著者
田中 尚 藤森 裕二 貝戸 清之 小林 潔司 安野 貴人
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.329-341, 2010

浄水場施設のアセットマネジメントにおいて,コンクリート版に対する維持管理が重要な課題となっている.短・中期間を対象とした中性化速度式では,中性化深さが経過年数の平方根に比例するという仮定(以下,「ルート<i>t</i>則」と略す)が採用されている.しかし,アセットマネジメントの対象となる長期間に及ぶ中性化過程に関しては十分な知見が蓄積されていない.本研究では,浄水場施設のコンクリート構造物を対象に,長期にわたって蓄積された中性化深さの測定データに基づいて,長期的な中性化過程を解析するための加速劣化ハザードモデルを提案する.さらに,ルート<i>t</i>則に関する統計的仮説検定の結果,少なくとも対象とした長期間のデータに関してルート<i>t</i>則は棄却され,現実の中性化過程はルート<i>t</i>則より,加速して進行することが判明した.
著者
濱中 康治 志村 圭太 梅村 悟 永井 洋 伊藤 博子 中島 啓介 長崎 稔 木村 鷹介 中村 拓成 田中 尚喜 柏口 新二 岡田 知佐子 紙谷 武 石崎 一穂 片野 裕司
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101523-48101523, 2013

【はじめに、目的】成長期における野球肘においては、発育途上にある骨端骨軟骨の障害が多いことに特徴がある。なかでも離断性骨軟骨炎とも呼ばれる、上腕骨小頭骨軟骨障害(以下OCD)は進行すると治療に難渋するため早期発見が望まれる。OCDの早期発見を目的として、1981年から徳島県で実施されている野球肘検診をはじめ、全国各地で野球肘検診活動の取り組みが行われ、その活動は広まり始めている。その多くは、各地の野球教室や野球大会と合同で開催され、野球教室や大会の現場での検診が実施されているが、大規模な検診になると、より多くの機材やマンパワーが必要となるため、都市部での野球肘検診の実施には高いハードルがある。当院では、都市部における野球肘検診活動として、2010年より医療機関内における野球肘検診を実施している。OCD発症予防のための啓発活動と野球肘検診活動の更なる拡大を目的として、その取り組みの紹介とこれまでの検診結果を報告する。【検診方法】当院では1ヵ月に1度、平日の午後6時から、スポーツ健康医学実践センター内で野球肘検診を実施している。野球肘検診については、その目的と機能から保険外診療とし、1件の受診料は2500円に設定している。対象はOCDの好発年齢・保存的加療の適応年齢を考慮し、原則として10~12歳の小学生としている。理学療法士(以下PT)による理学所見評価、臨床検査技師による超音波画像検査(以下エコー検査)、医師による総合評価を実施する。 理学所見評価については、肘関節屈曲・伸展の他動運動時の疼痛と可動域制限の有無、内側上顆・腕橈関節・肘頭の圧痛、外反ストレステストでの疼痛、手関節屈筋群(上腕骨内側上顆に起始するもの)の筋委縮、橈骨頭の肥大、尺骨神経溝部での尺骨神経亜脱臼の有無を評価し、その他、肘関節以外にも利用者が疼痛を訴えた箇所に必要な所見を評価している。エコー検査では前方・後方から上腕骨小頭の不整像の有無とその程度を評価し、それらの結果から、医師による総合評価で二次検診の必要性を判断し、二次検診の必要ありと判断された利用者には、医師が紹介状を作成し、医療機関での精査を勧めている。【倫理的配慮、説明と同意】今回の報告におけるすべての調査は電子カルテを用いて後方視的に行っており、対象者に有害事象は生じなかった。また匿名性の保持と個人情報流出には十分留意した。【検診結果】2010年6月から2012年11月までに、延べ119名の利用があった。年齢は10.5±1.1才だった。理学所見評価での異常所見は肘関節の他動運動時痛3名(2.3%)、可動域制限39名(32.8%)、内側上顆の圧痛10名(8.4%)、肘頭の圧痛1名(0.8%)、腕橈関節部の圧痛0名(0%)、外反ストレステストでの内側部痛20名(16.8%)、手関節屈筋群の筋委縮2名(1.7%)、橈骨頭の肥大4名(3.4%)、尺骨神経溝部での尺骨神経亜脱臼3名(2.5%)に認められた。エコー検査での異常所見を認めたものが6名(5.0%)であった。医師の総合評価によって二次検診の必要ありと判断されたのは27名(22.7%)で、肘内側部障害の疑い18名、OCD疑い6名、上腕骨近位骨端線障害1名、体幹・下肢の骨軟骨障害疑い4名だった。二次検診の必要ありと判断された利用者27名のうち、当院でのフォローアップを実施したものは18名(66.7%)であった。【考察】OCD疑いと判断された6名のうち、3名が肘内側部に圧痛・外反ストレス痛を認めた。1名は肘関節の伸展制限のみを認めたが、2名についてはエコー所見以外、全ての所見で異常は認められなかった。一般的にOCDは投球時の肘外反ストレスによる肘外側部への圧迫・剪断力によって生じ、外側部に疼痛が出現するとされているが、当院の野球肘検診でOCDが発見された6名はいずれも肘外側部の理学所見は認めなかった。このことは早期のOCDは理学所見に乏しく、OCDの早期発見にはエコー検査が有用であることを示すものである。また、当院でフォローアップを実施したOCD疑い5名の中で、定期的な野球肘検診の必要性を示唆する1例を紹介する。初回の検診時(10歳10ヶ月時)にはエコー検査を含めた全ての所見で異常を認めなかったが、その7ヶ月後(11歳5ヶ月時)の検診で外反ストレステストでの内側部痛があり、エコー検査で初期のOCDが発見された。その後、投球動作を禁止することで約7ヶ月後に良好な骨化が確認され、競技復帰が可能となった。この経験から、当院では10歳前後のOCD好発年代には定期的な検診の必要性を啓発し、6ヶ月に1度の検診を勧めている。【理学療法学研究としての意義】医療機関における野球肘検診を紹介することで、野球肘検診を実施できていない地域にも野球肘検診を広め、PTがその活動に参加することにより、より多くの野球プレーヤーを障害から守ることが可能になる。
著者
沼尾 啓 田中 尚貴 岡崎 哲夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. USN, ユビキタス・センサネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.138, pp.27-32, 2008-07-10

