著者
笹岡 沙也加 松井 利亘 阿部 純子 梅津 亮冴 加藤 大和 上田 夏実 羽根 由基 元岡 佑美 畠平 春奈 紀ノ定 保臣 中村 光浩
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.136, no.3, pp.507-515, 2016-03-01 (Released:2016-03-01)
参考文献数
27
被引用文献数
11 14

The Japanese Ministry of Health, Labor, and Welfare lists hand-foot syndrome as a serious adverse drug event. Therefore, we evaluated its association with anticancer drug therapy using case reports in the Japanese Adverse Drug Event Report (JADER) and the US Food and Drug Administration (FDA) Adverse Event Reporting System (FAERS). In addition, we calculated the reporting odds ratio (ROR) of anticancer drugs potentially associated with hand-foot syndrome, and applied the Weibull shape parameter to time-to-event data from JADER. We found that JADER contained 338224 reports from April 2004 to November 2014, while FAERS contained 5821354 reports from January 2004 to June 2014. In JADER, the RORs [95% confidence interval (CI)] of hand-foot syndrome for capecitabine, tegafur-gimeracil-oteracil, fluorouracil, sorafenib, and regorafenib were 63.60 (95%CI, 56.19-71.99), 1.30 (95%CI, 0.89-1.89), 0.48 (95%CI, 0.30-0.77), 26.10 (95%CI, 22.86-29.80), and 133.27 (95%CI, 112.85-157.39), respectively. Adverse event symptoms of hand-foot syndrome were observed with most anticancer drugs, which carry warnings of the propensity to cause these effects in their drug information literature. The time-to-event analysis using the Weibull shape parameter revealed differences in the time-dependency of the adverse events of each drug. Therefore, anticancer drugs should be used carefully in clinical practice, and patients may require careful monitoring for symptoms of hand-foot syndrome.
著者
島内 あかり 長沼 美紗 笹岡 沙也加 畠平 春奈 元岡 佑美 長谷川 栞 福田 昌穂 中尾 智史 堺 千紘 横山 聡 伊野 陽子 中村 光浩 井口 和弘
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.138, no.2, pp.259-267, 2018-02-01 (Released:2018-02-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

The “self-medication tax deduction” system began in Japan in January 2017, allowing people to encourage the use of OTC drugs. Package inserts contain important information for consumers regarding their use. In this study, we first checked whether the items, as required in the notifications of the Japanese Ministry of Health, Labour and Welfare, are described in the package inserts of cold remedies and analgesic antipyretics in OTC drugs. The descriptions of almost all packages checked in this study were based on the notifications, but those of a small number of them were not. Next, we examined the description of the items, unrequired in the notification, but worthy for proper use of drugs; e.g., the description of prohibition for use by “patients with severe hypertension” in case of ibuprofen-containing products, and the description was found in only seven of 180 products. Manufactures should make package inserts along with notifications, including the description for proper use of drugs.
著者
笹岡 沙也加 畠平 春奈 長谷川 栞 元岡 佑美 福田 昌穂 長沼 美紗 梅津 亮冴 中尾 智史 島内 あかり 上田 夏実 平出 耕石 井口 和弘 中村 光浩
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.138, no.1, pp.123-134, 2018 (Released:2018-01-01)
参考文献数
22
被引用文献数
8

OTC combination cold remedies are widely used in Japan. In the present study, we aimed to evaluate the adverse event profiles of OTC combination cold remedy based on the components using the Japanese Adverse Drug Event Report (JADER) database. The JADER database contained 430587 reports between April 2004 and November 2016. 1084 adverse events associated with the use of OTC combination cold remedy were reported. Reporting odds ratio (ROR) was used to detect safety signals. The ROR values for “skin and subcutaneous tissue disorders”, “hepatobiliary disorders”, and “immune system disorders” stratified by system organ class of the Medical Dictionary for Regulatory Activities (MedDRA) were 9.82 (8.71-11.06), 2.63 (2.25-3.07), and 3.13 (2.63-3.74), respectively. OTC combination cold remedy containing acetaminophen exhibited a significantly higher reporting ratio for “hepatobiliary disorders” than OTC combination cold remedy without acetaminophen. We demonstrated the potential risk of OTC combination cold remedy in a real-life setting. Our results suggested that the monitoring of individuals using OTC combination cold remedy is important.
著者
山下 克也 津曲 恭一 尾田 一貴 小園 亜希 田中 亮子 中村 光与子
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.141-147, 2017-05-25 (Released:2017-07-05)
参考文献数
10

