著者
高田 宜武 阿部 寧 長尾 正之 鈴木 淳 小林 都 大井 理恵 橋本 和正 渋野 拓郎
出版者
The Japanese Coral Reef Society
雑誌
日本サンゴ礁学会誌 (ISSN:13451421)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.7, pp.37-48, 2005
被引用文献数
6

サンゴ礁生態系は世界的に劣化しつつあるといわれており、陸域から流入する「赤土」等の懸濁物粒子による海水濁度の上昇が、その要因の一つとして挙げられている。そこで、サンゴ礁池における海水濁度の変動レベルとその要因を知るために、石垣島浦底湾において2年間の採水観測を行った。岸近くの突堤表層では、濁度は2.26NTUを中央値とするが、変動幅が大きく、最高値92.9NTUを記録した。サンゴの生育している湾奥 (150m沖) と湾中央部 (370m沖) では、0.58NTUと0.36NTU (それぞれ表層の中央値) となった。海水濁度の変動要因として、降雨と風向の影響を解析したところ、降雨量と濁度の相関は弱いが、北西風により濁度が上昇する傾向があった。冬期に濁度が高くなるのは、冬期に多い北よりの風の影響だといえる。浦底湾のように、河川流入の影響が小さい礁池では、風波によって底質に沈殿していた粒子が再懸濁することと、表層に発達する高濁度かつ低塩分水の吹送が、礁池内の海水濁度に大きく影響すると考えられた。
著者
山川 卓也 芳川 洋 安藤 一郎 市川 銀一郎
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.284-290, 1995
被引用文献数
1

剣道愛好家の中に, 難聴者が多いと言われている。我々は剣道難聴の原因を検討するために, 面打ち時の竹刀の打撃音, 頭部の衝撃 (振動加速度レベル), 及び両者の周波数分析を行った。また実験には当大学剣道部員 (三段) 2名の協力を得て, 竹刀の打撃時の強さ, 部位をなるべく一定にするよう練習をした後に行った。その結果, 竹刀の打撃音圧は面紐を強く縛った場合が120dB以上で最も大きく, エアークッションをいれるとやや小さくなった。また振動加速度レベルも面紐を通常よりも強く縛った場合が77dB以上で最も大きく, エアーや羽毛のクッションをいれた場合に振動の抑制が著明であった。以上より, 竹刀による打撃により難聴が発症する可能性が十分に示唆され, 今回我々の推奨した緩和材を用いれば打撃音圧と衝撃が減少させることが可能であった。
著者
宮本 梧樓
出版者
THE PHYSICAL SOCIETY OF JAPAN , The Mathematical Society of Japan
雑誌
日本数学物理学会誌 (ISSN:21852715)
巻号頁・発行日
vol.17, no.10, pp.557-566, 1943

(1) 渦卷型の軌道をもつ特別な型のβ線分析器を作り, (§3) その性質を調べた. (§4) 分解能として線譜の幅を<i>Δ</i>Hρ/(Hρ) にて6パーセント位にすれば強度は全立體角4πの5パーセント程度に及び, 舊來の半圓焦點法その他で高々1パーセントに過ぎないのに較べてはるかに宜しい. (§5)<br>(2) 熱電子を0-3000ボルトで加速したものを用ひて分析器の性質を調べた. (§6) 線譜の幅を中間の點で2パーセント位にすれば全電子の約50パーセントは檢出器に達する. 一般の荷電粒子に應用すれば, 例へば質量分析器として利用される可能性が十分大きい.<br>(3) Th Bのβ線を電氣的に0-30キロボルトで加速して測つた. (§7, 1) 加速による譜の變形も少く, この方法は軟β線分析に利用出來る. 尚この際, 加速された冷放射電子のHρ値から加速電壓が知れる. § (7, 2)<br>(4) 譜の一部をくわしく調べる爲に, 一定磁場の下で加速電壓を變へることを試みた. (§7, 3) 即ち或勢力の電子をこの加速電壓の範圍でくわしく調べられる。<br>(5) 譜の強さを各點こついて夫々速された時の強さと比較して計數管の相對的感度を得た. (§7, 4)<br>以上の如く渦卷型β線分析器を試作して, その性質及び關聯事項の一班を試驗し, 二三の實驗には十分利用出來る事が分つた.
著者
村越 行雄
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学紀要 (ISSN:03899543)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.A37-A83, 1995-03-15

