著者
Akimoto Daisuke
出版者
創価大学平和問題研究所
雑誌
創大平和研究 (ISSN:03876209)
巻号頁・発行日
no.28, pp.45-72, 2013

The latest Miyazaki animation film, The Wind Rises (Kaze Tachinu) animated by Studio Ghibli Japan, released on 20 July 2013, illustrates a 'difficult time to live' during which the Japanese people suffered from the Great Kanto earthquake that killed 10,000 people, worldwide economic depression that resulted in high unemployment rates, and the following Second World War. Director Miyazaki stated that the film does not attempt to 'denounce' war or to beautify the Japanese Zero Fighter plane, but to portray a Japanese young man who chased his dream and cherished his love despite the difficult age he lived in. Although Miyazaki might have intended to make an apolitical animation, his viewpoint on Japan's involvement in the Asia Pacific War is that 'It was wrong from the beginning' but also 'useless to blame Jiro for it'. The film The Wind Rises, furthermore, has a clear message for the Japanese constitutional revision debate, especially the revision of Article 9. This paper reviews this animation film as a last will of Director Miyazaki in the light of war memory, war responsibility, as well as Miyazaki's anti-war pacifism.
著者
角田 光淳 井上 典子 青柳 康夫 菅原 龍幸
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.153-160_1, 1993
被引用文献数
4 4

ベニテングタケによる食中毒防止の観点から, 言い伝えられている保存法や調理加工法に準じてイボテン酸 (IBO) 及びムシモール (MUS) の消長を調べた. IBOは容易に脱炭酸されてMUSになり, それが幻覚を引き起こすことが知られている. 本研究の結果, 1) 乾燥するとIBOは減少するがMUSが増加し, MUSによる生理作用は強まるものと思われる. 2) 乾燥保存中のIBO及びMUSは安定で, また短期塩漬保存では両者の変動はわずかで, その生理活性を失うことはないと思われる. 3) 10分程度の加熱調理では, 両者の変動はわずかで, 無毒化を期待することはできない. 4) 湯がきや水さらしにより, 両者の含量は大きく減少したが, 実際には個体差, 喫食量及び他成分の影響等を考えるとこれらの処理は推奨される調理方法とはいえない.
著者
石渡 俊江 植竹 勝治 江口 祐輔 田中 智夫
出版者
Japanese Soceity of Livestock Management
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.179-184, 2007-12-25 (Released:2017-02-06)
参考文献数
18

本研究の目的は、肉牛の屠殺時血液性状と肉質における夏季と冬季の違いを調査することであった。夏季(18.9〜28.4℃)に15頭、冬季(4.9〜7.0℃)に20頭をトラックで近くの屠場へ輸送した。牛は屠場の待機ペンで一晩休憩した後、1頭ずつ屠殺された。血漿コルチゾール濃度と血中グルコース濃度は、冬季より夏季に有意に高くなった(ともにP<0.01)。血清pHと血清総タンパク質濃度は、冬季より夏季に有意に低くなった(ともにP<0.01)。これらの結果から、夏季は牛にとってより過酷な状況であることが示唆された。その主な原因としては、屠殺前に一晩中絶水されたことが考えられた。血清遊離脂肪酸濃度は、夏季より冬季に有意に高くなった(P<0.01)。血清ASTと血清ALTの活性は、夏季より冬季に有意に高くなった(ともにP<0.05)。冬季にみられたこれらの生理反応は、屠殺前に一晩中絶食されたことによると考えられた。しかし、これらの生理反応は肉質に影響するほどではなかった。さらに、人による牛の扱いにも季節による違いがみられなかった。本研究の結果から、屠殺前に一晩、完全に絶水することは家畜福祉的見地からも避けるべきであると考えられた。
著者
吉井 めぐみ 清水 邦夫 古津 年章
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.75-87, 2002-07-31
参考文献数
16