介護者の負担を軽減することを狙いとした携帯電話を用いた介護支援システムについて報告する。本システムは、携帯電話で寝たきりの被介護者の状態を遠隔で確認するとともに、遠隔で電動ベッドを制御して被介護者の姿勢を変える、室温、照明、カーテンの開閉などの制御を実現する。遠隔操作の動作確認を行うために模型の電動ベッドを作成するとともに、これを用いて映像に関する基礎的評価実験を行った。その結果、現状の携帯電話の通信速度・品質でも被介護者の状態を映像で確認することが可能であること、寝起きと寝返りの動作を遠隔から確認・制御するには異なる2つのカメラアングルが必要であることを明らかにした。
著者
田中 尚人 坂井 華海
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.22-00350, 2023 (Released:2023-10-20)
参考文献数
19

高齢社会を迎え,国際的な気候変動や頻発する災禍のなか,持続可能な地域運営のため地域風土に根差した知恵や技を継承することは有用である.本研究では,クロスロードゲームのアーカイブ機能に着目し,対話を重視し,日常と非日常とを繋ぐ追体験を可能とする記憶の継承について考察した.本研究の目的は,クロスロードゲームの作問における語り継ぎの場の構造とその内容の諸相を明らかにすることである.研究対象地は,近年様々な災禍を経験してきた熊本県熊本市,菊池市,あさぎり町の3市町とした.クロスロードの作問内容を分析した結果,自分⇔他者,能動⇔受動の2軸をもって,語り継がれた場を理解することできた.また作問された内容と場は,他者の経験も含め誰もが追体験可能なジレンマとして語り継ぎの場において継承される可能性が示された.
著者
田中 尚道 本村 孝幸 本村 信人 高田 孝充 柏 秀和 駒井 功一郎 TANAKA Naomichi MOTOMURA Takayuki MOTOMURA Nobuhito TAKADA Takamitsu KASHIWA Hidekazu KOMAI Koichiro
出版者
近畿大学資源再生研究所
雑誌
近畿大学資源再生研究所報告 = Annual report of the institute of resource recycling of Kinki University
巻号頁・発行日
no.7, pp.17-21, 2009-03-01

[Synopsis] From respect of initial cost and running cost to method making of organic waste by brandling compost a generation of greenhouse gas little, and method of making advantageous organic waste compost. Moreover, exhausted earthworm manure provided with the condition as compost, and was suggested the possibility to be able to use for the number of microorganism groups to grow a lot of crops. Therefore, the clarified necessity was admitted in physiology morphology the influence on the growth of crops of earthworm manure in the future and amount.
著者
出村 嘉史 川崎 雅史 田中 尚人
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.387-394, 2001-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

