著者
岡本 佳子
出版者
Institute for Cultural Interaction Studies, Kansai University
雑誌
近代世界の「言説」と「意象」 : 越境的文化交渉学の視点から
巻号頁・発行日
pp.181-211, 2012-01-31

Okakura Kakuzō (1863-1913) is a Japanese art critic famous for his phrase "Asia is One." This paper argues that Okakura "discovered Asia" when he visited India for the first time in 1901-02. At the turn of the twentieth century, non-Western intellectuals began to cross borders in order to pursue national goals, including anti-colonial struggles and cultural "revival" movements. The benefits of a Western education allowed some to engage in writing and speaking activities in Western languages, mostly English. Following the lead of Indian scholars, Okakura and other Japanese thinkers entered the international intellectual arena. He and others like him sought to portray the "East" as a civilization with universal values, placing it on equal terms with the West. In India, Okakura associated with Bengali elites such as Swami Vivekananda (1863-1902) and members of the Tagore family. Vivekananda was a man of strong national consciousness and universal views who asserted that being "Hindu" or being "Indian" also meant being "universal." The confidence and national consciousness of the Bengali elite had a strong infl uence on Okakura's creation of the idea of "Asia." During his stay in India, Okakura completed his first book in English, The Ideals of the East with Special Reference to the Art of Japan (1903) which began with the symbolic manifesto "Asia is one." In this book, he presented his idea of "Asia" not as a mere geographical concept but as a civilization with China and India as the two major sources of culture and with vast areas nonetheless united in "the Ultimate" of beauty and religion. One motivation to reveal the heights of "Asian" civilization was Okakura's belief that non-Western peoples needed a reliable standard for self-recognition independent from the Western standard. He wrote this book not only for a Western audience, but for Indians who were conversant with English. Okakura felt political sympathy for colonial India under the historical situation of Bengal where the mental and social preparation for the Swadeshi Movement from 1905 was gradually beginning. However, Okakura could not help realizing that he and Bengalis could communicate with each other only in English, the suzerain language. And he became sensitive to how the Western point of view influenced non-Western people and their interactions with each other. In this historical context, Okakura's idea of "Asia" was meant to be effective as a suggestion of reforming the cultural identity of non-West. But The Ideals of the East had another purpose with regard to Okakura's special field of Japanese art. He put Japan in the position of "a museum of Asiatic civilisation" which preserved the essence of the artistic legacies of "Asia." And thus Japanese art acquired an aesthetic value that matched its Western counterpart. On the contrary, Okakura had to prove that Japanese art was not a mere epigone of China and India but had its own unique significance and originality. This book shows while Okakura located Japanese art within the stream of beauty of "Asia," his nationalism made him seek for a Japanese "spirit" that had continued throughout history from ancient times to modify "continental" styles and produce a "national" element in art. In Bengal, Okakura set himself this complicated task to create a monolithic cultural identity known as "Asia" and to universalize Japanese art while, at the same time, he sought to particularize it as a unique national culture.
著者
石黒 宗秀 大島 広行 小林 幹佳 森崎 久雄 田中 俊逸
出版者
日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.274-278, 2014

土壌は,多量の電荷を持っており,多い場合は, 1m3あたり1 億クーロンに達する.これは, 1kW の電気ストーブを120 目問つけっぱなしにして流れる電気量に相当する.これに起因する特性は,土壌に様々な現象を引き起こす.アロフェン質火山灰土下層土にイオン溶液を種々pH で浸透させると,pH が高くなるほどカチオンは流出が遅れ,アニオンは流出が速くなる.これは,pH が高くなるほどアロフェン質火山灰土の負電荷量が増え,正電荷量が減ることにより,静電吸着量が変化するためである.アロフェン質火山灰土(B 層)をカラムに均一に充填し,種々のpH の1mM 塩化ナトリウム溶液を飽和浸透させて,その飽和透水係数を測定した.図1 に示すようにpHが高くなったり,低くなったりすると,飽和透水係数が小さくなる.これらの原因を検討するため,土壌の分散凝集実験を行った.1mM 塩化ナトリウム溶液中に土壌を加え,種々pH に平衡させて良く振とうし,振とう直後の濁りと,振とう静置12 時間後の濁りを濁度計で測定したところ,pH4 以下およびpH 10 以上で良く分散し,その間のpHでは凝集した.土壌が分散するのは,電気的反発力が発生するためである.分散しやすい条件では,土粒子表面近傍に形成される拡散電気二重層が厚くなり,そのため,土粒子同士が接近した状態では,拡散電気二重層が重なる.その状態においては,粒子間の濃度が外液中の濃度より高まるため,浸透圧差により土粒子間に反発力が働く.この電気的反発力の大きさを評価するため,ゼータ電位(土粒子近傍の電位)を用いて電気的反発ポテンシャルエネルギーを計算した.分散条件では,大きな値となり,凝集条件では小さな値を示し,飽和透水係数の変化と良く対応した.飽和透水係数が低下するのは,その溶液条件で電気的反発力が大きくなり土粒子が分散して,粗間隙を目づまりさせたためである.土壌の電荷特性とイオンの吸着状態は,イオン移動の遅速,土壌構造の変化,透水性の変化をもたらすため,養分移動,汚染物質移動,土壌侵食,農地の水利用,流域の水・物質循環等の農業や環境問題と密接に関係する.また,有機物で覆われた土粒子や微生物は,柔らかいコロイド粒子として,その界面電気特性を捉える重要性が指摘されるようになり,関連する現象の理解と応用が進展している.2013 年名古屋大会でのシンポジウムでは,界面電気現象の基礎理論を平易に解説した.そして,測定法と現状における課題,微生物の固体表面への付着,汚染土壌の修復技術についての研究の講演へと繋げた.難解なイメージがあり敬遠されがちな界面電気現象の基礎を理解し,今後の基礎及び応用研究の展開をもたらす機会となればと考える.
著者
小杉 雅俊
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.59-73, 2012-03-08