熱帯降雨観測衛星(TRMM)では,緯度約±37゜の範囲内において,緯経度5゜×5゜領域内の1ヵ月平均降雨強度が最終的なプロダクトとして求められる.TRMM搭載降雨レーダなどの降水レーダで直接に測定される量はZ因子(単位体積あたりの後方散乱断面積に比例する量で,一般に使われるレーダ周波数では雨滴粒径分布の6次モーメントに等しくなる)である.一方,気候や防災などの分野で重要な量は降雨循環であり,何らかの方法でZから降雨強度を推定する必要がある.降雨強度を算出するさいに,いくつかの仮定の下で,レーダ反射因子Z(mm<SUP>6</SUP>/m<SUP>3</SUP>) と降雨強度R (mm/h) との間にべき乗関係(Z-R関係) Z=AR<SUP>B</SUP> (A>0) の成り立つことが知られている.ここで,A と Bは定数である.<BR>本稿はZ-R関係のパラメータ推定を問題とした.気象レーダ観測で得られるレーダ反射因子Zと雨量計によって地上で計測される降雨強度Rとの関係を与えるパラメータの値を知ることは,TRMMにおいてよりよい降雨マップを得るための研究として重要である.Z-R関係の決定のために,これまで,回帰もしくは逆回帰法,分布関数マッチング法,モーメント分布関数比マッチング法,ローレンツ曲線を利用する方法が知られている.本稿では,logZ と logRについて正規線形構造モデルを仮定し,識別可能な場合としてlogRの分散を既知とした場合を採用した.TRMMが目標とする熱帯から中緯度にかけての降雨のうち,熱帯降雨に関しては対数正規分布の降雨強度分布への適合の良さが観察されていることと,降雨の種類や観測領域等によって適切に層別を行えば,対数正規分布の型パラメータはほぼ一定値をとる傾向があるという経験的事実が知られていることによる.ランダムな欠測が起こるかも知れない状況を想定したデータ構造の下に,モデルパラメータの最尤推定を論じた.
著者
松本 美枝子
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.206-214, 1988
被引用文献数
2

富山県等においてハクサイの主脈や葉脈に多数のゴマ状の黒色斑点の発生が認められた. この症状はゴマ症と呼ばれ, 発生の激しい場合は市場価格が著しく低下する. しかしゴマ症発生とその防止に関する報告は少ない.<br>本報告ではまずハクサイ生育中のゴマ症発生の特徴を調査し, さらに発生部位とその周辺を形態学及び組織化学的に観察した.<br>1. &lsquo;ひばり&rsquo;や&lsquo;耐病60日&rsquo;に認められるゴマ症の発生は, その現象から2タイプに分けられた. タイプ1は未成葉で発生し, 初期生育が異常促進されることと密接な関係があった. タイプ2は成葉で発生し, 結球重に対する外葉重の割合の低下が関係していた.<br>2. 形態学的には, 斑点発生に先だち, まず細胞内顆粒の肥大が認められ, その後細胞壁が褐変した. この細胞壁の褐変は, 細胞内顆粒や核の肥大と共にさらに拡大し, 周辺には原形質分離細胞が認められた.<br>3. 組織化学的には, 斑点発生部位にクロロゲン酸の存在とポリフェノールオキシダーゼの活性が認められ,その周辺にポリフェノールの存在とパーオキシダーゼの反応が認められた.<br>4. 褐変細胞の顆粒周辺に亜硝酸の分布が認められ, 細胞内顆粒の肥大が認められる部分と一致した.

2 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1913年11月05日, 1913-11-05

2 0 0 0 OA 富貴長命丸

著者
近藤, 清春
出版者

『富貴長命丸』は内題による。原題簽はないが内題が完全な題名と思われる。巻末に「ゑし近藤清春筆」とあり、画だけでなく案も文も清春であろう。前後の見返を使用する製本様式で、見開き5場面で完結している。この製本様式は草双紙の初期の姿とみられ、中本(17.7×13.3cm)の大きさで、原装はおそらく丹表紙の〈赤本〉であったと思われるか、今のところ他に存在が知られず、推定の域を出ない。
著者
Hasan DURMUS Selen DURMAZEL Aysem ÜZER Bahar GÖKDERE Erol ERÇAG Resat APAK
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
Analytical Sciences (ISSN:09106340)
巻号頁・発行日
vol.34, no.12, pp.1419-1425, 2018-12-10 (Released:2018-12-10)
参考文献数
55
被引用文献数
7

Cannabis is an important industrial plant, in addition to its illicit drug use. Compound Δ9-THC (Δ9-tetrahydrocannabinol) is mainly responsible for the hallucinogenic effect on humans. The aminoalkylindole group cannabimimetics targets at the same physiological receptors to mimic the analgesic effects of Δ9-THC. Since there is no reliable colorimetric test to detect these synthetic cannabimimetics on site, a simple colorimetric assay for (aminoalkyl)indole group-containing drugs was developed, based on the silica/sulfuric acid-catalyzed Ehrlich reaction of (aminoalkyl)indoles with p-dimethylaminobenzaldehyde. The electrophilic substitution reaction of indoles with carbonyl compounds resulting in the formation of bis(indolyl)alkanes in an acid-catalyzed reaction has been used for the first time for their spectrophotometric determination by color change from yellow to purple/blue. The method was statistically validated against liquid chromatography tandem mass spectrometry, and applied to certain (aminoalkyl)indole derivatives, with 0.5 – 2.5 μg mL−1 detection limits for AM-2201, JWH-081, MAM-2201, JWH-018, JWH-210, JWH-122, 5F-PB-22 and XLR-11.
著者
村舘 靖之 須藤 修
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.3-9, 2013-08-31