本研究では、絵図や文献などの歴史的資料の分析やヒアリング調査、現地の観察をもとに、近世円山界隈に存在した時宗寺院の空間構成を明らかにした。急傾斜である長楽寺では幾つかの平場を立体的に組み合わせて構成され、平場間の起伏が豊かな場所に庭園を造った。次に傾斜の大きい安養寺では、敷地内に起伏を持つ塔頭が立体的に組み合わせられ、建築と庭の多様な位置関係が視線の多様性を産み出した。そして緩傾斜の双林寺では平面上に並んだ塔頭で構成され、立体的な空間構成を造る為に築山や借景が用いられた。このように豊かにつくられた空間では、後に席貸が行われ、飲食、宴席が積極的に行われ文化的交流の場として利用された。
著者
畠山 誉史 田中 尚人 佐藤 英一 内村 泰 岡田 早苗
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.49-54, 2011
被引用文献数
1

植物質発酵食品から分離された乳酸菌(<i>Lactobacillus plantarum</i> SNJ81, <i>Lb. fermentum</i> SNA41, <i>Lb. </i><i>parabuchneri</i> SNC91, <i>Lb. delbrueckii</i> SNK64, and <i>Leuconostoc mesenteroides</i> subsp.<i> mesenteroides </i>10D-2)の食品由来の変異原物質における吸着能を検証した。食品由来の変異原物質は肉や魚のこげなどから検出されるヘテロサイクリックアミン(2-amino-1-methyl-6-phenylimidazo [4,5-b] pyridine (PhIP), 2-amino-3,8-dimethylimidazo [4,5-f] quinoxaline (MeIQx), 2-amino-9H-pyrydo [2,3-b] indole (AαC),3-amino-1,4-dimethyl-5H-pyrido [4,3-b] indole (Trp-P-1) and 2-amino-3,4-dimethylimidazo [4,5-f] quinoline(MeIQ))を用いた。乳酸菌のヘテロサイクリックアミン吸着能は様々であった。使用したヘテロサイクリックアミンの中で、Trp-P-1 が最も高く吸着された。そして死菌体に同等の吸着能を有しており、さらには人工消化液存在下でも吸着能を有していた。乳酸菌の変異原物質吸着に関する研究のほとんどは乳由来の乳酸菌を用いた報告である。本研究では、新規分離原として植物質発酵食品であるすんきに着目し、これまで検証されて来なかった植物質由来の乳酸菌を用いて高い変異原物質吸着能を有することが明らかとなった。
著者
安中 尚史 守屋 友江 笹岡 直美 中原 ゆかり 石井 清純
出版者
立正大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究はハワイに現存する日系仏教寺院を中心に、年度ごとに地域や宗派を変え、研究代表者・研究分担者の専門性に応じた役割を定め調査・研究に取り組む。特に先行研究などで取り上げられた 資料の内容を精査してリスト化し、本研究で体系化した新出・未整理資料や文化財が有する情報と対比することによって、日系人移民社会の中における仏教と僧侶の新たな関係性や、日本の宗派組織の中におけるハワイ布教の位置づけ、ハワイの信徒と日本の寺院との繋がりなど、宗派・寺院・僧侶・信徒の結びつきについて解明することを目的とする。
著者
對間 昌宏 野中 尚輝 竹内 啓 鎌野 智樹 中間 雅之 小池 束紗
雑誌
第79回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.1, pp.433-434, 2017-03-16

日本サッカーにおいてインテンシティが重要な課題となっている.しかし,インテンシティという用語は定義が曖昧であり,未だ具体的な指導方針・トレーニングに落とし込めていない.本研究では,インテンシティを定量的に評価するための指標となる要素を明らかにし,それぞれの要素の向上がもたらす効果を明らかにすることを目的としている.データは,J1開幕戦9試合のトラッキングデータ(ビデオカメラによって試合中の選手の動きを抽出し,選手の位置座標を記録したデータ)を用いる.分析においては,インテンシティを構成する要素,ポジションごとのインテンシティに関わるパフォーマンスの特徴,日本のチームと海外のチーム比較を実施した.
著者
田中 尚人 川崎 雅史 坪田 樹
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究論文集 (ISSN:13495712)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.109-116, 2004-06-15 (Released:2010-06-04)
参考文献数
41

This study focused on the development of Uji City under the modernization before the consolidation in 1951. Before modern age, this area had been famous for the sightseeing and the tea plant. Under the modernization, some infrastructures such as road systems, railway systems and electric generation systems were constructed in this area, and had consisted or sustained the image of this area.This study analyzed the influence of infrastructure toward urban landscape, urban life and the image of the city, and then clarified the city planning and management of the Uji City on the process of the modernization. The image of Uji City itself was not made revolutionized by the infrastructure, but elements of the image were updated taking advantage of the infrastructure. Therefore, the image of Uji City constituted before modern age have been succeeded.
著者
安中 尚史
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.703-710, 2017-03-20 (Released:2018-01-16)
参考文献数
5

