著者
河野 俊寛
出版者
一般社団法人 日本児童青年精神医学会
雑誌
児童青年精神医学とその近接領域 (ISSN:02890968)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.370-378, 2017-06-01 (Released:2019-08-21)
参考文献数
24

「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」結果(文部科学省,2012)には,学習障害が疑われる子ども達は小学校に約4%から約7%存在しているが,支援を受けている割合は約半数でしかないことが示されている。学習障害の評価は,標準化された学習障害検査を実施し支援を行うプロセスが一般的である。しかし,現在の日本には標準化された検査は少なく,支援から始めるRTIモデルが学校現場で使えるが,子どもの行動を観察し,的確な支援を始める教員の力量を育てる研修が必要であろう。現在の特別支援教育制度においては,学習障害のある子どもは通常学級で学習することになっている。通常学級以外では,通級による指導と特別支援教育支援員を使うことができる。通級による指導を受けている子どもの数も,特別支援教育支援員の配置数も増加傾向にある。支援の方針としては,読み書き算数の困難を改善するアプローチと,読み書き算数の困難に対して補助代替ツールを合理的配慮として提供するアプローチがある。それぞれのアプローチの具体的な方法を紹介した。また,読み書き障害の架空事例によって,小学生から高校生にかけて可能な合理的配慮の具体例を示した。最後に,学習障害のある子ども達が通常学級で適切な支援を受けるためには,多様性が認められた教室である必要性を強調した。
著者
遠藤 利彦
巻号頁・発行日
2017-03

第1部 非認知能力についての研究動向・・・・・・・・・・5 第1章 非認知能力をめぐって:本プロジェクト研究の目的と視点・・・・・7 第1節 非認知能力に関する研究動向・・・・・7 第2節 本プロジェクトの研究課題・・・・・9 第3節 本研究の焦点・・・・・10 第4節 本研究の目的1:社会情緒的コンピテンスについての文献調査による知見の整理・・・・・11 第5節 本研究の目的2:社会情緒的コンピテンスについての実証的研究・・・・・13 第6節 本報告書の構成・・・・・13 第2章 「非認知」なるものの発達と教育:その可能性と陥穽を探る・・・・・15 第1節 「非認知」なるものへの刮目の興りと展開・・・・・15 第2節 「IQ神話」への疑い・・・・・16 第3節 「非認知」なるものの教育の可能性を示す論拠の希薄さと新たなエビデンスの必要性・・・・・18 第4節 「非認知」なるものとは何か?・・・・・20 第5節 「非認知」の何をいかに教育のターゲットとするか?・・・・・22 第6節 結びに代えて:「非認知」の絶対的基盤としての基本的信頼感とアタッチメント・・・・・24第2部 社会情緒的コンピテンスの内容と発達に関する文献調査・・・・・29 第1章 乳児期・・・・・31 第1節 標準的な社会情緒的コンピテンスの発達・・・・・32 第2節 社会情緒的発達における個人差とその要因・・・・・45 第3節 アタッチメント・・・・・59 第2章 幼児期・・・・・69 第1節 自己とその制御の発達・・・・・70 第2節 他者と心の理解・・・・・80 第3節 他者との関わり・・・・・89 第3章 児童期・青年期(1)子供の心理特性・・・・・103 第1節 子供の人となりとその規定要因・・・・・104 第2節 子供の自己の発達・・・・・118 第3節 社会的・道徳的感情とその感情特性・・・・・130 第4節 アタッチメント・・・・・150 第5節 ストレスに対処する個人特性・・・・・158 第4章 児童期・青年期(2)教育場面と発達・・・・・167 第1節 教育文脈で育まれるコンピテンス:学習意欲議論と測定・・・・・168 第2節 感情を学ぶ:Emotional Intelligence(EI;感情知性)をめぐって・・・・・177 第3節 コンピテンスを育む教育環境:学級における営み・・・・・196 第4節 コンピテンスを育む教育環境:教科指導以外の教育の営み・・・・・196 第5章 社会情緒的コンピテンスに関する長期縦断研究・・・・・203第3部 日本の子供の社会情緒的コンピテンスについての実証研究・・・・・237 第1章 乳児期・・・・・239 乳児期の社会的コミュニケーション行動の発達 第2章 幼児期・・・・・247 第1節 研究A セルフコントロールの発達・・・・・247 第2節 研究B 幼児期の社会情緒的能力と社会的行動の発達・・・・・251 第3章 児童期・青年期・・・・・257 児童期・青年期における社会情緒的コンピテンスの様相巻末資料・・・・・277 表1 社会情緒的発達の概要・・・・・279 表2 社会情緒的コンピテンスの一覧・・・・・280