本稿は貨幣と情報文化という観点からの試論である。貨幣の本質は,情報であり,文化である。我々は貨幣の4次元性という概念を提示する。貨幣は,時間と空間を越えて移動が可能な存在である。情報概念も時間と空間を越えて容易に移動する存在である。貨幣と情報は,4つの次元を容易に移動ができるという共通点を持つ。貨幣は自然界ではなく,人間によって生み出された文化である。今,ここで情報貨幣論について論じるのは,貨幣の存在,その情報・文化的性質が,貨幣経済に内在する本質的な不安定性,つまり貨幣的不均衡を生み出すからである。経済危機に代表される貨幣経済の不安定性や不均衡のあらわれは,標準的な動学的一般均衡理論に貨幣に関する新しい理論を加え,補完する必要性を示唆している。
著者
柴村 恵子 望月 照子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.53-61, 1982-03-31

東南アジアの大陸部には伝統文化を異にする幾種類もの少数民族が入り交って分布しているが,これらのうちケシ栽培で知られ,少数民族の中でも多数の人口を占めるメオ族の,タイ国における生活と民族服について調査研究を行い,彼らの生活習俗において次の諸点を把握することが出来た.1.タイ国でのメオ族は,チェンマイ,チェンライ,ターク,カンぺンぺト,ロエイ,ぺチャブーンの北部を中心に分布している.その由来については,「メオ」とはタイ人がつけた呼び名である.彼らは本来は水田耕作を行う種族で「苗」つまり「ミャオ」と呼ばれていたが,それがなまってメオとなり,支配者に不服従な野蛮人という意味に解されるようになった.しかし,彼ら自身は「自由な人」という意味の「フモン」あるいば「モン」といっている.2.彼らの衣生活は,夏冬,日常着,外出着,儀式用といった区別が基本的にはない.現在タイ国には青メオ族が約58%,白メオ族が約42の割合で住んでいるが,これは主に衣服の色の違いによって区別されたものであり,青メオ族の女性は,ろうけつ染めのプリーツ・スカート,白メオ族は白のプリーツ・スカートにその特色が見られる.3.食生活は米と野菜が主食であるが,正月には精霊に豚や鶏のいけにえをささげ,それを食する.しかし,この間野菜は食べない.4.部落の構成は小村集落であり,20軒位が平均的部落の規模である.又,一戸当たりの住人は6〜7入が標準となっている.家屋は平土間式であるが,貯蔵庫は湿気とねずみの浸入を防ぐため高床式となっている.5.メオ族は宗教としてアニミズムを信仰し,種祖神は「槃瓠(ばんこ)」と称する霊犬であり,聖霊には豚や鶏のいけにえをささげる習慣がある.6.メオ族の結婚は,男女の結びつき以前に霊の結合という思想が強く,徹底した同姓不婚である.7.民族服は彼らの仲間意識を強調するものであり,特に女子の衣服や装身具には種族固有の色彩感覚や,デザイン思想が山地民族の生活と調和して着用されている.しかし,衣服本来 の機能との関係については今後の課題であると考えられる.8.近年ではタイ政府の政策により,小学校の建設,政府指導の産業の奨励などにより,山地民族特有の生活も平地化されてしまう日もそう遠くはないのではないかと思われる.最後に本研究を行うに当たり,終始懇切な御指導を賜わった岐阜大学教授中野刀子先生,御助言及び御校閲をいただいた名古屋女子大学教授栃原きみえ先生,又,資料の提供を下さった国立民族学博物館並びに現地調査に当たり格別の御協力をいただいた鈴木自動車工業株式会社社長鈴木修氏をはじめ,タイ鈴木モーター株式会社のチャチャイ,カネーの両氏に対し深く感謝の意を表する次第である.
著者
大槻 則行 木村 清次 根津 敦夫 相原 雄幸
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.318-322, 2000-07-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
12

インフルエンザウイルス感染に伴う急性脳症は一般的に予後が不良な例が多く, 従来の治療法では重篤な神経学的後遺症を残すことが多い. 今回, インフルエンザウイルス感染に伴って発症した急性脳症の2例に軽度低体温療法とステロイドパルスの併用療法を行った. 1例は中枢神経症状出現後の7日目に入院し, 顕著な脳浮腫および脳波の低電位化を認めたが死亡には至らず, 経口摂取可能の状態で退院できた. 他の1例は入院時に両側前頭部優位の皮質浮腫を認めたが治療の結果, 中等度の知能障害にとどまった. 上記の治療法は新たな一つの手段になると考えられた.