著者
森滝 望 井上 和生 山崎 英恵
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.133-139, 2018
被引用文献数
4

<p>日本食の風味を支える出汁は, 心身への健康機能を有することが最近の研究により明らかにされてきているが, いずれの報告も長期摂取による効果に着目しており, 短期的な影響については知見が乏しい。本研究では, 出汁の単回摂取による効果を明らかにすることを目的とし, 鰹と昆布の合わせ出汁の摂取および香気の吸入が自律神経活動および精神的疲労に及ぼす影響について検討を行った。24名の健康で非喫煙のボランティアが本研究に参加した。被験者は, 9: 00に指定の朝食を摂取し, 10: 30—11: 30に実験を実施した。自律神経活動は心拍変動解析により評価し, 疲労の評価では, 一定の疲労負荷として単純な計算タスク (内田クレペリンテスト) を30分間課し, その前後でフリッカー試験を実施した。加えて, Visual Analogue Scale (VAS) を用い, 主観的な疲労度および試料に対する嗜好度を評価した。出汁の単回摂取では, 対照の水と比べて, 心拍数低下と副交感神経活動の一過性上昇が認められた。また, 出汁の香気吸入でも同様の効果がみられた。さらに, 出汁の単回摂取により, 計算タスク後のフリッカー値低下が抑制され, VASの結果より主観的な疲労度も軽減されていることが示された。これらの結果から, 出汁の摂取は副交感神経活動を上昇させる作用を介して, リラックスと抗疲労の効果を誘起する可能性が示唆され, その作用における香気成分の重要性が示された。</p>
著者
今井 健一
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、Epstein Barr virus (EBV)の歯周疾患への関与が示唆されており、われわれは慢性歯周炎患者の病変部から高率にEBVを検出すること、病態の進行に伴いEBVとP.gingivalisなどの共感染が認められることを見出した。さらに、細菌の代謝産物酪酸がEBVを再活性化、歯肉線維芽細胞からの炎症性サイトカインの産生を強く誘導することを解明し、細菌とEBVの負の連鎖が歯周病発症と進展において重要な役割を担っている事が示唆された。歯周病の予防と治療において新たにウイルス感染を考慮する必要性の分子基盤を提示することが出来た。
著者
天谷 祐子
出版者
名古屋大学
雑誌
名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要. 心理発達科学 (ISSN:13461729)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.9-19, 2005
被引用文献数
1

国立情報学研究所で電子化したコンテンツを使用している。
著者
井芹 浩文
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 = Bulletin of Sojo University (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.1-9, 2014

明治憲法は全面改正されるまで56年間存続した。これに対し現行の日本国憲法は改正せずにすでに66年が経過した。これだけ長期に改正されなかったのはなぜか。その大きな理由の一つが、歴代の自民党首相が現実主義的なアプローチを取ったためではないかとの仮説を立てた。これを立証するため、吉田茂以来の歴代首相の憲法観を振り返ってみた。歴代首相はカテゴリーとしては「改憲派」「護憲派」「現実派」および自らの見解を示す機会のなかった「回避派」に分けることができよう。まず現実主義者のプロトタイプとして吉田を取り上げる。ただ吉田自身は自衛力を禁じた現行憲法には違和感を持ちつつ、さりとて急激な再軍備は国力が見合っていないというアンビバレントな悩みを抱えていた。続く鳩山一郎、岸信介は改憲を掲げたが挫折し、その後の高度成長期に政権を担ったい池田勇人、佐藤栄作らは改憲論から距離を置き、保守政権の現実主義は定着していく。この後のいわゆる「三角大福中」世代の最後に政権を担当した中曽根康弘はもともと改憲論を唱導していたが、政権に就くや改憲を否定し、現実主義に身をおいた。改憲論者である中曽根にしてこうした行動をとったところに現実主義の岩盤の大きさがうかがえる。そういう背景の中で、新たな改憲派として登場した安倍晋三の出方が注目される。
著者
真弓 重孝
出版者
日経BP社 ; 1985-
雑誌
日経マネー (ISSN:09119361)
巻号頁・発行日
no.402, pp.94-105, 2015-12

