著者
坪根 由香里 田中 真理
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.111-127, 2015-09-30

本稿の目的は,第二言語としての日本語小論文の「内容」「構成」の評価が,評価者によって異なるのか,もしそうならどのように異なるのかを検討し,その上で「いい内容」「いい構成」がどのようなものかを探ることである.調査では,「比較・対照」と「論証」が主要モードの,上級レベルの書き手による6編の小論文を日本語教師10名に評価してもらった.その結果を統計的手法を用いて分析したところ,「内容」「構成」ともに,異なる評価傾向を持つ評価者グループのあることが分かった.そこで,上位4編の評価時のプロトコルから「内容」「構成」に関する部分を抜き出し,それを実際の小論文と照合しながら,各評価者グループの評価観の共通点・相違点について分析した.その結果から,「いい内容」の要因は,1)主張の明確さ,2)説得力のある根拠を分かりやすく示すこと,3)全体理解の助けになる書き出し,4)一般論への反論であることが分かった.視点の面白さと例示に関しては評価が分かれた.「いい構成」は,1)メタ言語の使用,2)適切な段落分けをし,段落内の内容が完結していること,3)反対の立場のメリットを挙げた上で反論するという展開,4)支持する立場,支持しない立場に関する記述量のバランスが要因として認められた.本研究で得られた知見は,第二言語としての日本語に限らず,第一言語としての日本語小論文の評価にも共有できるであろう.
著者
大和 浩
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.133-140, 2013-10-01

「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」に沿って,諸外国では包括的な喫煙対策が進められている.一方,わが国では職場の受動喫煙防止対策さえ十分には達成されていない.労働安全衛生法の一部を改正し安全配慮義務という観点から受動喫煙防止対策を義務化する法律の改正案は,2012年11月16日の衆議院の解散により廃案となったことから見送られた状況となっており,一刻も早い国会への再提案が望まれる.本稿では,企業が自主的に判断して取り組むべき職域の喫煙対策について解説する.
著者
矢野 和成
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:18847374)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.421-425, 1988

東シナ海とジャワ海から得られた1新種フトシミフジクジラを記載した.本種は吻端から第1背鰭棘までの長さが, 棘から尾鰭上葉起部までの長さより明らかに短いこと, 尾鰭の長さが頭長よりも短いこと, 鱗は非常に小さく棘状であり, 体側面ではほとんど規則正しく配列しているが, 頭部背面の眼間付近および腹部では明瞭に配列していないこと, 生きている個体の体色は上方部では紫色がかった黒色, 一方腹部, 腹鰭上方部の斑紋, 尾鰭の斑紋は濃い藍色をしていること, 腹鰭上方部の斑紋が後方部で幅が広いこと等で他種と容易に区別される.
出版者
日経BP社
雑誌
日経コミュニケ-ション (ISSN:09107215)
巻号頁・発行日
no.291, pp.77-84, 1999-04-05

インターネット・メール・サーバーの事実上の標準。それが,フリーソフトの「sendmail」である。企業ユーザーはもちろん,大手インターネット接続事業者(プロバイダ)の多くもメール・サーバーにsendmailを採用している(表2-1)。 個人向け接続サービスを提供するベッコアメ・インターネットの運用技術部白濱健氏は,長年のメール・サーバー運用経験からこう証言する。
著者
HIRAI Akiyo KOIZUMI Rie
出版者
日本言語テスト学会
雑誌
日本言語テスト学会研究紀要
巻号頁・発行日
no.11, pp.1-20, 2008-09-20

Among different types of rating scales in scoring speaking performance, the EBB (Empirically derived, Binary-choice, Boundary-definition) scale is claimed to be easy to use and highly reliable (Turner & Upshur, 1996; 2002). However, it has been questioned whether the EBB scale can be applied to other tasks. Thus, in this study, an EBB scale was compared with an analytic scale in terms of validity, reliability, and practicality. Fifty-two EFL learners were asked to read and retell four stories in a semi-direct Story Retelling Speaking Test (SRST). Their performances were scored using these two rating scales, and then the scores were compared by using generalizability theory, a multitrait-multimethod approach, and a questionnaire delivered to the raters. As a result, the EBB scale, which consists of four criteria, was found to be more generalizable (i.e., reliable) than those of the analytic scale and generally assessed the intended constructs. However, the present EBB scale turned out to be less practical than the analytic scale due to its binary format and because it had more levels in each criterion. Further revisions seeking a better scale for the SRST are suggested.
著者
常徳 千夏 松井 聖 斉藤 篤史 西岡 亜紀 関口 昌弘 東 直人 北野 将康 橋本 尚明 角田 慎一郎 岩崎 剛 佐野 統
出版者
The Japanese Society for Clinical Rheumatology and Related Research
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.189-197, 2015

