著者
飯野 智子
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子短期大学紀要 (ISSN:13477196)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.83-99, 2013-03-19

本稿は、美容の分野におけるジェンダー問題を取り上げる。近代以降、男性は自己の美を追求し楽しむことをやめ、ひたすら機能的な身体とファッションを目指さざるを得なかった。しかし今日、美容の場において「男らしさ」の規範を逸脱するような美の追求という現象が見られ、男性が変わりつつあるように思われる。そこで、メンズエステ、男性のファッション、男性化粧品、美容外科、男性ファッション誌へのインタビューを通して、「男らしさ」の縛りから男性は自由になりつつあるのか否かを検証する。
著者
今泉 亜子
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.30-39, 2014

本研究の目的は,精神科病院に長期入院している患者たちとのゲームを通してのかかわりから,その場にどのような相互交流が生み出されるのかを明らかにするとともに,その意味を考察することである.研究者はオセロで遊ぶことをすすめる目的としていたわけではなく,ただ患者たちの求めに応じてオセロを行っていた.だが患者たちが次々と参加してきたため,オセロは途切れることなく,フィールドワーク最終回まで行われた.他者との繋がりを恐れながらも求めていた患者にとって,オセロは人に近づくきっかけとなり,オセロの場はたんなる遊びの場ではなく,相互交流の場となっていた.また「葛藤が生じれば逃げる」「相手を容赦なく叩きのめす」などというオセロのやり方と患者の"問題行動"には共通するパターンが見られ,患者のこれまでの生きてきた世界を映し出していた.患者は遊びの中で自分を表現し,人とのかかわりを体験することにより,繋がりを回復し成長することができる.それをサポートするためには,看護師には患者と遊べるようなゆとりが必要であり,病棟全体も,そうしたゆとりを作っていく工夫が求められる.
著者
野津 牧
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.65-76, 2003-11-30

不適切な養育環境は,子どもの発達に著しい影響を及ぼす.本事例は,不適切な養育環境で育った男児・Aが児童養護施設に保護されてからの2年間の実践記録である.彼の育った環境は,ネグレクトともいえる養育環境であった.彼の両親は,出生届けを出さなかった.そのため彼は戸籍もなかった.保護されるまでの養育環境は,アパートの一室からほとんど出されることもなかった.保護されたときはよちよち歩きでことばもほとんどなかった.保護時点での発達検査では,Aの発達指数は40であり,中度の「知的障害児」と診断された.集団生活に移ったAは,半年後の発達指数が65,2年後の発達指数は77と急速な伸びをみせ,「知的障害」と診断された原因が養育環境からくるものであることを示した.本小論は,Aの2年間の成長過程を発達検査の結果を中心に紹介するとともに,不適切な養育環境に育った子どもの援助として,発達段階を考慮した援助方針の策定と子ども集団のかかわりが重要であることを示した.
著者
松園 典子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.297-304, 1982-12-30
被引用文献数
1
著者
村瀬 敏夫
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要. 文学部 (ISSN:05636760)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-46, 1959
著者
高橋 央
出版者
早稲田大学大学史資料センター
雑誌
早稲田大学史記要 (ISSN:05111919)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.53-76, 2015-02
著者
末盛 慶
出版者
日本福祉大学福祉社会開発研究所
雑誌
現代と文化 : 日本福祉大学研究紀要 = Journal of Culture in our Time (ISSN:13451758)
巻号頁・発行日
vol.136, pp.153-167, 2017-09-30

本稿の目的は,日々の状況に対して人々はどのような対応をしているのかに関する社会学的かつ経験的研究の中で活用しやすい概念を提示することである.具体的には,生活戦略という概念を示す.この目的の準備作業として,生活戦略と関連が想定される先行概念を検討した.具体的には,①心理学における対処概念,②家族ストレス論における対処概念,③家族戦略,④ライフコース論におけるヒューマン・エージェンシーを検討した.その結果,日々の状況に対する個人の行為に焦点を定め,実証研究の中で使用できる社会学的な概念は十分にたてられていないことが示唆された. 本論文で提案する生活戦略は近年の社会学理論を理論的な基盤とする.生活戦略の特徴としては,個人がとる行為は個人の裁量を含みつつも社会構造に規定されていること,生活戦略が社会構造の再生産や変動にも寄与すること,攪乱的な行為も肯定的に評価することなどがある.生活戦略を用いた研究例もいくつか示した.
著者
謝 林
出版者
鹿児島大学
雑誌
地域政策科学研究 = Journal of the Doctorate Studies in Social Sciences (ISSN:13490699)
巻号頁・発行日
no.17, pp.85-105, 2020-03-25