2017年4月から消費税率が10%に上がる前に、急いでマンションを買った方がいいのか。都心部を中心に物件価格が急騰している中で、後悔しない方策を考えた。
著者
須藤 元気 佐藤 珠希
出版者
日経BP社 ; 1985-
雑誌
日経マネー (ISSN:09119361)
巻号頁・発行日
no.435, pp.146-149, 2018-09

「お金を稼ぐこと」にフォーカスし過ぎないことですかね。お金を稼ぐためだけに何かをやるのではなく、楽しいことをやっているとお金が入ってくる仕組みをつくった方がいい。誰だって、どうせ仕事をするなら、お金を稼ぐためにやりたくないことを嫌々やって…
著者
ましこ ひでのり
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.4, pp.13-24, 1991-06-15 (Released:2010-04-21)
参考文献数
55

Lingvo, precipe ties politika funkcio, estis kaj estas preterlasita punkto de Sociologio. Tiu eseo temas kial sociologaro apenau atentis kaj atentas la chefa laboroj de lingvscienco, kaj kial sociologaro devas atenti ilin kiel la objektoj por la sociologio de scio. (en Esperanto)(Language, particularly its political function, was and is a blind point of sociology. This essay's themes are why sociologists scarcely paid and pay attention to the main achievements of linguistic science and why sociologists should pay attention to them as the objects for the sociology of knowledge.)
著者
阿部 誠文
出版者
九州女子大学・九州女子短期大学
雑誌
九州女子大学紀要. 人文・社会科学編 (ISSN:09162151)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.79-94, 1999-02

小稿は、旧ソ連抑留俳句のうち、第一方面軍軍医部長であり、細菌戦準備にかかわったとして矯正労働二五年の刑を受けた川島炬士と満州国交通部次長であった田倉八郎の俳句を取りあげる。両者の共通しているのは、要人・高官という身分の高さであり、高齢であったことである。抑留生活も身分によって、その待遇がことなり、収容所の環境や食事、労働の程度も違っていた。前稿「行方なき非道の旅路-旧ソ連俳句=船水以南・佐久間木耳郎」と比べれば、いっそうはっきりする。要人・高官・高齢者の抑留生活は、一般兵士や民間人の抑留生活と比べれば、俘虜の日溜まりのようにゆるやかであった。そのことを明らかにして、旧ソ連抑留俳句の一面を明らかにしたい。
著者
南 学 MINAMI Manabu
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = BULLETIN OF THE FACULTY OF EDUCATION MIE UNIVERSITY. Natural Science,Humanities,Social Science,Education,Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.221-227, 2018-01-04

本研究では、現代の若者がもつ幸福観と価値観との関連から現代の「幸せな若者」像(古市,2013)について明らかにすることを目的として検討を行った。結果は、幸福観によって若者を3 群に分けたところ、「現状満足群」のほうが従来の友人関係を維持することを求めることが示されたが、地元志向に関しては有意な差は見られなかった。また「現状満足群」よりもすべてのことを追求する若者像である「全追求群」のほうが、「主観的幸福感」が高く、友人関係においても「表面的友人関係」、「内面的友人関係」に関しては「全追求群」のほうが高かったことが見出された。これらの結果から、古市(2011;2013)が指摘する「幸せな若者」像はすべての若者にあてはまるものではないこと、その「幸せな若者」群の幸福感がとくに高いわけではないことが見出され、古市(2011;2013)が提唱した若者の価値観の傾向と幸福感を結びつけた「幸せな若者」論は実証性に欠けることがあらためて示唆された。
著者
木原 正夫 鈴木 仁 鈴木 祐介
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