現在日本では異なる抗原由来の2種類のB型肝炎ワクチンが市販されている.通常1回のシリーズ(6か月間に3回接種)では同じ製品が使用されるが,1シリーズ中に異なる抗原由来のB型肝炎ワクチンを接種した場合の抗体獲得について検討された報告は少ない.今回,1シリーズ中に異なる抗原由来のB型肝炎ワクチンを接種した場合の抗体獲得について検討した.過去にB型肝炎ワクチン未接種であり,HBs抗体陰性が確認された被験者で,3回目を異なる抗原由来のB型肝炎ワクチンを接種した群を対象群(A群),3回全て同じB型肝炎ワクチンを接種した群をコントロール群(B群)とした.ワクチンの投与は皮下注で行い,HBsAb定量およびHBsAb定性は採血で測定し,10.00 COI以上をHBsAb陽性と判定した.有害事象は3回接種後の副反応を調査票で収集し,CTCAE Ver.4.0にて評価した.A群は9名,B群は7名であり,両群ともに全例で抗体獲得が確認された.有害事象はA群で3件,B群で1件認められたが,いずれもGrade 1であった.A,B群合わせた副反応の内訳は注射部位の疼痛3件,皮膚硬結1件であり,重篤な副反応を呈した症例はなかった.今回認められた有害事象はいずれもワクチンに共通した副反応であると考えられ,1シリーズ中に異なる抗原由来のB型肝炎ワクチンを接種しても良好な抗体獲得が得られる可能性が示唆された.
著者
中村 光一 稲葉 次紀 若松 勝寿 仲野 〓 河崎 善一郎 依田 正之
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

平成10年度冬季ロケット誘雷実験は、準備・撤収を含めて平成10年10月26日から12月5日までの間、石川県奥獅子吼山山頂の北陸電力試験用送電線30号鉄塔付近で実施された。今年度は、鉄塔誘雷6回、地上誘雷10回の計16回の誘雷に成功した。この16回を加えると昭和52年度からの通算成功回数は187回(過去のエアー砲通算2を含まず)となる。本実験では火薬ロケット、火薬を使わないエアー砲、も試みた。主な研究項目は次の通りである。(1)鉄塔誘雷:160m長のナイロン糸でワイヤを絶縁することにより、鉄塔誘雷を目指す。鉄塔側では、碍子間電圧、塔脚電位、鉄塔脚に接続した針付き接地電極への分流、などの測定。(2)地上誘雷:接地されたスチールワイヤを火薬ロケット、エアー砲、ウォータロケットにより引き上げ、地上への誘雷を目指した。限流式避雷針の特性試験、雷エネルギー測定、雷管石の生成。(3)ロケット搭載型電界計による空間電界の測定、(4)雷測定:雷撃電流、地上電界、磁界変化、放電路の光学観測、雷鳴による放電路再現、液晶雷警報器の屋外試験、鉄塔コロナ電流、搭頂電界測定。(5)4km離れたベースでは地電流測定を行った。(6)誘雨ロケットによる誘雨試験も併せて行った。誘雷を目的としたロケットは21回打ち上げて16回成功した。他に、エアーロケットに200m長のロープを取り付け、地上に回収する方式の試験も実験した。結果の一覧を表1に示す。60m鉄塔への誘雷には160m長のナイロン糸を使用した。9回の内6回成功し、1回は山側下相導体に誘雷した。中国式限流避雷針と従来形避雷針を6m置いて並列させ、その上空20mに誘雷を導き、いづれの避雷針に誘雷するかのテストを試みたが、別の場所に誘雷した。ウォータロケットは、飛行高度が不充分で誘雷に到らなかった。本研究は、平成8年度から、3年間の継続研究であり、3年間の合計誘雷成功数は、36にのぼる。この実験を通して上述の(1)〜(6)に関し、多くの成果が得られた。
著者
平岡 眞寛 佐治 英郎 富樫 かおり 溝脇 尚志 松尾 幸憲 吉村 通央 中村 光宏 小久保 雅樹 澤田 晃 門前 一 板坂 聡
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

