著者
中村 覚 大和 裕幸 稗方 和夫 満行 泰河
出版者
日本デジタル・ヒューマニティーズ学会
雑誌
デジタル・ヒューマニティーズ (ISSN:21897867)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.29-43, 2018 (Released:2019-01-18)
参考文献数
25

近年,デジタルアーカイブの普及に伴い,セマンティックウェブ技術を活用したデジタルアーカイブの統合や,年表や地図等との組み合わせによる多角的な情報提供による史料研究支援が試みられている.このような取り組みは効率的な史料研究を支援する点で重要であるが,これらはデジタルアーカイブを公開する提供者による取り組みが主である.歴史研究者をはじめとする史料の利用者が,公開されている史料を収集・整理し,史料分析を支援する環境は整えられていない.本研究では,SPARQL Endpoint を提供するデジタルアーカイブが公開する情報と,研究者が個々に整理する情報を Linked Data を用いて関連づけ, 研究者の目的に応じた史料分析を支援するシステムを開発する.また,異なる 2 つのデータベースを対象としたケーススタディを行い,提案手法の有用性を検証する.
著者
中村 覚 大和 裕幸 稗方 和夫 満行 泰河
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.1, no.Pre, pp.71-75, 2017-09-08 (Released:2017-09-08)
参考文献数
5

歴史学研究は、歴史資料(以下、資料)の目録データの作成や整理を行う「資料管理」、研究者が資料を用いて研究課題の解明に取り組む「資料研究」、資料や研究成果を広く一般に公開する「成果公開」の三つのプロセスに整理することができる。各々のプロセスは、取り扱うデータや活動主体の違いにより、独立して進められることが多い。本研究では、上述したプロセス間の有機的な連携を支援することを目的とし、各プロセス間で取り扱うデータをLinked Dataを用いて関連づけ、それらを相互に利用可能なシステムを提案する。また、海軍造船中将・第13代東京帝国大学総長であった平賀譲が遺した資料群『平賀譲文書』を対象とした適用事例を通じ、提案するシステムの有用性を評価する。
著者
中村 覚 大和 裕幸 稗方 和夫 岡田 伊策 齋藤 稔 笈田 佳彰
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.29, 2015

本研究ではセマンティックWeb技術を用い、文書や画像等のデジタル資産とドメイン固有の知識を紐づけて管理するシステム基盤を開発した。概念をノード、関係性をリンクによって表現するドメイン知識の記述支援機能、デジタル資産からのメタデータ自動抽出によるドメイン知識への関連付け機能を有する。本システム基盤を情報システム開発におけるデジタル資産管理に適用し、設計書・設計知識の再利用性の向上を確認した。
著者
金 甫榮 中村 覚 渡邉 英徳
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.6, no.s3, pp.s147-s150, 2022 (Released:2022-11-02)
参考文献数
9

本研究では、デジタル化した資料の長期保存および公開のための、OAIS情報モデルに準拠したワークフローを提案する。ワークフローの実現には、オープンソースソフトウェアであるArchivematica(長期保存用)とOmeka S(公開用)を用いる。まず、デジタル化資料の真正性を確保するため、OAIS情報モデルで定義するメタデータ要素に基づき、メタデータを分析した。次に、Archivematicaを用いて必要な情報パッケージを作成した上で、それをOmeka Sへインポートするためのツールを独自に開発した。その結果、デジタル化資料の受入から公開までの一貫したワークフローを提案することが可能となった。
著者
小川 潤 永崎 研宣 中村 覚 大向 一輝
雑誌
じんもんこん2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.215-222, 2020-12-05