言語哲学において重要な研究領域として位置付けられている指示研究には, フレーゲ的研究方法と反フレーゲ的研究方法 (いわゆる指示の新理論家の研究方法) の対立が全般にわたって見られる。本稿では, 特に指標詞と指示詞を取り上げて, その対立点を検討するのが目的であり, 具体的には指標詞と指示詞に対するフレーゲ本人の説明, そしてそれに対立するペリーとウェットスタインの説明を比較・検討することになる。なお, 一般的に解釈されているフレーゲ像が, 必ずしもフレーゲの真意を反映しているものとは言いがたく, 従って擁護するにしても, また批判するにしても, フレーゲの主張をより正確に解釈する必要があり, その意味で指標詞と指示詞に対するフレーゲの説明を多少詳細に検討し, それに続いてフレーゲの主張を批判するペリーとウェットスタインの主張を明確にする為に, 指標詞と指示詞に対するペリーとウェットスタインの説明を比較・検討することにする。指標詞と指示詞に対する説明の相違は, 単純な言い方をすれば, 指標詞と指示詞の指示 (指示物) が意味によって決定されるとするのか, それとも言語的意味と文脈的要素によって決定されるとするのかの対立によるもので, その点を具体的に検討していくことになる。
著者
伊藤 直之 大谷 浩樹 山崎 孝 堀 秀昭 水野 勝則
出版者
新田塚医療福祉センター
雑誌
新田塚医療福祉センター雑誌 (ISSN:13492519)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-4, 2010-03-31

神経根症状を伴わない急性腰痛患者8例に対し、腰部運動時痛の軽減に焦点を絞り徒手療法を試みた。腰部運動時痛を発生する部位を抽出するために圧痛所見を確認し、圧痛が認められた椎間関節と仙腸関節にはモビライゼーションを、多裂筋と腰方形筋にはリラクゼーションの徒手療法を施行した。徒手療法の即時効果の判定には、腰部運動時痛の強さ、及び可動性運動時痛の強さ、及び可動性評価として腰椎後彎可動性テスト、長座位での体位前屈、上体反らしを徒主療法前後で測定した。その結果、腰部運動時の強さ、腰椎後彎可動性テスト、長座位での体位前屈、上体反らしのすべての効果判定項目で徒手療法後に有意な改善を認めた。徒手療法の即時効果の要因として、体幹伸筋群の筋スパズム軽減による伸張性向上や腰部可動性向上による機械的ストレスの軽減が挙げられ、これらの要因が腰部運動時痛の軽減に繋がったと考えられた。よって、徒手療法の即時効果として運動時痛軽減の効果が期待できることが示唆された。
著者
勝田 茂 高松 薫 田中 守 小泉 順子 久野 譜也 田渕 健一
出版者
社団法人日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.p141-149, 1989-09