放射線治療の成績向上には、生物学的画像情報の治療計画への統合と腫瘍や正常臓器の動きへの対応が必要と考えられた。我々は、放射線治療計画における生物・機能画像情報の有用性の評価、腫瘍動体評価と生物・機能画像の4次元化法の確立、および動体追尾SIB-IMRT治療の実現に向けた基盤技術開発の3つの要素に分けて研究を行った。それぞれF-MISO-PETによる低酸素イメージングにおける最適な撮像タイミング、呼吸同期FDG-PETの有用性、4次元線量計算モジュールの開発などの研究成果を挙げた。今後これらの研究成果が放射線治療の高度化と成績向上につながるものと期待される。
著者
石橋 政紀 中村 光 東原 貴志 樋口 雅樹 梅村 研二
出版者
一般社団法人 日本産業技術教育学会
雑誌
日本産業技術教育学会誌 (ISSN:24346101)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.197-203, 2016-12-28 (Released:2019-12-30)
参考文献数
11

本研究では,クエン酸とスクロースの混合物を接着剤として使用したパーティクルボードを製造し性質を評価するとともに,クランプとオーブンを用いた木質成形体の簡便な製造方法を開発した。その結果,曲げ強さは11.4~16.1MPaを示し,ポリエチレンを接着剤として使用したパーティクルボードと比較して大きいことや,4時間煮沸した後の厚さ方向の寸法変化が小さいことを明らかにした。中学生を対象としたパーティクルボード製造の授業実践を行った結果,木質材料の製造法を学習することは木材と木質材料の性質を理解する上で有効であると考えられた。また,新たに開発した木質成形体の製造方法では成形作業が簡易化されており,教材として有望であると考えられた。
著者
石井 望 中村 光彦
出版者
長崎総合科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

平成十八年度、北京にて發見した「北西廂訂律」は、現存最古の元曲譜として極めて貴重なものだったので、平成十九年度はその詳細な分析のために、比較の封象となる曲譜を蒐集し、比較を行なった。その結果「北西廂訂律」に古メロディーが留存してゐることがいよいよ明瞭になって來た。メロディー研究の基礎となる曲韻研究に於いては、范善臻「中州全韻」の七聲體系こそが崑曲の正統であることを示す證據を「韻學驪珠」など諸韻書に求め、學會にて口頭發表した。曲韻研究の基礎となる音韻學概念を六朝に遡って探求し、インド輪廻方式の呉語音圖「歸三十字母例」が音韻學の源であり、それ以來呉語の曲韻に至るまで清濁を高低としてゐることを明らかにした。メロディー研究の今一つの基礎となる音階研究に於いては、太平御覧等に見える「制は角音にのっとる」との記載にもとづき、ファ・ファ#・シ・シ♭を曖昧にする音階が唐代より宋詞・元曲を経て崑曲に至るまで基本原理となってゐることを明らかにし、臺灣にて口頭及び誌上にて發表した。また分擔者中村光彦の指導する卒研にては、機器吹奏を以て崑曲笛の音階を試測し、今後各地の古樂器の音階を計測するための準備を整へた。
著者
河村 圭亮 中村 光 竹村 雅志 三浦 泰人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造) (ISSN:21856567)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.179-196, 2022 (Released:2022-05-20)
参考文献数
35
被引用文献数
1

あと施工せん断補強筋(PHB)で補強したRC部材のせん断抵抗メカニズム解明のため,4つの条件に着目して3次元剛体バネモデルによる数値解析を実施した.1つ目に,PHBの幅方向配置間隔を狭くするとせん断補強効果が高まることを示した.2つ目に,PHBを用いた場合も断面高さの違いによる寸法効果は閉合型スターラップを用いた場合と同様であることを示した.3つ目に,せん断スパン比a/dの違いで破壊モードが異なる条件でも内部ひび割れや耐力への影響は同様であることを示した.最後に,面部材などで幅方向が一様に拘束された条件下では,PHB・閉合型スターラップを用いたいずれの場合もアーチ機構とトラス機構が増加して梁部材よりも耐力が大きく増加することを示した.本検討はa/d=2.86の条件を基本とし,1.71~4.00の範囲で同様の傾向を確認した.
著者
李 多晛 澤田 陽一 中村 光 徳地 亮 藤本 憲正
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.421-427, 2013-12-31 (Released:2015-01-05)
参考文献数
19
被引用文献数
2

