著者
新川 達郎
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.64-77, 2015-12-25 (Released:2019-06-08)
参考文献数
25

日本公共政策学会(以下,本学会という)では,公共政策学教育の在り方について,その基準あるいは標準の検討を重ねてきた。公共政策学やその教育の定義については多様な見解があるとしても,共通して参照可能な基準は探索できるのではないかという見通しのもとに作業を進めることとした。そのために本学会として「公共政策教育の基準に関する研究会」(以下,研究会という)を設置し,2013年度と2014年度の2年間にわたって検討を行ってきた。その検討の経過においては,研究会メンバーの議論のみならず本学会の年次研究会における報告を行うことも含めて,本学会会員諸氏の積極的な参加と助言を頂戴した。その最終報告書は,2015年秋季の本学会理事会に提出された。そこでは公共政策学の学問体系を踏まえながら,日本の学士教育の実情に沿った公共政策学教育の基準を発見するべく努めた。本論文においては,「公共政策教育の基準」に関する検討の経緯を振り返りながら,その中で研究会に加わった一人である筆者として改めて「公共政策学」の「教育」の標準をどのように考えればよいのか,その「参照基準」について,その背景,意義,課題について,検討することとしたい(1)。
著者
藤澤 大介
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.370-377, 2011-10-15 (Released:2015-06-24)
参考文献数
23
被引用文献数
1

がん患者に対する認知行動療法は,身体症状に対する介入と,精神症状に対する介入とに大別される。後者はさらに,狭義の認知行動療法(ベックの古典的認知行動理論に基づくより厳密な意味での認知行動療法)と,広義の認知行動療法(ストレス訓練,リラクセーション法などといったさまざまな認知・行動的技法を含む認知行動療法的アプローチ)に分けられる。本稿では,身体症状・精神症状のそれぞれに対する認知行動療法の効果についてレビューし,さらに狭義の認知行動療法の具体的なアプローチについて解説した。
著者
小島 德子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.4_775-4_786, 2019-09-20 (Released:2019-09-20)
参考文献数
30

目的:産褥早期に直接授乳をしている褥婦への足湯を継続して行い,乳汁分泌に及ぼす足湯の介入効果を検討することである。方法:母乳育児を希望する経腟分娩後の褥婦を対象に,血圧,脈拍数,乳房皮膚温,直接授乳量,搾母乳量,乳汁分泌量,硬結の有無,乳房の熱感・乳房緊満感の有無について,ランダム化比較試験を行った。結果:乳房皮膚温は足湯群が産褥2日目から,コントロール群が産褥4日目から経日的に上昇した。搾母乳量(補正値)は,産褥2日目・5日目において足湯群に有意差が認められ,乳汁分泌量は産褥5日間すべて足湯群が多かった。硬結の消失時期および乳房の熱感や乳房緊満感の出現時期は,足湯群がコントロール群よりも早かった。結論:足湯は血流を促進させて皮膚温を上昇させ,かつ代謝の亢進を促し,乳房皮膚温の上昇,乳汁産生量の増加,乳汁貯留の軽減,乳汁の分泌開始時期を早める効果をもつことが明らかになった。
著者
大日方 薫
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

二酸化塩素によるエアロゾル感染および接触感染の抑制効果、安全性について小児病棟に入院した下気道感染症患児を対象に検討した。重症度が中等度以上の小児市中肺炎の患児に対して、細菌培養、イムノクロマト法による抗原迅速検査およびFilm Arrayシステムを用いたマルチプレックスPCRにより原因微生物の検出を行った。その結果、細菌ではマイコプラズマが最も多く検出され、ウイルスではRSウイルス、ライノウイルス、エンテロウイルスが多く、次いでパラインフルエンザ、ヒトメタニューモウイルスであった。インフルエンザ、アデノウイルス、コロナウイルスの検出は少数例であった。また小児病棟の各病室に低濃度二酸化塩素ガス放出ゲル剤を設置し、同時に二酸化塩素水溶液による清拭を行う接触感染予防策を実施した。病室内の二酸化塩素濃度を二酸化塩素センサーで経時的に測定し、安全性を確認した上で製品の使用を管理するとともに、入院患者や医療従事者の有害事象について検討した。二酸化塩素ガス濃度は月1回交換では10ppb以下、2週毎交換でも10ppb以下だった。病棟内入院患者および付き添い家族、医療従事者の二次感染発症はなく、院内肺炎も認めなかった。さらに病室内に設置した二酸化塩素放出ゲル剤による有害事象も認めなかった。
著者
太田 能之
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.88-102, 2020-10-10 (Released:2020-10-31)
参考文献数
28
著者
熊見良 著
出版者
岡田藤三郎
巻号頁・発行日
vol.上, 1893
著者
小西 有美子 佐藤 寿晃 佐藤 孝史 長沼 誠 鈴木 克彦 成田 亜矢 藤井 浩美 橋爪 和足 内藤 輝
出版者
コ・メディカル形態機能学会
雑誌
形態・機能 (ISSN:13477145)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.65-69, 2011 (Released:2015-11-18)
参考文献数
15