IgA腎症は原発性糸球体腎炎のなかで最も頻度が高いが、有効な治療法が確立されておらず予後不良である。IgA腎症の病態には糖鎖異常IgA1 と糖鎖異常IgA1 免疫複合体が深く関与しており、その産生にはToll like receptor(TLR)などのPattern recognition receptors(PRRs)を起点とした粘膜免疫応答異常が考えられる。本邦においては扁摘パルス療法が一定の効果を示している一方で、北欧においては腸管選択的ステロイド薬の効果が示されており、その議論が分かれている。本研究では、腸管におけるPRRsを介した糖鎖異常IgA1 免疫複合体形成機序を検証することを目標としている。ヒトIgA腎症の自然発症モデルであるddYマウスを用いて、血中・消化管関連リンパ組織におけるIgA、糖鎖異常IgA、IgG-IgA免疫複合体を測定したところ、IgA腎症発症マウスの方が未発症マウスに比較して、血中・脾臓の細胞培養液中のGd-IgA, IgG-IgA免疫複合体が有意に高かったが、腸間膜リンパ節においては両者に有意差はなかった。今後は、腸管におけるPRRsがIgA腎症発症・増悪に寄与しているか調べるため、IgA腎症発症/非発症ddYマウスを用いて、TLR4/9やその下流のサイトカインの発現を検証し、さらにはTLR4/9のリガンドを投与することで、IgA腎症を惹起できるか検証する。また、グルテンフリー食、腸管選択性ステロイド薬、中和抗体・siRNA を用いて、Gd-IgAおよびIgG-IgA免疫複合体産生の抑制効果を検証する。

2 0 0 0 OA 香川県報

出版者
香川県
巻号頁・発行日
vol.平成17年, no.(9277), 2005-10-11
著者
尾間 由佳子 原田 昌彦
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.262-268, 2012-04-01 (Released:2013-04-01)
参考文献数
28

細胞が環境に対応して生命活動を維持するため,また個体が発生分化するためには,DNAに刻まれた遺伝情報を時間的・空間的に適切に選択して発現させることや,ゲノムを安定に維持することが必須である.このようなゲノム機能に中心的な役割を果たすエピジェネティック制御に,細胞核の構造形成や,核構造とクロマチンとの相互作用が関与することが明らかになってきた.細胞核の構造に基づいたエピジェネティック制御機構の理解は,遺伝子発現やDNA修復の制御機構の解明にとどまらず,発生・老化などの高次生命機能や,がんなどの疾病や再生医療においても新規かつ重要な知見をもたらすことが期待される.
著者
吉本 圭一
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.42-64, 1991-06-05 (Released:2011-03-18)
参考文献数
80
著者
半澤 誠司
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.56-70, 2001-12-31 (Released:2017-05-19)
被引用文献数
3

本稿の目的は, 日本のアニメーション産業の特性を把握し, その集積要因を検討することにある.アニメーション産業は, 知識集約的な特徴を持つ, いわゆるコンテンツ産業の一つとみなされることが多いが, 実際の制作工程をみるとむしろ労働集約的な製造業としての側面が強い.作品周期が短く市場予測が難しい上に, 短期間での制作が求められるテレビシリーズアニメーションの開始によって, 1960年代に制作会社の垂直分割が進展し, 各工程に特化した中小零細企業が多数乱立するようになった.この結果として, 各制作会社間の物流と情報交換の利便性を図るために, 産業集積が生まれた.受発注関係はほとんどが東京都内で完結し, その取引内容は工程間で特色の違いがみられる.すなわち, 上位工程に位置する制作会社はさまざまな工程を持ち, 多くの企業から受注を受け, 外注比率も高いのに対し, 下位工程に位置する制作会社は一部工程に専門化し, 受注先が少なく, 外注比率が低い.1990年代におけるグローバル化の進展とデジタル化によって, 分散傾向も一部ではみられるが, アニメーション産業では取引先の能力把握と信頼性の構築が重視され, 人的繋がりから仕事が生じている面が強いので, それを生み出す場としての東京の重要性は大きくは変わらないと考えられる.