普通名詞,固有名詞,動詞の3 種の言語流暢性課題を若年群と高齢群に実施し,品詞と加齢の影響を調べた。対象は健常の若年者(18 歳~ 23 歳)と高齢者(65 歳~ 79 歳),それぞれ35 名である。被検者には,60 秒間に以下の範疇に属する単語をできるだけ多く表出するよう求めた。(1)普通名詞:「動物」「野菜」,(2)固有名詞:「会社の名前」「有名人の名前」,(3)動詞:「人がすること」。その結果,高齢群は若年群に比べて,正反応数が有意に少なく,誤反応数が有意に多かった。動詞は普通名詞に比べて,正反応数が有意に少なかった。また,普通名詞,固有名詞に比べ動詞では,加齢による正反応数の減少と誤反応数の増加が有意であった。動詞において加齢による成績低下が強くみられたのは,高齢者における遂行機能の低下を反映したものだと考えた。
著者
福岡 範恭 山田 広行 安心院 康彦 池田 尚人 尾方 純一 杉田 学 髙松 純平 中村 光伸 溝端 康光
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.580-586, 2019-08-31 (Released:2019-08-31)
参考文献数
5

救急隊員による病院前救護における疾病の観察・処置の標準化として『PEMECガイドブック2017』が出版されて以降,PEMECコースが開催されている。本稿ではコース概要と開催状況,参加者より得た意識調査結果から今後の課題について考察し報告する。2018年10月までに行われたコース受講者196名に意識調査を実施した結果,184名から有効な回答が得られた。全体的な評価で「よい」と回答した75名(40.7%)を高評価群,「まあよい」「普通」「あまりよくない」と回答した109名(59.2%)を低評価群に分類し,全体の評価に強く影響を与えたコースプログラムの各項目をロジスティック解析により分類した。その結果「アルゴリズムの理解」「インストラクターの知識」「インストラクターの解説」が評価に関連する主要な因子として明らかになった(p<0.05)。コース内容は,概ねよい支持を得ているが,インストラクターの教育技能を向上させること,アルゴリズムの理解を深める指導の必要性が示された。
著者
笠井 富貴夫 中村 光男 石井 正孝 寺田 明功 工藤 研二 対馬 史博 広田 則彦 武部 和夫
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.219-226, 1991-03-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
25

胃排出機能とインスリン皮下吸収の食後早期血糖変動への影響を検討する目的で, 胃排出遅延を認めるインスリン依存型糖尿病 (IDDM) 11例にGastrokineticsを投与し, 明らかな胃排出改善の得られた6例 (I群), 改善のなかった5例 (II群) について食前および食後120分までの血糖 (PG) と血中遊離インスリン (Free-IRI) をPEG抽出法で測定した.胃排出機能はアセトアミノフェンとアイソトープ併用の液食一固形食同時測定法で検討した.I群;ΔFree-IRIには全検査時間を通じ, 胃排出改善前後で有意差なく, ΔPGは食後60分以降, 有意な上昇を認めた.すなわちΣΔFree-IRIには有意な変化はなく (2310±1266→2707±6889μU/ml・min), Σ ΔPGには有意な上昇 (1853±3442→4799±2983mg/dl・min, p<0.02) を認めた.II群;ΔFree-IRI, ΔPGともに胃排出改善前後で有意な変化を認めなかった.IDDMではインスリン皮下吸収に有意な変化を認めない場合, 胃排出機能が食後早期血糖を制御する重要な因子であることが示された.
著者
原田 岳 坂口 孝宣 稲葉 圭介 中村 利夫 倉地 清隆 深澤 貴子 中村 光一 沢柳 智樹 原 竜平 井田 勝也 今野 弘之
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.3, pp.432-441, 2010-03-05
参考文献数
30
被引用文献数
1