健常男性8名(20-45歳)の右上肢を対象に、肘屈曲角度による前腕回外力の変化について調べた。被験者は、肩外転90°、屈伸0°、内外旋0°、前腕中間位にして上腕と前腕を台の上に載せ、肘を伸展位(0°)から10°毎に130°まで屈曲した状態で、等尺性収縮による最大の回外を行い、その回外力を計測した。回外力は、伸展位で3.9±1.2(平均±標準偏差)kg、10°位で4.5±1.2 kg、20°位で5.1±1.1 kg、30°位で6.2±1.1 kg、40°位で6.8±0.9 kg、50°位で7.7±1.1 kg、60°位で8.5±1.2 kg、70°位で8.3±1.4 kg、80°位で7.7±1.3 kg、90°位で7.3±0.9 kg、100°位で6.5±1.6 kg、110°位で6.0±1.7 kg、120°位で5.4±1.5 kg、130°位で4.8±1.2 kgとなった。回外力は伸展位から60°位までの屈曲で増加、70位°以上の屈曲では減少すること、肘の屈曲角度により回外力は2倍以上変化することが示された。この要因として、肘屈曲に伴う上腕二頭筋の筋線維の長さの変化や停止腱の角度の変化が考えられた。
著者
横田 恭子 竹森 利忠 大西 和夫 高橋 宣聖 大島 正道 藤猪 英樹 高須賀 直美
出版者
国立感染症研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

目的:本研究では、SARS-CoVに対する有効なワクチン開発のための基礎的研究を行うことを目的とする。成果:ヒトに即時に応用することが可能なワクチンとして、マウスモデルにおいてUV照射不活化ウイルス粒子ワクチンを皮下に2回接種し、これにより誘導される免疫応答を解析した。その結果、中和活性のあるIgG抗体がUV照射不活化ウイルス粒子のみで誘導可能であり、しかも長期に存続すること、アラムアジュバントを使うことにより抗体価は更に10倍以上高まることを明らかにした。安全性を更に高めるためにUV照射にホルマリン処理を加え、UV照射のみの不活化ウイルス粒子により誘導される免疫応答との比較を行った。ホルマリン処理したUV照射不活化ウイルス粒子免疫群と未処理のUV照射不活化ウイルス粒子免疫群とで血中のSARS-CoVに対するIgG抗体価を比較すると、ホルマリン処理をすることにより血中抗体価が多少低下する傾向はあるものの、中和活性のある抗体の誘導は十分可能であった。これらのマウス骨髄中のSARS-CoVのNucleocapsidに対する抗体産生細胞数は両群ともに増加しており、その数に有意差は認められなかった。また、ワクチン接種部位の所属リンパ節(腋下)のT細胞はウイルス粒子抗原に反応していくつかのTh1/Th2タイプのサイトカインを産生するが、ホルマリン処理群では非処理群と比較してIFN-の産生量がやや高く、IL-5産生量はむしろ低い傾向にあった。一方、投与部位に関しては、石井孝司博士(感染研ウイルス2部)が開発したSARS抗原を発現する弱毒ワクシニアウイルス(DIs)ワクチンを用いて皮下接種と経鼻接種における感染防御効果を比較した。経鼻免疫で誘導される鼻腔粘膜IgA抗体は皮下免疫ではほとんど誘導されないにもかかわらず、高濃度の血中IgG抗体に依存してSARS-CoVの呼吸器感染に対する防御効果が認められた。従ってUVとホルマリンで不活化したウイルス粒子によるワクチンは、即座にヒトに応用可能な安全性の高いSARSワクチンとしてのみならず、今後の新興感染症への緊急対策として有効であることが示された。
著者
藤森 基成 泉 憲明 永田 雅彦
出版者
Japanese Society of Veterinary Dermatology
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.247-249, 2006
被引用文献数
1

2歳齢,雄のロングコート・チワワの両眼瞼縁に限局し徐々に悪化する丘疹の集簇を認めた。経口抗生剤にて改善なく皮膚病理組織検査を施行したところ,真皮に多巣状の化膿性肉芽腫を認めた。PAS染色で菌要素を認めず特発性非感染性肉芽腫症と診断した。経口プレドニゾロン1.0 mg/kg SIDにて1週間で劇的に改善した。<br>
著者
才田 祐人 田中 綾 羽山 庸道 曽田 藍子 山根 義久
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.437-439, 2007-04-25
被引用文献数
2 2

2ヶ月齢,雄のロングコート・チワワが肺動脈弁狭窄症と診断された.超音波検査における圧較差は158mmHgであった.そこで,経心室的肺動脈弁拡大形成術(Brock法)を試みた.術後,顕著な胸水貯留が認められたが,集中治療により術後5日目にはほとんど認められなくなった.術後2ヶ月目に実施された心カテーテル検査では,施術前と比較して右室収縮期圧の減少が確認されるとともに患畜の一般状態は大幅に改善された.
著者
Mituo Ikenaga Isao Yoshikawa Moto Kojo Toshikazu Ayaki Haruko Ryo Kanji Ishizaki Tomohisa Kato Hanako Yamamoto Ryujiro Hara
出版者
Japanese Society for Biological Sciences in Space
雑誌
Biological Sciences in Space (ISSN:09149201)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.346-350, 1997 (Released:2006-02-01)
参考文献数
18
被引用文献数
40 50

To examine the possible effects of space radiation on living organisms, fruit flies Drosophila melanogaster were loaded on the US Space Shuttle Endeavour, and after the flight we have analyzed two types of mutations, sex-linked recessive lethal mutations induced in male reproductive cells and somatic mutations which give rise to morphological changes in hairs growing on the surface of wing epidermal cells. Wild type strains and a radiation-sensitive strain mei-41 were used. The frequencies of sex-linked recessive lethal mutations in flight groups were 2 and 3 times higher for wild type Canton-S and mei-41 strains, respectively, than those in ground control groups. By contrast, the frequencies of wing-hair somatic mutations differed little between flight and control groups. The possibility that the space environment causes mutations in certain types of cells such as male reproductive cells, is discussed.