The Nichiren sect’s first priest to study abroad was Matsuki Bunkyō 松木文恭, a pupil of Arai Nissatsu 新居日薩. Arai promoted the modernization of Nichiren Buddhism, and Matsuki studied English in Shanghai in 1886, and later went to the U.S. In those days, Arai engaged in educational reform of the Nichiren sect and organized subjects such as English and mathematics in the educational structure of Nichiren Buddhism, aiming at educational enrichment. Moreover, he had his pupils study not only at the educational facilities of the Nichiren sect but also at Keiō Gijuku 慶応義塾. Arai recognized the educational importance of the times, and we may conclude that he had Matsuki study abroad so that his pupil could acquire Western knowledge, and pursue language study. This paper considers the conduct of Matsuki and the regulations for students from the Nichiren sect studying abroad.
著者
田中 尚人 川崎 雅史 亀山 泰典
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.385-391, 2004-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
34
被引用文献数
1 1

本研究では, 明治初期から昭和戦前期までの近代化プロセスにおいて, 鉄道及び電気軌道によって支えられた都市形成の過程を実証的に分析した. 都市骨格を形成する鉄道・軌道網と, 都市活動の触媒装置として機能する都市施設の発達プロセスに焦点を当て, これらの関連性について考察を行った. 都市施設配置の変遷を分析し都市活動を考慮することにより, 近代京都の都市計画では, 郊外部が「風致」のための空間として認識されていたこと, また直接的な都市部への鉄道の乗り入れは見られず電気軌道網が人々の足となり都市施設立地が進んだことが特徴的であり, 郊外部における「観光」という都市活動を含む都市文化の形成に役立ったことが分かった.
著者
鈴木 桂輔 五藤 光 田中 尚
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.193-198, 2009 (Released:2010-08-10)
参考文献数
6
被引用文献数
1

樹木の香り成分であるα-ピネンを供給した場合のドライバの運転特性について,供給濃度と意識レベルとの相関を分析し,意識レベルの向上効果について考察した.また,この香りを供給した場合と衝突防止警報を提示した場合の運転特性の差異について分析し,予防安全の観点での両者の有効性について考察した.
著者
加藤 秀卓 田中 尚喜 金 景美 高橋 剛治 室生 祥
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C3P2385, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】骨粗鬆症における脊椎圧迫骨折(以下圧迫骨折)患者は高齢者に多い.臨床症状は、無症状のものから日常生活動作に障害をきたすものまで様々である.当院では保存療法,体幹装具着用下にて可及的早期に離床させることを目指しているが、起き上がり時に強い腰背部痛(以下疼痛)を訴え、プログラムが停滞することが多い.我々は疼痛が起き上がりを阻害し長期臥床を生じさせていると考え、今回、圧迫骨折患者の起き上がり方により疼痛及び起き上がり自立までの日数に差異があるか否かを検討した.【対象】2008年3月から10月の間に当院にて新鮮圧迫骨折と診断され入院し、本研究の趣旨を説明し、同意を得た患者18名(男性4名,女性14名、平均年齢73.7±11.7歳、体幹装具軟性12名,硬性6名、受傷椎体第8,11,12胸椎,第1から第4腰椎).神経症状を伴う者は対象から除外した.いずれの対象者も鎮痛消炎剤を服用しており、受傷前には起き上がりが自立していた.【方法】体幹装具着用下に患者にベッド上仰臥位から端坐位まで起き上がりを行わせた.口頭指示及び介助は行わなかった.測定項目は起き上がり方法,起き上がり時の疼痛,起き上がり自立までの日数とした.起き上がり方法は、仰臥位から側臥位を経て端坐位になる方法(以下側臥位法)と仰臥位から長坐位を経て端坐位になる方法(長坐位法)の2つに大別した.起き上がり時の疼痛はVASにて測定した.起き上がり方と疼痛,起き上がり自立までの日数をMann‐WhitneyのU検定を行い危険率5%未満を有意とした.【結果】起き上がり方法は側臥位法11名61%,長坐位法7名39%であった.起き上がり方法と疼痛,起き上がり自立までの日数において有意な差は認められなかった.【考察】今回の検討では、圧迫骨折患者における疼痛が少ない起き上がり方法,早期に起き上がりが自立できる方法は見出せなかった.圧迫骨折の疼痛に対し、直接的に除痛を図る運動療法についての報告は見当たらない.体幹装具は起き上がり時に対する制動低下が疼痛を誘発する一つの要因と考えられる.また起き上がり方法は、筋力,バランス能力,可動性が関与し、加齢による退行現象があると言われている.体幹装具着用での起き上がり動作は受傷以前の起き上がり方法を阻害するのではないかと考えられる.今後は各身体部位の使いかたが起き上がり動作に関連しているものと考え、圧迫骨折患者の安静期間および理学療法の介入方法についての調査を行い、早期離床を図れる方法を検討していきたい.