著者
原田 信之 Nobuyuki HARADA
雑誌
新見公立短期大学紀要 = The bulletin of Niimi College (ISSN:13453599)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.209-220, 2002-12-25

琉球の歴代王統は,神話時代にあたる天孫氏時代を除外すると,舜天王統以降,英祖王統,察度王統,第一尚氏王統,第ニ尚氏王統と統いた。これらの王統のうち,本橋では察度王統の始祖である察度とその子孫をめぐる伝説を中心として扱った。在位時に多くの業績を残した察度も晩年には権勢におごる心が生じたというが,察度の世子武寧は父の死後即位してから日夜気ままに遊び暮らし,尚思紹・尚巴志父子に滅ぼされたという。琉球の正史には,武寧に関して,隠遁後の足跡も没年も伝わっていないと記してあるが,興味深いことに,宜野湾市我如古地区には,武寧の子をめぐる伝説が伝えられている。土地の伝承では,「武寧王の三男」とされる「我如古大主」が我如古地区にやってきて我如古グスクを築城し,その築城の際のお祝いの踊りが「我如古スンサーミー」であったという。本稿は,新たに採集した□承資料などの検討を通して,察度王統の始祖察度の子孫をめぐる伝説の全体像をまとめ,残存資料の少ない琉球王朝始祖伝説の一側面を考察した。
著者
橘 啓盛 池谷 朋彦 高橋 伸政 村井 克己 青山 克彦 星 永進
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.790-794, 2006-07-15 (Released:2008-03-11)
参考文献数
17
被引用文献数
1

症例は38歳女性.月経に一致した左気胸を発症し当センターを紹介された.月経22日後に行った胸腔鏡下手術にて,肺瘻の部位や気腫性嚢胞は確認できなかったが,左胸腔内の臓側,壁側胸膜にびまん性に多発する褐色の結節を認めた.病理学的に臓側,壁側胸膜ともに子宮内膜組織を認め,月経随伴性気胸と診断した.術後第3病日に月経が開始し右気胸を併発したが胸腔ドレナージにより改善した.後にホルモン療法を施行し,術後1年の経過では気胸の再発を認めていない.本症例は月経直前に手術を施行したため脱落する前の病変が観察されたと考えられた.発症機序は腹腔からの子宮内膜組織の侵入と臓側胸膜病変の脱落による気胸発症と推測された.壁側胸膜に子宮内膜組織を認めることはまれであり,月経随伴性気胸の発症機序を考えるうえで,本症例は興味深く貴重な症例と思われた.
出版者
国民文庫刊行会
巻号頁・発行日
vol.経子史部 第12巻, 1932
著者
武中 桂
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究 (ISSN:24340618)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.104-119, 2006-10-31 (Released:2018-12-25)
被引用文献数
1

本稿は,札幌市近郊の大規模森林を事例に,行政の管理下にある自然環境に対して,かねてからその周辺に暮らす人びとが今日に至るまでどのようにかかわってきたを考察したものである。野幌国有林は,昭和43年(1968年)に「北海道開基百年」を記念して道立自然公園に指定されて以来,「野幌森林公園」として知られている。ライフスタイルの変化や都市化などにより自然環境に触れる機会が減少傾向にある現代,そこは近隣住民にとっての「身近な自然」であり,多くの人びとに幅広く利用されている。一方で,指定直前まで,そこは周辺部落に暮らす人びとの生活の糧「ヤマ」であった。ただし,次第に生活の糧としての国有林の役割は薄れ,自然と「ヤマ」との関係は希薄になる。野幌部落の人びとは物理的な要因を認めつつも,その決定的な理由を「公園化」に求める。そしてそこが公園であるという現実を理解しながらも,彼らは今なお野幌国有林を「ヤマ」と呼び,「ヤマ」を守る活動を続け,そこを「ヤマ」として生活意識につなぎとめている。よって,現在の野幌国有林を,「重層的な環境意識を備えた空間」として提示することができる。さらに,野幌部落の人びとは今日に至っても国有林を「自分たちのヤマ」とし,「かかわることの正当性」を主張する。その根拠は,生活設計の結果として大地を切り開く行為としての「開拓」にある。つまり,具体的な働きかけの場面を喪失しても,入植当初からの土地に関する区分と領有意識を受け継いでいる意味において,ある種の「所有」を正当化しているのである。
著者
小川 泰弘
出版者
Osaka Prefecture University (大阪府立大学)
巻号頁・発行日
2020-03-31

