著者
解 慶子 秋本 耕二 Qingzi Xie Koji Akimoto
出版者
久留米大学経済社会研究会
雑誌
経済社会研究 = The journal of the Society for Studies on Economies and Societies (ISSN:24332682)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.1-13, 2019-12-25

本稿では,経済発展の根源的要素は人的資本であるとの認識のもと,人的資本と物的資本蓄積による経済発展の過程を分析する。そのために,Galor and Moav(2004)(以下,GMモデルと記す)に着目する。ただし,GMモデルにはいくつかの欠陥と呼んで差支えない構造が含まれている。たとえば,経済の初期段階から成熟期に渡る長期の過程を分析しているのにもかかわらず,モデルには技術革新が存在せず,不変の生産関数を仮定していることである。本稿では,技術革新をGMモデルに導入し,理論的にモデルを再構築したうえで,中国に注目し,同国の経済発展過程を実証分析する。本稿のオリジナルは,人的資本を測定するための新たな人的資本係数を導入している点にある。
著者
吉田 佳代
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学社会文化研究
巻号頁・発行日
vol.12, pp.211-227, 2014-03-25

The origin of midwives dates back to women who helped with childbirth. These women, who had acquired experience and trust in childbirth, gradually evolved into midwives as professionals. Some physicians in the Edo period provided education for women involved in midwifery, and this was the start of midwives as specialists. Following the Meiji Restoration, physicians who had returned from Germany trained midwives. During the Meiji period, there was progress in the establishment of laws and regulations on midwifery. At that time, the laws did not clearly define the work procedures that midwives should conduct, and they demanded legislation based on the bill proposed by them, although it was not legislated. Following World War II, the provisions on the expertise of midwives were included in the Act on Public Health Nurses, Midwives, and Nurses. The Japanese Nursing Association did not understand the expertise of midwives, and attempted to incorporate it into that of nurses several times. However, midwives established their own organization and developed behavioral standards to promote respect for their specialty.
著者
松田 雅子
雑誌
長崎大学総合環境研究 (ISSN:13446258)
巻号頁・発行日
vol.環境科学部創立10周年記念特別号, pp.187-199, 2007-08

Reading Lolita in Tehran by Azar Nafisi has been enthusiastically received in America and got an international recognition because it vividly describes an Iranian woman's authentic experiences under the Iran Islamic Revolution and its new regime from 1979 to 1997. With her students, Nafisi, a professor of American and English literature, tries to escape from cruel reality in Tehran to the world of Western literature. She interprets the meaning of the real life using Lolita, The Great Gatsby, Pride and Prejudice and other novels. Nafisi's narrative is so powerful and gripping that the readers would empathize with the author and make up the images of Iran as an oppressive and totalitarian country and America as a free state just as she shows. However, in close reading we could find that there is an information gap about the Iranian history, that is, she does not mention the days of Sha much enough to compare it with the present regime. Therefore, this book should be read with a view that it has such a limitation. In this paper, the techniques which Nafisi uses to arrest the readers' attention are examined to clarify their characteristics and weakness if any. Nafisi's narrative might be deconstructed by introducing Said's theory of post-colonialism in the part four, 'Austen'.
著者
原田 敏丸
出版者
滋賀大学経済学会
雑誌
彦根論叢 (ISSN:03875989)
巻号頁・発行日
no.第101・102号, pp.32-41, 1964-03
著者
Lupardus Karen
出版者
沖縄国際大学外国語学会
雑誌
沖縄国際大学外国語研究 (ISSN:1343070X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.45-69, 2007-03
著者
吉村 浩一
雑誌
科学研究費補助金研究成果報告書
巻号頁・発行日
pp.1-5, 2011-05

研究成果の概要 (和文) : 左右逆さめがねを2週間着用した女性が、正常視のときの生活と同じようなスタイルを獲得するという、きわめて知覚順応の進んだ状態を示した。これにより、逆さめがねの世界に順応することがどのような変化を引き起こすかを捉えることができた。この研究成果を踏まえ、子どもたちに人間の知覚の不思議さを体験してもらい、逆さめがねを通してものを見たり行動したりする際に起こることを予想し実際に体験することにより、その予想がどのように間違っているかを論理的に考えてもらうための科学イベントを構築した。
著者
竹沢 尚一郎 Shoichiro Takezawa
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Ethnology (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1-55, 2005-09-30