Attempts were made to clarify whether or not fiber composition of the m. vastus lateralis could be predicted with running performance. Biopsy samples from 32 well-trained and 17 untrained adult males were examined for the percentage area of fast-twitch (FT) and slow-twitch (ST) fibers which might be related to the physical performance better than the fiber type distribution. In addition, each subject completed 50-m sprint and 12-min run tests. A multiple regression analysis revealed that in the trained males predictive accuracy (R^2) for the percentage area of FT fibers (% areaFT) from the ratio of a 50-m sprint speed to a 12-min run speed (50 m・S/12 min・S) was higher than that from most of other variables,e.g. 50 m・S, 12 min・S, or the combination of 50 m・S and 12 min・S; R^2 of 50 m・S/12 min・S was 80.3%(p&lt0.05). A positive correlation between 50 m・S/12 min・S and %areaFT also existed for the untrained subjects (R^2=63.7%, p&lt0.05). The linear regression equations of %areaFT (Y) on 50 m・S/12 min・S (X)were Y=-68.6 + 76.2X (r=0.896, p&lt0.05) and Y=-47.5 + 61.1X (r=0.798, p&lt0.05) for the trained and untrained males, respectively. There was no significant difference in the regression equations between the trained and untrained males. For all subjects, the equation was Y=-59.8 + 69.8X (r=0.876, p&lt0.05) and the standard error of estimate of %areaFT on 50 m・S/12 min . S was 8.86%. These results suggest that the performances of a 50-m sprint and a 12-min run are valuable indicators in, accurately, easily and noninvasively, predicting the percentage area of FT and ST fibers of the m. vastus lateralis from adult male.
著者
後藤 隆昭
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学社会文化研究 (ISSN:1348530X)
巻号頁・発行日
no.14, pp.109-122, 2016

The purpose of this study is to explore affective changes in Japanese college EFL learners after extensive reading of English newspaper articles. The activity was conducted as part of a general class and a remedial class. Both students were required to bring a Japan-related article they found interesting, take turns reading and attach a glossary to facilitate their work. Finally, a questionnaire survey was implemented, with a Likert scale, text-mining and the KJ method. As a result, students' images of English newspaper articles changed positively, and their interest in reading had been increased. Although there was no significant difference between those two classes, the activity worked for the remedial class. The students also found unexpectedly English newspaper articles easy to read. There is a widely held negative image of English newspaper articles; the image will be changeable in class.
著者
佐賀 一郎
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.53-62, 2009-07-31

明治初期に登場した近代的新聞は,1869(明治2)年から1870(明治3)年にかけてに上海美華書館からもたらされた活版印刷技術の技術的発達を牽引した。本稿では,近代的日刊新聞としてはじめて鉛活字を全面的に使用した『東京日日新聞』(1872〔明治5〕年2月21日創刊)を対象にその内容と意義を検討する。『東京日日新聞』の創業者らは,近代的新聞の発行の条件のひとつに活版印刷を数え,上海美華書館から輸入した五号相当の鉛活字を使用したが,必要字種の不足,活字の形状の問題等によって,ごく短期間で頓挫した。本稿では同紙の印刷面を確認し,その内容と,この経験が後にどのような影響を与えたのかを検討する。上海美華書館の印刷技師からもたらされた外来技術である活版印刷技術は,特に草創期においては,これをいかにして実地に利用するかが問題とされていた。短期間に終わったとはいえ,『東京日日新聞』において行われた鉛活字の使用は,競合紙と同様の自家印刷環境の整備を促しただけでなく,後に多くの新聞が追随して使用した五号活字を基準とした紙面体裁の整備を促した。
著者
滝本 裕子 鈴木 信孝 川畑 哲郎 只野 武 太田 富久 徳田 春邦 許 鳳浩 井上 正樹
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.69-74, 2013
被引用文献数
3

ハトムギ子実の熱水抽出エキスであるヨクイニンは,漢方薬として利用され,ヒト乳頭腫ウィルス性疾患である疣贅等に用いられている.ハトムギの子実の有用成分についてはいくつかの報告があるが,外殻,薄皮,渋皮についての薬理学的有用性については未だ明確になっていない.今回ハトムギの穀実(子実,外殻,薄皮,渋皮)のメタノール抽出エキスの癌細胞に対する作用と有用成分に関する検討を行なったところ,抽出エキスの一部の画分は HeLa 細胞(ヒト子宮頸癌由来)に対して有意な細胞増殖抑制作用を示した.さらに,増殖抑制作用が認められた画分から化合物として 5,7-dihydroxychromone と coixol を単離した.以上より,ハトムギ穀実のメタノール抽出エキスは癌予防に有用である可能性が示された.<br>