著者
栗田 啓子
出版者
公益財団法人 国際交通安全学会
雑誌
IATSS Review(国際交通安全学会誌) (ISSN:03861104)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.113-120, 2021

<p>本稿の目的は、フランスにおいて都市間鉄道の時間帯・曜日別運賃が広く支持されている要因を2種類の社会・文化的側面から解明することである。第一の側面として、フランスでは、通勤・通学客を主体とする都市内交通と観光客を主体とする都市間交通が明確に区別されていること、第二の側面として、フランスに固有の政府のエンジニアが公共交通の価格設定や差別料金の理論化に取り組み、差別料金が社会全体の利益に貢献することが納得的に示されたことを明らかにした。</p>

2 0 0 0 OA 柚珍秘密箱

著者
器土堂
出版者
西村市郎右衛門[ほか5名]
巻号頁・発行日
1785

1冊。器土堂(きとどう)著。刊記に従えば天明5年(1785)初秋の刊であるが、虚斎山人の序に「天明五年のとしの冬」とある。おそらく江戸での売出時期にあたる天明6年3月頃の刊行か。板元は西村市郎右衛門(京)、売出は西村源六(江戸)のほかに、大坂・京・伊州の4軒。内題「新著料理/柚珍秘密箱」。序文に「書肆亦秘密箱を携来りて」とあり、柱題に「料理秘密箱○柚」とあるように、西村市郎右衛門から刊行された『万宝料理秘密箱』など「秘密箱」シリーズの一種にあたる。本文に「今年柚はなはだ豊年なれば来年は猶以て豊年なるべしと此書をあらはす」とある。「柚一色にてさまざまめづらしき料理かたをしるす」と見返し広告にみるように、「柚飯之仕方」から「百柚くすり湯の方」までの全44項目からなる。柚煮湯、柚薬酒、柚あられ、柚豆腐、柚砂糖漬などの料理の製法を記すのみならず、柚保存方や薬用について記述する点に特色がある。(山本和明)(2019.11)
著者
馬場 志郎 大東 貴志 橘 政昭 出口 修宏 実川 正道 畠 亮 田崎 寛
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.82, no.12, pp.1916-1923, 1991-12-20
被引用文献数
10 2

経尿道式前立腺温熱治療器"ブロスタトロン"を用いて31例の前立腺肥大症症例に高温度治療法を試み,自覚的症状,他覚的所見の変化を検討しその効果を判定した。経尿道的に尿道前立腺部に挿入する22Fの治療用バルーンカテーテルはマイクロウエーブアンテナと冷却潅流回路を備えており,高出力で前立腺内部を安全に加熱できる。尿道内最高治療温度は43.3〜45.5℃(44.7±0.96℃:mean±S.D.)で平均出力は27.4Wattであった。治療時間は単回,1時 間ですべて外来通院で行った。1例には治療後尿閉が改善せずTURPを行い切除標本を組織学的に観察した。尿道粘膜はよく保存されているわりに前立腺組織内には,間質の壊死性変化のみならず腺管腔内に脱落した萎縮腺上皮細胞も観察され,プロスタトロンによる温熱効果が組織学的に証明された。のこりの30例の効果判定は自覚的症状,残尿量ならびに最大尿流量率を点数で表し治療後8週目で治療前の点数と比較した。自覚的症状,他覚的所見の両方とも点数の改善が認められたのは13例(43.3%),他覚的所見に改善がみられず自覚的症状のみが改善されたものが14例,自覚的症状scoreが不変で他覚的所見scoreが改善されたもの2例,これらの症例を合計すると29例(96.7%)になんらかの改善が認められた。総合scoreで,25%以上scoreが減少したものを『有効』,24%未満10%以上を『やや有効』とすると有効率は各々53.3%,37%であった。

2 0 0 0 Editorial

著者
竹島 靖浩 中瀬 裕之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1113, 2021-11-10

神経系は人体の機能に直結する領域であり,脳・脊髄・末梢神経を個別に扱うのではなく統合的に理解することが大切です.本邦の脳神経外科では,脳疾患に加えて脊髄脊椎疾患や末梢神経疾患の外科治療も担っていますが,各施設の事情もあり,脳疾患治療に偏る傾向が強いです.研修医時代に脊髄脊椎・末梢神経疾患にも多くかかわることがこの統合的理解に大切ですが,残念ながらすべての脳神経外科医が理想的な環境で研修できているわけではありません. しかし,日常の脳神経外科診療の現場には,脳疾患の患者に加えて脊髄脊椎・末梢神経疾患の患者が訪れます.苦手意識が大きいと「『頭』の中は問題ないですよ」と説明して,本疾患群を見落としてしまうことになりかねません.この「苦手意識」の原因について自身の研修医時代に思いを巡らせると,日常的に慣れ親しんだ脳疾患とは異なる独特の診断アプローチが必要なこと,同一疾患でさえもバリエーションが多いこと,個々の患者においても治療選択肢が複数存在することなどが挙げられました.他方,本疾患群の診断・治療に慣れ親しむようになると,これらの苦手意識の原因こそが醍醐味であり,面白さなのだと気づきました.自身のスキルで適切に診断・治療することで,目にみえて神経機能の改善が得られるため,とても大きなやりがいを感じている専門医も多いと思います.
著者
明庭 和行 大場 公孝 寺尾 孝士
出版者
北海道教育大学教育学部旭川校特殊教育特別専攻科障害児教育研究室
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
no.20, pp.139-144, 2001