目的:関節リウマチ(RA)の治療は近年大きく変化しており,抗リウマチ薬に加え生物学的製剤が7種類使用できるようになった.このため,相互作用や副作用管理が急務となり.医療師全体で取り組む事が重要となってきている.今回,調剤薬局薬剤師の関わりの実情と問題点を把握し,今後の薬剤師の役割の方向性を考えるためアンケート調査を実施した.<br>対象:兵庫医科大学病院外来通院中RA患者のうち,平成25年3月~5月に当薬局に来局,本調査への参加に同意した70名を対象にアンケート調査を実施した.<br>方法:日常診療実態下における非介入試験 ①日常生活動作 ②関節リウマチ治療状況 ③精神的影響に関する状況のアンケートを実施した.<br>結果:メソトレキサート(MTX)に関しては,効果の理解度は86%と高かったが,用法の不便さを訴える回答がみられた.生物学的製剤については,注射へのストレスを感じないが67%で,効果を実感している回答も62%と半数を超えた.しかしながら,副作用への不安や,高額の医療費の負担の不安もあった.<br>結論:調剤薬局薬剤師として,MTXや生物学的製剤などの積極的な治療が必要な患者さんには,積極的に関わることで,個々の状況を聞き取り不安や問題の解決を目指すことにより,アドヒアランスの向上及び治療成功へのサポートを行って行くことが重要であると考える.
出版者
日経BP社
雑誌
日経情報ストラテジ- (ISSN:09175342)
巻号頁・発行日
vol.12, no.10, pp.175-177, 2003-11

とんだ1週間だった。金融業向け情報サービス会社、ラディアンス社の情報セキュリティ担当役員ロイド・ヘシオン氏もそう痛感している1人だ。ヘシオン氏は8月15日、インフォメーションウィーク誌の電話取材に対して「ひどい48時間だった」と述べ、「後でかけ直す」と電話を早々と切った。 混乱は8月11日の月曜日、MSブラスターの出現で始まった。
著者
高橋 秀和
出版者
日経BP社
雑誌
日経コミュニケーション (ISSN:09107215)
巻号頁・発行日
no.473, pp.64-75, 2006-11-01

高速電力線通信(PLC)が日本でもついに解禁となった。電力線をMビット/秒クラスの通信に使うことで,コンセントがLANポートに変貌する。規制緩和決定後,初となる総合展示会「CEATEC」に20社の対応製品がズラリ登場。2006年末に,イーサネット,無線LANに続く「第3のLAN」が登場する。
著者
中川 和彦
出版者
成城大学
雑誌
成城大學經濟研究 (ISSN:03874753)
巻号頁・発行日
vol.163, pp.45-71, 2003-12-20
著者
月本 洋
出版者
社団法人人工知能学会
雑誌
人工知能学会誌 (ISSN:09128085)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.273-279, 1996-03-01

Several studies have been carried out with the objective of introducing partial orders into probability distributions. However, there has been no study that introduces such a partial order into probability distributions as can be reasoned by a logic. This paper shows that discrete probability distributions can be reasoned by intuitionistic logic. The space of multi-linear functions, which is an extension of Boolean algebra, can be made into a Euclidean space. The space is Heyting algebra, which is the model of intuitionistic logic. Therefore, multi-linear functions can be reasoned by intuitionistic logic. Discrete probability distributions can be corresponded to multi-linear functions using the principle of indifference. So discrete probability distributions can be reasoned by intuitionistic logic.
著者
滝澤 行雄 山下 順助 石郷岡 清基
出版者
Japan Radioisotope Association
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.1-12, 2014
被引用文献数
2