本稿の目的は, イギリス企業における品質原価計算を検討することにより, その実態を明らかにすることである。第II章では, 品質原価計算が成立したアメリカの動向を整理し, 品質コスト概念を中心に品質原価計算の適応領域が拡大したことを確認している。第III章ではイギリスにおける個別企業の事例を対象とした分析である。事例として調味料製造企業, ヘルスケア関連企業を扱っている。コスト低減という目標において, 現場に対しては時間の削減という具体的な指示を行う企業, 機会原価概念を導入する企業があり, 品質コストの全体像を把握しようとする傾向があった。最後にイギリス企業における品質原価計算の特徴を検討し, 近年の実態を明らかにしている。 アメリカの品質原価計算は未来志向となっており, 全社レベルでの実施を重視する。その一例である機会原価概念の導入はイギリス企業でも実践されていた。機会原価を誘発する失敗活動の認識は, 改めて経営の全体的観点からの判断を要請する。品質原価計算を管理会計システムとして運用するか, 既存のシステムの中で運用するかは別として, 品質の重要性が低くなることは考えられず重要な技法であることには違いない。
著者
畑村 透
出版者
九州工業大学
巻号頁・発行日
2015

近年、世界各地で超小型衛星(50kg 以下)の開発が盛んに行なわれている。超小型衛星は低コスト・短納期という特徴があるが、それは地上民生用の既製品(以下、COTS品)を利用することで成し遂げられることが多い。COTS 品は宇宙用に設計されたものではない。宇宙環境試験は、超小型衛星の信頼度向上に重要な役割を担っている。宇宙環境試験では、振動・衝撃・熱真空・熱サイクルなど、さまざまな種類の試験を行う。その中でも衝撃試験は、最も実施困難な試験のうちの一つで、未だ確実な手法が確立できていない。これらの状況から、超小型衛星用の衝撃試験機の開発が、超小型衛星市場の拡大や、信頼性の向上に繋がる急務であると判断し、研究・開発を進めるに至った。本論文の第1章では、研究背景や衝撃試験の評価方法のレビューを行い、ロンチャ―側・衛星開発者それぞれの立場における試験目的を説明している。ロンチャ―側が衝撃試験を行う目的の根幹にあるものは、主衛星の相乗りが基本である超小型衛星が、構造破壊や誤作動によって主衛星へ被害を及ぼさないことを確認することである。衛星開発者側の試験目的は、ロンチャ―の要求事項を満たすこととも言えるが、打ち上げや衛星分離によるダメージに耐え、無事に宇宙へ届けたいという思いも当然持っている。よって打ち上げ前に、衛星機能が衝撃環境に耐え得るかを確認することは、大いに意義のあることである。以上に加えて、超小型衛星向けの衝撃試験機がどのような要素を持つべきなのか考察を行い、最終的に、低コスト、衝撃レベルのコントロールしやすさ、再現性の良さを満たした試験方法の開発を、本研究の目的として定義している。第2 章では、衝撃試験機にどのようなタイプがあるかレビューを行い、超小型衛星用として最も適している試験方法を考察している。その中でも衝撃レベルの調整の自由度が大きい「機械的インパクト試験方式」が、最も超小型衛星に適していると判断した。その結果から、同じ「機械的インパクト試験方式」に分類される、コンパクトハンマー式やMO(前野・小口)バルブ式衝撃試験機(以下MO バルブ式)を製作したので、その紹介を行う。また、衝撃計測のプログラムとして、市販品は非常に高価な上にフルオートで計測・解析等ができない。そこで、汎用の計測制御ソフトであるLABVIEW®を用いて計測プログラムを作成した。この計測プログラムの特徴や使用方法についても説明する。第3 章では、第2 章で製作した2 つの試験機とさらにもう1 機(吊り上げ型錘落下式)を加えた3 機で、衝撃試験を行った結果を記載する。衝撃試験はダミー衛星を用いており、衝撃レベルの評価を行うベース部分及び、及びダミー衛星内部の衝撃レベルを比較し、考察を行った。その結果から、吊り上げ錘落下式が300Hz 以下で、衝撃レベルが不足しやすいこと、コンパクトハンマー式は、衝撃レベルを十分満足できる反面、300Hz~2000Hz で若干強めに出る傾向にあること、MO バルブ式が最もコントロールしやすい試験機であることを示している。第4 章では、実験とCAE(Computer Aided Engineering)解析の両方を比較検討することで、衝撃試験の問題点として挙げられる、低周波側の衝撃レベルを制御する手段を考案した。