症例は70歳男性.肝門部とドーム下に肝腫瘍を指摘され受診された.門脈腫瘍塞栓をともなうStage IVの肝細胞癌と診断し,近医経過観察の方針となった.その後は症状の増悪なく経過し,初診から28カ月後の画像診断で腫瘍は著明に縮小していた.退縮に関わる因子として,門脈腫瘍塞栓による腫瘍血流の減少と,イミダプリル,補中益気湯の抗腫瘍効果が考えられた.肝細胞癌の自然退縮症例はまれであり,文献的考察を含め報告する.<br>
著者
津田 哲也 中村 光 吉畑 博代 渡辺 眞澄 坊岡 峰子 藤本 憲正
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.394-400, 2014-12-31 (Released:2016-01-04)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

項目間の意味的関連性を統制した非言語性意味判断課題を用いて, 失語症者の意味処理能力を検討した。対象は右利き失語症者 35 例 (平均 65.4 歳) および同年代の健常者 10 例 (統制群)。課題では提示された目標項目に対し, 対象者に 5 つの選択肢のなかから, 最も意味的関連性が強いと判断する 1 項目を指すよう求めた。選択肢は質的に異なる 2 つの意味的な関連性 (状況関連性と所属カテゴリー関連性) の有無を基準に設定した。例えば, 刺激項目が「犬」の場合, 状況と所属カテゴリーもどちらも関連する項目 SC (猫), 状況的関連のある項目 S (家), 所属カテゴリーが関連する項目 C (象), 生物・非生物のみ一致するが状況・カテゴリーの関連性はない項目 N1 (鯛), いずれも関連のない項目N2 (消しゴム) の線画を提示した。その結果, 統制群・失語群いずれも全反応中に占める比率は SC が最も多く, 次いで S または C の順で, N1・N2 は最も少ない反応であった。また, 失語重症度別・聴覚的理解力別での反応に有意な偏りを認め, 重度群・理解不良群は軽度群・理解良好群よりも全反応中の N1・N2 の比率が有意に高かった。失語症者において重症度・聴覚的理解力と非言語性意味処理には一定の関連があることが確認された。以上より, 多くの失語症者は非言語性意味判断において, 状況関連性やカテゴリー関連性という判断基準を利用できることが示された。
著者
西 健 田島 義証 中村 光佑 林 彦多 川畑 康成
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.73-76, 2021-04-15 (Released:2022-05-15)
参考文献数
31

補剤とは, 生体の活力が低下している時に, 生体内に不足している成分を補って機能賦活を行い, 治癒を促進させる漢方薬である. 十全大補湯と捕中益気湯はその代表であり, 免疫賦活効果を中心に, 基礎研究・臨床研究の両面からその有用性が報告されている. 生体に手術侵襲が加わると, 炎症性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインの過剰産生が生じ, その結果, 免疫能が低下し, 易感染状態となる. 周術期管理における十全大補湯・捕中益気湯の投与は, 手術侵襲の回復過程における免疫機能のサポートに有用と考えられ, 免疫能が賦活化され, 手術侵襲の負担軽減と生体防御の活性化が期待できる. 十全大補湯は気虚 (気が不足した病態) と血虚 (血が不足した病態) のいずれの病態にも作用する補剤で, 特に高齢者や担癌患者で貧血を伴うような症例でその効果が期待できる. 補中益気湯は気虚 (気が不足した病態) に用いられ, 気が減衰した周術期患者の免疫賦活, 特に感染性合併症の軽減に有用であることが示唆されている.
著者
藤本 憲正 中村 光 福永 真哉 京林 由季子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.201-207, 2016 (Released:2016-05-20)
参考文献数
18

比喩文の理解課題を作成し,健常高齢者(統制群),コミュニケーション障害を認めない右半球損傷者(右なし群),それを認める右半球損傷者(右あり群),左半球損傷の失語症者(失語群),それぞれ15名に実施した.比喩文は一般的になじみの低い直喩文30題とし(例:道は,血管のようだ),検者がそれを読み上げた後,その意味に最も合う文を4つの選択肢から選ぶよう求めた.さらに同じ比喩の口頭説明課題とトークンテスト(TT)を実施した.結果は,統制群と比較し,右なし群では比喩理解課題,TTともに同等の得点であり,右あり群では特に比喩理解課題で有意な低下を示し,失語群では比喩理解課題,TTともに有意な低下を示した.比喩理解課題と比喩説明課題の得点には有意な相関関係が認められた.右半球損傷における比喩理解障害を議論する際は,コミュニケーション障害の有無を考慮する必要があると考えた.