本研究の目的は,時間的文脈情報を含む社会ネットワーク分析に利用可能なデータを構築することである.既存モデルにおいても,人物間の関係性に時間情報を付加することは可能であったが,それは年月日など絶対的な時間情報に基づくものであった.だが歴史史料,とくに古代史史料では,物事の前後関係といった非常に曖昧な時間情報しか入手しえないことが往々にしてある.そのような問題に対処すべく,本研究は史料中に言及される出来事の継起関係をもとに時間的文脈情報を表現し,それを用いて人物および人物間の関係性に「相対的な」時間情報を与えるためのモデルを設計するとともに,一次史料を用いてその有効性を検証した.
著者
中村 覚
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.155-158, 2019-03-15 (Released:2019-06-01)
参考文献数
5

本研究では、『捃拾帖』の内容検索を可能とするシステムの開発事例について述べる。『捃拾帖』とは、明治時代の博物学者である田中芳男が収集した、幕末から大正時代にかけてのパンフレットや商品ラベルなどを貼り込んだ膨大なスクラップブックである。東京大学総合図書館はこれらの画像を冊単位で公開しているが、貼り込まれた資料単位での検索が望まれていた。この課題に対して、本研究ではIIIFのアノテーション機能を利用し、各頁の貼り込み資料単位で画像を切り出し、検索可能なシステムを開発した。また、東京大学史料編纂所の「摺物データベース」が提供する、貼り込み資料単位のメタデータと組み合わせることで、内容情報に基づく検索を可能としている。本研究はその他、複数の機関が提供する各種リソース(IIIF・オープンデータ)を組み合わせて利用している点に特徴があり、デジタルアーカイブの利活用を検討する上での一事例として機能することを期待する。
著者
岡崎 敦 藤川 隆男 佐治 奈通子 中村 覚 田野崎 アンドレーア嵐 濱野 未来 大邑 潤三
出版者
東京大学大学院人文社会系研究科西洋史学研究室「クリオの会」
雑誌
クリオ = Clio : a journal of European studies
巻号頁・発行日
no.34, pp.117-140, 2020-07

特集「デジタル・ヒストリーの諸実践」 に寄せてデジタル時代のアーカイブズ学と文書学公共圏の歴史的構造歴史学と情報学のより良い協働を目指して証書研究におけるTEIマークアップの活用歴史学における計量テキスト分析の活用歴史災害研究における GIS活用の試み
著者
宮本 隆史 前川 俊行 中村 覚
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.207-210, 2019

<p>1997年に開設されたウェブサイト『異風者からの通信』[1] は、同年に閉山した三池炭鉱とその地域の近現代史に関心を寄せる者にとって参照点となってきた。本発表では、ウェブサイトを運営する前川俊行を共同発表者として招き、日本における初期のウェブの時代からの、個人による記憶の発信という営為の歴史的意味について議論する。前川本人の証言とともに、この20年間のインターネットの環境の変化の中で、個人的なコレクションが公共性を帯びたアーカイブとして進化した過程を論じる。さらに、個人アーカイブを継承する方法について考察する。</p>
著者
冨澤 かな 木村 拓 成田 健太郎 永井 正勝 中村 覚 福島 幸宏
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.129-134, 2018

<p>東京大学附属図書館U-PARL(アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門)は,本学所蔵資料から選定した漢籍・碑帖拓本の資料画像をFlickr上で公開している。資料のデジタル化とアーカイブ構築のあり方を模索した結果,限られたリソースでも実現と持続が可能な,小さい構成でありながら,広域的な学術基盤整備と断絶せず,高度な研究利用にも展開しうる,デジタルアーカイブの「裾野のモデル」を実現しうる方策として選択したものである。その経緯と現状及び今後の展望について,特に漢籍・碑帖拓本資料の統合メタデータ策定,CCライセンス表示,OmekaとIIIFを利用した研究環境構築の試みに焦点をあてて論ずる。</p>
著者
小風 尚樹 中村 覚 纓田 宗紀 山王 綾乃 小林 拓実 清原 和之 金 甫榮 福田 真人 山崎 翔平 槙野 翔 小川 潤 橋本 雄太 宮本 隆史 菊池 信彦 後藤 真 崎山 直樹 元 ナミ 加藤 諭
巻号頁・発行日
pp.1-57,