19 世紀なかばのフランスでは,ブロカに率いられた人類学派が発展し,学界を超えて強い社会的影響をもった。それは,人間の頭蓋や身体各部位を計測し,一連の数字にまで還元することで,人びとを絶対的な人種の境界のあいだに分割することをめざした人種主義的性格の強い人類学であった。この人類学が当時のフランスで広く成功した理由は,産業革命が進行し,教会の権威が失墜した19 世紀なかばのフランスで,新しい自己認識と世界理解を求める個が大量に出現したことに求められる。こうした要求に対し,ブロカ派人類学は数字にまで還元/単純化された世界観と,白人を頂点におくナルシスティックな自己像/国民像の提出によって応えたのであった。 1871 年にはじまるフランス第三共和制において,この人類学は,共和派代議士,新興ブルジョワジー,海軍軍人などと結びつくことで,共和主義的帝国主義と呼ぶことのできる新しい制度をつくり出した。この帝国主義は,法と同意によって維持される国民国家の原則に立つ本国と,法と同意の適用を除外された植民地とのあいだの不平等を前提とするものであったが,ブロカ派人類学は植民地の有色人種を劣等人種とみなす理論的枠組みを提供することで,この制度の不可欠の要素となっていた。 1890 年以降,新しい社会学を築きつつあったデュルケームは,ユダヤ人排斥の人種主義を批判し,人種主義と関連しがちな進化論的方法の社会研究への導入を批判した。かれが構築した社会の概念は,社会に独自の実在性と法則性を与えるものであり,当時の支配的潮流としての人種主義とは無縁なところに社会研究・文化研究の領域をつくりだした。しかし,ナショナリスティックに構築されたがゆえに社会の統合を重視するその社会学は,社会と人びとを境界づけ,序列化するものとしての人種主義を乗りこえる言説をつくりだすことはできなかった。 人種,国民国家,民族,文化,共同体,性などの諸境界が,人びとの意識のなかに生み出している諸形象の力学を明らかにし,その布置を描きなおしていく可能性を,文化/社会人類学のなかに認めていきたい。
著者
森下 涼子 Ryoko MORISHITA
出版者
創価大学日本語日本文学会
雑誌
日本語日本文学 (ISSN:09171762)
巻号頁・発行日
no.24, pp.61-77, 2014-03-20

これまでの『山の音』研究では、伝統的な分野においては『源氏物語』ばかりに焦点があてられ、能や謡曲について触れたものは少ない。『山の音』には、能面や謡曲「卒都婆小町」に関する記述が多くみられるにも関わらず、これまであまり研究が進んでこなかったのはなぜだろうか。管見のかぎり、それは『山の音』に研究者による注釈がないからだと考える。また、能に触れられているものでも、謡曲「卒都婆小町」からの引用がみられる、との指摘に留まるものが多く、菊慈童や面に関しても表面的に論じられているだけである。しかし、『山の音』と能の関わりを論じる際、表面をさらうだけでは見えてこないものがあるのではないか。『山の音』の深層に潜むものを読み解くには、能または謡曲が有効なカギとなってくるに違いない。なぜなら、言葉では描き切れない世界を表現するために、川端が能を用いたと考えられるからだ。そこで本論文では、「春の鐘」を中心に、『山の音』に表象された能に注目し、『山の音』は <血の繋がり> に願いを込めた信吾が、<血の繋がり> を持たない菊子によって救われる物語であることを明らかにしたい。
著者
白畑 知彦 新保 淳 北山 敦康
出版者
愛知教育大学大学院・静岡大学大学院教育学研究科 共同教科開発学専攻
雑誌
教科開発学論集 (ISSN:21877327)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.181-188, 2015-03-31

本共同教科開発学専攻では、教員養成をおこなう上でこれまで別々に捉えられていた感のある3つの領域、教科専門、教科教育、教職専門を融合し、新たな学問領域を構築しようとしている。このような特色を持つ本専攻と、他大学の「博士(教育学)」課程の教育・運営方針を比較することで、本専攻の今後の方向性を考える一助とする。白畑、新保、北山の3名は、2014 年3月、アメリカ合衆国におけるDoctor of Education Program の現状を把握するために、同国カリフォルニア州の3つの大学(南カリフォルニア大学 (USC)、カリフォルニア大学ロサンジェルス校 (UCLA)、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校 (CSULB))を視察した。このうち、USC とUCLA の2校でEd.D. Program 担当者と面会し、話を聞くことができた。そのインタビュー内容を紹介する。次に、日本でEd.D.の学位を授与している唯一の大学院である名古屋大学の博士課程について、今津の2 本の論文を考察することで、1)日本における学位の授与規定について、2)日本におけるEd.D.コースの現状について情報提供する。以上の考察に基づき、本専攻の方向性についてもう一度確認することで我々の方向性を確認する。