星が丘寮において,障害の重い自閉症者であっても,我々の実践からTEACCHプログラムやジョブコーチモデルのアイデアを応用すれば,地域の一般事業所等においても働いていけるのではないかと考えた。そこで,平成7年度からジョブコーチ(専任の実習担当職員)を配置して,地域の職場等での実習を開始し,平成11年度までの5年間の取り組みから,自閉症者に対する実習支援プログラムについて考察する。

2 0 0 0 OA 諸系譜

巻号頁・発行日
vol.第33冊, 1800
著者
崔 廷敏 浅見 泰司
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.69, no.576, pp.133-139, 2004-02-28 (Released:2017-02-09)
参考文献数
23
被引用文献数
4 6

This paper focuses on relationship between sense of values on housing and evaluation of RS (Residential Satisfaction) based on the dataset obtained from the recent UDC (Urban Development Corporation) survey in Japan. In particular, ordered probit model, which introducing a hidden utility concept in evaluation of RS is utilized to investigate this purpose. The result demonstrates that residents' sense of values on housing deeply links to the evaluation of RS, and the attributes related to housing characteristics affect more sensitively on RS than that of residential environment. Two statistical significance tests to sense of values on housing clearly show that these psychological factors also should be included in the regression model for the evaluation of RS.
著者
吉田 友太 池田 心
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. GI, ゲーム情報学 (ISSN:21888736)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.23, pp.1-8, 2020-03-06

グラディウスなどに代表される 2Dシューティングゲーム(STG)は,プレイヤが自機を操作して敵や弾を回避しながら進めるゲームであり,その面白さや難易度は,敵の配置や攻撃パターンから構成されたステージに大きく依存する.それらは通常,"初見で攻略することは困難だが,繰り返し同じステージをプレイすることで攻略法が見つけることができる"ように,人手でデザインされる.一方で,毎回見たことのない新しいステージをプレイしたいと考えるプレイヤ層も存在し,ランダムなステージ生成にも需要がある.しかし,完全にランダムに生成してしまうと,難易度や面白さの観点から,人間がプレイするには不適当なステージばかりが生成されてしまう.そこで本研究では,それらに配慮したステージの自動生成システムの構築を目指した.生成手法は様々存在するが,我々は,遺伝的アルゴリズムによる最適化に,AI プレイヤによる評価を組み合わせた生成検査法を採用した.評価関数としては,AI プレイヤのクリア状況や,緊迫度を図るために無行動率などが一定範囲に入っているかのペナルティなども加えた.また,多様性の抑制のため,敵の群れをステージの最小要素とした.さらに,人間らしい挙動を行う AI プレイヤを用いることで,「AI プレイヤには簡単だが,人間には難しい」といった難易度の誤推定の防止を図った.得られたステージは,被験者実験によって,工夫を行わないものよりも難易度・面白さともに良い評価を得た.
著者
三輪 美樹 中村 克樹
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.33, pp.65, 2017

<p>南米原産のコモンマーモセット<i>Callithrix jacchus</i>は小型の新世界サルで,白い耳毛や長い尾を特徴とする。その尾の長さは体長と同等かあるいはそれより長いのが本来の姿であるが,飼育下においては部分的ないし全体的に欠損している個体が散見される。新生仔期に同居家族によって捕食されることが原因で,「尾食い」として知られている。我々はこれまでの研究で異味異臭の創傷治療薬ブルンス液塗布によって尾食い行為の継続を防止出来る可能性を見いだし,前々回の本大会で発表した。今回我々は,尾食い発現の発端は新生児の尾の形状にあり,その行為継続には味覚・嗅覚的嗜好が関与しているとの仮定のもと,Tail model testによる新生仔尾に類似した形状物に対する嗜好性検討および尾ぐい発現後のブルンス液塗布効果についての更なる検討を実施した。Tail model testで綿紐を用いて呈示形状の違いよる嗜好性の差を調べたところ,新生仔尾に類似した切り離し形状に対する嗜好性が最も高かった。新生仔の尾の形状がコモンマーモセットにとって齧り易いものである可能性が示唆された。また,ブルンス液塗布の効果を4家族の新生仔で確認したところ,尾食い発現当日から1日1回少量を尾先の患部に塗布することによっていずれの家族においても生後数日までには尾食い行為が終息し,新生仔の尾の欠損を軽微な状態で食い止めることが出来た。行為終息の要因には,味覚・嗅覚的嫌悪条件付けが功を奏した可能性に加えて,創傷治癒が促進されたことも関与するものと推察される。</p>