The medieval Kanginshū collection of kouta songbook has a great number of works that were influenced by classical Chinese literature. This thesis focuses on the 26th song and in particular the word 上林 shaurin in the song and how classical Chinese literature has influenced medieval songs in order to highlight the influence of the song on kyōgen.First of all, there are two readings of 上林, shaurin and uenohayashi, and I will estimate which one is used by considering the number of syllables, comparing the copy of the songbook that exists today with the original. I think the 26th song is superb and full of artistic technique from the perspective of its content and interest.Next, researching different kinds of medieval literature, I look at whether scholars at the time had learnt the word, shaurin. My findings show that not only did they know the word, but they could also use it to write poetry expertly.Finally, Naruko in kyōgen also has a song which is similar to the 26th song in Kanginshū. Starting with the Tenshō Kyōgenbon, I compared the words of this song with others that appear in all kinds of kyōgen from the middle ages until the present day. Obviously, they were found to have been changed for different purposes. The 26th song was not written to have a direct bearing on the everyday lives of the lower classes. Instead, it uses classical Chinese literature and culture in the form of kouta to express the fusion of Japanese and Chinese culture.中世の小歌を集めた歌謡集である『閑吟集』には,漢文学の影響を受けた作品が多く見られる。小論では,『閑吟集』二六番の歌を中心に,一首に含まれた「上林」という語をめぐって,中世歌謡における漢文学受容の一側面を句の単位から語の単位へと焦点を絞って考察し,さらに狂言への影響の一端について明らかにすることを試みるものである。まず,現存する『閑吟集』の主要な伝写本について本文を比較し,「上林」に「しやうりん」「うへのはやし」という二種類の傍訓があることから,音数の視点から,同語の読み方の可能性を考察した。そして,歌の内容や趣向を検討することで,二六番の歌は技巧的に作成されたものであることを明らかにした。次に,中世の各文献に出現した「上林」を調査し,中世の知識階層が「上林」という言葉を認識していたかについて考察した。各文献における「上林」を精査することによって,中世の知識階層は「上林」という言葉を単に知っているだけでなく,詩文創作などにおいて同語の応用例も多数存在していることが明らかになった。最後に,狂言「鳴子」には『閑吟集』二六番と類似する歌謡が存在する。その歌詞を天正狂言本をはじめ,中世から近世にかけての主要な諸台本と比較した。その結果,狂言諸台本の歌謡は,二六番に相当する歌謡の歌詞を目的に応じて変化させて取り入れたものである可能性が高いことが分かった。以上の考察から,『閑吟集』二六番の歌は庶民の実生活と直結する歌ではなく,漢文学或いは漢文化を巧みに生かして小歌の形で表現した和漢折衷と考えるのが妥当との結論に至った。
著者
小粥 祐子 斎藤 英俊 平井 聖 千田 堅吉 吉野 敏武 岩佐 奈美
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集・実践研究報告集 (ISSN:2433801X)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.189-199, 2020

建物・住宅の室内を装飾する材料の1つに「唐紙」という壁紙がある。現在,唐紙は京庸紙と江戸からかみの2系統に分けられている。京都にある「唐長」では,京唐紙を寛永年間(1624-1643)から,今もなお,家業として製作しつづけている。この「唐長」には,江戸時代から伝わる史料群『千閏家文書』がある。約400年におよぶ「唐長」の歴史の中で,目本住宅における唐紙の需要と供給は様々に変化してきた。そこで,本研究助成では,『千田家文書』を整理するとともに,時代により唐紙の需要が変化した際,「唐長」の経営・販売形態にどのような変化があらわれたのかを明らかにした。
著者
北川 尚史
出版者
日本蘚苔類学会
雑誌
蘚苔類研究 (ISSN:13430254)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.27-28, 1997-03
著者
三宅 香帆
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科
雑誌
人間・環境学 = Human and Environmental Studies (ISSN:09182829)
巻号頁・発行日
no.28, pp.205-213, 2019-12-20