日本酒のX線照射マウスに対する放射線防護効果を検討した。供試の日本酒は米と米麹のみで醸造した純米酒(アルコール濃度10.5%)で,9週齢雄性C57BL/6JJms系マウスに純米酒0.6mL/匹を経口投与し,その約30分後にX線7.8Gy(照射線量率1.078Gy/分)を照射した。また,純米酒0.2mL/匹を7日間反復経口投与後30分後にX線を7.8Gy照射し,引き続き同様に7日反復経口投与を行った。対照マウスには普通酒(アルコール濃度15.0%),純エタノール(10.5%)及び生理的食塩水を経口投与した。なお,普通酒は米と米麹に,醸造アルコールを加えている。<br>X線照射マウスに対する放射線防護効果は30日間の生存率で評価した。その結果,大量1回投与(0.6mL)において,純米酒投与群の生存率は80%でエタノール投与群よりも高かった。生理食塩水投与群では26日目に全頭死亡した.純米酒投与群と生理食塩水投与群との間に有意差(p<0.01)が認められた。少量連続投与(0.2mL)においては,純米酒投与群の生存率は普通酒投与群より高かった。純米酒投与群の生存率は生理的食塩水投与群より有意に高かった(p<0.05)。日本酒はアルコ-ル飲料の中でもアミノ酸が多く,特にアミノ酸総量では純米酒(1771mg/L)が普通酒(932mg/L)の約2倍高であり,放射線防護効果にアミノ酸の寄与が思考される。純エタノ-ルにも防護効果はみられるが,日本酒に比べ低かった。以上,唯一日本酒のみの特徴といえるアミノ酸類に放射線防護効果があることが示唆された。
著者
イダマルゴダ アルナシリ 杉山 道雄 小栗 克之 荒幡 克己 甲斐 諭 柳 秦春
出版者
日本万国家禽学会
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.234-244, 1998-07-25
参考文献数
7
被引用文献数
1

世界主要都市における鶏卵価格の内外価格差は,かなり大きいことが指摘されてきたが,その卵価水準に最も影響する生産費と流通マージンの国際比較分析について飼料費を除き,殆ど研究されていない。研究は国内でなされても国際比較はなされていないのは,生産費の概念が統一されず,不明確であったことにもよっている。<br>本研究は鶏卵生産費の概念を直接費(飼料費十ひな費)と間接費(労働,建物費,機械,道具費,農薬費等)として,1996年世界20ヵ国の政府,大学機関にメールメリッドで調査票を送付し,15ヵ国につき回答を得て比較分析を行ったものである。調査国にはアメリカ,カナダ,イギリス,オラング,ブラジル,インド,中国,バングラディシュ,ネパール,スリランカ,イラン,サウジアラビア,日本,韓国,台湾の15ヵ国である。これらの国は低生産費国,中生産費国,高生産費国に大別されるが,低生産費は高生産費国である日本の1/3近くで生産している。低生産費国の主な要因は単に飼料費が安いばかりではなく,安い労働費の影響が大きい。中生産費国は主としてアメリカなどで,近代的技術ばかりでなく,飼料費が安いことに基づく。高生産費国は飼料の輸入国であり,やや高くなるばかりでなく,賃金が高くなる。高労働費を節約するため施設化が進む場合,労働費や施設費を個々に比較するのでなく,同じく労働節減機能をもつものとして施設&bull;労働費として比較されるべきである。<br>マーケティングマージンをみると,日本はその近代的設備を導入しているものの,労賃率は高く,飼料費も高い。<br>これらの結果から,各国に生産費,価格水準の比較に当たっては飼料費,雛費の直接費ばかりでなく間接費が重要となる。とくに間接費のうちでも労働費,施設費を合体した施設&bull;労働費として比較すべきである。
著者
飛岡 宏 千田 敏之
出版者
日経BP社
雑誌
日経ヘルスケア21 (ISSN:13463799)
巻号頁・発行日
no.140, pp.40-42, 2001-06

岡山市医師会は今年、市内の複数の病院とともに診療所開業医の情報化を推進するための事業をスタートさせた。 「電子メール・メーリングリスト」「かかりつけ医紹介システム」「1医療機関、1ホームページ」「電子認証システム」の四つの柱からなる同事業の概要やその目的について、市医師会理事の飛岡宏氏に聞いた。
著者
瀧上 順也 加藤 禎篤 ブン チュンセン
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MoMuC, モバイルマルチメディア通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.147, pp.39-44, 2008-07-16
参考文献数
10

本稿では,実写の動画像を非実写化することにより,動画像の好ましさを向上する効果があるかについて検証を行った.まず,イラストレータによる理想的な手描きの非実写映像によって実写映像と異なる表現方法(画風)に変更することで,映像に対する総合的な好ましさを損なうことなく,個別の要素に対する印象の好ましさを向上させる効果があることを確認した.次に,動画像の動きの滑らかさに関して,非実写変換によって,低いフレームレートにおいても実写映像に比べて動きのギクシャクさを感じにくくなることを確認した.これらの結果を,それぞれの主観評価に用いた方法と合わせて報告する.