2018年4月15日に開催された「2018 Spring Tokyo Digital History Symposium」のイベントレポート。シンポジウムは、歴史研究においてデジタル技術を駆使する際のいくつかの指針を提示すべく、歴史研究者・アーキビスト・エンジニアの学際的協働に基づくワークショップTokyo Digital Historyが主催した。 本シンポジウムでは、歴史研究が生み出されるまでの4つのプロセス、すなわち「情報の入手」「情報の分析」「情報の表現」「情報の公開」に着目し、それぞれに関連の深いデジタル技術や知識を提示した。さらに、それらを活用した具体的な歴史学的実践例を提供した。このシンポジウムおよびTokyo Digital Historyは、学際的協働を必要とする人文情報学プロジェクトの好例であるとともに、歴史研究の分野においては画期的な試みである。
著者
福田 貴三郎 村瀬 健太郎 中村 覚 稗方 和夫 笈田 佳彰 松本 滋 岡田 伊策
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.1240-1249, 2018-04-15

パッケージソフトや既存システムの仕様変更において,改修・カスタマイズの対象となる機能の規模の見積りや,それにともなう作業全貌の把握には,システムの全体構成や個々の機能の詳細に関する知識が不可欠であり,豊富な経験と高度なスキルを有するベテランSEのノウハウが必要である.また設計情報に加え,作業プロセス間の依存関係に基づく影響波及範囲の推定も求められる.本研究では,設計情報と作業プロセス間の暗黙的な依存関係を可視化し,パッケージソフトや既存システムの改修・カスタマイズによる影響波及範囲の特定を支援するシステムの開発を行った.また,実際の情報システム開発プロジェクトにおける事例を用いた評価実験により,従来の手法に比べドキュメントベースでより網羅的に影響波及範囲を抽出できることを確認した.
著者
中村 覚 大和 裕幸 稗方 和夫 満行 泰河 鈴木 淳 吉田 ますみ
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.267-277, 2018-02-15

近年,デジタルアーカイブの普及にともない,インターネットを介した歴史資料(以下,史料)へのアクセスが容易となっている.一方,研究者が研究対象とする史料のすべてがインターネット上で公開されているとは限らず,また実証的な歴史研究が現存するすべての関係史料を検討することを基本にするため,実際に文書館や図書館に赴き,史料の収集を行う例も多い.本研究では史料収集や整理に多大な労力を要する歴史研究の支援を目的とし,複数の研究者の共同作業による史料収集・整理プロセスの効率化,および異なる専門知識を有する研究者の協調的な史料分析を支援するシステムを開発する.また,外交文書の送付先の決定過程に関する歴史研究を行い,開発したシステムの有用性を評価する.Digital archive has become popular recently, and this facilitates easy access to historical materials by the Internet. On the other hand, it is still common for researchers to gather materials by going to libraries and archives. This is because empirical historical research requires to examine all materials related to research objectives. In this study, the system is developed in order to gather and manage materials efficiently and support collaborative research with several researchers. This system manages materials on the Internet, and enables several researchers to accumulate and analyze materials collaboratively, which takes a great deal of effort individually. The effectiveness of the proposed system is evaluated by an experiment with several researchers to analyze the process of deciding addresses of diplomatic documents.
著者
中西 久枝 内藤 正典 嶋田 義仁 伊勢崎 賢治 大坪 滋 末近 浩太 吉川 元 立山 良司 中村 覚
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

中東の紛争では、中東の内外からの外部勢力の介入が紛争の長期化をもたらす実態が明らかになった。また、紛争防止策として、(1)国家再建時にすべての勢力をそのプロセスに包含すること、(2)イスラーム社会組織が果たす社会サービスの分配機能への着目、(3)難民や避難民の保護と共生のしくみを域内で構築すること、(4)民主化への移行期は、治安・雇用の創出・市民社会の政治参加への拡大などの課題への舵取りが紛争の再燃防止になること、などが挙げられる。