萬葉集巻二に収録された石川女郎と大伴田主の贈答歌は, 女郎を家に泊めずに帰した田主が「風流士(みやびを)」であるか否かを詠んだ歌群である. 本稿は, 二人の歌が指す「風流」の内実を明らかにするとともに, その差異がいかなる点に依拠していたのかを考察した. 従来一二六-一二八番歌群は, なぜ二人の間で同じ行為に対して評価が異なるのかという点が疑問視されてきた. この問いについて本稿は, 石川女郎の行動の典拠として想定する漢籍は, 従来指摘されてきた『文選』のみでは不十分だと考える. そこで左注を含む当該歌群の持つ論理を明らかにするための作業仮説として, 『文選』だけでなく『遊仙窟』も石川女郎の「風流士」像に影響を与えていたとし, その上で当該歌群の解釈を提示した. まず左注における石川女郎の「火を取る」行為, 「鍋」を提げて来た理由を, 『遊仙窟』の文脈を踏まえて検討する. そのうえで贈答歌について, 石川女郎の一二六番は主に『遊仙窟』と『文選』の文脈を援用するのに対し, 大伴田主の一二七番は『文選』のみを援用していることを示した. つまり両者の「風流士」像の相違はそれぞれ典拠とする漢籍が異なっていた点から生まれたものであった. そして『文選』『遊仙窟』それぞれに代表される「風流」の価値は, 大伴田主と石川女郎という人物に託して対比されていたことが分かる. 一見, 雅俗の極致のように見え, 並列した典拠とするには不釣り合いな『文選』と『遊仙窟』であるが, 当該歌群はその二つの漢籍を典拠としてあえて対にすることによって, 「風流」という言葉に込められた二つの意味を提示した. 「風流」という語彙を共有しながら, その中で雅俗が対になって提示される構造こそが当該歌群の注目すべき点であろう.
著者
永田 勝太郎 島田 雅司 長谷川 拓也 真木 修一 秦 忠世 大槻 千佳
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.1151-1156, 2010
参考文献数
12
被引用文献数
1

酸化バランス防御系は,生体調節機構の1つと考えられる.そのゆがみは生活習慣病の発症に関与する.疼痛性疾患である,慢性腰痛,線維筋痛症,関節リウマチ患者について,酸化ストレス(d-ROM test),抗酸化力(BAP test),潜在的抗酸化能(修正BAP/d-ROM比:修正比)をFRAS4(Free Radical Analytical System 4)により,測定した.健常者群に比し,線維筋痛症の酸化ストレス,修正比は悪化していたが,関節リウマチほどではなかった.酸化バランス防御系の是正のため,抗酸化剤である還元型coenzyme Q10を3ヵ月間投与した.その結果,疼痛VASの改善,酸化バランス防御系の改善がみられた.線維筋痛症の診断・治療に酸化バランス防御系の評価は重要であると考えられた.
著者
渡邊 浩史
出版者
佛教大学大学院
雑誌
仏教大学大学院紀要 (ISSN:13442422)
巻号頁・発行日
no.31, pp.103-111, 2003-03

現在までこの「道化の華」の冒頭に用いられた「ここを過ぎて悲しみの市。」という一節は、ダンテの『神曲』からの引用であり、その翻訳としては、笠原伸生氏によっ提言された森鷗外訳『即興詩人』「神曲、吾友なる貴公子」の一節、「こゝすぎてうれへの市に」であると言われてきた。しかし、検討の結果、実はその翻訳は別にあるのではないか、という可能性が出てきた。小稿はその翻訳として、上田敏訳のテクストにあるものを一番大きな可能性とし、そこに書かれた「こゝすぎてかなしみの都へ」と「われすぎて愁の市へ」という訳稿を太宰が「道化の華」の冒頭に用いる際、一部改変し使用していたのだ、ということを提唱するものである。翻訳森鷗外上田敏ダンテ『神曲』