CAE 解析では、主に300Hz 以下の領域において実験値と解析値の比較を行った。その結果、衝撃レベルを判断する計測位置(衛星を設置するベース板)において、CAE解析値は実験値を最大約11%の誤差で再現できた。このように、先ず解析の精度を確認した上で、別の境界条件に応用した。本論文では、衛星を設置するベース板の摩擦係数に着目し、摩擦係数を変化させることで衝撃レベルを制御することを考えた。CAE解析を行った結果、300Hz 以下の低周波側において衝撃レベルが変化することが示され、仮説が実証された。第5 章では、本論文の総括を行い、コストや衝撃レベルのコントロール性や再現性の観点から、超小型衛星に適した衝撃試験方法は、MO バルブ式を用いたものであることを結論づけている。また、CAE 解析の今後の可能性についても言及した上で、今後の研究の方向性についてもまとめている。
著者
平田 未季 阿部 祐子 嶋 ちはる
出版者
秋田大学国際交流センター
雑誌
秋田大学国際交流センター紀要 (ISSN:21869243)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.23-50, 2018-03

本稿では,秋田大学と国際教養大学の間で行われた留学生を対象とする日本語合同授業の実践の詳細を報告するとともに,異なる大学に所属する留学生同士の交流からどのような学びが得られるのかという点について考察する。筆者らは,秋田市に留学しているという共通点を持ちながら,異なる環境で生活する学生が交流することで,自らの置かれた環境の類似点や相違点を比較することができ,互いに共感や刺激が生まれるのではないかという仮説のもと,2 回に渡り両大学間の合同授業を実施した。本稿では,第1回目の合同授業の準備過程,活動内容の詳細,学生の反応,第1 回目の実践で生じた課題およびそれを踏まえた第2 回目の実践内容を示すことで,異なる大学が,既存のクラスの中で合同授業を行う方法の1 つを提示する。また,従来は日本人学生と留学生の間で行われることが多く,「留学生-日本人」,「自国文化-日本文化」といった二項対立になりがちな多文化クラス活動が,異なる大学の留学生間で実施されることで,新たな学びの機会となりうる可能性を指摘する。
著者
桂 博章 KATSURA Hiroaki
出版者
秋田大学教育学部
雑誌
秋田大学教育学部研究紀要 教育科学 (ISSN:03870111)
巻号頁・発行日
no.53, pp.17-24, 1998-03-01

In Japanese Folk Songs, minute ornamental tones named 'kobushi' (short tune) are used. And 'kobushi'were not used so often when Japanese Folk Songs were sung by unison.The principles of the usages of 'kobushi' in the melodies are as follows.1. It is used when specific tone in the melody has long duration.2. It repeats the part of the fundamental melody that appeared just before.3. Some part of the fundamental melody chages into 'kobushi'.4. It complicates the part of the fundamental melody.5. It can become the part of the fundamental melody.The role and the function of 'kobushi' are to give the unstableness and the strain both rhythmicallyand melodically so that the unstableness and the strain are resolved at the next tone that follows 'kobushi'.
著者
滝浦 真人
巻号頁・発行日
2017-03-23

Hokkaido University(北海道大学). 博士(文学)