学位記番号:論保第42号, 指導教員:高畑 進一
著者
大串 健吾
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:21888752)
巻号頁・発行日
vol.2015-MUS-107, no.2, pp.1-4, 2015-05-16

音のピッチ知覚については長い間実験と議論が行われてきた.時代の変遷と共に,聴覚理論は変化してきた.この報告では,聴覚理論の変遷を簡単に紹介する.また複合音のピッチがその基本周波数に対応する純音のピッチとはわずかに異なることを示す実験データを取り上げ,この現象をどのように説明すべきかについて新しい観点から述べる.
著者
藤原 知子
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成26年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.5, 2014 (Released:2014-10-01)

長い間,スピネルは処理されていない宝石と信じられてきた.しかし2005年のGIAラボによる加熱処理実験を皮切りに,ミャンマー産•タンザニア産のレッド∼ピンク石について同様の実験報告がなされ,熱処理されたスピネルが市場に流通している可能性が指摘されている. 今回は,入手できた非加熱のスリランカRatnapura産ピンクスピネルの原石を1000°Cで5時間,酸化雰囲気の下で加熱処理した実験結果を報告する.処理前と処理後の変化をEDXRF,紫外可視分光スペクトル測定,フォト•ルミネッセンス分光,および蛍光分光光度計を用いて比較•グラフ化した.処理後の測定グラフと,フラックス合成スピネルについての測定グラフとの比較は,興味深い結果となった. スピネルとルビーは見た目や成因がよく似ていて産地も重なり,クロム含有レッド∼ピンクスピネルは,ルビーと同じく,微量元素のCr(クロム)が色因である.片や,光分析における天然レッドスピネル特有のクロム•ライン「オルガンパイプ」は.ルビーでは見られない.そこで,非加熱のミャンマーMong Hsu産ルビー原石を上記ピンクスピネルと同じ条件で加熱処理し,処理前後の変化をスピネルのそれと比較した.この比較に基づき,加熱処理によってスピネルに生じたクロム•ラインの変化の要因を考察してみたい.
著者
三井 一希 佐藤 和紀 堀田 龍也
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.Suppl., pp.9-12, 2021-02-20 (Released:2021-03-08)
参考文献数
4

本研究は,教職員用情報共有システムを導入した学校の1年間の書き込みの実態を把握し,今後導入を予定している学校の参考となる知見を提供することを目指している.ある学校で活用されている教職員用情報共有システムへの1年間の書き込み内容について調査したところ,1回の書き込みの平均文字数は200字程度であること,学校行事やイベントが多い月は情報量が多くなること,校内で指導的な立場にある者は投稿数が多くなること,「予定の確認・変更」,「施設・設備・備品」等が書き込みの内容として多いことなどが明らかとなった.
著者
福岡 賢二 孫 一 大月 一弘
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.Suppl., pp.1-4, 2021-02-20 (Released:2021-03-08)
参考文献数
7

本研究は,日本での就職を希望する日本語を話せない留学生を対象に,企業で働くために必要な「社会人観」についての理解状況を調べ,日本語を話せる留学生や日本人学生の理解状況と比較する.本学に在学している大学院生らを対象に,アンケート調査を行い,その結果について分析を行った.アンケート調査の内容には,企業で求められていると留学生が考える能力要素や「社会人基礎力」の概念についての理解状況,重要と思われている社会人基礎力の項目などが含まれる.調査結果の分析により,留学生にとって,日本語を理解するニーズが高く,日本のビジネスマナーについて知りたい要望があると確認できた.このようなニーズは,留学生の就職を支援する際の参考となると考える.
出版者
兵庫県立人と自然の博物館
雑誌
人と自然 (ISSN:09181725)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.117-135, 2007 (Released:2019-03-29)

兵庫県の主要14水系における外来植物の分布と優占群落の形成状況を既存文献を元に解析した.外来植物の分布については,14水系に出現した外来植物の合計種数は309種,帰化率は22.1%で,水系別では加古川(186種,31.6%),揖保川(183種,32.6%),猪名川(177種,27.1%)の3水系で外来植物種数,帰化率が高かった.外来植物優占群落については,14水系で209地点31群落が確認され,加古川(14群落),武庫川 (12群落),明石川(12群落)で多く確認された.環境省の指定する特定外来生物指定対象種については,アレチウリ,オオカワジシャ,オオキンケイギク,オオフサモ,ナガエツルノゲイトウ,ボタンウキクサの6種が,要注意外来生物種については43種が確認された.