山・姉崎は真の永世は<精神と精神の交通>であることを説いているのだ。つまり、現世と理想界、天井と地上という構図的な様相のみを指しているのではなく、精神の継承を説いている点に注意すべきである。そして、この主張は啄木詩においては「閑古鳥」「マカロフ提督追悼の詩」に顕著に体現されている。しかし、堀合節子との恋愛の成就、上京の挫折を機に啄木の「永遠の生命」との一体感は薄れていく。「二つの影」には永遠と切り離された「今」だけが描写されている。また、「白鵠」ではかつての自分を幼い夢物語と自虐的に振り返る啄木が居る。では、「永遠の生命」は完全に消失したのか。いや、そうではない。後の短歌評論「歌のいろいろ」には確かに「永遠」を拒絶する啄木が居る。だが、『一握の砂』の砂山の歌十首には「有限」を選んだ者が有限を認識するが故に「短歌」という形を選び、それは<精神の交通>を果たしつつ有限の生を永遠化すると考える啄木が読み取れる。「永遠の生命」は意味を転化させながら啄木の生涯を地下水脈の様に流れていたのではなかったか。
著者
伊藤 大雄
出版者
日本農業気象学会
雑誌
生物と気象 (ISSN:13465368)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.76-83, 2020 (Released:2020-07-10)
参考文献数
77

Due to the enrichment of atmospheric CO2 concentration, the air temperature will rise by 3-6℃ and the amount of snowfall will change by the end of the 21st century in northern Tohoku district of Japan. The effect of these changes to the apple cultivation at present and in the future is reviewed. Due to the temperature increase, the date of flowering will advance at the rate 0.2 days year-1 until 2040, as is observed already at present. The advancement will continue until 2100 under RCP8.5 scenario, while it will slow down after 2040 and stop around 2080 under RCP4.5 scenario. Because the varietal difference in the flowering date will gradually increase, the insect pollination may become difficult at the end of this century. Harvesting date will advance and delay in early- and late-maturing varieties, respectively. Thus in late-maturing varieties, fruit weight may increase depending on the extension of fruit growth period. On the contrary, fruit storability will very likely reduce, and pigmentation will get worse especially in red-skin early-maturing varieties. Moreover, the risk of sunburn damage will increase, and the risk of late frost injury is also indicated to increase by several researchers. On the other hand, we can expect the reduction of snow damage because the amount of snowfall is generally predicted to decrease in the future, although such decreasing tendency is not detected in the past 50-100 years. Considering the conspicuous midday depression of photosynthesis observed in apple trees, they are now in serious sink-limited condition possibly due to the severe fruit thinning. Therefore, the fruit yield cultivated under high CO2 concentration will hardly increase, unless we alter the strength of thinning to improve the sink capacity of the tree.
著者
松本 正生
出版者
埼玉大学社会調査研究センター
雑誌
政策と調査 = Policy & research (ISSN:2186411X)
巻号頁・発行日
no.14, pp.3-18, 2018-03

2017年10月の衆院選直後に実施した,さいたま市の高校生に対する意識調査の結果をもとに,高校生有権者の投票行動,および,非有権者を含む高校生全体の政治意識と社会化環境を概観する.併せて,2016年7月参院選後に,同じさいたま市の高校生を対象に実施した意識調査結果との比較を行い,「18歳選挙権」導入から1年後の位相を確認し,今後を展望する.An amendment to the Public Offices Election Law in Japan has lowered the voting age to 18 years. High school students casted their ballots in the July 2016 (House of Councilors election) and the October 2017 (House of Representatives election). This essay discusses the political consciousness of high school students based on the results of a survey among students in the city of Saitama. The results showed that the students have a negative atttitude towards modern politics and politicians. The essay explores ways to eliminate their political distrust and motivate them to vote.はじめにⅠ.若者の投票行動1.高校生有権者の投票率2.誰と投票に行くのか3.選挙権と被選挙権Ⅱ.政治のリアリティ1.「政治を動かしているのは…」2.政治満足度と政治家信頼度3.「最も印象に残っている政治家は…」Ⅲ.マス・メディアからSNSへ1.テレビ・新聞・インターネット2.利用するSNSⅣ.「18歳選挙権」のインパクト1.「政治の話をするか」2.「投票した」と「投票しなかった」まとめにかえて : 継続は力なり
著者
大林 真也 瀧川 裕貴
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.99-108, 2016 (Released:2016-08-06)
参考文献数
2

今年で,数理社会学会は設立30周年を迎える.本稿では,これまで,数理社会学会機関誌『理論と方法』がどのような軌跡を辿ってきたのかを明らかにすることが目的である.そのために,『理論と方法』の1986年11月の通巻第1号から2015年11月の第58号までの記事を分析する.具体的には,この30年間で扱われてきたテーマ(内容)と方法についての特徴と変遷を明らかにする.分析にはトピックモデルを用いた.分析の結果,扱われているテーマも用いられている方法も大まかには2000年付近を境にトレンドが変化しているということが示唆された.また,テーマの変化と方法の変化は密接に関連していることも示唆された.