16 0 0 0 OA 結社と民主政治

著者
早川 誠
出版者
JAPANESE POLITICAL SCIENCE ASSOCIATION
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.1_61-1_81, 2008 (Released:2012-12-28)

The role of voluntary associations is a focus of current democratic theories including civil society argument, radical democracy, and deliberative democracy. Though it is certain that associations often perform democratic functions, they also disturb democracy by demanding narrow group interests, suppressing the opinions of group members, and lacking the interest in coordination and compromise. Whereas the associationalism developed in the United States depends on voluntary associations excessively; the one in the United Kingdom has been paying a close attention to the inadequacy of associational effects. The legacy of the pluralist theory of the state is especially important in this regard. Comparing two strands of associationalism, it is clear that something is necessary to strike an appropriate balance between the democratic and undemocratic functions of associations. The key to the problem is the new understanding of representative democracy. Contrary to the idea that associatiomalism will eventually replace the state-centered politics, a strong but flexible state which can accommodate and coordinate a variety of associations is required. Without taking such a state into consideration, associationalism would not be able to realize stabilized and impartial democratic politics.
著者
深川 敦子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.570-571, 1994-10-05 (Released:2009-12-11)
被引用文献数
2 2
著者
園田 俊郎
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.507-508, 1983-10-05 (Released:2009-12-11)
被引用文献数
2 3
著者
坂本 昭夫
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
2007-03

制度:新 ; 文部省報告番号:乙2078号 ; 学位の種類:博士(工学) ; 授与年月日:2007/3/1 ; 早大学位記番号:新4444
著者
上平 崇仁 鈴木 望果 星野 好晃
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第66回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.372, 2019 (Released:2019-06-27)

デザインにおいて、問題解決の前に、問題自体を問うことは、既にある価値観や信念に対して疑いの目を向け、思考の枠組みを切り替えるための重要であるが、あまり学習の中では重視されていない。本稿では、学校や企業などのデザイン学習者を主対象とした、多角的な視点から「問い」を生成するための発想ツールについて報告する。研究の目的は、前提を乗り越えるための問い方の技法に関しての検討を行い、誰でも使えるようなツールのデザインを行うこと、及び、そのツールの評価を行い、有用な知見を見出すことである。先行事例としてのHow might we Question、弁証法、ロールプレイイング法を組み合わせて、問いの発想ツール「委員長とギャル」の開発を行った。当該ツールの試験運用を行った結果、ロールプレイを行ったことで通常の発想法では生まれない突飛な発言が自然に生まれていたこと、一旦否定をはさむことで暗黙の前提を破壊することができたこと、この2点から参加者が楽しみながら発想に利用することができることを確認した。

16 0 0 0 OA 国史大系

著者
経済雑誌社 編
出版者
経済雑誌社
巻号頁・発行日
vol.第10巻 公卿補任中編, 1901
著者
中村 潤二 久我 宜正 後藤 悠太 生野 公貴 武田 和也 庄本 康治
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.63-71, 2018 (Released:2022-09-03)
参考文献数
34

本研究の目的は,大腿骨頸部骨折患者の股関節外転筋への電気刺激療法と課題志向型練習を併用した際の効果を予備的に検討することとした.対象は,大腿骨頸部骨折術後患者とし,準無作為に電気刺激群(ES群)6名,コントロール群6名に割り付けた.両群ともに,歩行能力向上を目的とした課題志向型練習を実施し,ES群は,術側中殿筋への電気刺激を併用して実施した.介入は10セッション行った.評価は介入前後に股関節外転筋力,膝関節伸展筋力,疼痛,Timed up & go test,6分間歩行テスト(6MWT),圧力計式歩行解析装置を用いて歩行パラメータを計測した.介入後にES群は,コントロール群と比較して,術側股関節外転筋力の有意な改善がみられ,6MWTの改善傾向がみられた.ES群における術側股関節外転筋力の変化量は,歩行速度,術側と非術側の歩幅,ストライド長,6MWTの変化量との間に強い有意な相関がみられた.大腿骨頸部骨折患者の股関節外転筋への電気刺激と課題志向型練習の併用は,股関節外転筋力や歩行能力を向上させる可能性がある.
著者
林 岳彦
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.289-299, 2009 (Released:2017-04-20)
参考文献数
59
被引用文献数
4

性的対立とは、繁殖にかかわる事象を巡るオスメス間での利害の対立を指す。性的対立は繁殖形質における軍拡競争の原因となり、その結果として集団間の急激な繁殖隔離(種分化)を引き起こす可能性が示唆されている。本総説では、まず性的対立説についての概説を行い、次いで性選択理論としての性的対立説の特徴について古典的性選択理論(ランナウェイ説、優良遺伝子説)との比較をしながら整理を行う。さらに、性的対立説が引き起こす進化的帰結について理論的な観点から整理し、性的対立説と種分化の関係について議論する。
著者
山中 伸弥 青井 貴之 中川 誠人 高橋 和利 沖田 圭介 吉田 善紀 渡辺 亮 山本 拓也 KNUT Woltjen 小柳 三千代
出版者
京都大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2007

4つの転写因子を体細胞に導入することで多分化能を持ったiPS細胞が樹立できる。c-Mycを含めた4因子を用いた場合にキメラマウスで腫瘍化が高頻度で認められ、レトロウイルス由来のc-Mycが原因の一つであることが分かった。樹立条件などを検討しMycを用いずにiPS細胞を作ることに成功したが、性質の点で不十分であった。c-Mycの代替因子の探索を行いL-Mycを同定した。L-Myc iPS細胞は腫瘍化リスクもほとんど認められず、性質の点でも十分であった。レトロウイルスを用いずにプラスミドを用いることでもiPS細胞の樹立に成功した。このことにより体細胞への初期化因子の挿入が起こらずより安全な作製方法の確立に成功した。神経細胞への分化誘導とそれらの移植実験により安全性を検討する方法の確立も行った。また、肝細胞、血液細胞、心筋細胞への分化誘導系も確立した。iPS細胞の性状解析をディープシークエンサーなどを用いて詳細に解析する技術の導入も完了し、網羅的な遺伝子発現、メチル化解析、スプライシング解析なども行った。
著者
藤原 辰史
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.26, no.12, pp.12_28-12_31, 2021-12-01 (Released:2022-04-22)

コロナ禍の中で人文社会科学の担い手たちの発言が目立った。歴史学も例外ではない。たしかに、歴史学研究者が他の時代の感染症を紹介したり、現在と比較することも有意義である。だが、本来、このような全般的危機の状況においては、何が起こったかよりも、何が隠蔽されたのか、何が強調されなかったのか、という方が重要だと思う。新型コロナウイルスによる感染爆発以降、新聞では感染者と死者が毎日記されるようになったが、では、それ以前から、コロナよりも多い自殺者や孤立死の人数はどれほど意識されてきただろうか。以前からあった構造的暴力との関連を無視しては、今回のパンデミックの位置づけを掴み損なってしまうと考える。